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少尉ですが何か?  作者: 背徳の魔王 人と話すうちに性格から行動パターンを読み取り。隠された本性を暴き。時に未来を予言することからリアル魔王と呼ばれ。材料と調味料の分量で味がわかるので、絶対味覚と本人が詐称する一般人
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閑話序章壊れかけの教室で2

プロローグ




━━中央大陸、輝きの都プロキシス。



豊かな黒髪を束ね。おっとりした眼差しの色黒の女性ジーナ・ゲルマンは、娘をあやしながら。先日のこと思い出して、クスクス笑いだしていた。まさか妹が、あんなに子供好きで、敬愛していた姫様が、あんなにも祝福してくれるなんて……。


こんなに幸せで、充実した時間と。楽しい日々が来るなんてね……、



━━ジンとの出会いは……、



決して劇的な物でもなく。普通のただの知り合い……。顔見知りといった関係だった。少なくとも自分はそう思っていた。彼はそう……優しい人だとは思っていたけど……。



━━現在。輝きの都プロキシス。


━━軍部で、三将と呼ばれる重鎮であり。国内の治安を守る。赤竜騎士団長を勤めるジン・ゲルマンは、オーラルが戦士養成学校在学からの付き合いで、国の建国、また発展に苦楽を供にした。忠臣であり。オーラル陛下の右腕と呼ばれている。また民からは凶顔の武人と恐れられていた。そんなジンだが、部下の信任厚く。気遣いの男とも呼ばれていた。



また見た目と違う一面が……、可愛い物。子供好きで。度々誤解される。可哀想な人物だと、噂されてるのは、ご愛嬌である。



……ジーナが、ジンと最初に出会ったのは……、オーラル様を慕う。姫様を通じてだった。ジンとはたまに、言葉をかわすそんな間柄で……。意識したのは、夫が中央大陸に行くと聞いて直ぐのこと……、彼に呼び出され。求婚されてからだ……。正直驚き。嬉しい気持ちと同時に。疑問を抱いた。

「何故……私なの?」

「その……」

真っ赤になりながら。言われた言葉を、私は一生忘れないだろう。あんなにも素敵な言葉を言われたのは、後にも先にも彼だけだった。

「君の笑顔を見た瞬間……、一目惚れしました……」

「えっ……、なっ……、一目惚れって……」

戸惑いはあるが、嬉しかった。自然と胸は高鳴り。息が止まるのでは無いかと思った。まさか彼が、そんなこと思ってたなんて……、ときめいてしまった。

「でも。私は姫様の……」迷い。喜び。様々な気持ちに揺れたジーナ。最後は、敬愛する姫様から。背を押していただき、決意した。

「幸せにしてくださいね……」

「むっ無論だ」

真っ赤になりながら、涙ぐむジンの顔が、何だが愛しく感じた。

「あらジーナさん。ナシュアちゃんもいらっしゃい」

子供を抱え訪れたのは、中継の町アセイラにある。神殿の事務室で、出迎えてくれたのは、王妃様でありながら。大司教の地位にあるリーラ様自らだ。

「その節は、ありがとうございました」

数日前になる。娘のナシュアが深夜に高熱を出して、危険な状況だった。深夜にも関わらず。夫と急ぎリーラ様に助けを求めた。心良く邸宅に入れてくれ。それ所か直ぐ娘の容態を見るや。癒しの奇跡を使い。治して頂いた。今日はそのお礼を言いに寄らせて頂いた。

「だあ~、だあだあ♪」

娘もリーラ様が大好きなようで、一生懸命しゃべりかけた。

「あらあらすっかり元気になって、良かったわねナシュアちゃん」

ぷっくりした愛らしい頬をつつかれ。きゃっきゃはしゃぐ、

「リーラ様。その節は本当にありがとうございました」

頭を下げるジーナ、柔らかく肩に手を置かれて。優しく微笑みながら。眼鏡を直す癖を見せた。以前眼鏡を着けてらしゃったから。その癖がたまに出される。今はオーラル様が作らせた。竜の指輪による補助で。視力が回復なさったと喜ぶ一方で、長年愛用した眼鏡を大切になさってると噂で聞いていた。何でも陛下との思い出の品だとか、今もネックレス代わりに首から下げている。視線に気が付いて。少し照れくさそうに笑いながら、

「ジーナさん。困った時はお互い様ですよ。それにジンさんは、夫の大切な家臣でありジーナさん、ナシュアちゃんは、私達にとっても大切な家族ではありませんか?。助けるのは当たり前の事です。気にしないで下さいね」

