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少尉ですが何か?  作者: 背徳の魔王 人と話すうちに性格から行動パターンを読み取り。隠された本性を暴き。時に未来を予言することからリアル魔王と呼ばれ。材料と調味料の分量で味がわかるので、絶対味覚と本人が詐称する一般人
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トーナメントは激戦ですが、優勝するのは私達です!。

遂にリルムとレイラの思惑が交差するトーナメント準決勝。その裏で、シンクを取り巻く環境は変わっていた。ご褒美デートなど交え。彼女達の想いに少しずつ気付き始めるシンク。

プロローグ




北大陸━━平原。



━━15年前……。



世界中に魔物。モンスターが、突如として地上に溢れる。事件が、各国で報告された。



……数ヶ月前。



リブラ将軍から、竜の巣で、異変が起きたと、レイナに報告され。すぐさま調査するよう命じた。リブラ率いる竜騎士は、大陸中を飛び回り。つぶさに調べさせた。



━━当時……。空は、黒雲に覆われ。初夏ながら、寒気するほど肌寒く。大地は、余震に揺れ。人々は、不安に空を見上げていたと言う……、



突然の知らせが来たのは、竜騎士が、各地の都市。町を回った時に起こった。



16部族の勇者が、聖域と崇める中央平原に。上半身人間。下半身馬の種族ケンタウルスが、現れたと急使があった。その数数千である。由々しき事態に。長老達は、リブラ将軍の対話を持って当たるべきと言う。訴えを退け。直ちに排除を命じた。




一方で━━。ケンタウルス達にとって、突如時間が動き出したら、人間に囲まれたと言う認識だ、



リブラ、レイナに不満を抱いていた。各部族の有力者と一部の長老達のごり押しに、一部の戦士達が従った。認識としては、突如亜人の侵略者が現れたとしか、見えなかったのだ……、相手は世にも可笑しな姿をしていた。邪悪なモンスターだと、先入観で信じていた……、




一軍を任された竜騎士長プラ・カートは、剣を交えた瞬間。お互いを強敵と認識した。ケンタウルスの中でも。先陣を切る勇猛果敢なケンタウルスこそ。王のラグ・ジュアリーだった、豊かな金の髪を背に流しながら、大剣で、ドラゴンダイブの一撃を受け止めた、凄まじい利力に。舌を巻いたが。

『竜騎士だと?』

驚いた顔で、古い共用語だが、なんと喋ったではないか……、プラ・カートは、命じられたまま戦たんを開いたのは、リブラ将軍の言う通り。短絡的だったかと咄嗟に考えた。

「やはり……見た目では計り知れないな」

将軍が言ってたではないか。真実が隠される可能性を。小さく嘆息しながら。プラが剣を引くと、訝しげな顔でケンタウルスの王は、問うような眼差しを向けてきた。やはり……優れた知性がある種族だと。それだけでも分かり。唇を噛んで。素早く頭を切り替える。

『異種族の王よ。言葉は分かるな?』




プラ達が、リブラの元で働くようになり。沢山の言語を勉強させられ。様々なことを覚えさせられたが……、役に立つものだと。しみじみ思うことがあった、嫌がってた本人とは違い、周囲の評価は、めきめき頭角をあらわした。




リブラを信望して、自ら部下になった。竜騎士団長レダ・アソート、副団長イノワ・ミササと同じく、右腕と目されてる。今では優秀な若き。族長候補なんて呼ばれてるが、リブラさんからは、ガキ大将が、まんま大人になったようだと言われた。

本人は意識してないが、変わった語尾を付けることから、目立つ若者ではある。しかし短絡的に見られがちだが、思慮深く。判断力に優れた男で、リブラから一軍を任されていた。

『ほ~う。人間の男よ……、分かる』

好戦的な顔に。驚きが宿る。プラは剣を引き。素早く戦闘の中止を命じ。陣まで下がるよう伝えた。

『言葉が通じるなら、対話を願い出たい!』


意外な申し出に。意表を突かれたような表情を浮かべたが、にやり楽しげに笑い。

『竜騎士よ。酒を持って来るならば、機会を設けよう!!』

ケンタウルスの王が、応じれば、酒と言う言葉に反応して。勇猛なケンタウルスの戦士たちが、期待に満ちた目を、プラに向けてきた。『我が名にかけて、皆に存分に飲む量を用意しよう』

プラが快く請け負った瞬間。大歓声が上がった、何事かと目をしばたいた。この時プラは知らなかった……、




ケンタウルス族とは、酒と聖なる平原と、変わらぬ風を愛する。自由な種族であった、敵に襲われれば、全ての戦士が集まり。これを討ち滅ぼし。酒を出されれば、対話する。さっぱりとした気風から、草原の狩人と呼ばれ。その昔━━人間との交流も盛んだった。




神話の時代まで遡るが、闇の女神カーレルにより、邪魔なケンタウルスを。永遠の時の牢獄に。囚えさせていたが……、

中央大陸が、現れた影響で、歪みが生まれ。こうして千年振りに。元の世界に帰還した。勇猛なる人間の隣人であった。




━━首都アージン。


レオールの宰相。レイナ・ホルトは、16部族の長老達を召集して。各部族の伝承を調べるよう頼み。年老いた賢者と呼ばれる。魔法使いを呼び出した。




その間━━、

報告に戻った。プラ・カートから話を聞いたリブラは、プラの判断に、笑みを深め。頭をクシャリ撫でていた。

「リブラさん。止めて下さいよ~きひ!?」

照れくさいが、嬉しそうな顔をしたから。イノワにクスクス笑われてしまい。真っ赤になるが、嬉しさも強い。尊敬してる。リブラ将軍に誉めてもらえるのは、早くに両親を失ってるプラにとって、父に誉めてもらえたように。気恥ずかしいが、素直に嬉しい気持ちが勝る。

「よ~し。ララに頼んで、秘蔵の酒をアレイ教から出して貰えるよう。イノワと頼んでこい」

「はっ、はい、分かりましたきひ♪」

パッと目を輝かせるプラは、イノワの返事を待たず。走り出した。

「まったくプラは、リブラ様。行ってきます!」

魔人の猛威で、大怪我を受けたが、すっかり回復したイノワは、たおやかな笑みを残し。走り出した。



こうして、小さな争いはあったが、元々平原は、狂暴なモンスターの棲息地。16部族も手を出さない。神聖な地域とされていた。それは戦士と認められるための儀式に。使われていたためだ。

それに……、各部族のシャーマンと呼ばれる。古い儀式を仕切る賢人にだけ。古い言い伝えが密かに伝えられていた。レイナに呼ばれた。老いた魔法使いが、調べ伝えてくれたのだ。



結果を長老達に報せるや、苦渋を浮かべる。一部の長老達。リブラ将軍は、レイナの命を受け。早々にケンタウルス族の王ラグ・ジュアリーとの。会談と言う酒宴の準備を済ませ。押しきる形で、渋る長老達に認めさせた。



━━さて……、会談と言う名の酒宴は、後々サーガとして、語られる凄まじい物だった、


同席した両国の人々は、ことごとく二人に潰され。ケンタウルス族の戦士からは、畏怖を持って、酒神バッカスと呼ばれるリブラと、ケンタウルスの王は、酒友となった。



━━現代、


北大陸━━平原。ケンタウルスの都ザウス


レオールの支援を受け。危険な平原に。都を築いたケンタウルス族、ラグ王の前に、若き戦士長を勤める。ダノ・バルタスは4つの足を折って、頭を下げた。

「どうであった?、盟酒友リブラの様子は」

ダノに命じ。中央大陸で起こった事件を調べさせていた。

「はっ、無事帰還なされました。またララ大司教様と直々に会い。リブラ将軍が、来週にも土産を持参するゆえ。肴の用意を頼むと、言われました」

小さく楽しげな笑みを浮かべたがダノに、嬉しげな表情を隠さず。

「そうか……、うむ!?。噂の英雄殿も酒好きと聞く。学園を卒業なされたら、酒を酌み交わしたい物だな」「御意にございます」

王の楽しげな口調に。恭しく頭を下げたが、ダノの下げた顔には、微かだが不安を覚えていた……。どうも以前ほど、レオールの内政は、一枚岩ではない様子だからだ、リブラ将軍、レイナ宰相は、信頼に足りる人物である。ダノとてリブラ将軍を人間にしとくのが勿体ないと、密かに思うほどで、レイナの夫プラとは酒友である。ゆえに信じたい気持ちが強いが、人間の欲望に。何度も苦汁を舐めたことがある。




━━━東大陸。聖アレイク王国、王都カウレーン。



━━西側に位置する。

職人通りから、裏路地を幾つか入った。貧民が住む通りがある。



住民は、まだ若い職人、若い夫婦、片親の親子など。比較的収入が、少ない貧困層が住まう通りに。ノノフレイミ・ラネス、マイト・ラネス姉弟が住んでいた。



最近━━姉のフレイミが、段々綺麗になったと感じていた、弟のマイトから見ても。生き生きして、笑顔が増えたと思う。 たった1人の姉だから、嬉しくもあるが、少し寂しさも感じていた。

「シン兄なら仕方ないけど……、姉ちゃんじゃな……」

しみじみ呟いた。マイトとシンクとの出会いは、あまり良い出会いではなかったと。自分でも思った、



男として、尊敬出来るシンクが、姉の手助けをしていてくれたと知ったのは━━夏前のこと。

ただ1人の肉親である姉が、苦しんでたなんて……、気付きもしなかった、あの出来事から、マイトは、姉に内緒で、シンクに勉強を見てもらっていた。



不思議に思うのは、シン兄が、中央大陸の王族であり。あの英雄王の子息。さらに夏に起こった事件で、雲の上の存在になったのだが……、一介の民の子供でしかない。拙いお願いを、寛大に聞いてくれた。優しいシンクを、何時しか……、本当の兄になってくれないかと。マイトは密かに願っていた。

