表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少尉ですが何か?  作者: 背徳の魔王 人と話すうちに性格から行動パターンを読み取り。隠された本性を暴き。時に未来を予言することからリアル魔王と呼ばれ。材料と調味料の分量で味がわかるので、絶対味覚と本人が詐称する一般人
44/99

冬休みはこれからです。でも私達の苦難はこれからです。

プロローグ




━━東大陸。アレイク王国。アレイ学園。



つい数ヶ月前になるが、アレイ学園では、学年ランキングに代わりトーナメントが開催された。新しい催しは、学園に在籍する。多くの生徒達に。感動と驚愕。そして……、目標を認識させ。閉会した━━。



━━中でも。生徒達の記憶に鮮明に残ったのは、無論優勝したレイラチームだが、それ以上に若き英雄と呼べるシンク・ハウチューデンの二度に渡る敗戦。英雄も人の子。場合により負けるのだと。衝撃を受けた。



未だに生徒達の口に上がるのは、トーナメント準決勝、決勝戦であろう……、無論シンクの事だけではない。それまでも毎週感動と、逸話を残した……。




その1人が、『特待生』一年ノノフレイミ・ラネスであろう。なんとトーナメントで、氷の女神リルム・アオザ・パルストアを。競技とはいえ倒し。大金星を上げたのだ。



当然ノノフレイミを見る。周りの反応が変わった。真っ先に学園側の評価が上がり。冬休みに入る少し前から。正式に『院』の図書室に入る許可が降りた。そ

れは……、僅かながらノノフレイミが、国から補助金を与えられる事を意味しており。姉弟に細やかな幸せをプレゼントした。



……フレイミの変化はそれだけに止まらず。トーナメントの合間に行われた。コーディネートコンテストでの。素晴らしい散髪技術とセンスが、 女の子達から評判となり。実益を兼ねた。美容師として、お願いされることになって、多忙となった。嬉しいのだが、自分の事が二の次になりがちで……、野暮ったい印象は拭えない。

「フレイミ大丈夫か?、少し顔色が優れないようだが?」

心配そうに。疲れた顔のフレイミを覗き込むのは、トーナメント準決勝後から。友達付き合いを始めた女生徒から、絶大の人気者。見た目美しい顔立ちの青年にしか見えないエルマだから。男装の麗人と。密かに呼ばれるほど。女生徒に大人気で、氷の女神リルムの親友である。フレイミも女性と分かっていても。ドキッとしてしまう。

「ええ大丈夫。リルムに報告したら。明日はゆっくり出来るから」健気に答えた。一見フレイミは野暮ったく。気弱げにしか見えないのだが……、長く付き合うと。粘り強く。頑固な一面に驚かされる。それ以上に負けず嫌いで、敬愛するお嬢こと。リルムが認めた友人だ。それはとても珍しいことで、何かと彼女を気にしてる節があった。

「そうだな……、しかしお嬢も、今さらあの五人を調べる意味があるのだろうか?」

懸念を抱いたあの五人とは、レイラチームと決勝戦を戦った。元シャイナ部隊の面々。確かに決勝戦で見せた実力は、エルマも驚かされたが……、「ねえエルマさん。多分ですけど……。リルムさんは、ある可能性に。気が付いたからだと……、思います」唐突に鋭い眼差しをして。フレイミが言った。

「ん?、それはどういう意味だノン……」

「あの五人は、恐らくですが、レイラさんが……、密かに彼女達に近付き。私達に気付かれずに。作り上げたチームだとしたらどうですか?」

「なっ、何だと?、まさかそんなこと……」

あり得ないそう言おうとしたのだが……、ふっと思い出していた。お嬢が、いつか言ってたではないか、

『貴女は、そこまでしてたのね……』

と……、まさかそう思おうとしたが、心の何処かで、それが正解だという。予感がした。それはあくまでも敬愛する。お嬢の凄まじい先見性を。今まで身近に見て、知ってたからそうおもったのだ。

