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少尉ですが何か?  作者: 背徳の魔王 人と話すうちに性格から行動パターンを読み取り。隠された本性を暴き。時に未来を予言することからリアル魔王と呼ばれ。材料と調味料の分量で味がわかるので、絶対味覚と本人が詐称する一般人
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女の子同士で、大騒ぎですね。

シンクに仄かな思いを抱く、ヒナエ、クルミ、レイラをフィアは夏休み。ガイロン家の所領にある。別荘で過ごさないかと誘う。隠されたオーラルとクエナの優しいエピソード。更なる波乱の予感が

プロローグ



━━昨日クルミの提案で、シンク達みんなで1日中遊び、楽しい時間を過ごしたフィア・ガイロンは、



━━翌朝。母クエナに呼ばれ、屋敷の執務室に赴いた、


昨夜帰宅した母に。新しい友達二人を誘い。ヒナエを連れて、祖父達が統治する。町の別荘に行くこと伝えたから、おそらくその返事であろう。



ガイロン家が所有する。港町フローゼは、

15年前━━。

中央大陸事件の時に。魔物の軍勢が現れ。オーラル率いる第1師団が退けた事があった。


後に。オーダイ将軍が、戦後処理に苦心した町は。ガイロン家の所領として、目覚ましい発展を遂げた。



今では、交易の町ドマーニに次ぐ。海洋貿易の拠点と、数え上げられるまでになった、もっとも国政に携わる重責から解き放たれ。祖父ギルバート・ガイロンは、領主の仕事を楽しんでると。母は笑っていた、もう一人の祖父ヴァレ・オーダイと、気楽な隠居生活を謳歌してる噂まで。クエナの元に届いている。



あくまでも噂では、元国王夫妻が、二人を訪ね。お忍びで遊びに来てると聞くが、あくまでも噂であろう。

「フィア、お父様から、貴女宛に手紙が届いたわ」

クスリ、そばかすを化粧で隠し。美しく化けた母は、仕方ないわねと唇を綻ばせる。手紙にざっと目を通して、母の表情と理由を理解して、似た者親子ゆえ。呆れた顔をしていた。

「お祖父様達らしい。催促ですね」嘆息を漏らしていた。手紙には━━、

夏休みなんだから、早く顔を見せにくるよう。綴る内容であった。

「それで、新しいお友達も。連れて行きたいと言う。話だけど。あちらの親御さんに報せるから、どなたかしら?」

「あっ……、そうか。えーと母様。実は……」

考えれば母の言うとおりである。昨夜遅く帰宅した母を気遣い。ざっくりとしか、話して無かったのを思い出した。フィアは色々迷いながら、アレイ学園で出会った。シンクの話を始めに。幼なじみでライバルのヒナエ、そしてシンクを中心に起こった出来事。買いつまんで話した。その中で仲良くなった女友達の事も。

「シンクが、入学したのは聞いてたけど、通りで最近エドナさんが機嫌良くて、シルビアさんが悪い訳ね」

何故そこで学園長の名と、財務のトップの名が出たのか、首を傾げる。

「そうね~。レイラさんの母マリアは、私の同級生だから、直ぐに返事を聞けるけど、クルミさんの母ミザイナ様には、ミラに頼むから心配しないで、みんなでお父様に顔を見せてきなさい♪」

パッと顔を輝かせる娘に、クエナは懐かしそうに目を細め。ボソリ……、

「ミリアさんてば、お店休みにする訳だ……」

「ミリアさんて、お母様の友人の?」

「そうよ~、貴女も何度かお会いしてるわね。あの方がオーラルのお姉さんで、シンクの伯母よ」

「あの方が……」唖然とする娘の頬をつつきながら、小さく嘆息を漏らして、

「夏休み明けにも。シンクと会う時間を。作らなきゃね♪」

クエナは画策した。


母においとまを告げ。朝の鍛練後。早速皆に知らせるべく。ヒナエの家に向かった。


━━ヒナエの家は、学園のある。南通りに隣接していて。主に飲食店の多い通りである。

昼間は、近隣の飲食店で働く女性達や、主婦相手に、エクササイズで汗を流し。師範であるヒナエが戻る時間帯から、自分を鍛えにくる。強面のこの国の精鋭が、腕を磨く。

「ヒナエいる?」

道場ではなく。住居のある。勝手口から声を掛けた。それは道場の入り口に、夏休みを報せる張り紙があって、ちょっと驚いたからだ。「は~い。よっと」

顔を出したのは、黒髪を後ろで縛り。珍しくピッチリした。革の胴着以外の私服姿、ヒナエの母ミラさんだ。

「あ~らフィア。お久しぶりね」

薄く化粧までしてるから、ハハ~ンピーンと来た。

「ミラさんお久しぶりです。おめかしして、これからデートですか?」

「うっ、違うわよ~。元旦那に呼ばれて、ちょっとドマーニまで出るから」

照れくさそうに笑うミラさんは、同性から見ても。可愛らしい人である。

「あっ、だから夏休みの張り紙が……」

「うん、ヒナエは今年も。貴女達と過ごしたいと言うから、休みにしちゃったのよ~」

あっけらかんと言われて、なるほど納得した。

「ヒナエいます?」「ええいるわ。入りなさい~」

「失礼します。あっそうだミラさん、入れ違いになると母さん煩いから、今言っときますね。あのクルミさんもご一緒なので、ミザイナ様に連絡をお願いしたいそうです」

「あら、あの子と友達にね。へえ~わかったわ。フフッミザイナもきっと喜ぶわ。知らせとくね♪」

ヒナエの部屋は、台所を挟んだ奥にあって、

「ヒナエ入るよ」

「は~い、どうぞ」 返事もそこそこに。引戸を開けた、ふわり独特の香りを嗅いで、懐かしい気持ちになった。



━━ヒナエの家屋は、アレイクでは珍しい、華の国ダナイ様式で、ヒナエの部屋には畳と呼ばれる。いぐさを編み込んだ。敷きものが敷かれていた、

「明後日。フローゼに行くこと決まったから、そのつもりでな」

「そう!わかった、フィアもしかして二人に。これから知らせる?」

「ああ~そのつもりで、迎えにきたのだ」

にっこり嬉しそうに。笑うヒナエは、

「ありがとうフィア♪」

幼なじみゆえの親友の心使いに。感謝していた、二人の友達クルミ。レイラとは恋敵でもあるが、仲良くなった友達である。奥手なヒナエのためで。二人と話す機会を作る。それがフィアの不器用な優しさである。



━━二人が、最初に向かったのは……、クルミの住まい。学園の寮の一つで、ヒナエの家からも近い。



ただクルミが住んでる寮は……、

豪奢な建物は、どう見ても。貴族の屋敷にしか見えず。しかも受付には、屈強な警備員がいて、どんな用か、またその人物とのあいだかは何か、根掘り葉掘り聞かれ。フィアがガイロン家の息女であることが分かり、ようやく面会を許された。

「考えれば相手は、他国の王族だったな」

「そっ、そうだよね~」

普通の家族と住んでる。シンクが変わってるのだ、二人は警備員に案内され。寮の中に入った、中を案内するのは無論女性の警備員で、寮では住人より、メイドの数が多く。甲斐甲斐しく働いていた、

「クルミ姫様、失礼致します。ご学友が参られております」

「どうぞお入りください」

部屋の主から許しをもらい。二人はようやく部屋の中に入って━━、



言葉を失っていた。豪奢な部屋なのは、予想通りだが、クルミの姿。と言うか……、



普段とのギャップが凄すぎて……。二人は絶句していた。部屋全体は薄い桃色に統一され。ファレイナ公国の国花桜をモチーフにした、美しいカーテンが、夏の日差しを和らげ。涼しさを演出していた。細かく彫刻された椅子にチョコンと。可愛らしいく座って、クルミに似合いのふわふわのドレスを着こなし。紅茶を上品に一口啜る姿は、いかにもお姫様みたいで、可愛らしい風貌だけに。とても似合うのだ、

「ヒナエさん、フィアさん御機嫌よう」さらさらの栗色の髪が風になびいた。二人の友人が訪ねて来てくれて、嬉しそうに可愛らしく微笑して、小首を傾げて挨拶してきた、まるで本物のお人形さんのように愛らしいく、普段学園で見る。剣を背負ってる時とは大違い過ぎて、もはや別人だ、対応に困惑していた。