「姉ちゃんやぼったいけど。シン兄の……まあ~無理かな?」

クセっ毛の頭を。ガシガシかきながら。小さく嘆息していた。




「クチュン……」

可愛らしいくしゃみをしたフレイミを、気遣わしいそうに足を止めた。シンクが、

「フレイミ大丈夫?。風邪かな?」心配されたフレイミは、パタパタ手を振りながら、

「多分。弟が噂してるんだと思います……」

やや上目遣いのフレイミは、何時ものお下げではなく。クセのある赤髪を。ストレートに後ろに流し。可愛らしい白を貴重したワンピース姿である。最近の流行りになりつつある。袖が長く。肩にスリットの入った。ワンピースは、先日行われた。コーディネートコンテストで知り合い、友達になった。彼女モレン・カルメン・オードリーのデザインしたワンピースで、彼女からのお礼だった……。



今日は、週1日だけある。学園の休みで。先日モレンの手伝いをした。ご褒美デートがフレイミの番だったので、

中央公園で、待ち合わせしてたのだ。シンクと歩き出した瞬間。フレイミはくしゃみしてしまい。少し恥ずかしい気持ちになった。

「そうか、なら大丈夫だね♪」

爽やかに笑うシンクに。少し見惚れていたが、……どうしてあんなこと言ってしまったのか、自分でも驚いていた。

「今日のデート。僕に任せてもらっていいかな?」

シンクの何気無い言葉に、胸が高鳴り。自分でも押さえられないほど。嬉しい気持ちが、溢れてきた。

「はっはい!、お願いしますシンクさん」

自然な笑みが出た。



まず二人は、北の区画にある。通称貴族街にある。アレイク王国有数の名店。リーブル酒家に入った。まだ昼前と言う早い時間で、比較的空いていた。

一瞬……。場違いに感じ。怖じけついてたフレイミの手を。いきなり握り。少し強引に引っ張ってく。

「!!………」

恥ずかしさと。同時に強引さが、何だか嬉ししくて。顔が赤くなっていた。

「いらっしゃ……、おお~シンク様!」

給事の格好した。中年男性が、にこやかに笑み。二人を出迎えた。

「お久しぶりですランドさん。この間は、無理を聞いて頂き、ありがとうございました」

頭を下げたシンクに、晴れやかに微笑みながら、

「いやいや~。オーラルさんには、家の爺が世話になってたし。あれくらいは、無理って程ではないさ」


ちらり連れのフレイミに気が付き、笑みが深まる。

「今日はデートですか?」「ええ、それでログ爺に、例の味見を頼まれてた。特別料理を作ってもらいたくて、寄ったんだけど……」

成る程と、納得した顔をした。ランドの祖父ログ・リーブルは、アレイク王国有数の料理人で、宮廷料理人も勤めた。凄い人物である。産まれは、華の国ダナイで、最近の流行り、ダナイ料理は、ログ・リーブルが長年培った技術による一品は、貴婦人に人気であった。


美容に良いと好評の。高価な食材を料理に取り入れたのが、好評な要因らしい……。内緒なのだが、シンクの料理は、父オーラルの料理の師である。ログ爺から、こっそり学んだ物だ。



━━夏の間に起きた出来事……、


ランドも人伝に聞いていた、それより娘の事があって。最近気苦労があった……。シンクの変わらぬ様子に。安堵と。嬉しさにが滲む。

「分かりました。祖父に伝えてきます。シンク様。奥の特別室を。お使い下さい」

意味ありげな眼差しを受け。ランドの心遣いに、甘えることにした。

「はい。ありがとうございます」

奥から前掛けした女性を呼んで、案内され。二人は、二階にある。豪奢な部屋に案内された。




━━━まるで、別世界……、広い個室に、回転台のある。朱色のテーブルが、中央に置かれてるだけで。後は椅子が僅か、四脚、ガランとした広い部屋は、妙に物悲しい印象を与えた。

「特別室と言われて、緊張して入ったら。ガランとしてるから、驚くよね~」ずばり核心を突かれ。素直に頷いていた、

「僕もそうだったんだけど、この部屋には、特別な魔法のカラクリが、仕掛けられてるんだよ♪」

女性に合図すると、四方にあったカーテンを。次々開いてくと……、

「えっ……、うわぁ~!!。……綺麗………」

カーテンが、開けられた瞬間。部屋の中が、一瞬で……、雪景色に変わっていた。

これは四方に仕掛けられたロスト魔法の技術。万華鏡をログ爺が所有していて、父とケイタさんが、苦心してメンテナンスした装置だ。リアジェクターと呼ばれる古代のアイテムが、光に反応して、動き出したからの変化だ。ケイタさんの娘フレア先輩が、まさか万華鏡の魔法を修得してるとは思わなかったが……、


一面の白銀の世界に変わった部屋の中と。リアジェクターが見せる。外の景色のあまりの美しさに。ため息を漏らした。

「今日は、氷を使った料理なんですね?」

「はい。そう聞いてます」

頭を下げ、女性が退出した。

「間もなく。料理が運ばれるから。フレイミ座ろうか?」

「あっ、はい」

飽きもせず。一心不乱に雪景色を眺めてたフレイミは、シンクに椅子を引いてもらい着席して、シンクが座ったのを、見図るように。ノックがされ。料理が次々運ばれてきた。ついでランドさんが入室して、飲み物をサービスしてから。一つ一つ料理の説明・解説を始める。

「氷の器に入ってるのは、玉ねぎとジャガイモの冷製スープ」氷で水鳥を彫刻した器に、黄金色のスープが、入っていた。

「前菜は三種、木耳と玉子の炒め物。モヤシと自家製ハムの酢の物。塩茹で鶏肉と野菜のサラダ」

鮮やかな赤い器は、一つの器が果物を模した作りになっていて、三種の前菜が上品に。飾られていた。

「メインの魚料理は、蒸し魚の甘酢餡掛け。肉料理は、牛タンの味噌煮込み」

暖かな二品意外は、冷たい料理が多く。また温度差を楽しむ趣向だと説明され。ただ感心するばかりである。

「お食事は、特性冷麺。デザートは氷菓子でございます」

「こんな時間にお手数おかけしました。ありがとうございます」

「いえいえ祖父もシンク様に。この特別メニューを、早く食べさせたいと、やきもきしておりました。今裏で、最後の冷麺と氷菓子の準備が終われば、挨拶に来るでしょう。お嬢様、我がリーブル酒家。最高の料理堪能下さい」

深々一礼して、ランドは退出した。

「早速食べようか?」

「はっはい……」

やや緊張しながらも。見たことの無い料理に目が輝いた。




白磁器の器に。スープをよそい。フレイミに渡した、蓮華と呼ばれる。変わった形のスプーンで掬い。あむっと一口。ゴックン……、




最初ひんやりした口当たりだったが、しゃりしゃりした氷の歯触り。じっくり炒めた玉ねぎの甘味、濃厚なジャガイモの旨味が、口内に広がった。「……美味しい」

甘い吐息を吐いていた。



━━あれは、トーナメント三回戦を無事勝ち進み。先週のコーディネートコンテストが、終わってすぐ。朝練を終えたフレイミを呼び止め突然、

「フレイミ♪。今週の休み。約束のデートしようか」

息が止まるかと思った、同時に嬉しさが込み上がる。

「何処か、行きたい所とかあるかな?」

そう聞かれ、困ってしまった。だから何気なく。 「美味しい物が食べたいです……。私料理も得意なので、覚えて弟に作ってあげたいから」

恥ずかしそうに話した。しかしシンクは笑わず真剣な面持ちで、

「明後日の朝。中央公園の南口で、待ち合わせしようか」

「あっ、はい」そして……、一生入ることもないような。貴族が通う名店。リーブル酒家で、気になる男……。シンクと二人で、デートするなんて、ドキドキが止まらない。




デザートの氷菓子を堪能して、間もなく。白髪の老人が、背を伸ばし、かくしゃくと歩き、特別室に入ってきた。シンクは素早く立ち上がり。右手をテーブルに置いて。

「ログ老師。特別料理堪能させていただきました」

軽く会釈した。細い目をクシャリとした老人は、孫を見るような優しい笑みが、ニコニコさらに深まる。老人とは初めて会うが、柔らかく優しい印象を与える。変わってるのは、編み込んだ長い髪を。首に巻き付ける。不思議な出で立ちだし。服装もアレイク王国で珍しい。男性のダナイ民族衣装と相まって、舞踊家か、武術家のような印象を与える。

「ようやく来たな。元気そうでなによりだ。さて早速で済まないが、何がコースに足りないと思う?」

唐突だった。性急な物言いに、立ち上がりかけたフレイミは、困ってしまった。

「老師その前に、彼女はガールフレンドのノノフレイミ・ラネスさん」

「あっあの~今日は……」

シンクに言われ、ようやく気が付き。ばつが悪そうに、目をしばたき。苦笑しなから。癖なのか真っ白い髭をしごく。ゆっくり頭を下げ。

「お嬢ちゃん済まなんだ……、わしはログ。皆からログ爺と呼ばれとる。よろしくな」料理以外の事だと、柔和で人当たりの良い老人である。

「いっいえ。大丈夫ですよ。私も料理大好きですから♪」

そう気を使われ。照れ臭そうに笑みを深めた。

「そう言ってもらえると助かる。急いて済まないが、来週元国王夫妻が、来店なさるでな。なるべく涼をとりなおかつ冷えすぎないよう。考えておる」

ひとしきり話を聞いて、 元国王夫妻の好みを思い出していた。

「ログ老師、氷菓子では、少し物足りない印象を受けました。またレイダ様は、冷え性があると聞きます。温かいスープの用意か。メインの肉料理を。辛みの強い煮込みにして。最後に今流行りのアイスを用いた。新しいデザートはどうでしょうか?」ピタリ髭をしごく手が止まった。

