夏休み─付き合って初めて見た、彼女の変貌
8月9日。
ショッピングモールにいた。
隣には星峰さんがいる。
「涼更く~ん、本屋に行かない」
「いいよ。行こっか」
本屋について、一緒に回っていると、前から星峰さんを呼ぶ声がして、そちらをみると、男子がいた。
「あれっ、香ちゃーん。久しぶりー」
「えっとぉ......」
「香ちゃん、忘れたの?中二のときに一緒のクラスだった、三神だよ」
「あっ。ああ、三神さん......か」
彼女の声がよそよそしいものに変わっていた。
「あっと、もう少し、仲よかった気が......」
彼は、少し怯えていた。彼女の声は低いけれど、怯えるほどでは、と思う。
「何かな、三神さん。何も無いなら、もう行くけど」
徐々に心がないようなたんたんとした声になっていく彼女。
「あのぅ、ほしみ──」
彼女の肩を優しく触るがいつもの声音に戻らない。
「何で三神さんが、ここにいるの。何で──」
「すみませっんっ!」
彼は、たえられなくなったようで、謝って、走り去っていく。
彼女がぶつぶつと呟いていた。その内容は聞こえなかった。
「星峰さん、星峰さん。どうしたの?星峰さんらしくないよ」
「私らしくって──」
俺は、彼女を抱き締める。
「──涼、さ......らくん」
やっと、もとに戻る星峰さん。
「何かあったの?星峰さん」
「何かって、なんの話。涼更君」
無意識だったのか。
「さっきの──」
「やめてっ、あっごめん。言わないでほし......」
「俺こそ、ごめん。何か買う?」
「う、うん」
俺は、彼女と手を繋ぎ、歩き出す。
三神という彼のことは、彼女に聞けずじまいだ。
あんなに変わるような何かとは──。