「ノン……、貴女いつそれに気が付いたの?」

もうひとつの疑問……。自分と一緒に。五人を調べていたはずだ。リルムに聞いた筈はない。

「あっ、ごめんなさいね。私の才では、リルムさんの先見性には敵わない。でも私だから分かることもあるの」

そう前置され。少し興味が沸いた。小さく頷き先を促した。

「私の空間把握能力は、先見性に似た才なの。だから私は、後の先を可能にしてます」

「後の先?。」

確かそんな考えを元にした。剣の技があったな……、エルマのそんな様子から。理解してるようだと分かった。

「これはシンクから聞いた。彼の受け売りね♪。私にはそんな才があることすら知らなかったわ。だけど1人だけ私の才能を見抜いたの」

ハッと息を飲んだ。

「そうかレイラが……」「この才能は……、リルムと競った。あのクイズで開花して行ったわ。だから聞いたのレイラに。彼女は言ったわ。私の才を使えば、クイズの競技なら私は、リルムにすら勝てると。断言していた」

自慢するような様子も。そんな性格では無いことも。エルマは理解していた。彼女は、事実しか口にしない……。

「あのレイラが、断言したか……」


小さく唸った。それが事実だとしたら━━。レイラはシンクだけでなく、リルムに間接的だが、勝って見せたことになる……、

「だからお嬢は、あの五人を……、しかし……」

「リルムの気持ち。少し分かります」フレイミは切なげに小さく嘆息した。おやっ?。フレイミには珍しく不安そうな眼差し……、それは時折リルムが見せる顔に似ていた。

「私達は、不安なの。シンクを取り巻く環境がね……」

ほろ苦く微笑む顔が、ほんの一瞬━━見えた時。ハッとするほどフレイミの横顔は美しかった……。そうか……、ようやく合点がいった。

「リルムや私達にとって、レイラは最大のライバルなのよ。彼女はシンクにとって、特別になりえるわ。だから彼女に対抗するには、全てを知る必要がある。それが私がリルムに選ばれ。そして共闘を選んだ理由よ」

強かな顔を覗かせる。そう……、まるでいくら引いても折れない。弓のようなしなやかさで。それこそがフレイミの強さである。何故リルムが、エルマを同行させたか、ようやく理解した。エルマに足りない部分……。それに気付かせる為だ。

「行きましょうエルマさん。私はリルムさん。彼女にも負けるつもりは無いわ」

ゴクリ気圧される。知らず知らず自分は、彼女を侮り過ぎていたことを恥じた。



━━学園の二年生から使える。オープンテラスで、二人から報告を聞いたリルムは、やっぱり……、確信を抱いた。

「ノン貴女は、どう感じたの?」

何時もなら。自分で考え。行動するお嬢が……、

「恐らくレイラは、先のこと考えてのことね。それから彼女は、私達のライバルになりそうね」やはり……、エルマでは気付かない些細な情報。だけどノンなら気付くと分かっていた。彼女は私に近い才を持っているからだ……。余計悔しさに唇を噛み締めていた。

「私は……、レイラに負けるつもりはない」

シンクの寵愛は渡さない。それこそがリルムの教示である。彼女達を認めてはいるが、それとこれは話が違う。いずれシンクの伴侶となるのを決めてる私達。だけど卒業してからが、本当の戦いなのだ。安穏としてはいられない。それはエルマには分からない憔悴だ。シンクに恋した少女達の静かな戦いは、既に始まっていた━━。




━━王都カウレーンの北。通称貴族街。


古く大きな屋敷、国内有数の名家であり。聖アレイの弟子として、歴史に名を残す。ガイロン家の邸宅である。質素な庭には、長年ガイロン家に仕える。庭師の苦労を滲ませる。季節の花が春先。初夏に咲き乱れるが、残念ながら温室のない。ガイロン家の庭は、木々も葉を落とし。物悲しく映る。



庭先に立って身構えてるクエナ・ガイロンは、娘のフィアと共に。独自に編み出した。短槍とバトルアックスを組み合わせた技。冬休みを利用して。徹底的に学ばせていた。元々ガイロン家には、武芸百般と異名のあった。ラウ・ガイロンは、子孫に自身が極めた。あらゆる武具を使った武芸を記した。秘伝書が伝えられていて、クエナの技量では、その一部を身に付けたに過ぎない。トーナメントで披露したフィアの新しい戦いかたは、母からポールアックスを分解して使う。ガイロン重騎士団の技を。夏休み旅行から戻った後。