「はっはい。ありがとうございます」

そんなこと言われたら……。嬉しく思う、

「それにジーナさんとは、お友達じゃないですか~」

パチリウインクされて。普段の生真面目な印象と違う、お茶目な一面に。思わず笑っていた。

「そうそうその笑顔ですよ。貴女の笑顔が、大好きだとジンさんが、夫に言ってましたのよ♪」

「まあ~、そっ、そんなことあの人が?」

口下手な夫が、そんなことを陛下に。初耳である。リーラはジーナの驚いた様子を見て、少し考え決意した。

「今ならもう。あの話をしても大丈夫でしょう……、お茶を頂きながら、少しお話ししませんか?」

柔らかなお誘いに。緊張と嬉しさから喉が渇いてたので。有り難く頂くことにした。




━━リーラ様の話は、国の財政も潤い。大国として、内外に十二分の成果を示して。外交がようやく一段落着いた時期だった。


あの日の出来事をリーラから言われて、うっすら記憶にあったのは……。珍しく酔っぱらった夫が、陛下の邸宅に泊まった日のことで、なんとなく覚えていた。

「ジンさん、うわごとのように。涙ながら何度も言ってましたよ」

『陛下━━俺は、幸せなんです。一目惚れしたジーナが、こんな俺と結婚してくれた、それに妻に……。子供が産まれる……』

「あっ……」

今はっきりと思い出していた。あの時は……、ジンに子供が出来たと告げた日で……、夫の同僚で、友人二人から。お祝いにと……飲みに誘われたと。照れ臭そうに話していた。翌日知ったのは、酔っぱらった夫が、陛下の邸宅に泊まったと聞いて。陛下に迷惑をかけたのではないかと。気が気でなかったのを思い出した。

「ロート様、ボルト様に。お祝いで、飲みに誘われ出かけられたと。それはそれは嬉しそうに言ってましたよ」

「まあ~……、あの人ったら」

気恥ずかしそうに笑うジーナ。好意的に微笑み。

「あの人も。たまにそう言う隙を見せてくれると。私は嬉しいのですが……」

嘆息した相手。それは英雄王オーラル陛下のことで、誰が見ても。隙らしい隙もなく、夫も心配していた。

『陛下は、働き過ぎる……』

「あの日、ジンさんは夫を心配して、説教なさってました」

なんて言われたら。羞恥に真っ赤になっていた。 「クスクスあの人たら。ジンに言われたら仕方ないって、嬉しそうに言うんですよ。まったく殿方の考えは、私達女には分かりませんね」

「まったくです」しみじみ頷く。なんとなく話が見えてきた。

『俺はね陛下。幸せなんです。あいつの笑顔がみられるだけで十分なんです。こんな俺を側近に選んでくれてありがとうございま……す』

「私達こそ。ジンさんやロート様、ボルト様には感謝してますのに、心配してくれてのことですね」

リーラ様の優しい言葉に。救われた気持ちだが、夫がそんなこと考えてくれてたことが、素直に嬉しく。また陛下やリーラ様の心使いに感謝した。





━━東大陸、アレイク王国。アレイ学園。



エドナ学園長に案内され。『特別教室』に入ったシンク、リーザは、顔色を変えた……。凄まじい。寒気すら感じる。そう……妖気を発する。双子と対面したからだ。「…………」

寒気に肌は粟立ち。感じたこともない身の危険を感じたリーザは、腕をさする。もしも母やシンクがいなければ、逃げ出してたろう。なりふり構わず悲鳴すら上げ。狂ったように叫んでた可能性もある。どうにか悲鳴を飲み込み。恐怖を圧し殺す。そんなリーザの様子を双子は、楽しげに見ていた。

「彼等は確か……」

「やあ~久しぶりだな」

「やあ~久しぶりだね」 双子は、同時に喋った。ガラス玉のような。なんの感情の浮かばない瞳。異物を見るような眼差しに。少し変化が現れた。 「お久しぶりですね。ビーナちゃん元気ですか?」

それは何気無いシンクの一言で。シンクの顔にあるのは軽い驚きだが、双子に対する怖れ。恐怖を感じてない様子で、強靭な精神力をみせたシンクは、まるで天気の話をするように。笑みすら浮かべ尋ねた。