「なっ、なかなか素敵な住まいだね」

「ほっ本当に」

「ありがとうございます。お二人も。一杯いかがですか?」フィアとヒナエを済まし顔で、お茶に誘う。二人は狐につままれた気持ちながら、

「いっ、一杯頂こう」

「お願いします」

顔がひきつるフィアと、緊張で顔が強ばるヒナエのために。洗練された手つきで、香しい香りのアールグレイをカップに接いで、上品に置いた。

「お砂糖とミルク、またはお砂糖とレモンは、お好みでどうぞ」

「あっ、ありがとうございます」顔を強ばらせながら、緊張を隠せず、紅茶を頂くと、

「あっ、美味しい」 素直な感想に、クルミは嬉しそうに笑う。


しばらく静寂が続き。カップを傾ける音だけが響いた。

「ようやく気配が消えた。何時も通りで構わないわよ……」そう言われて、二人は安堵した。



「私も一応王族です。それなりのマナーを学んでますの」

クルミから、王族には義務として、洗練されたマナーが、必要になるからと、アレイク王国で、もとても格式とマナーに厳しい寮で、生活してること聞いて、

「大変なのだな……」

しみじみ呟くフィアだった。



三人は、堅苦しい寮を抜け出し。一度中央公園のカフェ・ブルーで、もう一度お茶してから、レイラ・バレス家に向かうことにした。

「そう言えば、同じ王族のシンクも。テーブルマナーは完璧だったな」

妙なこと思い出してると。

「よくよく思い出したら、私シンクと一度会ってたのよね」

クルミの突然の暴露に、二人は興味を惹かれた。

「ヒナエさん、貴女のお母さんとも。何度かお目にかかってたんだけど、話すの遅れて、申し訳無かったわね」

いつもは……、肩肘張って、強気なクルミなのに。二人が戸惑っていると、ほろ苦く苦笑滲ませ。

「レイラに良くからかわれるのだが……、剣を背負ってると、どうも勝ち気になるのだ、嫌な気持ちにさせてたら済まないな」素直で可愛らしいクルミ。二人もよくよく考えたら、普段の姿を知らなかったと、思い至る。

「此方こそ、勝手に勘違いしたな、私も母から、クルミの母君の話は聞いていた、これから貴女のこと。知って行けると楽しみが、増えたなヒナエ」

「ええ。沢山楽しみましょうねクルミさん!」

「ありがとう二人とも……、実は同年代の友人がいなかったから、とても嬉しかったんだ」

クスクス可愛らしく笑う姿。とても絵になる。ぐっと強敵なのにヒナエは、クルミのさらさらヘアーに目が釘付けである。

「ヒナエさんの髪。綺麗ですね~、触っても良いですか?」

「あっ、それは私も思ってた」

フィアにまで頼まれ、仕方なさそうに。

「構わないよ」了承すると二人は目を輝かせ。心行くまで堪能した。

「クルミさんの頭を、シンクがポンポンする気持ち。少し理解した」

悔しそうにヒナエが言えば。そうだなと同意して、クルミを照れさせる。

「何か照れるな……」

三人が、愉しげな笑い声を上げてると。三人のテーブルに、ベリーの美味しそうなケーキと、紅茶がそっと置かれた、

「あっえと~、頼んで無いが……」

戸惑うクルミに対して、ハーブの茎をピコピコさせる。しゅっとした中年男性が、優しい眼差しをヒナエに向け笑い。

「気にしなくていい。娘の新しい友達だろ?」

「娘?」キョトン首を傾げる。ヒナエを見れば、照れ臭そうに笑う姿があった、

「お父さんのブルー・ファミイユです。フィアは知ってるよね」

「勿論だ、クエナは一応同僚だからな」

苦笑混じりに頷いた。

「こちらクルミ・アルタイルさん」

ちょっと驚きの表情浮かべ。成る程と頷き。

「ジンベイさんに似てるね」

さらり驚くこと言われた。

「実はな……」

フィアが代表して、ヒナエの父がカフェ・ブルーのオーナーであり、アレイク王国の近衛連隊長だと教える。

「ヒナエも。色々と大変なのだな」

しみじみ呟かれ。ブルーに苦笑させた。

「ヒナエ……母さんには、内緒だぞ」ウインクして、結構な額のお小遣い渡して、颯爽と仕事に戻って行った。

「母曰くブルーさんは暇な時だけ。軍人の仕事するそうだ」

「良くそれで、重鎮が勤まるものだな……」

クルミは妙な感心1割、9割は呆れていた。



━━王都の北、通称貴族街。



下級騎士の住まう通りを抜け。役職毎に住まいが固まる。俗に中流貴族の屋敷が並ぶ通りに、レイラの住まいは隣接していた。元は下級貴族にあたるバレス家だが、『オールラウンダー』の称号得た、レイラの兄カレイラの数々の武勲により、前国王から功績を称えられ。男爵の爵位を受けており、古くも大切にされた屋敷で、夫婦仲良く暮らしていると。レイラの父ハウリは、近衛連隊小隊長の職を辞して、現在戦士養成学校の教職にあると、フィアは聞いている。



屋敷を訪問した三人を出迎えたのは、バレス家に長年支える老婆で、レイラの友人だと伝えると。嬉しそうに出迎えてくれ。

「まあ~お嬢様のお友達でしたか!、今出ておられますが、近日の子供達に勉強教えてまして、間もなく帰宅されます。こちらでお待ち下さい♪」

小人用がわらわら代る代る対応しては、嬉しそうに笑い、三人を歓待してくれ。どうしたものか、戸惑っていると、

「ばあやレイラのお友達ですって!」

嬉しそうな声が筒抜けである。

程なくノックされ、ホッそりした顔立ちの。優しそうな女性が入ってきて、三人を見るや、それは嬉しそうに笑うのだ。

「皆さんいらっしゃい!、レイラの母マリア・バレスです」

三人が自己紹介するたび。驚いたり感心したり。反応が可愛らしく。めぐるましく表情を変えた。

「貴女がフィアさんね。クエナちゃんとは、同級生だったの~」

娘の友達が来たことが、よほど嬉しいのか、レイラが学校でどうか、子供がお菓子をねだるように聞いてきた。

「本当は、後三人仲の良い友達がいるのですが、諸事情で中央大陸に行ってます」

「へえ~どんなお友達なのかな?、かな~?」

三人はちょっと迷いながらも、魔王の愛娘リルム、男装の麗人エルマ、光の王子シンクのこと買いつまんで聞かせた、「おっ男の子の友達が……、そっそれでどんな子なの?」

何か、同級生と話す気分になって来たから。

「マリアさんも知ってる方で、シンク・ハウチューデン、あのオーラル陛下の子息でして……」

とても驚いた顔をしていた、

「もしかして、ミリアさんの所のあの子?」

「知ってるのですか?」

ちょっと迷うような顔をしてたが、

「本当は、内緒なんだけど貴女達なら。構わないわね」

少し迷いつつ語り始めた、

「私とか、孤児院でお世話になってた時期があってね。時々休みの日に、アレイ教が運営するバザーや。孤児院の手伝いをするの」

優しい眼差しで語るのは、三人が知らないシンクの姿、時折姪のリナや伯母のミリアは、孤児達と一緒になって、バザーで販売の手伝いしたり、

「近所の子供たちや。孤児院の子供達から、お兄さんと呼ばれて、慕われてるのよね~」

知らない話ばかりで、驚く内容だった。

「結構あの子。有名でさ~、見習い(シスター)から人気あるんだよね。うちの子がね~クスクス♪」

ひとしきり昔話まで聞いた後、レイラがようやく帰宅、三人の友達が訪ねて来たと、婆やに聞いて。顔を赤くしながら、応接間に入ると、母が居たことに驚き。優しい笑みで出迎えられ、ますます照れた笑みを浮かべた。


