閑話序章壊れかけの教室で……
ブロローグ
━━聖アレイク王国。アレイ学園━━。
━━旧校舎のある。林道を抜けた先に。現在『院』として使われている。建物の最上階。『特別教室』と呼ばれる教室は、あった……。
最早古い教室は、使われることもなく。ただ薄く埃が積もり。古い机、椅子が24あるだけで、当時使われたか、ガタガタの教台が、あるが後ろに黒板もない。小さな教室。
古い文献にこうある。初代学園長オール・セラが……、国に危険が迫った時。使うよう。代々の学園長に伝えていた、そのせいもあり。押し入れや物置小屋扱いされなかった、特別な場所であり。学舎の始まりの場所だと言われていた。
なぜ特別な場所なのか、どんな秘密があったのか、初代学園長オール・セラまで、バレンシア王、聖アレイが失踪して、18年後……、ある日突然失踪したため。オール・セラの残した書を見て、知識として知る程度。学生達からは、開かずの教室。秘密の教室と呼ばれていた。
金髪を耳元で揃えた。色白の美しい顔立ちの青年二人。見た目そっくりなことから。双子だとわかる。南大陸の軍国ローレンの狂喜の双子。魔人に囚われ。世界を喰らう蛇ウロボロスの因子を組み込まれ。疑似神と生まれ変わった存在である。しかし……偉大なる英雄達の中の四人。魔王ピアンザ、オーラル、ギラム、オーダイの活躍により。双子は僅かに残った心を取り戻した。敬愛する魔王と、自分たち二人ですら敵わない力を秘めたオーラル。二人がセーフティとなり。双子は、二人の為に生き。死ぬことを誓っていた。周りには分からない精神的支柱。自分たちがしたことに後悔はない。必要だと感じたことを成してきただけだ。だから今を楽しむ。何時しか……。自分たちの命で、何かを成し遂げれるなら。喜んで命を掛けらる。
「遂に始まるね」
「遂に終わるね」
『ようやく果たせる約束。失った僕たちの民の命と。国をめちゃくちゃにした。疑似女神を滅ぼす者達を育てる』
「ぼくは選んだ……」
「僕も選んだ………」
学園部隊の生徒達を。二人は夕日を見つめながら。ゆっくり歩み出した。始まりと終わりを告げるように━━。
━━トーナメント決勝から数日後……。
新たな催し。トーナメントが大盛況で。素晴らしい結果が出た。エドナ学園長は、直ちに結果を。国内の重鎮、国王夫妻に書面で知らせ。諸外国の王。学園に知らせることを了承してもらい。バレンタイン教頭と義娘リーザに手伝ってもらいながら。徹夜で諸外国の学園に伝える書面を作成していた。
「お義母さん。こっちはまとまったわ♪」
てきぱきした面倒なデスクワークが、得意なリーザがいてくれ助かっていた。
「ご苦労様リーザ。後は、私とバレンタインで大丈夫だから、貴女はシンクを呼んで来なさい」
「えっ、あっ、はい。分かりました」
娘の助けがあり。冬休み前までには、各学園にトーナメントの結果を。送り検証してもらい。新しいカリキュラムになるよう、レポートとして、送ることが、明日の夜には可能となる。パタパタ小走りで、職員室から出たリーザを見送り。柔らかく微笑んだ。
「学園長……本当にリーザを『特別教室』に。入れるおつもりですか?」
不安を抱くバレンタインは、これまで結果として、エドナ学園長の言うとおりにし。全て上手く行ってた手前。言い出せなかったのだろう……。また此度のトーナメントの結果で、学園は経済的効果もあり。冬のボーナスが上がることに……。嬉しくないとは言えないが、気持ちとして、一見全て……順調に映る一方で、『特別教室』の教諭に。あの双子に任せる事実を。看過できない。
他の重鎮。教諭から。異論は無論上がっていた、だが前国王。さらに前オーダイ将軍。前ガイロン重騎士団長ギルバート達が、重鎮の危惧する言葉を封じこめ。推し進めたと聞いて。我が耳を疑った。
我が国を一度ならず危機に陥れ。また魔人に捕まり。疑似神に造り変えられた哀れな双子……、いくらオーラルや魔王が、責任を取ると言っても……、バレンタインは忘れない。何人も可愛い生徒達を失った。また伝染病で、なくなった幼い子供達も居たのだ。そんな親御の気持ちを考えると、平静ではいられない……、