「あの子か……、まあね」

「あの子は、相変わらずさ……」

微妙に視線を反らして、双子はほろ苦く苦笑していた。意外な反応にエドナは驚く。

「相変わらずなんだ……、大変ですね」

しみじみ同情気味に。シンクが言えば。双子は揃って肩を竦めた。

「彼女は、僕達に近いから」

「僕達に、遠慮なしだからね」

苦笑していた。面白い物を見たと。エドナは笑みを深めた。

「それより。それは新しい力かい?」

「「僕達に。匹敵する力を獲たね?」」驚きを浮かべたシンクだが、静かに頷き、

「はい。ようやくコントロールの仕方を。理解出来るようになりました」

素直に答えていた。双子は人間らしい笑みを初めて浮かべ。興味深そうに笑う。

「へえ~そいつは楽しみだ」

「ほう~そいつは楽しみだね」

楽しげに双子は微笑んでいた。不思議なことに、古ぼけた教室は、温かな空気が広がった。

「へえ~君たちを『特待生』と教室が関知したようだね」

「動力は生きてたね。流石は大賢者オール・セラの作品だけはある」

玩具を得た子供のように双子は、目をキラキラさせていた。

『特別教室』での狂喜の双子との出会いから数日後……。



エドナ学園長は、狂喜の双子が選んだ24人生徒の名簿を見て、微苦笑浮かべた。

「まさか、あの子まで選ぶとはね……」

諦めに似た吐息をついた。問題は最後の1人。

「この24人目のラケル・クエトってだれかしら?、聞いたことない生徒だわ……」

困惑を浮かべたが、先程シンクに名簿を見せた瞬間。驚きながら、楽しげに笑った顔が、印象的だった。

「シンクは、この生徒を知ってるようだったけど……」

考えても仕方ない……、最早『特別教室』の生徒には、知らせ面談を終わらせていた。最後の生徒には、シンクが知らせるからと、面談はしなかったのだが……、あの子が大丈夫だと言うのだ。大丈夫なのだろう。それほど信頼度がある生徒など、オーラル以来であろうか、

「準備は整ったわ。後は、最悪の事態に陥らないこと祈るわ……」

来週の試験が終われば、冬休みになる。

「早いものね。時間が経つのは……」




━━エドナ学園長との面談を終えた各生徒は、複雑な胸中を抱え。帰路に着いた。



中でもフィル・マノイは、自分の中に起こった気持ちの変化に。困惑を浮かべた。それを引き起こした人物。あのレイラの思い人。『特別教室』の準教諭に選ばれたシンクが、エドナ学園長との面談に同席しており。どうした対応をしてよいか……。正直困った。それと言うのもさりげない優しさと、突発的なハプニングで。終始どぎまぎしっぱなしだったからだ……、



━━時間は、五人がエドナ学園長に。呼ばれた時に戻る━━。



同じ部隊のチームメイト。

カノア・テレグシア、

メグ・フィアノア、

ラグ・セレン、

サラ・ローガンと供に。学園長室に入るのは、初めてのことで、緊張していた。それと言うのも……、学園長は、何かと逸話が事欠かさない人物で、どんな無理難題を吹っ掛けられるか。ただ不安に思い入室した瞬間。春の日差しのような優しい笑顔が、五人を出迎えてくれた。

「みなさんお久しぶりですね。この度『特別教室』の準教諭として同席します。シンク・ハウチューデンで……、あっ、サラさんは、ランドさんの娘さんだよね?。ランドさんと父は友達だから、僕のことは知ってますよね♪サラさん」

「うあ……、(コクコク)」

いきなりのことに。人見知り激しいサラは、熟れたトマトのように真っ赤になって。側にいたフィルは、サラの壁にされ。シンク皇子の綺麗な瞳で、間近で見詰められ。終始固まりぱなしとなる。聞きなれない『特別教室』の事が気にはなったが、それ処ではなくなった。何と無く理解したのは、学園の『特待生』の中で、国の重要な補助機関を。学園に作ったこと……。選ばれた生徒は、補助機関に所属する事になったこと。その『特別教室』の生徒に。五人は選ばれたとのこと。

「この事は、極秘事項になります。例え国の重鎮に聞かれたとしても。決して話さないように」

厳しく学園長に言われて、喜びよりも不安が募った。

「ちなみにレイラもいるから。何かあれば、僕か彼女に相談すると良いよ。それにレイラも最初から。全てに気が付いてるようだしね」

シンクに断言され。学園長は驚きを浮かべた。 シンクは一瞬迷ったが、一応と頭の中で付けたし。

「学園長、多分ですがリルムちゃん、そこのラグ・セレンも気が付いてます。そうだよね?」

急に名を呼ばれたラグは、ぼーっとした眼差しで、シンクと学園長を一瞥して、

「双子?、疑似神?」

端的に聞いてきた。

「両方です。呼ばれた意味にも気が付いてるが、彼女は見たところ。人に説明するのが苦手。自分に興味ないことには、話したがらないでしょ?」

シンクに断言されたラグは、興味なさそうに鼻を鳴らしただけ。だがその通りだと、フィルチームの面々は揃って頷く。

「メグさんは、ラグの幼なじみですよね?」

それとなく水を向けると、目をぱちくりしたが、 「はっ、はい」

学園有数の天才は、困った顔をしていた。二人はフィア、ヒナエ、リーラに近い間柄だろう。

「僕に出来ることは、皆さんの実力の底上げです。明日から、朝練に参加してくださいね」

そう説明され。戸惑いはあったが、納得していた。




アオイ、ローザ、コルト・アルベルトの三人が呼ばれた。それぞれ説明を受ける中。コルト・アルベルトは、妹により家名に泥を塗られたため。汚名を注ぐ機会を得たと喜び。シンクに感謝を示した。