━━今日のレイラは、ホッソリした顔立ちに、薄く化粧を施して。いつも後ろに束ねてる髪が、今日は後ろに流してるようだ、三人にこっそり内緒話を続け。

「因みに。あまり知られてないけど。ブルー・ファミイユ近衛連隊長は、オーラル様のお気に入りだったのよ~。本人苦手みたいだけど」

「おっ、お父さんと?」

びっくりした顔のヒナエに、クスクス笑いながら、

「娘と。皆さん仲良くして下さいね」

「かっ、母様……」 いつも澄ました顔で、何でもさらりこなすレイラだが、母にからかわれオロオロしてる姿。とても意外な物を見たと、三人は得した気分がした。



━━話は、学年ランキング。傭兵戦後にまで戻る。


━━三年生。『特待生』教室。自軍で同士討ちをしてしまった罪は重く、

シャイナ・アルベルト以下、

フィル・マノイ

カノア・テレグシア メグ・ファノアの四名は、ランキング戦、3日欠場と謹慎を申し渡された。沈鬱に押し黙る四名。中でも絶大な自信があったシャイナなど、脱け殻となり。


クラスメイトの冷たい眼差しに。遂に耐えきれなくなって……。対人恐怖症を発症。

数日後……。シャイナが、アレイ学園から。逃げたと知らされた。



更に数日後。正式にシャイナの転校が、三年生に伝えられ。三人は理解した。自分だけ逃げ、私達は見捨てられたのだと……、怒り、悲しみ、恨み様々な感情が渦巻いた、

「一身上の都合により。シャイナ君は転校するそうだ。優秀な生徒を失うことは……」

あまりに遅すぎた……、皆には説明されたが、生徒達は逃げたと理解した。残されたフィル、カノア、メグ、毒牙に掛かったシャイナ部隊の面々は、クラスで浮いた、特に三人は、毒牙に掛かった女生徒達から、陰湿な虐めと、毎日のように執拗な。侮蔑の言葉を投げ掛けられた。



それも仕方ないのだ……、三人には非難されるだけの理由があった。シャイナの性癖を知りながら、彼女の為に汚いことを、何でもしてきた、だから恨まれて当然だと思うだろう……、無論元シャイナ部隊と言うだけでも。針のむしろである。さらに同士討ちした事実は、軍人に相応しくないとのレッテルが、貼られたに等しい。最早『特待生』の面汚しとまで、言われ三人は身も心もズタボロになって、いつ自殺しても可笑しく無かった……、



それを救ったのが、レイラ・バレスだった━━、



彼女達の不安、不満、焦りを……、ゆっくりと周りにも理解させ。彼女達こそ被害者だと認識させ。最悪の状況を救った。

「なぜ……、私達を助けるの?」

疑問を抱いてたが、聞くことが怖かった。だが我慢出来ずフィル・マノイが問いを発した。当然の疑問で、彼女達のせいで、沢山の女生徒が、シャイナの毒牙に掛かったのだから、恨みを買っているのだ、

「本当は、棄ておくつもりだったさ……」レイラは、冷笑を張り付けながら、本音を吐露しました。

「以前の私なら。お前達を脅し、唆し、懐柔して手駒にしただろうな……」

三人の顔は、レイラの呟きを耳にして、紙のように真っ白く。顔色を変えました。

「私はある人に出会い、ただ使い捨ての手駒を手に入れるのではなく、信頼出来る。仲間を手にする方法を教えてもらった」

チラリ顔を強張らせる三人を。クスクスからかうように笑いながら、魅力的な、可愛らしい笑みを向けました。

「え~と貴女は、私達を助けた上に。友達にしてくださると?」

地方領主の娘ならでは、多少なり吉備にさとかった。

「一つはそうね」素直に認めた。毎週末。彼女達を集め。様々なこと話し合う場を。提供してたのは、それも目的にあった、

「でも……、それは貴女に。メリットは無いはずよ」

利を問う。商人の娘らしい呟きである。一つ頷いて、

「私は、この国が好きだ、兄が守ろうとした国であり、父と母が出会えた国だからだ」

三人もバレス家の事情に詳しい。それはアレイク王国の民であれば、知らぬ人は少ないだろう……、救国の英雄カレイラ・バレスの名を、

「私が貴女達に。手を差し伸べるきっかけになった、出会いがあった……」

私の本当の姿を見てくれた彼に。仄かな思いを抱いてる。シンク・ハウチューデンに。

「まさか貴女……」理解の色を示したのは、カノア・テレグシア、

「相手は、あの魔王の愛娘よね」

ゴクリ唾を飲み込むフィル。三人も噂は聞いていた。

「少し違うな、相手は彼女だけではない」

レイラが上げた名に、段々違う意味で唖然とする。

「あっ貴女、プロキシスの王妃になるつもりなの?」

大それた話を聞いて、自分たちの現状すら忘れていた。

「それは少し違うわね……?」

町の有力者の娘メグ・ファノアは、学園有数の天才である。レイラの狙いに気が付いたようだ、

「メグそれはどう言うことよ?」

興味抱く二人も、それぞれ『特待生』に選ばれる才女達である。

「彼女は、今のうちからこねを作っている。だから私達にもチャンスがあるから、手伝いなさい。そう言ってるのよ。今だからこそ。私達を友達にして恩を売り、次代の重鎮になる可能性を与えて、友達と言うパイプを作るつもりね?、貴女はシンク皇子の妃になれずとも。側近になるための下準備を始めている……」

ハッと、二人も気が付いたようだ、王族ならではの事情に。

「私は一番でなくとも。一生彼の側に居られるだけで、幸せなの」

レイラの願いは、彼女達にも少し理解出来た、魔王の愛娘リルム、撃鉄の剣豪クルミ、瞬影の拳士ヒナエそれほどのライバルと戦い抜くには、仲間が必要なのだ。三人は、お互いの顔にある感情を読み取り。静かにレイラの提案を受け入れた。

━━帰宅したレイラは、婆やから、友達が訪ねて来たこと、母が対応してくれてると聞いて、驚きが隠せない。

しかもライバルであり、友人のヒナエ、クルミとフィアだった。

「遅かったじゃないの。お友達待ってたわよ」

物凄く。嬉しそうにレイラを出迎えた母の笑みに。

「母さん……、その…」

「本当……誰に似たのか、昔の私そっくりね」

驚く内容聞かされ。三人は顔を見合わせる。



今の母を見れば、誰もが驚くだろうな、自分を見せることが苦手なレイラ、それは母も同じで、不器用だから一途に。父ハウリを愛してる。また近衛連隊の小隊長になってから、随分変わった、現在近衛連隊長は二人いる。隊長の1人ブルー・ファミイユ千騎将は、元レイダ王妃の後押しで、選ばれただけの重鎮である。主な仕事は世界中に展開している。カフェの経営とそれに伴う外交だ。彼が直属の上司に当たるからでは、無いだろうが、母が明るくなったのは、ブルー千騎長の影響だと父も言っていた。

「レイラ明後日に決まったから、知らせに来たのだ」

フィアがそれとなく。助け船を出していた。

「あら?、明後日どうかしたの」

愉しげな母の問いに、三人がレイラの代わりに。説明してくれた。

「あらあら素敵じゃないの♪」

ギュッと母に抱かれて、レイラは赤くなる。

「楽しんで来なさい♪」

「はい……」素直に母の言葉に従った。わざわざ来てくれた友人三人に。嬉しそうな笑みを向けて、



━━交易の港ドマーニ。


艶やかな胸を強調する。タイとなチェニック姿のエドナ・カルメン・オードリーは、海風に黄金色の髪をなびかせ。二人の青年を連れ歩いていた、



二人の青年は、そっくりな顔立ちであり、まるで鏡に写し出したようで、双子と一目で分かる。

「さあ~行きましょうか、グラベル、グラム先生」

双子は揃って、愉しげな笑みを浮かべながら、

「楽しみだね」

「楽しみだな」

二人同時に答えたため、どちらが喋ったか分からない、それほど二人に区別は不可能だ、

「それで僕たちは」

「何をすれば良いのかな?」二人に小さく笑みを深め。エドナはある計画を持ちかけ、双子は笑みを深めた。

「面白そうだね~」

「僕たちで良いのかな?」

「危険だと思うよ」 「僕たちは」

「破壊の因子が」

「埋め込まれてる」 僅ながら、人間らしい心配をしたが、エドナのクスクス笑いをエドナに向け。双子は見合い。

「貴女の気に入ってる」

「生徒が」

「可愛そうに」

「思うよ」珍しく呆れていた。

「あらあら大丈夫よ。貴方達の生徒は、貴方達が考えてるよりずっと強いわ……、四人の有力な『オールラウンダー』候補と、英雄の二世達だものクスクス」

楽しくて仕方ないんな笑顔を見て、双子は仕方ないなと肩を竦めていた。

「魔王の愛娘、撃鉄の剣豪、瞬影の拳士、光の王、それから次代の『オールラウンダー』達か」

「確かに楽しめそうだね」

「確かに楽しめそうだな」

久しぶりの太陽の下、疑似神以外の相手は。魅力的だと思った。だから壊しに来たのだ彼等を、その未来を……、自分たちの楽しみの為に。魔人に。破壊の因子を組み込まれた双子は……、