「ほ~うほう、なるほどの~。確かにレイダ様は、辛い物を好まれていたな。それを食べられた方が。冷たい冷麺、デザートが生きるって物だな~」

「はい。伯母さんから聞いたのですが、ブルーの姉妹店で最近。アイスクリームと言う冷たい御菓子を出すそうで、王妃様と連れだって、こっそり食べてたそうです。レイダ様は、いたく気に入ってると聞きます。確かダナイ料理に、冷えても固くならないお餅がありましたよね?」

ポンと手を叩き、目をキラキラさせて。ウムウム何度も頷き。なるほどと呟いた。

「ギュウヒかね。わしも一度アイスクリームを食べたが、面白い発想だと感心した。ウムウム悪くないな~ギュウヒにアイスクリームを包んで出すか、早速試作をするかの~、シンクやいわしは忙しい。また遊びに来るがいいぞ」

「はい老師。料理の成功を楽しみにしてます」

愉しげに笑いながら、ログ老師はスタスタ出ていった。




入れ替わるようにランドさんが入って来て、にこやかに笑いながら、

「いや~シンク様、正直助かったよ。ログ爺は、一度料理人のスイッチが入ると。とことん突き詰めなきゃ止まらない。周りは大変だったんだ~」

大きな店も大変なんだな~と。妙な感心をした、



それから二人で楽しい時間を過ごし、シンクがマイトにって、お土産を用意してくれ、遅くなる前に。リーブル酒家を後にした。

それからシンクに連れられ。普段あまり行かない。東通りの一本裏に入る通りに。問屋が並んでいて。初めて見る異国の品々に。驚きが隠せない。「王都に住んでましたが、こんなところあったんですね……」

「はい、もっとも僕の場合は、マサユキさんの影響で、必ず商店の様子を見るんですよ」

気恥ずかしげに笑うから、どうしてかな?と思ってると。

「僕は王族ですから、商店の品揃え、賑わいを見て、民の暮らしを間近に見なくては、『政治をする上で、後手に回ってしまいますぞ王子』って、口にリコの実を大量に食べされられるくらい聞かされました……」

「まあ~リコの実を……、今のフフフマサユキさんの口まねですか?」

楽しそうに笑う顔は、可愛らしくて。一瞬みとれた。



長く王都に住んでるが、シンクはフレイミの知らないことを教えてくれる。なによりシンクの巧みな話術に。時が過ぎるのも忘れて、楽しんでいた。

「シンクさん今日楽しかったです♪、またその……」

やはり自分なんか……、落ち込みそうになっていると。

「僕も楽しかったよ。また良かったらデートしてくれるかな?」

パッと顔を輝かせ、嬉しそうに微笑み。

「はい!!」

素直に返事をしていた。




━━数日前……、レイラグループの準決勝進出を決めた。トーナメント戦を見ていたリルムとエルマは、ついにその時が来たと感じた。

「レイラの話では、私達の対戦で、シンクを。総合武術戦に出すそうよ」

エルマにだけ伝えていた。

「お嬢……、宜しいのですか?」

不満を浮かべたエルマ、リルムの気持ちを理解してだろう。常々シンクを倒し夫とするのが夢だと、エルマにだけ伝えてあったから、レイラは言った。

『今のシンに……、彼に。敗北が必要だとおもうの』

レイラには、それが可能だと言う。エルマには悪いが、それは面白いと思っていた。それにリルムも今のシンクは、危うい気がした。




リルムは元来。先見性は高いが、策略を苦手とし。正攻法を好むリルムには、考えもしなかった方法。手段、それこそがシンクや自分にない才能で、彼が王になった時。必ず必要になる人材。



さらにレイラは、シンクの側にいる。皆の才を引き出し。自分たちの隠された能力を見極める。その為の手段として、トーナメントを開催させたと。二人にだけ告げていた。それはリルムをただ1人。生涯のライバルと見てると。宣言したに等しい。

「良いわ貴女と私。どちらが……、よりシンクに相応しいか、存分に戦いましょレイラ!」

美し過ぎる。魔王の愛娘は、楽しそうに微笑み。エルマを戦々恐々させた。


……リルムは楽しくて仕方なかった。自分をこれ程。恐れさせ。憔悴させ。またドキドキさせれる相手に恵まれたこと、神に感謝すらした。





━━トーナメント準決勝。




先週から。今日と言う日を待ちわびた学生達は、試験の結果に浮き沈みしてたのが、嘘のようにトーナメント準決勝の話題で、昼休みは持ちきりとなっていた━━。



優勝候補魔王の愛娘リルムが率いる。四人は、何れも名を知られる強豪で将来は、有望視される重鎮の子女・子息ばかり。あの伝説のミザイナ部隊に匹敵するのでは?と。噂されるのは、

二年クルミ・アルタイルが、チームにいるからだろう。彼女こそ。ファレイナ公国。剣姫に選ばれし。瞬撃の剣豪とあだ名されるは。あのミザイナ女王の娘。母と違い大剣の使い手であるが、昨年の『総合武術大会』優勝。今年はシンクに負けたが、準優勝と、実力は学園有数の剣士と折り紙つきだ。二年エルマ・ロドラ、父はあの英雄ギラム・ロドラのご息女であり、男装する姿が、あまりに格好良いから。女性から男装の麗人と、秘かに呼ばれている。また学業も学年トップクラスであり。リルムの片腕として、有名である。




二年ミル・ダルフォン・カーリア、曾祖父は、あの聖人アレク。弟子の1人で、アレイク王国建国に貢献した重鎮で。

ダルフォン家は、アレイク王国有数の忠臣と知られていた。ミルはただ1人の後継者で、『オールラウンダー』候補四天王最強と呼び名がある。



三年ローザ・リナイゼフ、華の国ダナイの将軍家に仕えてた。剣豪と呼ばれる。黒剣の技術を、一子相伝で伝える一族であった、しかし……中央事件の時。

華の国ダナイは滅ぼされた。ローザは1人アレイク王国に移り住み。『オールラウンダー』候補四天王にまで登り詰めた。しかし……。最近かなりの天然さんであると知られ。豊満な胸を。強調する服を着るようになって。周囲の目は変わった、特に男子生徒から欲望の眼差しを、女性徒からは、羨望の眼差しを受けていた。



対するはレイラチームの五人も、リルムチームに匹敵する強者ばかり、リーダーであるレイラの兄は、あの『オールラウンダー』カレイラ・バレスの。実の妹であるレイラ・バレス率いる。一年グループだ。



一年フィア・ガイロン『学年戦争』で将軍に選ばれた。文武に優れた女性で、父は近衛連隊長ヴァレ・カルバン、母はガイロン騎士団長、クエナ・ガイロン、父の祖父はあの英雄ヴァレ・オーダイ将軍である。



一年ヒナエ・バウスタン、『学年ランキング前期』優勝、体術のバウスタン流道場の娘で、父は近衛連隊長の1人。ブルー・ファミイユ。



一年ノノフレイミ・ラネス。ヒナエ、フィアと同じ部隊の1人で、本人は場違いだと感じてるようだ、



一年シンク・ハウチューデン、父は英雄王オーラル・ハウチューデン、今年の『総合武術大会』優勝。学年で1人選ばれる。観察官として、日々多忙だ、一方で、王族でありながら気さくな性格で、何事も真面目にこなし。時にユーモラスに。時に厳しく接し。同級生や先生を手助けするため。学生らしくないスケールの大きさに。学生処か……、一部の先生から。尊敬を集めている。さらに夏休みのセンセーショナルな事件は……、記憶に新しい。だが全く変わらないシンクに、多くの女性徒が好意を抱く。




━━午前中の授業も終わり、昼食も早々に。生徒達は、我先に。観覧席に向かう。少しでも良い席をとるためだ。




魔法投影ターフビジョンに。間もなく対戦表が出されるなか、トーナメントから。閑古鳥なくなくだふ屋も。この時ばかりは、優勝候補2チームの解説付き。新聞を作り。僅かな収入を得ていた。




金髪を後ろな束ね。ほっそりした面立ちのレイラは、オーダーを書いた用紙を手に、薄く唇を噛んで、トクトクと高鳴る心臓を掴むよう。服をギュッと握る。

「きっと大丈夫……、勝って、私のデートを。楽しい物にしてみせる!」

決意を新たに。表情を引き締めた。




━━両チームからオーダーが申し込まれ。ついに対戦が発表された、



総合武術戦、

シンク・ハウチューデンVS

ミル・ダルフォン・カーリア


魔導兵戦

レイラ・バレス

VS

エルマ・ロドラ



マラソン

ヒナエ・バウスタン

VS

ローザ・リナイゼフ



クイズ

ノノフレイミ・ラネス

VS

リルム・アオザ・パルストア



魔物討伐

フィア・ガイロン

VS

クルミ・アルタイル



一部予想外の対戦に。ざわめきと同時に。興味深いとあっちこっち。話題に花が咲いた。



「ミル。遂に貴方の出番が来たわ。みんなに見せなさい、貴方の本当の実力を」

今日は帽子を深々被ってたミル。寝癖がなかなか治らず仕方なくだ。本当はいまいち気乗りしないが、鼻息荒い栗鼠の月に。ミルはため息混じりに。苦笑滲ませる。

「まあ~約束だし、期待以上のあのシンクとの戦い。楽しむさ~」

不敵に笑っていた。もう一匹の相棒光が、嘆息したように首を傾げた。



━━それぞれの思惑が交差する。トーナメント準決勝は、一枚の切符を賭けて、優勝候補が激突する……。



『ただいまより。トーナメント準決勝、二回戦を行います。総合武術戦に参加の生徒は、コロッセオ入り口に集まり下さい』

アナウンスが流れ。それぞれシンクとミルは、巨大な建造物。コロッセオの入り口前にある。アーチにやって来る。総合武術戦は、コロッセオ内に設置された、林の中に、演舞場が用意されていた。無言で見合うミルとシンク、二人は目を合わせた瞬間。不思議な感覚に襲われていた。