「その……彼女達にあやまりたいのだが、どうしたら良いだろう?」

難しい問題を抱えることになった。そこで同席させたローザとアオイに目を向ける。素知らぬ顔をしていたアオイはともかく。

「わっ私に提案がある」 案の定。正義感の強いローザが名乗り出る。こうなるとローザに信望を抱くアオイも。仕方なさそうな顔をした。

「ほっ本当か?」

他の男子生徒には無い。生真面目なコルトの真摯な対応に。二人は少し驚いたが、頷く二人に素直に感謝を示しす。こうした対応は、コルトがアルベルト公の生き写しと言わしめる由縁である。また武人として信頼に足り。気性の起伏はあるが、元来弱い人を助け。悪事を許さない正義感も強い。熱い男で、為政者として優れた資質を持った人物である。噂だが、妹の悪事を許さないと公言して、国元の父に。妹を重い刑罰に処すよう強く願い出てると、噂が流れていた。人並みに女性に興味はあるが、父のような男になるのが夢だと公言する。熱い男は、女性が嫌がるような行為を嫌う性分だ、だからこの組み合わせでの面談にシンクがした。なるほどと微笑したエドナ学園長であった。




リルム、ノノフレイミ、エルマ、モレン、ランダルフの五人が呼ばれた。困惑したランダルフと何故か面談には、リーザが同席した。意味は直ぐに分かった。

「初めての生徒もいますが、私は『特別教室』学級員長のリーザ・カーベン、シンクと私が、この教室での学園側の窓口となります。了承下さい。まず呼ばれたメンバーが、それぞれ小隊扱いとなりますので、そこも了承してください」

「ちょちょと待て!、なんだその『特別教室』てのは」

意味がわからず。困惑したランダルフを。小物を見るように魔王の愛娘(リルム)が一瞥して黙らせる。

「成る程……。最悪の事態を考えてですね学園長?。このメンバーでの小隊作りは、私の支配力と先見性。ノンの空間能力を考えた布陣ね。恐らく面談の同席者をリーザさんにしたのは、シンクがランダルフと言う貴方の性格を理解して判断したのね?」

リーザが、何か言う前に。次々と言い当てる魔王の愛娘は、流石はと言った感じで、一瞬で場を支配していた。美しすぎると言われる氷の微笑を受けて、リーザは身震いしていた。

「そのようね。シンクが言ってたわ。貴女ならばあの双子にも自分の策にも気付くからと」

愉しげに微笑する。エドナ学園長と魔王の愛娘は、静かに微笑み合うが、凄まじいプレッシャーに、ランダルフは冷や汗を流し。リーザは泣きそうになった自分で本当に大丈夫かと?。みればノノフレイミは気絶寸前。エルマは顔をあおざめさせたが、冷静にトーナメント後に。お嬢が言ってたことを。思い出していた……。

『これが、フレイミと探ってた学園長の秘密とは……』

昨日フィルチームの五名が、学園長室に呼ばれたと伝えたら。

『明日は、私達の番ね』

愉しげに微笑んでいた。底知れねお嬢の先見性。普通の先生なら圧倒されかねないが、お嬢の言葉を当たり前のように受け止める。それだけエドナ学園長の怖さを、肌で感じていた。

「まあ~シンクには、策士レイラが付いていますわ。彼女の考えなら間違いないでしょ。私達は『特別教室』に参加します」

「ちょ、俺は……」「黙りなさい。貴方に断る権利も。口答え出来るだけの実力もない。普通の男が、このわたくしに意見を言えると言うの?。そんなこと誰も許されない。貴方はただわたくしの命令に従ってればいいのよ」

一刀両断されたランダルフは、絶句していた。確かにその通りだと自覚していた。自分は実力で劣ることも……、悔しいが事実だ。押し黙ったランダルフを一瞥して、フフン氷の微笑を浮かべ。もう一人の生徒に向けた。

「貴女デザイナーですってね?」

「ひゃ、ひゃい」

爪先から頭の先までじっくり観察され。モレン・カルメン・オードリーは、場違いな場所に来てしまったと。眉間に皺を寄せ固まっていたが、

「フフフ……、悪くないわね」何故モレンを。リルムの仲間にしたのか……、彼女の才能は、私達にとって有益となる。リルムも幾つかモレンデザインのサマードレスを購入して。つい最近までお気に入りとして、袖を通していた。

「モレン早速だけどわたしと、レイラ、そうね女生徒のコスチュームをデザインなさい。シンクに相談すれば、特殊素材も輝きの都から輸入してくれる筈だし。魔法に関しては私が何とかします。魔法防御力が高く。ファションセンスたかい『特別教室』生徒用の制服をデザインして、そうね10日もあれば出来るわね?」

いきなりの難しいオーダーを言われて。驚きより美しすぎると評判のリルム様に。直接声を掛けられ。どぎまぎしていた。「えーと、その……」

「あら。貴女の才能認めてるのに。出来ないというの?」

とんでもないと慌てて首をふるふる。

「でっ出来ます!、やらせて下さい」

目をキラキラさせて言い出した。やれやれとエドナは苦笑していた。

「そう。お願いするわモレン。よろしいわね学園長?」

確かに失念していた……。彼女達は、国の切り札。重要な存在となる可能性が高い。そうなると身を守る必要な物は、多い方が良いに決まっていた。言われて初めて気が付くとは……、悔しが、また彼女のような鋭い先見性に。改めて感心していた。