━━2日後……。

ガイロン家所有の馬車を、出してもらい。フィア、ヒナエ、クルミ、レイラの四人は、フローゼの町に向かい出発した。



フローゼの町は、ターミナルの街からさらに南西の端に位置する町で、馬車で片道3日程度の旅程である。


「途中にある村で、馬を替える。ついでに苺農園があるから、祖父から、苺の紅茶葉を買ってくるよう。言われている」

「苺の紅茶葉?」

あまり聞いたこと無いから、きょとんとするヒナエに、小さく笑みを向け。

「なんでもカフェ・ブルーで、ほとんど買い取るから、市場には出ない一品らしい」

「ああ~聞いたことあるわね。カフェ・ブルーは、各地の農園で、独自の茶葉を作らせてると……」レイラのうんちくに。クルミも頷く。

「そうなんだ~知らなかったよ」

知らないのは、ブルーの実の娘ヒナエだけだったらしく、ばつが悪そうだ。

「ヒナエは、紅茶より。緑茶好きだものね」

フィアが親友らしく。好みも熟知していて、助け船を出した。



緑茶と言うのは、紅茶の葉をさらに熟成させる製法の。軍国ローレンで作られるお茶のこと、元は華の国の名産だったらしい。

「何でも苺の紅茶だけでなく、様々な茶葉をブルーは、作らせてると聞いてる。今向かってる村もその一つで、村では茶葉を使った料理と。ブルーが認めた、パティシエが店を開いてるから、お菓子が人気だそうだ」

パッと顔を輝かせるクルミ、ヒナエ、何となく察して、レイラを伺うと。

「お昼は、それにしましょう♪」

了承され。二人は嬉しそうにニッコリ。甘いもの好きは、女の子共通であろう。フィアも例に漏れず甘いものには、目がない、祖父。母も甘党で、父方のオーダイ様は、それほどでは無いが、甘いものは好む人だ。「どうだろう……、お世話になるのだ、フィアの祖父達に、私達からお菓子を買ってくのは?」

クルミの提案に。レイラはそれは良いと頷けば、

「私もお世話になってるから、お金出します。」

父のブルーから。お小遣い貰ったばかりのヒナエは、鼻息荒く言ってくれて。ちょっと……、いやかなり嬉しいものだ。照れていた。



━━程なく。苺で有名になった村に着いた、


御者が馬を替える間。三人は村に一軒だけある。お土産屋さん兼。食堂にお邪魔して、茶葉を使った料理と、珍しいお菓子を堪能した。



お土産屋も隣接してたので、四人はついでに買ってくことに決め。日持ちする。茶葉入りクッキーをヒナエが購入、レイラは茶葉入り乾麺と珍しい物と。木苺の茶葉をお土産に、クルミはちょっと迷い。クコの実のクッキーとクコの茶葉をお土産にした、フィアは苺の茶葉と馬車で摘まめるよう。お饅頭を試しに買ってみた。買い物終えて、四人が馬車に戻ると。準備は整っていて、すぐに出発した。



━━初日は、街道沿いの交易中継の町で、宿に泊まり。


━━翌朝早くターミナルの街を目指した。

「済まないが、ターミナルの街で一泊する」

フィアが最初に決めたプランであり、三人に申し訳なさそうな顔をする。

「少し気になってたのだ……、カウレーンから、フローゼへは、急げば2日で行けるから。何故ターミナルで一泊するのかと……」

アレイ学園の四年になれば、地下迷宮にあるダンジョンに降りる野外授業が、年二回訪れる他。一般生徒に。あまり馴染みはない。



知識として南大陸、中央大陸、北大陸をつなぐ交易の街だ、

「ちょっと目的があってね……」

言いにくそうなフィアに変わり。ヒナエが思い出しながら続けた

「実は、地下迷宮には、変わった種族。亜人が、沢山いるのは知ってるよね~。中でも地下の中継の街に住んでる。素敵な亜人がいるのクスクス♪」

話し始め。ヒナエは子供の頃の出来を思い出していた、リーザ、フィアの三人は、母クエナに連れられ。土竜馬車に乗って中継の街に。お使いに出たことがある。「その時出会ったのが、不思議な種族。トリトン族。彼等が一部上の街に暮らしはじめて、それで……、」

始まりは、東大陸を離れる。オーラルの頼みで、信頼厚いクエナに頼んだ、

「あのオーラル様の頼みって?」

クルミ、レイラが興味を持ったようで、そこからフィアが話を変わる。

「少し……長い話になるのだが……」

断りを入れて、母から聞いた、当時の話を語る。



━━当時クエナの母が所属していた。カレイラ師団。第1分隊は、ミレーヌ王女様の護衛で、地下迷宮をオーラルの操る土竜馬車で、ファレイナ公国に。同盟の挨拶に訪れるため。地下迷宮を駆け巡って、様々な亜人と出会い。交流を持ったと言う。「当時━━不可思議な嵐は、南大陸=東大陸間の海上を覆い。嵐は半年以上も続き、世界情勢は不安定であった━━。危険な海上より。比較的安全な地下迷宮が選ばれたと、聞いたことがある」

クルミも一度だけ。伯父上エドワルドが六将の1人。正確には2人が、嵐を起こしてたと聞いていた。

「その時初めて母達は、トリトン族と出会ったの……」

オーラルが、わざわざトリトン族の宿を。訪れる理由があった、トリトン族は亀に似た小柄な亜人で、


大昔━━中央大陸近辺に住んでた。元は海の住人だったと言う。中央大陸が、地下迷宮に落とされた時。誤って巻き込まれ。地下迷宮の住人になったのだ、

「彼等は、ひんやりした地下迷宮にいち速く順応出来たが、一つの大きな問題を。抱える毎になったの━━」

その一つこそ。トリトン族の未来を左右する。大切なことで、彼等は滅亡の危機に瀕死ていた。

「オーラル様が、ミレーヌ王女の任務に着く。一年近く前になるのだが。トリトン族の未来を助けたのは」

アレイク王国内で、疫病が、凄い勢いで蔓延した。事件があった、オーラル様とシンクの母リーラ様が、ファレイナ公国まで、薬を取りに行かれ。多くの民を助けた事件の事だ。

「もしかして……、アレイ教の聖女様とは」クルミ、レイラについで、びっくりした顔のヒナエが気が付いた。

「そう中央公園にある聖女様の像━━、あれはシンクの母で、中央大陸の大司教、王妃のリーラ様だ」

フィアは知っていた。だから何も語らずにいたのだ。

「どおりで……、名が伏せられてる訳だな、その話は母様から聞いていた……、考えたら分かるのに……」

意外と、知らない話は多いのだと、クルミは感心していた。

「それで……、トリトン族の未来を助けたって……、どういうことなのだ?」

すっかり話に引き込まれて、続きを催促した、

「ああ~実はな」



━━トリトン族は、雌雄同体と言う変わった種族であり。

一年に僅かな期間。繁殖の時期を迎え。パートナーの卵を産むのだが……、

「彼等には繁殖時期、性別が変わらないようにするのに。必要な物があったの……、その物質をミネラルと言う」

「ミネラルて……、海藻や塩に含まれる?」

きょとんとしたレイラに、そうだねと頷き。

「街に住む人間なら、簡単に手に入るわ、でもあの当時。トリトン族は地下迷宮に住んでた」

今のように世界を繋いではなかった。人々に認識されない。閉鎖的な世界でだ━━、塩は比較的手に入ったが、塩分ばかり取り入れられないし。誤魔化しは長く続かない━━。



「それを救ったのが、オーラル様、藻塩もしおという変わった製法で作られた、ミネラルを豊富に満たした塩なら、彼等に必要なミネラルを、少量で摂取出来た」

「なるほど藻塩か……」

料理する者なら納得出来る。豊かな磯の香り、甘味すら感じられる塩だ。

「オーラル様が定期的に。トリトン族に藻塩をプレゼントしていたの、それを中央大陸で建国の際に。クエナ母様に。毎年届けるよう。お願いされてるのよ。以前ほど容易に手に入る藻塩だけど……、それでもね」