粟立つように。ゾクゾクした。寒気に似た高揚感、今まで感じたことない感覚に、ミルは我知らず。頬が緩む。



対して、シンクも得たいの分からない怖さを予感して、表情が険しくなった。

一方で━━、



観覧席で、別のざわめきが起こった……、

『マラソン勝負に参加する生徒は、コロッセオ入り口前に、集まり下さい』

画面が、コロッセオ入り口前に変わり。主に男子生徒は、食い入るように画面を見上げ、ざわめきを上げた、何故か革製のぴっちりした胴着を着た。ヒナエ・バウスタン、妖艶な空気を纏い。目元の泣き黒子が、チラリカメラ目線になるや扇情的な眼差しと。豊かなバストが揺れるたび。前屈みになる生徒が多い。対戦相手のローザ・リナイゼフが、また凄まじい……。元々着痩せするローザだが、レイラに言われて、恥ずかしいが、約束で仕方なく。ぴっちりしたシャツを着ていた、元々剣の邪魔になるからと、下に巻いてたサラシが無いから、豊かなバストが、シャツを押し上げ、真っ白いお腹を露出させ。ちらりとへそが見えそうで、見えないチラリズムが。ターフ画面に。アップで現れた。ざわめきだった。二人の破壊力は凄まじく。違う意味で固唾を飲んだ。



『魔導兵戦に参加する生徒は、コロッセオ入り口前に集まり下さい』

こちらも好カード、英雄の子女。救国の英雄の妹と言う。面白い一戦である。レイラ・バレスとエルマ・ロドラは、お互い笑みを称え。馬車の上で握手してる姿が、ターフビジョンに映された。



打って変わり美し過ぎる女生徒リルム・アオザ・パルストアが、ターフビジョンに現れるや。男女問わず。溜め息が漏れた。



まさに舞い降りた氷の女神。白銀の髪と相まって、神々しい美しさを醸し出す。だから余計に彼女の格・技量・容姿とくらべ、対戦相手は見るから見劣る。

彼女がなぜレイラチームなのか、疑問を口にする生徒も多い。ノノフレイミ・ラネスとの対戦……、ほとんどの学生達が、リルムの圧勝だろうと誰もが考えていた。


当然━━先見のある。リルムもそう考え。レイラが消化試合に。彼女を選んだと思い。レイラに失望していた。

「よっ、よろしくお願いします」チラリ冷たい眼差しを。フレイミに向け。

「貴女……、シンクとデートしたそうね?、勘違いしないでね。貴女程度が、彼の側にいること、私は許せないの」

「……あっ、ヒッ……」ギロリと冷たい眼差し。氷の刃を突き付けられたような殺気を。まともに受け、冷水を浴びたように真っ白になっていた。

「何故レイラ程の者が、私との対戦に。この程度の女を選んだのか……」颯爽と先生の元に向かうリルム。捨て置かれたフレイミは、グッと唇を噛み締め。ふつふつ沸き上がる怒りに。産まれて初めて、負けたくないと思った。

「……けない……」



準備に時間が掛かる。魔物討伐戦参加する。クルミ・アルタイルは、眉をひそめ。

「リルム……、油断すると、足元掬われるわよ?」

最近朝練を共にしていたクルミは、フレイミの隠された才能に、気が付いていた。

「そうだよね。フレイミの実力は、意外性だもの」

同意したフィア・ガイロンもまさか、あんな能力があるとは考えてなかった、シンクから沢山のこと学び、レイラが引き出した。彼女の才能━━。それは普通の試合いや。競技。また生活では無用な長物。だけど……、ある条件を付けるならば、例えばトーナメントのクイズのような……、間違いなくリルムに比肩しうる才である。二人の様子に。複雑な顔をしながら。自分たちの競技時間も刻一刻と、迫っていた。



━━6日後……、

激闘が続いた。トーナメント準決勝が終わり、昨夜から。部屋の片付けに奔走していたレイラは、婆やに手伝ってもらい。彼を急に家に招く毎になった経緯を思い出して、嘆息していた。

「あれからもう6日……、あんなに怖くて、楽しかったの……、初めてだったな……」

鏡台の中に写る。ほっそりした面立ちのレイラは、化粧を施された自分の顔を、不思議な面立ちで見ていた。



━━この間。一般生徒達のイベントがあった、服飾関連、服飾デザイナー、カットデザイナー、モデルを夢見る少年少女達。その中の1人モレン・カルメン・オードリーとの出会い。シンクに頼まれて手伝いをした。ご褒美に。1日シンクとデートが出来ることになり。レイラの番だったのだが……、母が何処で聞いたのか……、強固に訴えた。

「レイラ。彼を食事に誘いなさい♪」

「おいおいマリア。それは幾らなんでも……」

母に睨まれ。口をつぐむ父。仕方なくシンクに悪いと思ったが、家に来てもらうことになった。

「はあ~………」

潤んだ瞳。赤みが差してる頬、胸に手をやれば、トクットクトク高鳴っていた。





━━6日前……、


トーナメント準決勝。



総合武術戦━━、



シンク・ハウチューデンは、得意の棍、ミルはダルフォン家、代名詞の細剣。レイピアより剣幅がある。カトラスと呼ばれる。刺突に向いた武器である。しかしカトラスは、レイピアと違い。斬り合う前提の防御力の高い武器で、相手の隙を狙う戦術を得意としている。開始早々シンクに異変が起こった。急激に自分の手足が重くなった感じがした。

「これは?……」

「先に言っとく。今君に起こった現象は、魔法じゃないからな」

不敵に微笑しながら、軽やかな手捌きで、カトラスを操る。



「魔法じゃない?……」手足に重りを付けられた感じだ。軽く棍を操った。自分の能力が、無理やり半減させられた。そう……水中で。戦うような感覚に近いか、

しかし……。シンクとて様々な経験則がある。どのような状況だろうと、負けるつもりはない。軸を作り。歩方による円を描くステップを用いて、多方向から迫る刺突。切り返しての斬撃。紙一重でかわしたとみるや。円の起動にあわせて、払い、切り上げ、鋭い蹴りを放つ、シンクは咄嗟に全ていなし。蹴りを棍で受け。その勢いを使って、鋭い一撃を見舞った。

「おっと危ない。流石だね~。僕を守る過度な`女神達の祝福を(呪い)´間近で受け。それだけ動けるとは♪、いいね~いいよ君!!」

楽しげに笑い。興奮するミルが、シンクにさらに迫った瞬間、バチリ肌がビリビリしたような静電気が走る。それは経験のない感覚だった。それ以上に。このままでは劣勢だ。

「そうか……、これは恐らく人間が、聖遺物化してる……、クス」

静かに微笑したシンク、ミルまで嬉しくなっていた。



━━マラソン勝負が始まるや。観覧席に。別種の熱気がこもり。主に男子生徒の興奮したざわめきが上がる。



━━たゆむ胸……。ゆっさゆっさ上下に揺れ。形を変える胸エロさに……。


やはりと言うべきか、男生徒だけ大興奮。女生徒は、気恥ずかしい気持ちで、何と無く画面から目を反らし。男子生徒を恨めしげに睨む。二人で観覧に来てる生徒も多く。意中の相手に睨まれ。たじろぐ男子生徒が、多かったらしい……。



━━━激戦が、予想される。魔導兵戦は……、その予想すら越えた激闘が、繰り広げた。二人の技量に差はない。



もしも━━二人の戦いが、夏休み前だったら……。エルマの方が、僅かだが上だった。夏休みの間に。恐るべし成長を遂げた事実に……舌を巻いた。


レイラが槍の技量を飛躍的に上げ、また様々な策謀すら。廻らせることもなかった筈だ。全ては友人のヒナエが、何気なく誘ってくれなかったら、フィアが気楽に了承してくれなかったら……、ガイロン家所領の町フローゼで、過ごす毎になった、



トーナメントの構想したのは、かなり前から出来ていた、足りないのは準備期間とキャスト。卒業まで時間を掛け可能か?、気掛かりな理由もあった。それが……、前倒ししてまで、あらゆる想定を満たし。学園側に利益をもたらせる理由を見つけ出すきっかけ。さらにエドナ学園長に認めさせた経緯は、シンクが観察官になったから気付き、ローザの暴走で、魔物討伐に行くことになった出来で培った。経験から、マラソン、クイズ、魔物討伐戦を思い付いた。野外授業での出会いから。シンクと朝練に参加するようになっていたレイラの。根幹を見抜き。変えてしまった男━━。



こんなにも愛してしまった彼が、自分を動かした理由だ……、



今まで非力なレイラは、二本の細剣を用いた戦法と、霧の幻影魔法を得意とする。頭を使う戦法を得意とし。敏捷さのある女性ならでは、特性を生かして戦って来た。だが……常に、細い糸を手繰るよう細心の注意と研究に苦心したが、お陰様で僅か数日。入学したての一年生でありながら『オールラウンダー』候補四天王になった。



━━でも、彼……シンクと出会い。全てが変わった。彼は自分ですら気が付かない。フレイミの僅かな誤差を修正させ。誰も気付かなかった、散髪と言う才を見抜いていた。さらにあのクルミに。剣士として、新たなステージに。引き上げた才覚は、生まれついての王だった……。




そして……、自分が秘密にして、隠していた思いを。あっさり見抜き。丸裸にされたあの日から……。気が付いた。自分が無理をしていたことに……、レイラの機体が、手にしたのは、槍だった……。

「レイラ……。君も。槍の訓練しない?」

ノノフレイミの出来事の後だけに。何かあるのか、首を傾げた。優しい大好きな真摯な眼差しに。頬が熱くなる。

「シンクが言うなら……」不承不承と行った当初で了承した。元々レイラは、シンク程ではないが、槍、棒術もそつなくこなせた。



━━数日。シンクから槍の手解きをされ。不思議なことだが。妙にしっくりきたのだ。

「やっぱり!。レイラは、槍でこそ才が生きるね」

いきなり手を握られ。見詰められたら……、どぎまぎしたレイラをクルミが睨む。内心苦笑した。


今まで無理して、剣を得意武器だと思おうとしていた。シンクは見抜いた、悩んだこともある。リルムに一瞬で負け、フィアには全くかなわなかった戦法を。これからも使ってて良いのか?、