「ほかにも必要な物があればリーザかシンクに。貴女達はそうした役割なんでしょ?」レイラがリルムに求めてること。それは貴婦人の長として、皆をまとめ足りない部分の補足。レイラとリルム、二人はお互いを。無くてはならない存在だと感じていた。嫌だけどね……、さて後は他の候補次第ってことね……、楽しげな微笑を浮かべていた。




━━好きな男の子とデート……、


甘美な響きをもって、休日がやって来た。この間のコーディネートコンテストで、モレンの手伝いをして、それぞれの女の子達は、シンクにある願いをしたのだ。休日にデートをねだった。それがヒナエの番だった。前日から。父のブルー・ファミイユに買ってもらってた。可愛らしい洋服を。引っ張り出し。一生懸命コーディネートに勤しむ娘に。好意的に微笑む母は、

「あの奥手のヒナエがね~」

感慨深く呟いた。最近では、娘のボーイフレンドとして十分過ぎる。あの子シンクと手合わせする楽しみもあり。娘や新しい友人達の様子をそれとなく観察するのが、密かな幸せだった。

「ミザイナはどうするのかしら?」

ファレイナ公国女王で、ミラの親友には、クルミの近畿を知らせていた。シンクに仄かな想いを抱いてることは、誰が見ても確か、だがクルミはファレイナ公国の時期女王候補。最有力である。弟のクルト皇子は、まだ幼く才能はあると聞く。悩ましいとこだろうな……、逆に元夫は、複雑な気持ちになるから。今はまだ内緒話だが、レイラ・バレスの母マリア、夫のハウリとは、会って話をしたばかり。そこは子を持つ親同士。複雑な胸中ではあるが、娘の幸せを優先する腹づもりだと。お互いわかっただけよしとした。みんなまだ若い。どうなるか分からないからだ。

「このまま良い付き合いが出来ると、良いのだけれど。魔王の愛娘が強力らしいから、大変そうね……」

話では、レイラも負けてないと聞く。最近焦りを抱く娘の不安そうな顔を、見ていて胸が痛むが……、こればかりは何もしてやれないのが現実だ。

「救いはシンクが、決して娘を蔑ろにしない。懐の深い男の子てところね。だけどヒナエは子供だから……」それでも不安なのだ。気配を消して、引き戸をそっと締め。ミラは道場に向かう。

「がんばりなさいヒナエ」

吐息のようなエールをつぶやいた。




━━アネス・レイ・アレイク、

ミル・ダルフォン・カーリア、

フレア・カレン=ダレス シアン・イナバの四人が、学園長に呼ばれた。シンクが同席して、『特別教室』の話を聞いた四人は、あっさり受け入れていた。

「あの異常な気配は、あの狂喜の双子でしたのね?。まあ~暇潰しにはなるわ」

豊かな赤い髪を颯爽とかき揚げ。艶然と微笑むフレアは相変わらずのようだ。

「そうねお姉様。オーラル先生に。土産話が出来ますわ♪」クスクス笑うショートにしてる妹のシアン。姉妹の自信家ブリは相変わらずのようだ。

「お~っホホホ。あたくしに声をかけるなんて、流石は英雄王の子息ね。わたくしとミルがいれば何の心配も無いわ」

熱ぽい視線を受けて、蛇に睨まれた。蛙のような反応で、顔を引きつらせたが、アネスの豊かな胸をわざと腕に押し付けられ。

「そっ、そうだね」

満更でもなさそうに照れる。どうやらアネスはグイグイ押しの強い女性のようで、ミルが気圧されているのが、何とも可笑しい。



一方で、レイラとシンクの考えは一致していた。何れこの四人が、アレイク王国の危機を救う。切り札になると二人は、確信していた。




━━面談から数日後。秋のよそおいが、王都の木々を散らせ。

肌寒さを感じさせる朝。寝癖直しに格闘したシンクは、ようやく納得して、伯母の手作りした。すっきりした印象を与える黒の長袖。お尻がピッチリする。皮のズボンを履いて。急ぎヒナエの道場に向かっていた。



それと言うのも朝に弱いヒナエは、子供の頃から。フィアに迎えに来てもらうのが定番だったらしく。シンクに悪いとは思うが、起きれる自信が無くて……。



それで、お迎えに来てもらうことに……。



シンクは通いなれた。学園通りを過ぎ、やがて繁華街の入り口が見えてきた。ヒナエの暮らす。バウスタン流道場は、繁華街の奥に位置していた。昼間は、至って普通の商店街で、朝早い八百屋、魚屋が景気のよい声をあげる。