「バレンタイン……、貴方。何か勘違いしてるようね?」
侮蔑を含めた眼差し。イライラ浮へた笑みを張り付け。冷たい声音で、告げた。
「学園長?……」
意味が分からず。戸惑いが顔に浮かんだ。ただ悔しくて、危機感の足りない新しい重鎮達……、救いはオーラルと供に戦った仲間が、中枢に食い込んだこと、フロスト騎士団の新しい団長も。かれの旧友だと聞いた。我が国は、どれだけ彼に救われているのか……、恥ずかしいばかりである。
「考えなさい!。何故オーラルやバローナが、疑似女神を討伐すると名言して。来春と決めたか、また彼の弟のブライアンが、リドラニア公王になることが決まったか、何故━━今。狂喜の双子を『特別教室』の先生に選び。あの賢王と呼ばれたレゾン王や、オーダイ将軍。ギルバート・ガイロン准将までもが、後押しなさったか、また夏休みの出来事があったにも関わらず。実子シンクをそのまま我が国に戻したのか」
立ち上がり。一気に捲し立てられ。バレンタインは学園長の剣幕に仰け反る。
血の気を失い。オロオロしだした。バレンタインの様子に気付き。自分の不甲斐なさに。頭が来た。
「あ~もう……、リリア……」
自分でも気が付かずに。愛弟子とも言えたリリアの名を口にしていた。ピクリ反応したバレンタインは、ハッと顔を上げた。
それすら気が付かず。自分の考えに没頭していたた。彼女がいたら。もう少し楽になるのだが……、そんな切ない吐息。バレンタインは、目をしばたき。自分は何を間違えたのだろうか?、疑問を抱いた。
柔らかい赤髪。最近伸ばした髪を後ろに縛り。ゆったりした『院』生が着る。黒のローブ姿のリーザは、小さな鼻に乗せる魔法の眼鏡をしている。これは母の形見で、古代の民の文字を。自動翻訳する機能と。ワードでルーペの機能が備わる。高価なアイテムである。リーザの母。リリア・カーベンは、アレイ学園の教諭であり。宮廷魔導師として、沢山の人々を救い。フローゼの町民から。未だに母を慕う声を聞くのだ。夏休みの出来事は、リーザの意識を変えた。自分と同じような夢を抱く。二人の友達が出来たから。本当は━━後六年。学園にいようと思ったが、来春卒業試験を受けようと考えていた。義母には話たが、もう少し考えてから。答えを出すよう言われた。でも友人達が、自分より先を歩いてく不安。焦りを抱いてたのも事実。義母から、教員の手伝いを任されるようになり。もう少しだけ学生生活を続けることに決めた。
「でも義母さん……。シンクに何の用だろう?」
トーナメントの間。リーザも裏方をしていた。3ヶ月あまりの日々は、とても忙しくあったが、楽しくもあった。彼が学園に来てから、少しずつ変わった気がする。羨ましい気持ちはある。「大変そうだけど~クスクス♪」
彼はあまりに魅力的で、彼に好意を抱く女生徒は多く。また競争率も高そうだ。
窓から外を見てる。
「最近見ないわね……」木の枝で、隠れるように寝そべってたミルを最近見掛けない。トーナメントの活躍から。やんごとないお嬢様達から逃げてると聞いてる。
「皆さん居まして?」
「いえ此方には……」 廊下を曲がったところで、そんな声がしていた。首を傾げ何気無くそちらに目を向け。目を見開いた。数人が集まりひそひそ話していた。お嬢様達のすぐそば。窓枠の下にある。小さな足場にしがみついてるミルの姿が、丸見えだ。
「あれは……」ミルとは顔見知りである。仕方なく助け船を出すことにした。
「あっ……」
注意引くような声を上げた。わざと視線を自分が歩いてきた方に向けた。 「貴女どうしましたの?、変な声を出して」
驚いた顔をしながら。おずおずといった感じで、 「いえ……、今此方を見て慌てて逃げた。生徒がいたんです」
お嬢様達はハッと素早く見合い。
「そう、その生徒は……」
つり目がちな眼差しの。いかにもお嬢様という出で立ちの女生徒が、リーザの肩を掴み。