「レイラは今まで、捨て身の攻撃で、どうにか勝ってきたみたいだけど、槍なら僕以上になれるよ!」一点の曇りもないキラキラした眼差しで、絶賛されてしまい。不覚にもシンクが言うならと。今まででは考えられないほど安易に。槍を受け入れていた。

「そっ、そうかな……シン?」

不安が頭をもたげた。真っ直ぐそんな気持ちすら撃ち抜くよう。晴れやかに笑いながら。

「レイラ君なら、僕の槍の師である。ロートの技を全て、体現出来るだけの素養がある。だから僕を信じてくれるなら、僕が知る。ロートの技を全て教える」


夏休みまでのほんの一月。シンクとマンツーマンで、沢山の技を学び、まるで水を得た魚だと、フィアにからかわれるほど、あっという間に腕が上がって……、焼き餅焼いたクルミに。鼻で笑われてしまった。



それから意識が変わった、……毎日。暇を見付けては、身体に染み込ませるよう。訓練に打ち込んだ、すると今まで抱えていた不安、苦痛が、何時の間にか消えていた。

『まさか……、貴女がこれ程の槍の使い手になっていようとは、クスクス騙されたわ……、いい意味で』

晴れやかな念話が、入ってきた……。学年ランキングから。導入された。通信システムである。

『ありがとう……、私も気付かなかったんだ、シンが引き出してくれた槍の才。きっと貴女達を倒し。シンクにお礼として。見せたいの』

『ほ~う……、そうだったか……、ふふなるほど……、だから貴殿は、わざとお嬢を怒らせて、この組み合わせにするよう。仕向けたのか……』

顔が見えないから。表情は分からないが、念話から想像出来た。きっと不敵に微笑むか、好戦的な顔で。微笑しているに違いない。エルマの実力は、レイラの想像以上で、いかに今は、実力が拮抗しようと。体力差は顕著である。

『行くぞ!』

魔導兵を操る人間によりイメージは異なるが、エルマが操る魔導兵は、華麗な佇まいをしていた。そう……あの英雄ギラム殿は、長剣と幻術の使い手である。エルマも長剣を。得意としていた。夏休み前から。何度か朝練で、供に汗を流していた。実力は分かってるつもりだった……。



鋭い斬撃をいなした瞬間。長剣を生かした。変則的な軌道から、胴払いが 繰り出された。レイラは何とか、槍のたわみを使って受けた瞬間━━。



『ぐっ!』

想像以上の破壊力に、腕の駆動部が、悲鳴を上げた、咄嗟に力を逃がすため。後ろに飛んだレイラ、エルマは追撃しようと膝を溜めた瞬間。嫌な予感がして、その場で待機した、

『……強い……』

追撃してきたら。カウンターを放つよう考えてた。しかしエルマは追撃に来なかった。

━━小さく嘆息して、レイラは苦笑していた、



エルマと言う人物は、堅実な剣士だと。勝手に考えていた、しかし実際はどうだ?。変幻自在にその場その場で対応。手段を変えてくる懐の深さ。攻めるにも。守るにもやりにくい……。



対して、エルマの方も攻めあぐねていた。まさか僅か数ヶ月で、これ程の槍の使い手になっていたとは……、舌を巻いていた。


だからと言って、後手に回る訳には行かない。体力に不安があるレイラも。がむしゃらだろうが、仕掛けるしかなかった。僅かな溜めを作って、放たれた矢の如く。槍が伸びてきた。



長剣で受け流したが、激突で火花散る。


体勢を崩されたエルマに。レイラの機体が、一瞬止まったように見えたが、突発的にクルリ槍を回転させた。



エルマから視覚になって、まったく見えなかったが……、レイラは槍の柄を蹴って凄まじい斬撃を放った。エルマは咄嗟に出した長剣が受けたが、たまたまだ……、凄まじい斬撃をまともに剣で受けた。『グッ……』

これが実践なら、腕が痺れた筈だ、こんな強力な一撃。以前のレイラにはなかった技だ。



受けられたと見るや。斬撃の勢いを。上手く使い。槍を軸に。突発的な軽く押すような。軽い飛び蹴りが見舞われ、まともに喰らい。バランスを崩し……、

『しまった!!』

意外過ぎて慌てた、だがそれが余計大きなスキを生んだ。あっさりエルマは討ち取られたのである。

『勝者レイラ・バレス』 高らかに勝者の名が告げられ。レイラは安堵の吐息を吐いていた。





『魔物討伐に参加生徒は、コロッセオ入り口に集まり下さい』

クルミ、フィアはお互いの顔を見合せ、不敵に笑いあっていた。




━━熱線が、繰り広げられるマラソン勝負は、後半に入ったが、男子生徒の熱い眼差しは、二人に釘付けである。先手を奪ったローザ、絶妙なスタミナ配分で、一度もヒナエを抜かせず。逆にヒナエのスタミナを強弱を付けたランで奪い。苦境に立たされていた。はやくも酸欠気味に喘ぎ。痛む横っ腹。足がつりそうで。こんなに早く体力がなくなるなんて。呻いていた。



何処か、楽観視していたヒナエには無く。ローザにあったのは、様々な経験値。ローザにとってマラソンは、日課であり。得意な訓練で、長距離を走るのは苦ではない。それどころか、何処までも走れる。余裕のあったステイヤータイプ、対してヒナエは、スピードを生かして戦う。短距離を得意とするスプリンターだった。





━━『マラソン勝負。勝者ローザ・リナイゼフ』


まさに一進一退。優勝候補同士の戦いに相応しい。オープニングである。



━━が……、



予想外な展開を見せたのが、 クイズであった。先見性の高い魔王の愛娘リルムが、劣勢に立たされていたのだ……。あの沈着冷静で、知られた彼女が……、

「まっ、待ちなさい!」 足元を掬われ。顔面蒼白になり。血の気を失いながら、ノノフレイミを追う姿に。誰もが息を飲んだ。




━━針の穴に。矢を通すような。突発的な出来事。


━━リルムには、そう思えた。


しかし……、全てが、フレイミの策略だと理解したのは、全てが終わろうとした今。この時。唇を噛み。自分の不甲斐なさに。血の気を失い。茫然自失とした。



━━競技が始まり。当然の如く。リルムが持ち前の先見性を遺憾無く発揮して。フレイミを出し抜いた。そう……、誰もが思った。リルムだってそう思い。内心せせら笑っていた。



━━まさに油断だった。フレイミを馬鹿にしたために起きた油断━━。


本当に……、些細で、馬鹿馬鹿しい子供染みた。簡単な罠にはまる。草を編み込んだあんな罠に……、リルムは会場に戻る途中。いきなり右足をとられ。顔から転けた、咄嗟に右手の答えの入った、アイテムを放り出し。痛みに顔を歪めた。

「痛い……、何?、何事?」

足元を見て、ハッとして、辺りを見ると、至るところに、同じようなブービートラップが散乱していた、ハッと身を固くした。僅か瞬きする程度の隙を。フレイミは見逃さず。クイズの答えである。一枚の飾り布が入った袋を奪われた、

「しまった……」

フレイミは、素早く方向転嫁して。遁走した。

「やってくれるわね!」 怒りに燃えたリルムは、直ちに獲物を狩るべく。立ち上がろうとしたが、「あっあれ?」

自分の衣服が、引っ張られる違和感に、服を見るや珍味な顔をする。何らかの草の種だろうか?、服にビッシリくっつく。種をつまみ。手にして、

「何ですのこれ?」嫌そうに、くっつく種を外してたら、どんどんフレイミとの差が離されてると気付いて、でも服がこんなんで、テンション下がりぎみだ。でも……今は、勝負の真っ最中だと自分に言い聞かせた……。



だが……、

それこそが罠だったと気が付いた時。自分の浅はかさに。顔面蒼白になっていた……。



フレイミの最大の才能は、類い稀な空間把握能力だった。いかにリルムが、優秀な弓の使い手だろうと、あのオウダイ将軍の弟子だろうが、実際の狩りを経験していない事実と。動植物に詳しくない事が、追跡と言う。あまり縁の無い作業の経験不足を露呈した。




通称引っ付き虫と呼ばれる種には、一瞬独特な匂いがある。リルムは知らなかったが、ある程度離れた位置にいる動物にとって甘い香りに感じられ。人間には、ハッカを微かに嗅いだような香りがする。その範囲200m、フレイミにとって、馴染み深い匂いは、子供の頃から。何処に逃げれば、確実に逃げ出せると、分かる指針になるのだ。



フレイミにはもう一つ。何故か、どちらににげればいいか、分かっていた。それが空間把握能力だと教えたのが、レイラで、一回戦を勝利した直後だった。

『貴女のその才があれば、防衛戦、敗戦で、仲間を救う力になるわ。特別な才能ですノン』

『わっ私に。そんな才能が……』

弓の才能だけを、信じていたフレイミにとって、驚きと同時に。純粋に嬉しかった。散髪とかは、仕方なく覚えた技術に過ぎなかった。そんな私にも隠れた才能がある。

『貴女の才能こそ。唯一魔王の愛娘リルムに一矢報いれる競技で。無くてはならない才です』

きっぱり言われ……、本当に嬉しかった。自分が変わったと思ったのは、やはりあれからだったと感じていた。



最後までリルムに。影すら踏ませね完勝劇に。誰もが口を閉ざし。呆然とした。

『クイズ勝者ノノフレイミ・ラネス!!』

うっ、ウォオオオオ!!