バウスタン流道場の裏手。細い路地から入った先に。お勝手がある。扉を叩き。しばらく待つと。

「開いてるよ~。入っといで」

眠そうな声がした。寝起きののようだ。

「お邪魔します」

断りを入れて、御勝手の引き戸を開ける。

「くあ~……おはようシンク。あの子はまだ寝てるから……。起こしてやってね」

「あっ、はい」

「あたしは、元旦那に頼まれたから。フローゼの町まで行ってくるからさ。あの子のこと頼んだよ~」

ミラさんが信頼込めて、シンクの肩を叩くから。気を引き締めていた。そんな生真面目な横顔を。ニンマリ人の悪い笑みを浮かべ。つい一言そえる。

「あたしが言うのもなんだけど。あの子見た目と違って子供だろ~、気長に付き合ってやってな」 お茶目に片目を瞑りお願いする。それはシンクも理解していた。自分の魅力を正しく理解してないから。周りの男子生徒に誤解されるほど。妖艶な魅力を発揮するヒナエだ。でも恐ろしく純情で、天然な可愛らしい女の子だと。シンクも理解している。



ミラさんを見送ってから、家にお邪魔して、ヒナエの部屋に向かう、何度も来たヒナエの部屋は、シンクの入って来た。御勝手の奥にあり。戸をノックして。声を掛けた。しばらく待つともぞもぞって気配があり。しばらくしてから。

「は~い……、お母さん?」

「おはようヒナエ。僕だけど分かるかな?」

「…………………シンクさん?」

驚き。慌てた気配がした、

「まっ、待ってて下さい!?」

「朝ご飯の支度してくるから。慌てず支度してて」

「あっ、えっええ~!」 ヒナエの驚き声を軽く流し。クスクス笑いながら。シンクは持参したリックのはいのうを開いた。昨日夕方から仕込みした。様々な材料を取り出して。手早く料理を済ませた。程なくして、ヒナエが赤い顔をして出てきた。

「おっ。おはようございます……」

「おはようヒナエ、顔と手を洗ったら一緒に食べよう。それからヒナエが見たがってたミュージカル見に行かない?」

パッと目をキラキラさせながら。可愛らしくはいと頷いた。



━━余談だが、余った朝ご飯で、お弁当を詰めたシンクのそつなさに。ヒナエは素直感心しっぱなしで、お茶の支度まで済ませるから。ちょっとだけ自分が情けなく感じていた。それから二人が道場を出たのは、日がだいぶ高くなってからだ。



━━学園通りから。劇場のある通りまで、ヒナエが以前から見たがってた、『影を踏まえて』と言う。純愛劇を見ることになっていた。



ヒナエは、既に10回以上見に行ってると。道すがらシンクと歩きながら話した。何でも劇団セリーヌのファンらしい。シンクは知らなかったが、女性に大人気の劇団である。二人が劇場広場に着くと。沢山の人出があった、劇場は大小4つあって。『影を踏まえて』は、一番大きな劇場で公演していた。また人気の演目らしく。10年以上続く。有名な演劇らしい……。



らしいと言うのは、シンクは見る機会がなく……、アレイク王国の演劇も今回二度めである。もしも盲目の歌姫と呼ばれた。この劇場の支配人リレーヌが存命ならば、童女が楽しんだように。コロコロ笑ったろう。



何せ……オーラルと伯母ミリアが、リレーヌに頼まれ出演した。最初で、最後の作品だったからだ。そうとは知らないシンクは、チケットとパンフレットを買って、ヒナエと並び。席についた。何気なくパラパラっと巡ってると。最後のページに目が止まり。目をしばたいた。そこには劇場の過去の成り立ちと、リレーヌが、ある女優と男優のことを書いた一文がある。

『何れ彼は、一国を興す毎になると感じ。私は一つの物語を作った』

後年……、『英雄物語』と呼ばれる演劇が、世に出た。1人の青年が、中央大陸で、建国して世界から英雄王と呼ばれる物語で、シンクも聞いた事があった。作者はリレーヌと言われてることも。この劇場を作った女性であることも……、

『私は、二人の友人を忘れない永遠に』

シンクは知ることになる。『影を踏まえて』のモデルが、伯母夫婦であったことに……、



物語は、土竜騎士の友人が、突然行方不明になった事から始まる。男の友は、悪友であり。友人の妻とも。友達だった。男は友人が死ぬ筈がないと信じて、残された妻と二人の子供達を。陰ながら助けることを誓う場面から始まり。経緯を朗読で語る。



音楽は悲しげな。重々しい弦楽器が響いた。見れば最前列にオーケストラがいて、生演奏されていると気が付いて、驚いた。

改めて伯母夫婦の物語に引き込まれ。シンクは人目も憚らずヒナエと二人で号泣。演じた若い女優と男優の名演技に。惜しみ無く拍手していた。もしも伯母ミリアがいたら。真っ赤になって照れ笑いして、逃げたしたろう。それくらい赤裸々にミリアの気持ちが、描かれていたからだ。後日。シンクの部屋を掃除したミリアは、パンフレットを発見して、慌てて自分たちの部屋に隠した。シンクはしばらくパンフレットが、無いことに気付くことはなかったが、サノビアが見付けて、演劇の虜になったのは、また別の話である。