「その方の顔を見ました?」
詰問する。リーザは戸惑いながらもええと答え。 「男子生徒で、確か……ダルホォン家の……」呟いた瞬間。目の色変えて、お嬢様達は我先に。ドタドタ走り去った。みんな見えなくなってから。
「先輩……大丈夫。行きましたよ」
窓の外に。小声を掛けた。その場を退くと。よいしょと掛け声をかけて、身軽に窓枠から。廊下に降りた。
「いや~助かったよ」
苦々しい顔を浮かべたミルは、リーザの顔を見て、顔見知りであるとはたと気付いた。
「あれ君は……、」
ミルも知っててくれたようだ。
「こうして話すのは初めてですね。リーザ・カーベンと申します」
肩をすくめ挨拶を交わした。
「ああ~君は、よく学園長やバレンタイン教頭といるね」
「バレンタインは父ですから」なるほどと頷き。深々頭を下げ、感謝を示した。 「ミルさんさえ良かったら……、シンクさんに相談してはどうでしょうか?」
そう提案した。やや驚いたミルの肩に、栗鼠の月が、顔をだし。
「それはいい考えだと思うわミル」
やたら人間臭く喋った。ぱちくり呆気にとられたが、あまり驚いた様子がなく。ある結論を付けた。
「先輩の使い魔ですか?」
逆に普通に接され。月が驚く。
「私『院』生なので、わりと見慣れてるんです。それに私の友人に。自動人形を使い魔にする。変わった友達もいるから」 なんて言われて。ミルと月は顔を合わせた。
「え~と後輩。シンクと知り合いなのかい?」「ええ~先日。シンクのチームにいた。フィア、ヒナエと幼なじみでレイラ、クルミさんシンクとは、『学年戦争』傭兵ギルドの仲間で、友達ですから♪」
驚いたが、なるほどそれならミルの現状や、シンクに相談しては?、提案出来る筈だ、
「その……、案内とか頼めるかな?」
おずおず申し出た。
ミルを連れてとなると。目立つ道は、見付かる可能性があった、だから特別に。職員の使う地下通路に案内して、『院』から。演舞場に向かうことにした。
「学園にこんな道があっとは……」
物珍しそうにキョロキョロするミル。リーザは苦笑しながら、
「この道知ってる学生は『院』生でも私と、準教諭扱いの観察官四人だけなんですよ。許可されてる通路も限られていて、詳しいことは解りませんが、王家の秘密の通路に繋がってるそうです」
「なるほどね~。それなら普通は知らないか、可能なら昼寝に使えるかと、少し思ったが……」
「クスクス難しいと思います。だってエドナ義母さんが、徘徊してますし」
「うげっ……それはちょっとな」
ため息を吐いた。
「まったくミルったら……」
呆れた声音の月が、腰に手を当てて、ため息を吐いていた。そんな1人と一匹の様子があまりに可笑しくて、クスクス笑うと。ミルも嬉しそうに笑ってくれた。
「君は変わってるね」
初めて話す相手にそん評価は、どうかと思うが……、変わってる自覚はある。変わった友達も増えたし。珍味な顔をしたリーザに月が慌てた、
「もうミルたら女の子に。変わってるなんて言うなんて、失礼よ!」
あっ……、寝癖を隠す帽子を取って、すまなそうな顔をして伺う。
「大丈夫ですよ月ちゃん。わりと慣れてるから」柔らかくクスクス微笑み。そうだとパチリ手のひらを打って、
「昨日。南産の胡桃貰ったんだけど、月ちゃん胡桃食べる?」
ピクピク胡桃と聞いて、クリクリ眼を輝かせ、パタパタ尻尾を動かした。「だっ、だだだだ大好きです」
「そう。明日持って来てあげるわ」
「ありがとうございます♪」
キラキラした羨望の眼差しで、あっさりミルの肩からリーザの肩に渡り。頬に親愛のキスをした。とても珍しいことである。『院』のある。旧校舎から抜け出し。二人は演舞場のある林道を抜けた。 「さあ~着きましたよミルさん。シンク達なら。大概此処か、学園通りにある。友人のヒナエの道場にいるとおもいます」演舞場に入ったミルは、凄まじい斬撃音に。足を止めた。
「ヒナエさん行きます!」
「はっはい。お願いしますサノビアさん!」
金の髪を雄壮に乱れさせ。純白の翼を広げ、宙を飛び回り。木刀を構え滑空していく。