僅かな期間学んだに過ぎなく。まだ不安が残っていた。最近は休みの日の僅かな時間。父からはもう1人の祖父由来の弓技ではく。父が得意とする。地形を利用したトラップについて学んだ。随分と戦い方が変わった……。自分が強くなったと感じていた。あのまま朝練を続けていても。技量は上がるが、このままでは、親友のヒナエに勝てなくなってしまう……、そんなこと親友として、ライバルとして、容認出来ない。だからヒナエ達とは離れて、自分を鍛え直す必要を感じて。母のクエナ直々。鍛練を積んでいた。

「私の短槍とバトルアックスの技は、小回り重視。今までのような力任せの豪快な技は無いわよ」

「はい母様!」

母が見せてくれた技。型を一つずつ。ゆっくり確かめるように。真似をする。右の短槍と左のバトルアックス。本来はどちらも両手で扱う武具だ、だが母クエナ譲りの馬鹿力が、可能とさせたのは、男の重騎士でも悲鳴を上げる。基礎訓練。フィアは楽しいとさえ思っていた。

「短槍は、バトルアックスの一撃。かわされた時ほど効果的に使えるわ。どんなにかわされようと、受け流されようと。私達にはどちらでも構わない、その状況により。動くのよ、それが私達の戦い方。隙を無くすために。短槍を用いりなさい。多対1でこそ。本領を発揮します」




今までフィアの戦いかたは、渾身の一撃を防がれてからが問題だった。ポールアックスでは隙だらけになるため。個人戦にはむかないと感じていた。だが母の教えてくれる。短槍とバトルアックスを使った戦いは、ポールアックスにあったような弱点が、ほとんどなく。破壊力。小回り。対応力に優れてると。トーナメント競技。魔物討伐で痛感した。

「フィア確かに。ポールアックスの破壊力は魅力的だわ。でものあれは集団戦だから。破壊力がいかされるのよ」

その通りだ……、シンク達との朝練で、負けが増え出してポールアックスの戦い方に。限界を感じていた……。それに懸念もある。来春の『学年戦争』は、新しい一年生が入学してくる。無論最大のライバルは、リルム率いる三年生。さらに四年には、新星フィル・マノイがいる。個対多数の戦い方を学ぶことは、必要不可欠だと考え。母から言われた時は驚いたが、祖父二人から言われたのだと知り。母の特訓を受けることにした。




━━フィアが訓練を受けるきっかけになったのは、もうひとつあって、今まで同年代で。尊敬出来る人間は居ないと考えていた。しかし……シンクやレイラと出会い。彼等に負けたくないと。強く意識していた。自分自身の変化に一番驚いていた。フィアだった。こんなにも自分が、負けず嫌いだったとは……、

「バトルアックスの防御が遅い!、それでは接近戦の奇襲を受けたら。崩される」

鋭い一撃を受けて、たたらを踏んだ娘に。叱責する。

「クッ……、はい」

自分の不甲斐なさに。悔しさを滲ませ。フィアは素早く立ち上がり。唇を噛んで、玉のような汗を拭いながら。



フィアは考える。自分よりも筋力で劣る母だが……、こと試合で、フィアが勝てた事がなかった。恐ろしくバランス感覚に優れ。短槍とバトルアックスを用いた戦法では、重騎士団の猛者とて、一度とて負けないのだ。だからこそ自分も母の技を学び。仲間達と供に同じ頂を目指したい……、鋭い眼差しを母に向けて、バトルアックスを振るう。




━━ガイロン家の邸宅の西。広大な敷地を誇る。前国王弟ホーミィー・レイ・アレイク殿下の邸宅がある。



王弟ホーミィー殿下は、若くして結婚したが、なかなか子宝に恵まれず。半場諦めていた晩年……。娘を授かったと知り。大層女神アレに大変感謝したと言う逸話は、所領の民には有名な話である。



━━奇しくも。アネスが産まれたのは、中央大陸事件・終息間際であり。国の内外は、混乱にあった……、民想いのホーミィー殿下は、自治領の視察に出た先で、小さなモンスターが突然現れた。驚いた馬が棒立ちとなり。ホーミィは落馬した。打ち所が悪く。寝たっきりになってしまい、



この数年……、あまり表舞台に出なくなっていた……、だがホーミィー殿下の一人娘。アネス様が、アレイ学園の『特待生』に選ばれてから。再びホーミィー殿下の事が、注目を浴びた。



アネス様は子供の頃から、大変お転婆な女の子で。自治領の民達は、さもありなんと妙に納得したと言う━━。




アネスの生い立ちは、今の姿から想像出来ないが、意外なことに苦労人である。それは父が寝たっきりになって、母サランが名家のお嬢様育ち。政務に向かない女性だったのもあり。周りは自然と幼いアネスに。次期領主として。父の側近。民から期待された。