にっこり実直に笑うフィア、三人は顔を見合い。好ましそうに微笑んだ。




━━お昼過ぎ、ターミナルの街に着いた。


━━上の街は。多くの商会が店を開き、買い付けに訪れる。納入のキャラバンや、仕入れの商人の為に。沢山の宿屋が軒を並べていて、馬車ごと泊まれる大きな宿屋まであった。



大通りの一角にある。人気の宿。亀屋、まんまの名前だが、毎日沢山の人々が訪れ。賑わう店内は、食堂を兼ねてるためだ。


四人が足を踏み入れると、何処からともなく、ぴょんぴょん跳ねながら、可愛らしい風貌の。人間の腰ほどまでしかない。トリトン族がやって来て、

「お客様が帰られました~」

ちょっとへんてこな挨拶をしてきた。多分歓待してくれてるようだ。

「うむ。時にカメベー殿はおられますか?」

パッチリお目めを真ん丸くして、ニッコリ可愛らしく笑うトリトン族は、

「族長さまに。ご用あるなし?」ぴょんぴょん跳ねながら問うから、ついつられて目でトリトン族を追いながら。

「そうだ、オーラル様から。頼まれたと言えば……」

ブワリと沢山のトリトン族が、ぴょんぴょん跳ねながら集まって来て、

「「オーラル様のお使い。ご苦労しましたです!」」

ペコリンコ。跳ねながら頭を下げてきた、


「これはご丁寧に……」

フィア、ヒナエは慣れてるが、アングリ口を開けて、レイラとクルミは目を丸く。トリトン族の歓待に戸惑っていた。

沢山のトリトン族が、代わる代わる現れては四人を。宿で一番豪華な、ロイヤルスイートに案内して、上や下えのオ・モ・テ・ナ・シに。目を白黒してると。「これはこれはフィア様、ヒナエ様、よく帰られましたな~」

ニコニコ目が落ちるのでは無いかと、心配するほど、優しい眼差しの。トリトン族族長カメベーが、ぴょんぴょん跳ねながら現れた。

フィアからトリトン族が『帰られました』をよく使うからと、説明されなければ、変な言葉使いだと誤解してた筈である。



トリトン族にとって『帰る』というのは、無事に宿に帰って、来てくれありがとう。お帰りなさいって言う。深い意味が含まれていた。トリトン族の思想に。母なる海で産まれた子は、母なる海に帰ると信じられ。また地下迷宮では、旅人がまた宿に帰れるようにとの。優しい気持ちからだと説明されて、レイラはすっかりトリトン族を気に入ったらしく。クルミも付き合い。つい先日産まれたばかりの子供達と。遊んでいる。

「ご無沙汰しました、母から預かりました。今年の分です」

ヒナエが大きなリックを引っ張り出し。集まってたトリトン族に渡すと。わらわら嬉しそうにぴょんぴょん。跳ねながらペコリンコ、お礼を述べた。

「毎年ありがとうございます。フィア様、ヒナエ様」

「いえ……。オーラル様との約束ですから」

クスリ笑みを深める。それから1日トリトン族達から歓待を受け。



━━翌朝。トリトン族総出のお見送りに。ただただ四人は感動していた。

「毎年ああなのか?」フィア、ヒナエを伺うと。二人は楽しそうに頷き。

「彼等ほど優しい種族はいない。シンクが一度『魔法比べ』で、召喚していたらしいが、ハウチューデン家だけに許された。特権と聞いている」

「えっ?、そうなの」

きょとんと目をしばたかせたヒナエに。

「リーザから聞いた受け売りだが、トリトン族は、主と決めた一族以外の者と、一切契約はしない。義理堅い種族だそうだ、だからオーラル様も心配して、母に毎年藻塩を送り届け。トリトン族に渡すよう頼んだ。彼等は優し過ぎるからと……」

フィアの言ってる意味が分からず。クルミ、ヒナエが首を傾げていた。



━━王都カウレーン、学園南通り、学生寮。


白銀に輝く美しい髪が、豊かな胸を強調するように風に流れ。漆黒の刃を振るう。剣を華麗に操る女生徒は、風すら切り裂く。一本の刃のような危うさすら感じた。

「相も変わらず。精がでるね~ローザ君♪」

庭の切り株に腰掛け、可愛らしい顔立ち。睫毛の長い、女の子のような男子生徒が、皮肉を唇に張り付け、からかうような顔をしていた、チラリ目をやるローザだが、フン鼻を鳴らしただけで、剣の形を止めない。

「レイラ・バレス……」

ピクリ僅かに眉を潜め。ようやく訓練の手を止め。ジロリ不機嫌そうにランダルフ・フィレンツェを睨む、

「好きな男が出来たって話。知ってるかい?」ギロリ殺気すら漂わせ。剣を握る手に力がこもる。ランダルフは、ローザを策を労して罠にはめた張本人。お陰で謹慎中である。同じ『オールラウンダー』候補四天王の1人であるが、いけ好かない男。更には━━。

ローザのリナイゼフ家と同じ。華の国ダナイの生き残り。



ローザ・イナイゼフの家は、代々ダナイの将軍家に支え。片刃の剣技を伝えし。剣豪の一族だった。またリナイゼフの漆剣は、戦場において、血すら切り裂く技を伝え。何人斬ろうと刃こぼれしない。特殊な剣の製法を。一子相伝にて伝える一族である。


対して華の国で、棒術の大家フィレンツェ家も。将軍家に支えてた名家の跡取息子。二人は幼なじみでもある。「あのレイラが、男にうつつを抜かしてると?。有り得んな」

鼻で笑ったが、ニタリ嫌らしく笑みを張り付け。

「嘘でもないらしい……、おっと危ないな」

言い終わらない内に、見えない斬撃。そう呼ばれる。居合いの一撃を。華麗にとんぼ返りして避けつつ。再び切り株の上に座った。嫌な男だが、棒術の腕と見切りの正確さは一目置ける。忌々しいが、歯噛みしながら睨んだ。

「戯言を抜かすな!、もう一度言う。あのレイラが有り得んな……」

フフ~ン余裕すら浮かべて、鼻で笑われた。さらに追い討ちかけるよう。

「怖いね~女の嫉妬は、同じ女でありながら、あちらは既に3つの試練をクリアした強者だ。対して君は未だに一つだけ。焦らない方が可笑しいかクッククク」

嘲られた。ギリッ悔しいが事実だ、



━━『オールラウンダー』候補四天王とは、毎月行われる試験結果と、5つの試練の内一つをクリアし、更には四天王に挑み勝って、その座を得。学園長が認めた者の称号である。



━━『オールラウンダー』候補者は、称号を得るため。様々な困難に挑まなければならない。



━━それが称号争奪戦である。しかし候補者には、3つのルールが与えられる。

1つが四天王の座を、自分の実力で戦い。勝ち取ること。

1つが制約。在学中に。5つの試練をクリアする事。

1つが『特待生』として、卒業しなければ認められない。

━━もしも『オールラウンダー』の称号を得て、卒業出来れば、アレイク王国の重鎮を約束されたも同然である。それゆえ称号争奪戦は、厳しいのだ。過去この決まりから1人だけ、全ての項目を満たさず。『オールラウンダー』の称号を得た者がいた、英雄王オーラルただ1人である。



よってアレイク王国は、特例を作って。新たなる称号を作った。英雄王オーラルのもう1つの称号。『聖騎士』である。アレイク王国にとって、忌むべき名聖騎士ナタク、



ただ1人。『聖騎士の剣』に認められ。『聖王の剣』に認められたオーラル王。彼の偉大なる功績を残すため。過去の遺恨を忘れず。敬意を払う意味を持った。それが新たなる称号。学園を卒業後に『オールラウンダー』試練を全てクリアした者に与えられる。『聖騎士』の称号である。



既に三年生━━、

ローザは類い希なセンスにより。あらゆる武器を操る技術が、ずば抜けていたと認められ、空の試練をクリアしたと見なされていた、それは一年の時の話であり。その時最強と呼ばれた三年生を倒して、四天王の座に着いて。


早二年━━、悔しい事だがランダルフは、既に二つの試練をクリアしていた。

「正直な話。一年の新しい候補者達は目障りだよ。特にレイラはね」

忌々しそうな眼差し。女で非力なレイラでは、海の試練は難しいとさえ考えていたのだ、それが夏休み前の野外訓練で、合格したと聞き。我が耳を疑った。「知ってるか?、レイラが海の試練をクリア出来たのは、男のお陰だったと……」