二人は野外演劇場で、しばらく休み。時すら忘れ演劇談義に花を咲かせた。

「今度また、私とデートしてください!」

別れ間際。決意を込めた。真摯な願いを言ったヒナエは、真っ赤になりながら、怖くなり目を瞑る。可愛らしい願いに答えるべく。

「ヒナエ。是非ともまたデートしよう!」

快く答えた瞬間。ヒナエは嬉しすぎて、

「あっあれ……、涙が止まらなくなっちゃいました」ぼろぼろ涙を流しすヒナエ、

「あっあれ……可笑しいな、凄く嬉しいのに」

泣き顔を見られるのが恥ずかしくて、俯いていた。

あまりに見た目と違う可愛いらしい姿。優しい笑みを浮かべ、ヒナエの頬に手を当てて、顔を上に向かせ、涙を拭っていたが、ゆっくりヒナエに顔を近付け。涙を優しくキスして拭っていた。

「あっあわあわ……」

固まったヒナエの顔をまっすぐ見詰め。真っ赤になってるヒナエの涙を今度は、優しく指で拭いつつ。

「嫌だった?」

慌てて首をふるヒナエ。 「良かった……」

安堵したシンクの顔がまともに見れなくて、嬉しすぎて……、恥ずかしくて、再び俯いていた。



シンクは、暮れ始めた夕暮れ空を見上げながら。ゆっくり決意を固め。迷いながら、ヒナエの気持ちに答える。

「僕は……、本気でヒナエのこと考えてるから。もし僕の伴侶の1人になってほしい……、僕には君が必要だ、ヒナエ」

それがシンクの出した答えだった。リルム1人を愛するには、シンクの立場が危険すぎた。レイラにも忠告された事だ。ヒナエの気持ちは、無論気が付いていた……、だから迷っていた。彼女達に失礼になるからと、そんな迷いをレイラが断ち切った。純粋な願いと、好意を持つ彼女達の事……、真剣に考えるよう進言された。

「シンク……、本当に?、私で良いのかな?……」それは不安だった。シンクの周りには素敵な女の子が沢山いる。自分がシンクの隣にいて良いのか、不安だったのだ。

「ヒナエ……、君が側にいてくれると。僕は優しくなれる。僕の優しさを守ってほしい」

今日1日ヒナエといて、シンクは優しい気持ちが溢れた。それは純粋な気持ちによる言葉。再びヒナエの目にぼろぼろ涙が溢れたが、輝く笑顔だった。

「……はい」

今はまだ……、子供の口約束にしか過ぎない。そんなことヒナエだってわかっていた。母に言われていたから……。英雄王の子息であるシンクは、よく思われない人間に。命を狙われる可能性があると━━。



だから王妃は、1人では無いと……、複数の側室を迎える可能性があるから、母はヒナエに。シンクの側室になりなさいと言ってくれた。それに……、ライバルのリルムさん筆頭に。みんなと居られたら。きっと楽しいと思う。だから安堵したのだ。自分の夢が叶うと……、シンクの側にいて良いのだと……。





━━南大陸。ファレイナ公国。中庭訓練所━━



幼い少年が、頬を紅いろにして、一生懸命剣の型を訓練していた。ミザイナは公務の合間。息子が頑張って、自分より大きな少年達に混じり訓練する様子を。見るのを楽しみにしていた。木刀で打ち合う合いの手の訓練に入り。今か今かと自分の番をそわそわしながら待つ我が子に。思わず笑みを深めていると。少年はミザイナに気が付いた。大好きな母に手を振りながら。自分の番になると、顔付きが変わり。勢いよく飛び出した。

「ミザイナ様。視察ですかな?」

声を掛けてきたのはジンベイの後人で。剣聖になった。オルレアン殿だ。彼はジンベイの伯父に当たる。



ジンベイの祖父は、初代剣聖を排出した。ファルナスの一族の出で。八剣将ルルフの父だ。何時もにこやかな出で立ちなのだが、他の追従を許さぬファレイナ公国有数の大剣使いである。視線の先を見て笑みを深めると。

「子息様は、頑張っておられますぞ」

太鼓判を押してくれた。 「時に……その。クルミ様は、ご健勝ですかな?」いつも飄々と。掴み所がないオルレアン殿だが、こと姪のクルミの毎になると、優しい顔をしていた。幼い頃はクルミの先生を勤めてくれたこともあり、まるで本当の娘ルルフよりも、クルミを可愛がってくれた物だ。