観覧席が爆発した。そう思わせるほどの大歓声。リルムは自分が、とんでもない勘違いをしていたと。悟った……、

「知ってたはずだったのに……」

悔しかった。




「ノノフレイミ・ラネス!?」

勝利の余韻に浸っていたフレイミの身体が、ビクリ震えた。鋭い眼差し。美しすぎるリルムの真剣な顔に。息を飲んだ。 「……ごめんなさいフレイミ。貴女のこと侮ってた。素直に謝ります」

銀髪が宙に舞い。素直に頭を下げたリルムの後頭部を、びっくりして見ていたら。顔を上げた瞬間。リルムの顔に見とれていた。滅多に見せる事がない。嬉しそうなキラキラした笑みを前に。同性と分かっていてもドキドキした。

「あっありがとうございます。そっそのリルムさんさえ良かったら。友達が呼ぶように。ノンと呼んでくれると、嬉しいです♪」屈託なく笑えるフレイミの笑顔は、気弱な印象と異なり。強さが見受けられ。負けた今だから、気が付いたこと、油断の出来ない相手だったと。苦い気持ちが、胸中に広がっていた。

「ありがとうノン。私のことリルムと呼ぶこと。貴女には、許しますわ」

艶やかにさらりと告げ柔らかく笑う。リルムは認めた相手にだけ。称賛の笑みを向ける。それと同時にライバルとして、挑むような眼差を向け、

「ノン今度は、弓の勝負もしましょうね」

「はっ、はい!」

不敵に言ってのけ。新しいライバルの答えを聞き。満足そうに笑いながら、颯爽と立ち去るリルム、やはり王の風格を備えていた。





もうひとつ……。

予想外だったのが、総合武術戦。膠着状態が続いていた。


一進一退。実力では明らかにシンクの力量が、上回ってた筈だが、時間と共に……。ミルが圧していた。しかし……流石と言うべきか、技の引き出しの多彩さに。ミルはただただ舌を巻いていた。対してシンクの方は、これほど面白い能力で、苦戦したことが無かった。それ故達成感と、妙な楽しさを味わっていた。



構えていた棍棒の柄になる部分を蹴りだし。鋭い刺突の一撃を繰り出した。これはロートが得意とする槍の技で、蹴りだしと言う発射台から、近距離から手を支点に。凄まじい速さの弓矢を。間近で食らう威力をもたらせる技で、



レイラは斬撃の技として用いてる。今では得意技としていた。寸での所で、カトラスのたわみを使い。一撃をいなしたミルは、シンクの横に回り込み。連続の刺突。四度までは防いだが、五度目は体制が崩されていて、間に合わず。左腕の付け根に食らい。痺れて。棍棒を落とした。さらに六度目の突きが、ピタリシンクの喉元に。突き付けられ。勝負が決した。

『総合武術戦。勝者ミル・ダルフォン・カーリア』

割れんばかりの歓声を受け。ミルが疲れきった顔を向け。歓声に答えた。



こうして、二勝二敗タイに持ち込んだリルムチーム、僅かに優勢だったが、タイに持ち込まれたレイラチーム。決着は魔物討伐に掛かっていた。



━━その事。競技に向かう二人は知らない。先手クルミで、後攻のフィアの方が、今までの傾向から、優勢になる。夏休み前まで、傭兵ギルドとして使われていた、神殿だが、様相は一変していた。本格的なダンジョンとして、薄暗い通路を周囲に注意しながら、歩を進める。しっかりした足取り。ダンジョンでの危機管理能力が上がったのは、やはり夏休みフィア達と。モンスター退治に出かけた経験が、生きていると実感した。

「はぁっ!」

横合いから、不意を突いて来た攻撃を。見ることなくいなし。袈裟懸けに切り裂いた。一撃で、固い皮膚を持つ。ガーゴイルを粉砕し。素早く部屋の中に入ると、沢山の台座が、動き始めた。かなりの数のガーゴイルがいた。素早く視線を巡らせ。数を目視して、多数対1 にならない絶妙な間合いを生み出し。全て一撃でガーゴイルを殲滅して見せた。



━━次々と現れるモンスター、多種多様なバラエティーさに。いつしか競技であることすら忘れ。無心で、討伐に没頭していた。『クルミ・アルタイル殲滅成功。タイムは27分52秒』

今大会にて、殲滅成功したのは僅かに5名。うち三回成功したのは、シンクのみ。いずれも10分以内である。大剣の利点とマイナス点が、タイムロスに繋がった形だ。それに対して、フィアの獲物も。ポールアックスと呼ばれる長物である。後攻だがやや劣勢に思われた。




準備が整い。フィアが地下神殿に降りて行く、ターフビジョンに映る姿に、クルミはハッとしていた、フィアが手にしてる武器に。会場の誰もがおやっ?と、首を傾げた。右手にあったのは戦斧。左手に槍を持っていたからだ。一般的にあまり知られてないが、ガイロン重騎士団の武器であるポールアックスは、短い槍とバトルアックスに。分けて分解して使うことが、可能である。



それには様々な理由があったが……、現在では、持ち運びが楽だからと言われていた。ガイロン重騎士団の主な仕事の一つに。国内の防衛がある。時に迅速さが必要とされ。持ち運びが簡単な組み立て式にされたのは、あのナタク襲撃事件からであった。穂先を取り外し。バトルアックスの結合部分から。持ち手と外し。石突き部分に槍の穂先を着ければ、短い槍となる。ガイロン重騎士団では、こうした戦い形も当たり前のように行う。その事を思い出して、クルミは羨ましく思う。剣の国の剣姫だから、他の武器を使うことが、許されていないからだ。



そして……、




ついに決着した。



『魔物討伐殲滅成功。フィア・ガイロンのタイム。27分26秒……、よってフィア・ガイロンの勝利!』


その差……僅か26秒。武器の差が、はっきりと出た差である。食い入るようにリルムは画面を見上げ。悔いを残した。

「お嬢……申し訳ありません」沈鬱に頭をたれるエルマ。忠実な友に、思わず臍を噛んだ。エルマの悔しい気持ちが、手に取るように理解出来た。彼女を戒める事がもし……、リルムに出来ていたら……、二人の結果は違っていた。それだけレイラの作戦は、用意周到で、二人の心理すら手玉にとったと言う事実を。意味していた。

「悔しいですが、私達の完敗ですわ」

これは認めなければ、自分が先に進めない。そのこと深く理解していた。それに……。これ程見事な采配を見せた。ライバルの能力を見て、最早納得したのだ、彼女をシンクの伴侶候補の1人として、認める事を……。



シンクならば、何れ世界を一つに纏める。大王となる可能性が高い。ましてや広大な中央大陸を統べ。王となる身である。子孫は多いに越したことはない。恐らくレイラは、その事に。気が付いてのふるい分けだった気がした。そして貴婦人達の……長として、第1王妃として。頭が固く。嫉妬深いリルムに。理解させるトーナメントだったのだ。何十にも深い理由が隠された。此度のトーナメント、

「もしや……、もう一つの可能性に気が付いた、そう……、貴女はそこまでしてたのね」

敬愛するリルムの呟きに、エルマは戸惑ったように。目をしばたかせていた。



リルムが気が付いた。もう一つの可能性と、リルム達も気にした出来事がある。トーナメントで劇的に。立場を変えた者達。

「エルマお願いがあります。ノンと一緒に。元シャイナ部隊(噂の彼女達)のこと調べて下さい」

驚いたような顔のエルマに向け、ほろ苦く微笑みながら、

「彼女もまた。シンクの傍らに居なくてはならない。妻候補なのです」

「おっ、お嬢……」

嫉妬深いあのリルムが、他の女性がシンクに近付くこと許すとは、驚きが隠せない。

「貴女ならば、彼女と行動すれば、分かることでしょうが、今はだけど彼女の才は、諜報・調査活動でこそ発揮される。私にそれを理解させるための対戦だったのだから」

早くも頭を切り替えてるリルムの。切り替えの速さに。舌を巻きながら。信頼するリルムの頼みを。すぐさま叶えるべく動きだした。



辛勝とはいえ。見事リルムチームを下したフィア、ヒナエ、フレイミの顔に弾けんばかりの笑みがあった。チームの中心に立ったレイラは、シンクの真摯な……、それこそ信頼する眼差しを受け。心を震わせた。レイラは悟る。彼の信頼を勝ち取ったと。軽やかに微笑み。涙を拭った。



三年の観覧席に着いて、一部始終見ていた。元シャイナ部隊。

フィル・マノイ、

カノア・テレグシア、

メグ・ファノア、

ラグ・セレン、

サラ・ローガンの五人は、息を飲んでいた。目の前の事が、レイラの言った通りになったからだ。ここまで彼女の言うとりになって。もはや彼女の夢が、決して戯言では無いことが証明された。

「……フィル……」

フィル部隊になって、苦楽を供にした五人は、決意を新たに。頷きあった、トーナメント決勝は、来月の初め。今から7日後である。時間は限られ。自分達に足りない部分を補うため。それぞれが最善を尽くす。それこそ彼女……レイラに救われた。自分達に出来る。唯一の恩返しである。




波乱はあったが、優勝候補同士の戦いに。誰もが心踊らせ。一躍学園の有名人となった。ミル・ダルフォン・カーリアの立場が、一変した━━。


元々女神に愛された。祖先から受け継いだ。甘いマスクとあいまって。言い寄られる事が増えた。ミルにとって渋面物な出来事も。お目付け役の二匹には、喜ばしい限りである。元々聖アレイの弟子であり。アレイク王国有数の重鎮の家系。家柄良く。容姿端麗。さらに武勇に優れた男が、こんな直ぐ側にいたと。一部のお嬢様達から。熱烈ラブコールにあって、オチオチ昼寝も出来ず。しぶしぶ真面目に学園生活を過ごす毎になった。



一番立場が激変したのが、何とローザである。元々可愛らしい顔立ちなのだが、野暮ったい。服装ばかり着ていて、生真面目に剣の修行ばかり打ち込み過ぎ。他の生徒と交流がなかったのだが……、



夏休み以降から。評価は一変した。適度に鍛えられた手足をさらし。豊かな胸を今まで、サラシで締め付け隠してたため。目の覚めるプロポーションを。台無しにしていた。しかしレイラに恩を抱き。言われるまま服装から、変えたローザ。元々センスはあったのだろう……。懲り性な性格もあって、あっという間に女生徒達から。美のカリスマと呼ばれるようになっていた。