同じ女生徒ながら、『オールラウンダー』四天王ゆえ。ライバル関係であった……、

「男にうつつを抜かしたと言うのか……ギリ……」

許せなかった。怒りすら覚えた。

「そいつの名は?」ニヤリ餌に食い付いたとほくそ笑む。自分を脅かす候補者は、少ないほど。自分が称号を獲れるチャンスになるからだ、

「そいつの名は、シンク・ハウチューデン」

目を剥いて驚くローザに、冷笑を向けていた。



━━昼過ぎ、四人を乗せた馬車は、フローゼに到着した。


元は小さな町だったフローゼ、ギルバート・ガイロンが領主になってから、数年掛けて、町並みを区画整理され。それはそれは見事な。美しい町並みに変貌していた。



町の中心にある商人用の大通りは、白亜の敷石で舗装され。晴れた日は、色とりどりの商店の屋号を示す旗が、海風に揺れ。それは壮観な眺めと評判になっていた、



━━十年前まで、港に到着した船から、荷下ろしして馬車で、街道まで上がるのが大変な。細く曲がりくねってた悪路だった。


領主となったギルバート・ガイロンは、最初の政策で、大通りを綺麗に整備した。それにより仕入れに訪れる。キャラバンが、訪れ易くなったのだ、評判を聞いて僅か数年で、大通りに次々交易の商会が、軒を増やして、財政が潤った。次に港を大きな船が付けれるよう。大きな桟橋を造らせたことで、国内の東半分を回る。キャラバンの始まりの町として栄えた。

「相変わらず。綺麗な町ね」

なだらかな丘から。町が一望出来る。馬車預かり所で、久しぶりに馬車から解放されたと、う~と背伸びしてフィアは、懐かしそうに目を細めた。

「これはお嬢、お帰りなさい」

勝ち気な顔立ちの老人が、にこやかに出迎えてくれた。ジダン老は、未だ現役の自警団教官をしており、役所の所長である娘のリマさんと、昼を食べてたとのこと。

「相変わらず元気そうだな爺!」

フローゼでは、公認の商会馬車、馬以外は、町が運営する。馬車預かり所に。必ず預ける決まりになっていて、税を払わないで。不法に交易を行えないようした。交易の町ならではの取り決めである。

「無論ですぞ!、ガハハハハ、高らかに笑っていた」

ジダンは、長年ガイロン重騎士団を支えてくれた忠臣で、フィアが物心付くまで、お守り役をしてくれた。もう1人の祖父だと思ってる。

「ジダンさん。またお世話になります♪」

ヒナエが嬉しそうに笑うと、白髪を短く刈り込んだ、かくしゃくとした老人は、クシャリ笑みを深め、改めて四人を見てから、

「クエナも元気でなによりだ、しっかり鍛えてるようだな」ガッシリした手で、ヒナエの頭をゴシゴシ撫でる。

「も~私子供じゃないんだよ~」口ではそう言うが、嬉しそうにヒナエ笑っていた。

「済まんな爺……、世界会議に国王夫妻と、財務官のカレン・ダレス様も出ているため、母は王都を離れられない、今のところ私達だけだ」済まなそうな顔をしたフィア、ジダン爺は母にとって師であり。母にとっても祖父のような人である。

「それなら気にやむことありませんぞ!、オーラルに。文句を言てやるだけですからな。ガハハハハハ」

豪快に笑い飛ばしていた。流石に驚くレイラ、クルミは呆気にとられたようだ。一国の王を捕まえて。文句もどうか思うが……。ジダン爺なら、本当にやりそうで……、つい困った顔をする。

「ではな爺、リマ殿にも会いたい。明日辺り。顔を出すと伝えてくれ」

「おお~あやつも喜びます。出来れば……」

にっこり柔らかく微笑み。

「シンクの話。ユウト。ロマイヤにも聞かせるよ」

ピクリと反応した二人。クルミ、レイラにヒナエがこっそり。

『ジダン爺は、オーラル様の先生をしてたんですよ~。娘のリマさん、フローゼの海軍長してるロマイヤさん、自警団長のユウトさんは、第1師団で、オーラル様の直属の部下だった方々です』

成る程と。二人が目を丸くしていると、 「ヒナエ、何をこそこそしとる!」

ピシャリと伝法な口調で怒鳴られ。三人はビクリ。身を震わせた。これには苦笑滲ませながら。助け船を出した。

「爺済まない。紹介が遅れた。こちらはクルミ・アルタイル殿、ファレイナ公国の次期女王で、もう一人が我が国の『オールラウンダー』候補レイラ・バレス、あのカレイラ殿の妹君だ」

やや驚いたようだが、楽しそうな笑みを張り付け。

「それはまた……、楽しそうなお友達ですな!、ガハハハハハ流石わお嬢様ですぞ、ガハハハハハ」恐縮するどころか、楽しそうな高らかに笑い飛ばしていた。


一瞬気を抜いてた、クルミの前にジダンが現れ。度胆を抜かれたクルミの肩に手を置いて、強いプレッシャーを浴びせてきた。目の前の老人が、凄まじい技量の戦士だと気が付き。じっとり汗をかいた。

「じっ爺……」慌てるフィアと、僅かに身構えるレイラ、しかしクルミは不敵に微笑み。

「一度。手合わせしたいですわ」

言って退けられ。ジダンは柄にもなく。嬉しそうに破顔していた、

「毎朝、若い兵をここから見える。あの浜辺で鍛えとる!。興味あるなら来なされ。そこなレイラ殿もな」

晴れ晴れした顔で笑うジダンに、またかと呆れた顔をするフィア、目が合うや。些かやり過ぎたかと……。苦笑して、白髪をガシガシ掻いた。

「それは是非にお願いしたい!。私達はどうしても倒したい女がいるからな」

凛とした佇まいの。真剣な面持ちのクルミに。思わず小さく嘆息したが、

やる気十分なレイラ。オロオロしてたがクルミの一言で、ハッとやる気に燃えるヒナエ、逆にジダン老の方が、たじたじとなり、

「やはりそうなったか……」

嘆息していた。だから……、さっさと家に向かうつもりだったのだ。こうなると三人も武人だ。一歩も引かないことは明白だった。



━━町の中心部にある役所の建物。その裏手の高台に位置する。ガイロン家所有の屋敷は、

名目上━━別荘と呼ばれている。

領主のギルバート・ガイロンの邸宅として使われていた。

「ギルバート。お嬢ちゃんが町に着いたようだの~、なかなか面白いお友達を。連れて来ているようだな~」

飄々と気配なく現れた老人は、楽しそうな笑みを浮かべた。 「相変わらずだな……、しばらく見なかったが……、旅かね?」

苦笑混じりに苦言をするギルバートに、 肩を竦めながら。

「ちょいとブルーの坊主に頼まれてな~、西大陸に潜入していたのじゃよ~」

いけ飄々と言うのだ、呆れるしかない。

「あの小僧は、相変わらずか……、今なら分かる。何故オーラルが、あの者を王妃様に重用せよと言ったかな……」

表向き、飾りの重鎮で、貴族達の格好の的でしかないブルー・ファミイユだが、こと危機管理能力は、呆れるほど高く。鋭い慧眼は、オーダイ以上の逸材だったのだ。一線を退いたからこそ。痛感していた、未だにオーラルが残した多くの遺産に、驚かされるばかりだからだ、

「お前さんが面白いと感じたのなら、あれの目も棄てたもんではないな」

孫娘が褒められて、悪い気はしない。二人が始めて会ったのが、娘夫婦の結婚式での一幕から。直ぐに意気投合。今では一緒に暮らすほど心を許している。


また自分たちの血を分けた孫だ、可愛くて仕方ない気持ちは強く。ちょっとしたことで、孫に甘い顔をするギルバートであった、

「まあ~の、堅物なのが、玉に傷じゃが」

「それは……、我らに似たのだ仕方ないな」

「そうじゃな~」

二人は顔を見合せ。ほろ苦く苦笑していた。



━━白銀の髪を、颯爽と靡かせ。馬を駆るローザは、厳しい顔を隠さず。強い気迫すら顕にして、レイラの行き先。フローゼの町をを目指していた。「許さない!、貴女だけは違うと思ってた……、所詮は俗物だったのか!?」

一匹狼と。揶揄されることすらあるローザ。祖国を失い。苦労していた父の姿。その背を見て育ってきたからこそ。他人の力を借りてまで、試練をクリアしたことが……、

「許せない。……貴女程の人が、何故なの?」

自分だって御家再興の夢はある。ランダルフの妄言に。従うのは癪だが……。問いただしたかった、ライバルと認め。彼女なら女性初の『オールラウンダー』になれるのでは?。それほどの技量があるのだ。