「これは……?」
「ミルさんは初めて?、彼女はサノビアさん、シンクの伯母ミリアさんの家に住み込みで働く。翼人の女性で、私達の友達なんですよ」
「そっそうか……、彼女が噂の戦乙女か」驚きは隠せないが、そんなこと気にする以上に。目を見張ったのは、翼人の戦士。一目で、一流の戦士と分かるサノビアの攻撃を、紙一重でかわし。無手のヒナエが、僅かなスキを突いて、反撃してることだ。
「驚くよね。呆れるくらいみんな貪欲なんだから……」
ムスリむくれた顔をした。リーザにも何かしら抱える気持ちがあるのだろう……、
「おっ、リーザじゃないか、演舞場にくるとは珍しいな」
「あうんフィア。お義母さんに頼まれて、シンク呼びに来たんだけど?」 「ああシンなら、レイラの基礎練見てる。もう戻ると思うよ」
顎で示したのは、属に言う基礎体力作りに使う器具のある。小部屋で、体を鍛える地味な訓練施設である。リーザにはとてもじゃないが、無理な話で、聞いただけで嫌そうな顔になっていた。
「そちらの君は確か……」
「ミル・ダルフォン・カーリア」
自分から名乗る。そうそうと頷き。やや不躾な眼差しで見てきた。
「うむ……、あのシンクに勝ったのが、こんな優男とは」
失礼な物言いだが、不思議と腹は立たない、月が何かしら言いたげにミルの帽子を掴んだ。きっと人目を。気にしてるのだろう。小さく苦笑していた。
「私はフィア・ガイロン、君と直接会うのは初めてだが、スイズ殿は御健勝ですか?」
驚きを浮かべた。まさか祖父の名が出るとは思わず。戸惑っていると、
「スイズ殿と私の祖父ギルバートお祖父様とは、同級生だと聞いている。改めてミルと呼ばせていただく」
無骨な物言いになるが、決して相手を軽んじてる訳ではなく。生真面目な性格だから、そんな言い方になってるのだと気が付いた。なるほど不器用な女性らしい。
「それで構わないよ。君のことリーザが呼ぶように。フィアと呼ばせていただくから」
お互い様さと薄く笑う、フィアはニヤリ楽しげに笑い、
「暇ならどうだ?。一本」
木刀を投げてきた。咄嗟に受け取り。仕方ないなって顔をしたが、まんざらでもなかった。
「あっ月ちゃんおいで、サノビアさんからナッツ貰ったんだけど……」
大人しくしてたが、ピクピク髭を動かし。パッと目を輝かせ、
「はあ~い」あっさり主人のミル置いて。さっさとリーザの元に走る。薄情な下僕に。苦笑しつつ。舞台に上がった。
「どうぞ月ちゃん♪」
手のひらに乗せた殻付きナッツに。キラキラ目を輝かせ。
「いただきますま~す♪。あむあむあむ。カリカリ」
殻を砕く快感。ほんり苦味のある薄皮。カリカリっとした食感。噛み締める度。ナッツの油分が、口内に広がり。毛が粟立つぼど嬉しく楽しいから。尻尾をフリフリ、可愛らしい姿に。
「可愛いい~♪、触ってもいい?」
ヒナエがいつの間にか練習を終えて。月の鼻先をつつく。
「ええ~と、痛くしなければ」
月ちゃんが喋るのに。驚いたヒナエだが、にっこり笑うと。子供ぽさが滲む。
「喋る栗鼠?、東大陸には、珍しい動物がいるもんだな」
しみじみ呟くのは、タオルで汗を拭いながら。サノビアさんで、豊かな髪を束ね直す。
「さっ、サノビアさん素敵過ぎます♪」
目をハートにして、ハーハーしてる。変態少女。もといモレンに。なんとも苦笑しながら。リーザに訪ねる。
「違いますよ~。この子は月ちゃん。今フィアと訓練してる。ミルさんの相棒です」
「そうか……、その……、胡桃もあるが、食べるか?」
頬を赤らめ、おずおず月ちゃんに訪ねながら、胡桃を幾つか取り出した。 「うわあぁあああ、いただきます~♪」
あらかたナッツを食べて、物足りないところだったから素直に答えた。軽快にリーザの手から床に降りた月は、トコトコピョンと飛んで、サノビアの手に着地。
「いただきます♪」