「ええ~元気過ぎるくらいですわ。ただ最近好きな男の子が出来たそうなんですよ」

「それはまことですか?」

急に気難しい顔をして、眉をひそめていた。

「……陛下。相手はどのような方ですかな?」

何と無く不機嫌そうなオルレアンの分かりやすい態度に。苦笑しながら。

「相手はあのシンク・ハウチューデン。あの子が、一度も敵わないと。手紙の字が踊ってましたわ♪」

先日届いた手紙の内容を思いだし。クスクス笑いだした女王に。驚きの表情を浮かべた。

「まさか……、あのクルミ様が、一度も?」

驚きを隠せないオレルアンに。肩を竦め、薄く笑みすら浮かべ。ミザイナは晴々とした顔を。訓練する我が子に向けた。そして思い出すのは夫から聞いた。夏の出来事。



周りに。オルレアンしか居ないのを。確認してから。彼には真実を話すことにした。我が国の現状とあのオーラルが危惧した。疑似神の狙いを━━。女王の話を聞いてく内に。珍しく動揺したオルレアン。済まないと思いつつ。我が国の危機的状況を聞かせる。

「……陛下。貴女がそのような厳しい状況下で、平静でいられるのは、英雄王の子息殿が、クルミ様の傍らに居られるからですな?」

ええ素直に頷き。微笑すらしていた。オレルアンも噂話程度には聞いていた。シンク皇子の偉業を、魔人の王を討ち取ったと言う出来事。だが裏で、秘密利に起こっていた出来事は、各国の王にだけ知らされていた。そう民にいらぬ不安を与えぬよう。隠されたと言うのが正しい。

「クルミは冬休み。北大陸のリブラ将軍のもとで過ごすそうよ」

「陛下は、まさか?」

「ええ。あの子には知らせて無いけど、本当はシンク皇子と、婚約が決まってるのよねクスクス♪。私とオーラル。それにピアンザだけの秘密だったりして~」

酷く驚いたようだが、最悪の事態を考えれば……、よい判断だと言わざるえない。今や世界最大の国となった。プロキシスの皇子と婚姻関係があるならば、我が国も安泰である。

「一度シンク皇子様が、どのような方か、会いたいと存じます陛下」

子を思う親のように。真摯な願いを。女王は近々叶えようと密かに考えた。

「クルミ。しっかりやりなさい」

艶やかに微笑み。肌寒さを感じる。秋の日差しに。吐息を吐いた。




━━その頃クルミはと言うと━━。


尊敬する母に。そんなこと思われてるとは。これっぽっちも想像すらしてなく。昨日シンクとデートして。幸せオーラ全開のヒナエ。友人のフィアは、困ったような顔をしながら、涼しい顔のレイラを伺う。四人はエドナ学園長室に呼び出され。同席した親友リーザとシンクに。首を傾げた。

「この四人にリーザを加えた五人が、『特別教室』小隊となります」

来春5国合同で行われる。疑似神討伐において、国防の補助要員に。優秀な『特待生』の中から選ばれたと聞かされ。フィアは祖父二人から聞いていたから。素直に了承していた。

「さて。最後のラケル・クエトと言う生徒は……、シンク貴方に任せて構わないのね?」

小さく笑みすら浮かべ。静かに頷いただけだ。ただレイラだけが、訝しげに。愛するシンクを見たが、彼が何も言わない以上。聞かない方がよいと判断して。口を閉ざした。そう……、レイラだけが気が付いていた。そんな名の生徒が在籍していないことを……、



エピローグ



ヒナエとクルミの何か言いたげな様子だったが、優しく二人に笑いかけ。

「また明日の朝練で」

にこやかに告げると。仕方無さそうにとぼとぼ帰宅した。

「シンクまた明日ね」

忙しいエドナ学園長の仕事を手伝うからと。リーザは、学園長の後を追った。




「シンク済まないが、私は明日から朝練には、出られない。母からガイロン重騎士団で訓練するよう言われてるからな」

済まなさそうにと告げたフィアは、ヒナエとクルミを追って、足を早め。肩を並べて歩いていく。

「…………」

意味ありげに横顔を見られていたシンク。レイラの艶ぽい眼差しにどぎまぎしたが、あえてレイラは何も聞かなかった、チラリ先に出た四人を見てから、悪戯ぽく微笑み。気付かれないような絶妙なタイミングで、シンクを後ろから抱き締めていた。

「……レイラ」

啄むようなキスを左耳にして、ヒナエが振り反る前には離れ。何事もなかったように。四人の後を追って走って行った。

「叶わないな……」

ピクリ……、右腕が反応した、左足もついで反応する。

「ラケル・クエト。力を貸してくれないか?」

返事の代わりに。右腕の義手ラケル、左足の義足のクエトが反応した。

「ありがとう……」

二匹で一つの生命体となる。竜人ラケル・クエトとは、シンクの分身と呼べる存在であり、双子と会う前日。ようやく制御出来るようになった。新たな力だ。不安は無論ある。

「父さん……」

下唇を噛みながら。シンクは決意を新たに。歩き出した。

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