最近は男子生徒ばかりではなく。ローザを信望する女生徒も増えて、1人で佇む姿を見なくなった。

「ローザさん♪。今日も素敵です~」

取り巻きの1人となった。アオイ・エンディ・オーマが、ローザから洋服のレクチャー受けて、可愛さに磨きをかけていた。元々ハニートラップを得意にしてたアオイ、だけど天然系最強だと。ローザと付き合う内に気が付いて、何かと付きまとっていた。

「あっおはようアオイちゃん。そっその~ありがとう」照れ臭そうに頬を描いた。



瞬く間に6日が過ぎ━━、約束の日がやって来た……。



━━アレイク王国。北の区画。通称貴族街。古くも大切に住まわれてるのが分かる屋敷は、珍しいことに。朝からどたばた騒がしい。



屋敷の主であるハウリ・バレスは、先ほどから落ち着かない様子で、妻マリアが呆れるくらい。うろうろする始末である。もう初老に掛かる歳の筈だが、元々同僚にベビーフェイスと揶揄される。幼い顔立ちのまま。歳を取った印象の紳士で、母と一緒でも最近は、親子に間違われる事がなくなったと。両親供に無邪気に喜ぶ姿が、何となく可愛く思えた。

「旦那様。お食事の下準備も滞りなく済みました」バレス家に長年仕えてくれてる。婆やは朗らかに伝えに来た。

「そっそうか……、もう来ると言う話だ。レイラの支度はまだなのかい?」

「お嬢様でしたら。お客様を出迎えに、玄関におられます」

「なっ、もう来たのかね?」

「いえいえそうではありません」

優しい笑みを深めた。挙動不審な旦那様と呆れてる奥様に。シンク・ハウチューデンという少年の性格が分かる。サプライズプレゼントが届いたと話すや。

「まあ~わざわざ自分で来る前に?」

訝しむ妻は、知らなかったようだが……、チラリ旦那様に視線を送る。

「なるほど……、今時珍しい古風な。風習を知ってるようだね」妙な感心をしていた。少し気になったマリアは、夫に乞い。理由を尋ねた。

「うむマリアは、知らなくて当然の話なのだが、我々アレイク王国の貴族階級に居るもの多くは、国王様に。成人の祝福を賜る。その時出席した我々に。国王様から一本の花を頂くのだ」

新しく家名を継ぐ若者には、毎年花を一本送られる。15年目に白い花に変わると聞いて。首を傾げた。

「何時しか未婚の令嬢のいる。お屋敷を訪ねる場合。数日前に手紙等で本来は、お伺いなど立てるのだが」

妻は知らず。強引に娘の思い人を屋敷に呼び出したのは、少しやりすぎだと思っていた。言い替えれば無作法だったのだが、今時そんな古風な習わし等。若い男女にはじれった過ぎる。

「そこで古い作法の一つに。ご令嬢にプレゼントを先に送る」

目をぱちくりした妻のために。

「こちらとしては、素敵な花束やプレゼントを頂いたお礼と言う形で、食事に招くことが、内外的な方便となり。相手は無理に来たと言う形にはならない。双方の体面を考える。昔ながらの気遣いなんだよ」

あっと言う顔をして、赤くなった妻を。優しくみやる。仮にも相手は王族。強引に屋敷に越させた等知られたら。口煩い貴族連中のやっかみに合う所である。

「お嬢様の為もありましょうが……」

チラリ作法に疎い。奥様の為だったと、敢えては言わなかった。されど先に花束が届いた瞬間。婆やは年甲斐もなく。喝采した。流石は英雄王の子息。気遣いが細やかだと。

「お父さん……」

薄く化粧を施したレイラは、ほんのり照れ臭そうにはにかみながら、両手に抱えて、鮮やかな薔薇が15本の中に。純白の薔薇が一本入った。見事な花束を見て、確信した。15本の薔薇には、歳月を表し。王国を支え。子を成し。父として、再び王国を支えて欲しいとの願いと、純白の薔薇には、誠意が込められており。私はお嬢様と善き付き合いをしていくと言う。決意をも表していた。

「レイラ……君の男を見る目は、良いようだね」父娘にしか通じない話に。

「むう~何よ~二人して、私は除け者?」口を尖らせ。拗ねた顔をした。マリアの子供ぽい所は、変わらないが、そろそろ貴族連中と、付き合いに困ってた様子だし。作法について学ばせる良い機会かと考えた。




ほどなく━━。

時を見図ったようなタイミングで、シンク・ハウチューデンは、バレス家を訪れた。



出迎えたハウリは思わず唸っていた。土竜騎士が着る。黒を貴重した正装に、自身は竜騎士だと告げる。竜のリレイフが押された。シンプルな銀のシルバーリングを、今日はしていた。彼の父オーラル陛下と面識がある。威厳はまだ無いが、王の備える気品を既に備えていた。あまり知られていないが、竜騎士は公式の場に出るとき、銀製のアクセサリーを身に付けると聞く。彼が一目でどのような人物か、ある程度分かる出で立ち。あくまでもお呼ばれしたと言う気遣いから。決して派手さは無いが、彼の事を知る者ならば、感心したろう。彼は公人としてではなく。友人邸宅を訪れたと印象付けるために。軽い正装を着ていた。ため息を吐きたくなる念の入れよう。恐らく産まれたときより公人として生きてきた為の。本人としては、当たり前の気遣いなのだ、そう思わせない細やかな優しさに。ただただ感心した。

「良く来たね。シンク君。そう呼ばせていただくよ」

シンクが出した僅かなヒントに、素早く答えを導き出す。ハウリの如才ない対応に。シンクも嬉しく思っていた。流石は父と同じ『オールラウンダー』に選ばれた。カレイラの父君だと。素晴らしい素養が、妹レイラに受け継がれたのだと。その根本であるハウリに向け。シンクは嬉しく思い。笑みを深め頷いてると。

「あらあら私が呼んだのに。急に打ち解けちゃって」

ムスリむくれた妻に、ハウリは慌てる。

「おいおいマリア~」

夫婦のやり取りが始まり。シンクそっちのけで、まるで初々しいカップルのような反応を。マリアは楽しむように。チラリ娘に視線を送る。

「シン……私の部屋で少し話しましょう、婆やお茶の用意お願いね」

「お嬢様畏まりました」自然な動作で、シンクの手を引いて、母に感謝の笑みを残して、僅かな大切な時間を得た。

マリアは娘が、シンク王子の手を引いて、下がってく様を観察しながら。にんまり悪戯ぽく笑う。ハウリとしては、気が付いてたが、あの場は妻の策略に乗るしかなく。シンクに済まなく思った。だが一方で、兄カレイラが実現出来なかった夢を。レイラならば叶えるのではないか?。少しだけそう思えた。



━━トクトク……。


高鳴る胸。口から心臓が飛び出すのでは、うっすら手は汗ばみ。緊張で今にも倒れそうで、シンクの胸に抱き着きたいと考えていた。この思いは、あれから一度も変わらなかった。あの無人島で、シンクの胸で泣いてから。一度も……。諦めようと思ったこともある。でも……、私は彼に選ばれてみせる。伴侶の1人として、

自分の部屋に入った瞬間。最早我慢ならず。シンクを扉に押し付け。抱き締めていた。

「レイラ?……」

戸惑うシンクの顔を見るだけで、私の物にしたくなるドキドキ。この思い伝えたい……。ゆっくりシンクの顔に顔を近付ける。シンクの目に戸惑いはあったが、やがて優しくレイラを捉え。自分からも顔を近付けてくれ。唇が触れた……、小鳥が啄むような、初めてのキス。涙が流れた……、



そっと涙を拭ってくれたシンクは、今度は自分からキスを求め。二度のキスをした。

「ありがとうシン……、私は決めています」しっかり愛しい男の顔を手で押さえ、彼の瞳に焼き付けるよう。

「私は、貴方の生涯の軍師パートナーになると」

「ありがとうレイラ……、きっと幸せにするよ」

それは、あくまでもこの場だけの口約束にしか過ぎなくて……、でもシンクが、そう思っててくれただけで幸せだった。だから私は貴方の為ならば、どんな策謀だろうと巡らせてみせる。小さく決意していた。



楽しい夕食の時間が終わり。父と母の尋問と言う。オマケはあったが、今日は直ぐに寝れそうに無かった。

「後5日……、貴女達が何れ。私の部下に相応しいか、見せてもらいます」毅然と笑みを深めていた。



━━昨夜は、様々な事が有りすぎて。あまり寝れなかったシンクは、それでも朝食の支度済ませ。財布の中を確かめてから、学園に向かった、



途中の屋台で、揚げパン二個と温かい緑茶で、朝食を済ませた。何時もは至福の時なのだが、物足りない気持ちがあった。それがレイラとのキスが原因だったと、分かってはいたが、自分の変化に戸惑っていた。



「肌寒くなってきたわね……」

朝方……ひんやりとした空気が、物悲しい気持ちにさせる。ちんまい身長。栗色のサラサラヘアー。自身の身長と変わらない大剣を背に。クルミ・アルタイルは、様々な気持ちを。小さな胸に抱え。深々と吐息を吐いた。あのレイラが、ここまで意思表示をした。次は自分が考え。変わってく番である。静かに決意して。その時を待っていた……。

「先輩おはようございます♪」

何時も気安く頭を撫でる男は、後にも先にも許したのは、シンクだけである。ほら……また。唇をすがめわざと、不機嫌そうな顔を作る。



来月の試験が終われば、冬休みになって、またしばらく離ればなれになる……。噂では、北大陸に旅行に行くと聞いた。

「シン……、頼みがあるんだが……」

不安と期待。2つの気持ちの間に揺れながら、下から上目線で、お願いしていた。

「冬休み……、北大陸に旅行すると聞いた。私とローザを連れてって貰えないか?」妥協案から口にしていた。一瞬虚を突かれたが、ニッコリ優しく微笑み。

「全然構いませんよ先輩!、良かったリルムちゃん忙しいようだから、1人で過ごすのかと、残念に思ってたんですよ♪」

なんてあっさり了承され。肩透かしを喰らう。気合いを入れてきた自分が馬鹿みたいだ、クスリ微笑していた。困ったのはシンクで、クルミの唇柔らかそう……とか、考えてしまい。頭を振って雑念を振り払う。クルミがシンクの様子を。不思議そうに見ながら、少しだけ歩みを進めた気がして、頬を弛めていた。