それは仕方ないこととはいえ。多感な少女に厳しく。幼少から帝王学。貴婦人に必要な。あらゆる高い教養。マナーを仕付けた。それ故にアネスの本質が、芽を出すことは無かった……。




元々為政者としての素養があったアネスは、周りの期待以上に、美しく聡明な少女に成長して、その片鱗を見せだした頃のこと……、噂を聞いた。伯父である前国王レゾンは。直々にホーミィーを見舞い。アネスに王位継承権5位を与えた時など。領民は喜んだものだ。




その後……アネスは、王宮で、1人の女性と出逢い。彼女に心酔する。




今から6年前━━、



アネスは、ミラ・バウスタンと出会った……。



当時の彼女は、王族護衛部隊ロイヤルガードの1人であった。今思えば、凄まじい人員だとアネスは思い出し。興奮を隠せない。現国王レヴァ、現近衛連隊長ブルー・ファミイユ、ヴァレ・カルバン、黒衣で初めて貴族に取り立てられたレイカ嬢。誰もが輝きに満ちていた。アネスの目には、宝物を見付けたような、キラキラしたように見えた物だ……、



そのなかでも王妃の信任厚く。従姉ミレーヌから。尊敬されていたミラが、アネスの元にいたのは、僅か3ヶ月だった。

━━今思い出しても。本当に楽しい時間だった。



ミラは一目で、アネスの本質を見抜き。今まで欲しくて仕方なかった。少女らしい。自由で楽しい時間を過ごさせて貰えたのは、彼女がいたお陰だった……、



「ミラ……、あのね」

だからミラに頼み込み。バウスタン流の技を学んだ。だけど教えて貰えたのは、児戯に等しい。基礎だけだと、ガックリしたのだが……、



今なら分かる。ミラはアネスに。とても大切なことを。あの僅かな時間に。教えてくれていたのだ。




次にミラと会ったのが、二年後……、彼女が職を辞すると。わざわざ会いに来てくれたときだった。

「アネス様。この度職を辞することになり。私の弟子である貴女が、どの程度技量を上げたか……、それだけが心配で、挨拶を兼ねて伺いました」いきなり厳しい顔。鋭い眼差しを向けられた瞬間。私は理解した。彼女は決して、私に教えた日々を。児戯のような基礎だとは、考えてなかったことに……。それは嬉しくもあり同時に怖かった。だけど……、私だって児戯だとは思っていない。それを証明するため。私はミラから学んだ。基礎の演舞を披露した。



しばし熟考したかと思ったミラだったが、小さく微笑み。

「よくここまで鍛練なされましたね。アネス様。貴女を。正式にバウスタン流の師範代と認めます」

ニッコリ優しい眼差しを向けられた瞬間。アネスは生まれて初めて泣いた。人から裏表なく認められたのが、こんなにも嬉しく思ったことはなかった。

「最後に。私の技をお見せします」



ミラと夜の庭先に出た日は、満月の綺麗な。美しい夜だった。

「アネス様。我がバウスタン流は、最初の数年。基礎の型しか、練習させない理由があります」

意外なこと言われた気がして、胸が高鳴った。

「バウスタン流は、実は黒衣の体術を祖にしてます」

「……黒衣?」

柔かく微笑んだミラは、自分の出じをゆっくり語る。黒衣の村で生まれたこと、今のアネスの歳で、一族から捨てられたと知り。アレイ学園に入学したこと……、今の彼女からは想像出来ない、辛い生い立ち。

「でも違ったんです。最近知ったのですが、私を自由にするため。父を姉が説得してくれ、私はアレイ学園に通うことが出来ていた。それを知ったのはオーラルが、中央大陸に渡った後でした」

懐かしげに、学園時代オーラルとの出会いと、嫉妬。恥ずかしい体験をあえて話し。その上で、

「バウスタン流は、三段階の鍛錬を必要とします。まずは基礎。次に自分に合った技を。自ら学ぶことで、一つの技を深く身に付けた。発展させるのです。私の技は、私に都合の良い技でしかありませんが、アネス様が使う体術のヒントとなることを。祈ります」