━━久しぶりの別荘の玄関で。元気そうな二人の祖父が、にこやかに四人を出迎えてくれた。

「お爺様達♪。お元気でしたか」二人の祖父に抱き着きながら、甘えた声を上げる。

「おお~フィア、また一段と美しくなったな」

「うむうむしっかり鍛えておるようで、安心したぞフィア」

ちょっと頬を赤らめ。照れた笑みを浮かべた。

「あっギルバートおじ様、オーダイおじ様。また御世話になります」

艶やかに笑うヒナエの妖艶な笑みに。

「相変わらず。妖艶漂う美しさだなヒナエよ」

「それでいて相変わらず奥手か?」

からかう口調の二人に、も~うと怒った振りをしたが、何時ものことなので、楽しそうに笑い会う。

「そちらが、ファレイナ公国のクルミ様か?、髪は父譲りのようだな」飄々としたオーダイの問いに。

「はっはい……、よく言われます。初めましてクルミ・アルタイルです」

目もと赤くしながら、可愛らしく微笑むクルミに、祖父二人は好意的に微笑する。

「では貴女がカレイラの妹君か……」

確かに目元、口元がよく似ている。

「カレイラの面影があるな」

同調するようオーダイも頷いた。

「初めましてレイラ・バレスです」

ほっそりした面立ちに、自信に満ちた笑みを称えていた。

「眼差しも似ているな~、良い顔をしておる。良いライバルに恵まれておるようじゃな」

悪戯ぽい声音で、ズバリ核心を突いてきた。

「それはもう、強力なライバルですから」柔らかく。愉しげに切り返され。ほほ~うと満足そうに祖父二人は笑みを浮かべた。対してクルミ、ヒナエは気を引き締め。フィアが苦笑を滲ませる。

「夕飯まで時間はある。みんなで、海水浴場に行ってきてはどうだ?」

「海水浴場ですか?」

きょとんと呟く孫に、一つ頷き。

「以前。宮廷魔導師の研究所があった施設を知っとるな?」「はい」

「もう使わない施設だから、取り壊して、海水浴場を作った。近隣の土地を今整地していてな、保養施設を建設予定なのだよ」

ギルバートが自慢気に言えば、

「まだ近隣の住民しか知らない穴場じゃ、楽しんでくるが良い」そう言われたら、祖父にお土産を渡して、早速荷ほどき、四人は海水浴場に向かった。



━━港から、お椀状の小山に隠れるような場所に。プライベートビーチのように、祖父の言葉通り、呆れるほど人気が全くないが。真っ白い砂浜が素晴らしい景観となり、眼前に広がっていた。

「これは、なんて美しいのかしら!」

「確かにな……」

クルミの感激した呟きに。フィアも同調した、

「皆さん♪、彼処で着替えれるようです~」

ヒナエが強い日差しを和らげる。小山の木々の木陰の下にあった。着替え用の小屋を指差して。目を輝かせていた。何だかんだ言いながらも。四人は交代で水着に着替え。野外授業以来の海を堪能した。

木陰で、一息着いた四人、その中でフィアは、何か考え込んでた様子であり。ヒナエだけが気が付いた。

「フィア、きっと大丈夫よ~」

「そうだな。ありがとうヒナエ」

こういう吉備は、いつもヒナエが気が付くのだ、

「なあ~みんな……、明日船で、ここから見える。無人島に行ってみないか?」決意を固め。唐突にフィアが提案した。戸惑う二人に、柔らかく笑みを浮かべ。ゆっくり語り始めた。

「実は、この砂浜に来たのは、今日が初めてなんだ、あっちに見える島、あの無人島は、父さんとお爺様達でキャンプした、思い出の島でな……」

懐かしそうに。口元を綻ばす。


ヒナエも懐かしそうに微笑み。目を細めた。思い出したようだ。

もう8年前になる━か━。


まだ物心ついたばかりで、楽しかった日々。

今頃は、中央大陸に着いて、都に入った頃だろうか?、



リーザとヒナエの三人は、フローゼで出会い。友達になった。フィアの僅かな記憶に残ってるのは。リーザの使ってる小さな眼鏡だろうか、当時リーザの母リリアさんが。使っていたのを覚えていた。フローゼの研究所の所長の地位にあって、産まれたばかりのリーザと二人で暮らしていた、それは父バレンタインさんが、学園の教頭と言う立場ゆえに。別々で暮らしていたのだが、


当時は━━本当に寂れた町で、それは中央大陸事件の影響ゆえの。悲しい出来事で、理由であり。死体の山となった町は、時間が経つと、猛毒を吐き出すと言う魔物を、なるべく早く。魔法の溶鉱炉で、魔物を焼くための施設が作られ。灰にした魔物を壺に封印して、町の地下に厳重に保管していた。知られていないが……、多くの悲しい出来事があった、リーザの母リリアさんは、魔物の毒の影響で、最初のお子さんを死産させてしまい。辛い時期を過ごしたと。母から聞かされた。



実は、魔物の焼却を行った。魔法使いの多くは、魔物の毒の影響を受け。長い療養を必要とした。そうした人々を。フローゼに受け入れ。発展した悲しいきっかけがある。

「二人には済まないが、あの島には幼なじみのリーザの母、リリアさんが生前。大好きだった思い出の場所なのだ」

「リーザの母?」

二人は『学年戦争』で、疑似仮想国。同じ傭兵ギルドの仲間であるリーザの顔を、思い浮かべる。

「母を亡くしてたのか……」

呻くように呟くクルミ。リーザの誰にも優しく接する性格は、皆を明るく元気にしてくれるから。リーザにそんな悲しい影があるとは、思えなかったからだ。

「あの子が明るいのは、義母のエドナさんの影響だよね~」何とも微妙な顔をしたヒナエに、同調する苦い笑みを返して、

「リリアさん、この町から見える海が好きで、みんなを見守りたいからと、あの無人島に墓を造り。眠っている。だからリーザ代わりに。花を手向けたいのだ、良いかな?」フィアの真っ直ぐで、優しい眼差しを受け、二人は静かに頷いていた。



━━四人が、浜辺で遊んでる頃。ローザが、フローゼの町に着いて、馬を役所に登録して預け。猛然とした勢いと、血走った眼差しで、辺りをキョロキョロ、背に武器を背負っているから、危ない人と言うことで、住人が自警団に通報。大立ち回りの末。取り押さえられ。牢屋にぶちこまれた。



━━夕方……、四人が帰宅すると、微妙に考え込む祖父、ギルバートが出迎えた。

「ただいま帰りました」

孫の楽しげな顔を見て、幾分晴れやかな顔をしたが。やはり微妙な顔をした。

「どうかなさいましたかお爺様?」一瞬言うべきか、迷ったが、どちらにしても。話をして、聞かねばならぬのは同じ、諦めたように小さく嘆息しながら、

「フィアよ。ローザ・リナイゼフと言う、女生徒を知ってるかね?」

驚いたのはレイラである。僅かに表情が変わったのを、ギルバートは見逃さない、問題は他にもある。

「君の関係者なのだね?」

じっと鋭い眼差しは、強い圧力すら相手に与える。それがアレイク王国有数の重鎮だった貫禄で、物凄いプレッシャーとなるはずだが、レイラの表情は一切変わらぬ。驚き内心舌を巻いていた。

「一つ聞ます。お爺様。その女生徒が、どうかなさったのですか?」もっとな意見である。町を預かる領主として、恥になるが、話をしなければならない、尚且つ問題は、町の危険を早急に排除せねばならぬし。頭が痛いところである。ここは問題の女生徒と、町の危険を話すべきだと感じた。あわよくばカレイラの妹である。有能なのは見てれば分かる。糸口を引き出せるやもしれぬと。淡い期待があった。

「実はな……」



ローザが血走った眼差しで、武器を携帯し、町中をうろうろしていたこと。町の近くにモンスターの討伐を控えてた。自警団の精鋭部隊が、出動して、職務質問をしたら、レイラを探してると喚き。ジダンの育てた、13人もの猛者をのしたと言うのだ。最後は団長のユウトに押さえ付けられ。牢屋にぶちこまれたと聞いて、眉を潜めるレイラ、ただそれだけだった。フム……、意外な反応に。どうも自分の認識違いかと、首を傾げてると、

「発言よろしいでしょうか」

「ああ~構わない」

ようやく何が起こったか理解して、薄く冷笑を張り付け、目を狡猾に細めた。

「彼女ローザ・リナイゼフは、直情的な考え無しの行動を越し。学園でも問題が目に余る人ですが、おそらく唆されたのでしょうね」

ほう~、冷静かつ理路整然と判断した姿は、懐かしのカレイラそのものだった。

「もしもそうだとして、彼女は町中で騒ぎを起こした。学園の退学も。視野に置かなければなるまいな、町を危険にさらした罪は重いのだから」厳しいこと言うが、秩序を守るのは、綺麗事ではないのだ。それを見越し。既に考えをまとめたか、レイラは微笑さえ浮かべ。