わざわざ断りを入れて、程好く乾燥させた胡桃に、前歯を立てた。カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリパカリ。胡桃の継ぎ目を削り綺麗に、半分に割って、丸々大きな実を取り出した、あむあむあむ、頬をパンパンにして、溜め込むと、再びカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリパカリ。を繰り返す。まじまじ月ちゃんの様子を、みんながいつまでも見ていた、
シンクとリーザを見送った後、光が探しましたよと小言言われて。苦笑もらしたが、程好い疲労に、気分も優れ。意気揚々と帰宅するミルは、シンクの忠告に。頭を悩ませる。
━━少し前。
「なっなあ。その……相談があるんだが……」
話を聞き終えたシンクは、にっこり微笑み。
「良かったですね先輩」 「なっ、何を……」
「だって先輩を必要だと思うから、先輩のことが知りたいと思うから。彼女達は、話そうと努力したんです。なら答えなきゃ失礼ですよね?」
ハッと息を飲んでいた。その通りだった……、自分は何をやってる?、目に掛かった雲に、光が射した気がした。
「そうだな~、自分に好意を抱いてもらったんだ~、誠心誠意彼女達に対応しなければ、失礼だよね~。ありがとうシンク」
「シンで構いません」
「なら俺のことはミルと呼べよ~」
肩をすくめ気楽に言うミルに。小さく笑いながら、素直にはいと答え。
「ミルさえ良かったら。練習に参加してくださいね。多分これから必要になるから」
「ん?、そうだな~」気分が晴れ晴れしたミルは、真っ直ぐ前を向いた瞬間。
「あっ!、ミル様、アネス様。ミル様いました」黄昏る間もなく見つかってしまった……、やれやれ苦笑漏らしたが、もう逃げることは止めだな。
アネスと呼ばれた金の豊かな髪を、ゴウジャスに縦ロールにした。いかにもってお嬢様。学園の制服ではなく。ドレス姿にあるのを許されてる。ただ1人の生徒。レイ家の御息女アネス・レイ・アレイク。前国王レゾン陛下の弟ホーミィ殿下の娘で、王位継承権5位の姫様でもある。王位を持ちながら。類い希な豊かな才があり。なんとトーナメントに出場してさえいた。準々決勝でフィルチームに負けたが、魔物討伐において、シンク、ヒナエに次ぐ。第三位の素晴らしい殲滅タイムを誇る武道家だ、師はいないが、ミラ・バウスタンに基礎を学び、才能を認められ。バウスタン流の師範として。僅か6歳で認められた。天才拳士である。
アネスはおや?と、僅かな差異に気付いた。普段父と供に政治に救う。寄生虫を相手に、様々な策謀を見抜かねばならぬ立場、其ゆえ相手の観察は欠かせない。だからミルの面差しが、今朝のいかにも面倒なという表情から、真摯な物に変わっていた。労る優しい光を。瞳に宿していた。クスクス嬉しそうに。うっとり頬を染めたアネスであった。
━━アネスが、ミルを最初に見たのは、準決勝だった……、
まさか自分が、フィル・マノイのチームに負けるなど、考えもしなかったのだ。あの日のことは……、未だに忘れられず苛立つこともある。もう仕方ないのだ、結果は結果として、受け入れるしかなかった。取り巻きである。部隊の面々に誘われ仕方なく。そんな軽い気持ちで、続く準決勝二回戦の観覧をした、
そこで一目惚れしてしまったのが……、ミルだった……、あのシンク王子に勝つに至った力。彼こそ私の伴侶に相応しい。特別な才を持った男である。もっとも本音を言えば、顔が好みなのだ……。思わず苛めたくなってしまう。見た目は優男なのだが、時折見せる顔。母性を刺激させる眼差しと。甘い声。絶対私の物にすると決めていた。
沢山の女の子達に囲まれたミルは、一人一人きちんと対応して、みんなと話す時間を作る約束して、どうにか納得してもらった。突然変わったミルの紳士的な対応に、益々人気が上がったのは、言うまでもない。
「ではミル。明日楽しみにしてますわ♪」
晴れやかな笑みなのだが、ほんのり恥じらいが見え隠れした。可愛らしい笑顔が、印象的のアネスを見送り。小さく嘆息していた。
「何だ……、普通で良かったんだね光、月)