厳かに告げ、ミラは肉食獣が、身構えたような野生のしなやかな構えから。息をもつかせぬ技を惜しげもなく披露してくれた。



素早い突きのコンビネーション。拳の突き技だけでも、数十もあると驚いた。さらに上下の打ち分け。蹴り技、組打ち、投げ、バウスタン流の基礎は、蹴り技、打撃が主体だが、投げ技や組打ちもあるのかと。ただ感心した。瞬く間に時間はすぎる━━。

「最後に……、バウスタン流の奥義を……」

そう告げた瞬間。ミラが演舞をしたあらゆる場所から。魔力の光が淡く輝くのが見えた。

「千打掌(せんだしょう」

僅か囁き声が、アネスの耳元で聞こえた瞬間。手近にあった庭先の岩に、無数の光が流星の如く煌めき。轟音が鳴り響いた。

「あんな大きな岩が……」

一瞬で、砂利の山になっていた……。凄まじい技を前に。絶句し。同時に興奮していた。

「アネス様。私には1人娘がおります。貴女の一つ下になりますわ」意味ありげな眼差しに、ぴーんと来たのだ。ミラの言いたいことが……、だから声が上ずるのがわかったが、あえてツンとした顔で。

「わっ、私がミラの一番弟子よ!。妹弟子には負けないから」

強気に言っていた。するとミラは、私を力一杯抱き締め。

「貴女は……、私の自慢の弟子です。いつか必要だと感じたら。私の道場を訪ねてくださいね」

労る優しい声音。だから力一杯ミラに抱き着いて、

「……うん……、ミラ先生」




━━あの別れから数年後……、


アネスは妹弟子が、トーナメントに出ていたことを知った。惜しくも直接戦うことは、叶わなかったが……、



高鳴る胸を弾ませ、アネスは、豊かな巻き髪を悠然と靡かせ。バウスタン流道場の門戸を叩いた。




程なく対応に出たのは、アネスと変わらない年齢の少女。黒髪の扇情的な眼差しをした少女で。一目で、ミラの娘ヒナエだと分かった、

「あっあの~どのようなご用件でしょうか」

やや戸惑いを浮かべたヒナエを。不敵に微笑み一瞥して、ヒナエがかなりやるのは分かり。嬉しくなった。




エピローグ




不敵に微笑む。いかにも良家のお嬢様にしか見えない訪問者だが……、そう楽観的判断をしようとした時だ。ゾクリとした。拳士としての直感。目の前のお嬢様が、見た目通りの柔な相手ではなく、凄まじい技量を持った。人物だと。ヒナエの拳士としての危機感が、強く告げていた。



僅かに斜に。身体を開いたヒナエの変化に。ほ~うと唸る。アネスもまた、ヒナエ実戦慣れした。強敵だと認識した。

「私はアネス・レイ・アレイク」

名を告げた瞬間。ヒナエは目を大きく見開き。とても驚いた様子で、アネスは訝しげに眉を寄せた。




みるみるヒナエの反応が、劇的に変わった。目を潤ませ、ぼろぼろ泣き出したのだ。流石に突然のことで、唖然としたが……、アネスは泣いてる女の子を。放って置くほど。冷たい少女ではなかった……。



甲斐甲斐しく泣き止むまで、ヒナエを座らせたり。世話を焼いたした。こうした見た目と違う優しい一面が、同性から頼りにされるのだが……、本人は理解してない。「ごめんなさい……、急に泣いたりして、私お母さんから、聞いてたから……、つい嬉しくて」

泣き止んだヒナエが、とつとつと語り出した。母ミラが、ヒナエには姉弟子がいること。いつか道場に訪ねてくるから、

『貴女の本当の姉だと思ってね』

ミラが語った話を聞いた瞬間━━。

ツント鼻の奥が痛んだ。ポタポタ……、涙がこぼれていた。

「姉弟子(お姉ちゃん)」

そう呼ばれた気がして、 「妹弟子いもうと) 二人は、気恥ずかしい気持ちで、笑いあっていた。

「シンクから、姉弟子のこと聞いてたから……、その内会えると。楽しみにしてました」

可愛らしいこと言ってくれて、アネスの胸に。暖かい気持ちが広がった。 「貴女に。提案があって来ました。この冬私達二人で、バウスタン流三段階に入る。秘密の特訓しない?」

魅力的な申し出に。一に二にもなく「はい!」と。嬉しそうに返事していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