瞬く間に日々は過ぎ。様々なドラマを生み出し。多くの才が、開花したトーナメントも遂に。決勝を迎えていた。決勝進出を果たして、汚名を注ぎ。一躍有名になった。フィル部隊の面々。未だに好奇な視線にさらされるが、理解者が増え。一目置かれるようになって、普段の生活に支障が無くなり。両親の対応も変わっていた……。 「フィル……、父さん達……、お前の試合見に行っても構わないか?」

未だに割りきれない気持ちはあろうが、久しく視線を合わせてくれず。悲しい気持ちになっていた……、



フィルの父は、一介の旅商人だった。母の祖父と仕事で知り合い。お弁当を届けに来た母とは、たまたま出会った。そして数年の歳月愛を育み。父は母と婚約が決まって、無理をしたと言った。



父の仕事は当時。ターミナルの街から。王都に荷運びの仕事を頼まれ。急ぎの仕事でもあり。山賊が出ると聞いていたが、西の古い街道を使って急いだ。新しい街道より危険だが、二グラス(二時間。今は使わなくなった時間の数え方)は、早く到着出来る。早く一人前になって、彼女と一緒になりたかった。今思えば焦っていたと、父は語る。不思議な出会いだが、父を救ってくれた恩人の子息が、今年同じ学園に入学した……。

「うん……、レンタは、その……」

言い淀む……、たった1人の弟。年の離れた弟に、当たっていたから……、嫌われたと思っている。

「大丈夫……、彼が救ってくれた……フィル……」おずおず娘に近付き。力一杯抱き締めていた。

「気付いてやれず。済まなかった……」

後悔と懺悔を口にした。ああ~そうか……、今になって理解出来た。自分が冷静になり。周りを見ることが出来たから分かる。自分と同じで、どう接して良いのか……、分からなかっただけだったのだと。ようやく理解して。

「おっ、お父さん……、うっ……」

クシャリ今にも泣きそうな顔をした娘に。

「大丈夫だ……、もう二度とこの手は離さない」優しい声音が、後押しして、堪えきれず。

「うっうう……、うゎぁあああ~~ん」

ぼろぼろ泣き出していた。ようやくあの日からの出来事が、許された気がした。



午前中の授業が終わると。昼食も早々に先生に呼ばれた。フィル部隊の面々は、混乱が予想されるため。授業が終わる前に。コロシアム内に用意された。控え室に入り。自分たちの出番を待った。




「フィル・マノイ、トーナメントオーダーが決まり次第。バレンタイン教頭に。提出するように」

コクリ素直に頷いたフィルに。三年の『特待生』教諭は、初老の男性教諭だったが、分け隔てなく接してくれた数少ない先生で、温かな笑みを浮かべていた。

「頑張りなさい」

それだけ告げ、控え室を後にした。五人は無言で頭を下げた。それから間もなくフィルは、決勝戦のオーダーを提出した。総合武術戦

フィル・マノイ

VS

レイラ・バレス



魔導兵戦

カノア・テレグシア

VS

フィア・ガイロン



マラソン

サラ・ローガン

VS

シンク・ハウチューデン


クイズ

メグ・ファノア

VS

ノノフレイミ・ラネス



魔物討伐

ラグ・セレン

VS

ヒナエ・バウスタン


予想外の組み合わせと。予想外のオーダーに。驚きは隠せない。わざわざあのシンクを。得意な種目から外した理由に議論が沸き上がる。




━━前日…………、


━━レイラに呼ばれた四人は、深刻そうな様子に、ヒナエの提案で、学園で話すのではなく。学園から近いヒナエの道場で。レイラから詳しい話を聞くことにした。




酷く緊張したレイラは、何れ我が王に抱くならば、シンクに全てを話すと誓っていた、そして……、シャイナ・アルベルトが、密かに行ってた出来事……。彼女達の苦悩とレイラが、密かに彼女達を手助けして、エドナ学園長に掛け合い。トーナメントを開催させたこと。

「シン……ごめんなさい……、私は貴方の軍師として貴方に必要とされるには、貴方に負けて貰う必要がありました」

誰しも言葉を失っていた。ミル・ダルフォン・カーリアの実力を知ってたレイラは、最大のライバルにして、最強の敵が必要だと言った。

「だからリルムさんを焚き付け。ミルを紹介して、ただ1人、シンク・ハウチューデンに勝てる。彼を仲間にさせました」驚き目を見張るシンク。ヒナエ、フレイミはすっかり毒気を抜かれ。息を飲み。フィアなど顔を青ざめさせていた。



レイラはじっと、ただ愛するシンクを見詰め。とうとう一度も目を離さず。全てを話した。

「シン……、お願いがあります……」

明日のオーダーを了承して貰うためでもあった。それで……叱咤され。嫌われても。彼女達とは、自分達だけで、対戦したいと。痛烈な思いを抱えていた……。裁定を待つとき、シンクの眼差しを恐れ。眼を伏せていた。

「……とても驚いたよレイラ……、正直に話してくれてありがとう……。うん!僕なら構わない。だから思う存分やりなよ。そして見せてよ。レイラ・バレスが描いた結末をさ」声音に。労るような。優しさがあり。ハッとして顔を上げ見たのは、信頼を寄せた。優しい眼差しだった。この間の大胆な行動が思い出され。羞恥で首筋を赤くしながら。

「あっ、ありがとうシン……」

胸が熱くなっていた。




一方で……、




レイラとシンクの何とも甘やかな空気に。ヒナエは焦りを覚えた。




━━トーナメント決勝。

『総合武術戦に出場する生徒は、入り口の馬車乗り場までお集まりください』

レイラは、自分の我が儘に。付き合ってくれた友人達を見て、小さく頷き。そして最後の決戦に向かった。



総合武術戦が行われるのは、コロッセオの西側。二年生の陣地がある。林道の中。演舞場は作られていた。

フィル、レイラ共に。目を合わせるだけで、語るべきは言葉はなかった。二人は無言で見詰めあい。そして……、戦いの火蓋は切られた。




サイと呼ばれる武器を獲物にするフィルは、レイラの槍と相性悪く。防戦を強いられた。

隙を突いて、何度も打撃合わせた技で、レイラを追い詰め。危ない瞬間もあったが、最後はレイラ得意の強撃に耐えられず。フィルが尻餅ついて、勝負あった。




続く魔導兵戦は、珍しい武器である。ファランクスと呼ばれる。首斬り斧を武器にする。カノアとガイロン重騎士団固有の武器、ポールアックスは、同じような長物。一撃に自信のある。二人の戦いは、紙一重の攻防になった。リーチはファランクスに分があり。速さでは重さのあるポールアックスに分があった。激戦の末。足を失ったフィアの機体が、討ち取られ。タイに持ち込んだ、



マラソン勝負は、シンクが体調不良を理由に。棄権した。その為予想外なことに。フィルチーム優勢となった。



残る2戦の内。どちらか星を奪えば、フィルチームの優勝となる。



だが次のクイズでは、『特待生』有数の天才メグ・ファノアを寄せ付けず。ノノフレイミの圧勝となり、再びレイラチームが、タイに持ち込んだ。




奇しくも……、

準決勝二回戦と同じ状況になった。



ヒナエ・バウスタンと対するラグ・セレンは、同じ武道家であり。近衛連隊の訓練教官を任されてる。道場の娘であった。



幼さのある風貌、しなやかな鍛えられた肢体。意思の強そうな眼差しをしていて、二人は顔を合わせた瞬間。負けたくないと意識した。




エピローグ




先行はヒナエで、後攻に優勢であるのは、先の傾向で、明らかだった。最早決まったかと、誰もが感じ始めた。

「レイラ、予定とは違ったが……」

「ええ。彼女なら大丈夫だと思います」

疲れの見える顔に。信頼を込めた眼差しで、遠く見える。魔法投影ターフビジョンを見上げた。



先行して、神殿に降りたヒナエは、素早く魔法を唱え。四肢の強化をしていた、素早く感覚を確かめるよう。軽く身体を動かしてみた。ヒナエは母に似て、あまり魔力の素養は高くなかったのだが、母が長年苦心して、肉体強化をする魔法を覚えた。



母からは、魔法を学ぶよう言われたが、さほど必要と感じず。聞き流していたヒナエだったが、フレイミの事がきっかけで、シンクから、肉体強化の多重魔法を学んだ。ようやく実戦に耐えうるようになったのが、夏休みの魔物討伐からで……、ゆっくり息を吐いて、艶やかに笑んで、そっと呟く。

「シン見ていて、私の本気……」

ゆっくり眼を開けた瞬間。猛然と走り出した。




壮絶……、

一言で言うなれば、あまりの衝撃に。誰もが言葉を失った。『壮絶タイム……、あのシンク・ハウチューデンの時間をうわまる……7分35秒、6秒の短縮に成功!!』

対して青ざめたラグ・セレンも。殲滅に成功したが、35分56秒とヒナエが圧勝していた。



上がる大歓声。答えるヒナエは、弾ける笑顔で答えていた。

「やったなレイラ!!」 「ええ……、秘密兵器は最後まで残したからこそ。私達が勝った」

にんまり人の悪い笑みを浮かべ、シンクにウインクしたのを見逃せず。フレイミが、泣きそうな顔をした。




━━10年後……、世界の王と呼ばれた。シンク王の7人の妻達の戦いは、こうして始まっていた……、だが……それはまだ先の話である。

そして次回は、ヒナエのデートと。特別教室。狂喜の双子交え。学園部隊の全貌が見えてくる。また同じ物語か、別の物語で、背徳の魔王でした。

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