「チチチチ~、チチチチ」
そうだねっと。ミルに思念が伝わり。嘆息していた。考えてみれば、今まで月が口を酸っぱくして言われてた通りだった。物憂げな月の視線で思いだし。ばつが悪そうに。頬を掻いた。
━━シンクを連れ。職員室に戻ったリーザの二人に、待ち構えていたエドナ学園長。直々にお声が掛かる。また何かあったか、悪巧みしてるのだと、リーザが警戒を顕にしていた。そんな拙い警戒心を顕にしてるリーザを、微笑みもって見つめながら、
「シンク貴方を呼んだのは、貴方に『特別教室』の補助教員として、教諭と供に。選ばれた生徒の指導をお願いしたいから、わざわざ来てもらったの」
「……?、『特別教室』」
聞いたことない話に。リーザは首を傾げ、シンクは眉をひそめ、厳しい顔をしていた。
「フフフ貴方、気が付いてたのね?」楽しげに笑う母だが、眼差しはとても厳しい。迷いながら。シンクは小さく頷き。
「父の様子と、ブライアンが、来春即位すると聞いて、あくまでも憶測ですが……」
表情を厳しくして、シンクが答えると、小さく頷き、嘆息していた。
「国王夫妻、バレンタインもそれだけの危機管理力があれば、良かったんだけどね……」
苦しい胸の内を暴露した、
「……お母さん?」
不安に胸がキューット痛み。泣きそうな顔をした。疲れた笑みを見せるエドナ学園長は、
「リーザ貴女にも『特別教室』に入ってもらうわ」
呻くような願いに。ただただ、
「はい……」返事をしていた。
「まだ詳しい話は出来ないの。『特別教室』の生徒には、知り得た情報は、他言無用にしてもらうわ」
それだけ重大な意味があるのだと、リーザにも判った、
「シンク貴方に『院』に入る許可が降りました。内外的に。『院』生に選ばれたからと言うことになります」
あくまでも表向きは……。
「承知しましたエドナ学園長……、精一杯勤めさせていただきます」
何も聞かず。小さく頷くシンクに。感謝の念を抱きながら。
『シンク……リーザを、我が国を守って……、お願いね』
生徒にしか過ぎないシンク。だが一方で、生徒ではなく英雄と呼ばれていたシンク。我慢出来なかった。母の顔を覗かせ。複雑な胸中を押し込め。唇を噛んだ瞬間。涙が溢れた。
「僕に出来ることなら、精一杯やらせていただきますよ学園長」
あの母が涙を……、衝撃を受けた。だがそれ以上に。虚を突かれたのがエドナだった。
「フフフ……、貴方は、本当にオーラルにそっくりね」
彼が……、戦士養成学校にいたとき、良く口癖のように言ったのが、
『ただ僕に出来ることをやるだけです』
そう言って、過酷な事件を。誰も成し遂げれない危険な任務を、淡々と確実に。最良の手段を選び。人々を救う。優しい子だった……。ハッとした。
「そう……、だから貴方達兄弟は……」
全てに気が付いていたと、言っているのだ。
エピローグ。
本来の機能を失っている。古い教室。それは……、歴代の王だけが知ことをゆるされた秘密であり。『魔王の書』にすら記されていない。偉大なる魔法使いが作ったシステムが、隠されていた。
システムを機動するには、2つ方法がある。一つは聖アレイが持つ。神の遺物を使う方法。
しかし使い手が居なくなった場合。使えなくなってしまえば意味はなくなる。だから2つ目の鍵を用意した。
オール・セラの懸念通り聖アレイと。建国王バレンシアが、一夜の内に謎の失踪した。その為鍵の一つ聖王の剣が、失われた……、本来のシステムの発動には、もう一つの鍵を用いるしかない。別の条件を満たせば……、教室の機能が発動する。
エドナ学園長とリリアは、旧校舎の秘密を探っていた。リリアは死に。残されたエドナは学園長となり。長年探し出し。ようやく見つけた……。もう一つの鍵を。
「面白いよね~」
「だから面白い」
狂喜の双子は、そのためのツールである。
高い魔力と強い心の何れかを持った。24人の生徒が居るとき……、
聖なる鉄槌が放たれる。太陽神の一撃が……、最後のピースこそ。学園有望なる『特待生』の本質。なのだから……、