「では、こう言う裁定は如何でしょうか?」

レイラが語る内容は、領主の権限にまで及び、呆気に囚われたが、彼女の冷静な眼差しを受け、さらに耳を傾けてる内に。驚きとあのオーラルに似た。煌めきの片鱗を垣間見て、思わず二つ返事で、レイラの提案を受け入れた。



━━港に近い。自警団の詰所。石牢に入れられ。自分の考え無しの行動と、運の無さに。失意の底に落ちてたローザは、膝を抱え。座り込んでいた。うっすら窓の鉄格子越しに入る月明かり。

「何をやっているのだ私は……」自分の直情的性格を恨みつつ。幸せがズリズリ這いつくばるような、深いため息を吐いた。その時だ微かな足音がして、口をつぐんで、しばらく待ってると。

「あのミザイナ殿の再来と呼ばれた貴女が、その様とはね……」

ハッと顔色が変わり。素早く立ち上がって、格子ごしに手を伸ばしながら、

「レイラ・バレス!、貴様がなぜここに」

先ほどまで、今にも死にそうな目をしてたのが、嘘のように。ギラギラした目で睨んでいた。これには苦笑を余儀なくされた。

「元気そうだが、貴女がしたことを聞いたよ……」

「うっ………」

伸ばした手が落ちた、急に虚無感に襲われ。むくむく強迫観念が沸き上がる。

「笑いたければ笑え……」相変わらずの馬鹿正直な反応に。優しい眼差しを向ける。彼女……、

『オールラウンダー』候補の中で、海千山千の四天王にあり、ただ一人ライバルと認めている。高潔なる武人だ、

「ランダルフ辺りに唆されたって、所かしら?」

ピクリ分かりやすい反応に。苦笑しながら、

「因みに、海の試練は、誰にでもクリア可能な試練と、知ってるわよね?」

「へっ……」

鳩が豆を被ったように。目を真ん丸にする。その性格ゆえに。他の生徒と交流がでず。情報戦に弱いとは思ったが……、

「一応言っとくけど、この度『オールラウンダー』候補に名が上がったシンク・ハウチューデンは、私など足元にも近付けぬ本物。貴女も手合わせすれば、惹かれてしまうから。忠告しとくわ」

あっさり認めていた、唖然としてるローザに。クスリ楽しそうな可愛らしい笑みを浮かべ。

「貴女には、此度の罪滅ぼしとして、機会が与えられると、領主様からお言葉を頂いて来たの。勿論やるわよね?、やらない場合は、町を騒がせた罪で、貴女退学になるみたいだし」

さらりと自分の現状を聞かされ、珍妙過ぎて、憑き物が落ちた顔をしていた。

「どうする?やるなら牢から出なさい、やらないなら、そのまま消えなさい」

牢屋の鍵を開け。苛烈な物言いをされて。ローザは悔しそうに唇を噛み締め。

「やるわよ!」剣呑な眼差しで睨まれた、だから嬉しそうに微笑していた。


━━牢屋から出されたローザは、レイラに連れられ。港の外れある。桟橋まで来ると、小型の帆船が停泊しており。見覚えのある三人の女の子達が待っていた。

「貴女達は……」

驚くローザに、肩をすくめ。柔らかな笑みを浮かべ、誠実そうな瞳のフィア、女の子からみても。蠱惑的な眼差しに。ドギマギしてしまうヒナエ、ちんまい可愛らしい女の子で、見た目と違い。自分の背ほどある。大剣を背にしてるクルミ。アレイ学園有数の有名人達で、『オールラウンダー』候補に名が上がったとしても驚かない。何れも手練れである。

「レイラ……、これはなんのつもりだ?」険のある視線を、薄く微笑み。

「貴女には言ってなかったけど、私達は無人島に行くついでに。フローゼ近隣を脅かす。モンスターの群を討伐するために。来てもらったの」

しれっと言われて、怒って良いのか、怒鳴って良いのか、複雑な表情を浮かべた。

「なっ何だと?、何故私達が、そんなことをしなければならない?」

意味が分からないと、憤慨するが、他の三人は静かに頷いた。

「簡単な話よローザ。貴女が怪我させた、自警団達の仕事が、モンスター討伐だったからだよ」

「うっ……」

きっぱり切り捨てられ、絶句する。

「だったら、お前達は……」

「理解したようね……、それから一応。私達と貴女にもメリットがあるわ」だんだん顔色を無くしてたローザは、いちるの望みとばかりに。

「そっその……、メリットとは……」

レイラに。迷惑を掛けてると認識してるので、やや気弱な問いになっていた。

「それはね。ギルバート様の恩情で、この度私達だけで、モンスターの討伐をなしたら、地の試練とみなしてくれるそうよ。貴女もただ働きではなく、大きなチャンスよね?」

呆気にとられて、惚けた顔をしてたが、 「まっ誠に、試練と認めてくれるのか?」

生気が戻り、やる気になったか、目をキラキラさせる。分かりやすい人だ。

「確かに、お爺様が約束されてたよ、ローザさん」ゴクリ唾を飲み込むと、いきなりレイラの前で片膝をついて、深く頭を下げた。

「忝ない!、この恩。生涯忘れぬ」

堅っ苦しい対応に。四人は困った顔をする。仕方なく。

「ローザ……、ランダルフには気をつけてね」

ハッと顔を上げ、羞恥に頬を赤らめた。

「苦言痛み入る……」



━━余談だが、五人は見事。モンスターの討伐を済ませ。領主の権限で、五人には、地の試練をクリアしたと、認められた翌日━━。



━━国内にあまねく。驚きのニュースが飛び込んできた━━。



━━あの魔人王レイアスが、遂に倒されたと言う━━



━━それもオーラル王の子息。シンク・ハウチューデンの手によると。大々的に。ミレーネ女王様からの知らせは国内。世界中に知らされ。誰もが驚きを隠せず。意気揚々と胸を張ってたローザなど、

「なっなんと……、それほどの武人を侮ってたのか……」

血の気を無くしていた、町でも新たな若き英雄の誕生の話題が上がり、

「相変わらず。驚かせてくれる」

ジダンは上機嫌。町の警備の要である三人。ユウト、ロマイヤ、リマは久しぶりに酒場に繰り出し。祝杯を上げた。

「お嬢の話では、かなりの人物だそうだ~、是非とも会いたい物だな」

ロマイヤが五回目の乾杯を、ユウトとしながら、相好を崩した。

「なんでも。今年は粒揃いだと聞いてたが、いやはやあの女のヒナエもなかなかやるが、お嬢の新しい友達は、別格だな……」

リマは今日の昼間。五人が討伐したモンスターの巣を、検分しに行ったのだが……、

「クルミ様の斬撃、あれは凄まじい……、大型モンスターが、両断されていた……、身震いするほどの腕だ」

酒がだいぶ回り。ろれつが怪しくなってきたリマに、串を向け、

「なんでも……クルミ様と、ヒナエを『総合武術大会』で倒して優勝したのが、シンク様と聞いた……」

やれやれとあの人の息子ならば、それくらいやるか……、三人は顔を見合い、

「オーラル様に」

「若き英雄に」

「未来に」

再び乾杯していた。


町中で、祝福ムードの宴がなされている一方で、



オーダイは渋い顔をして、釣糸を垂らしていた。「のう~、あの子は無事だったのか?」

誰もいない闇に声を掛けた。

「ええ~魔王の愛娘リルム様なら無事だったわよ。それよりもみんな浮かれるのはね~。世界はまだまだ危機的状況にあるのに。呆れるわ」

美しく妙齢の女が、気配なく現れ。小さく嘆息を漏らした。

「そうじゃがの~、まあ~仕方あるまい。人は若き英雄を敬いたがる。だからオーラルは王族の勤めとして。盛大に知らせたのじゃろ。まあ~あやつが、子息に不安あるならば、そんな真似をしとらんよ。其ほどの器かの~う、一度会ってみるか~」

茶飲み話をするように。気楽に言うが、オーダイならば、明日にも中央大陸にいそうで怖い。老いてますます盛んと、言葉はあるが、老いて腕に磨きがかかる武人など、聞いたことがない。

「気になってたのだが……、ようやく分かった。此度のこと全てが、布石であったとはな……、あれの弟が、わざわざ苦労するとわかってる。リドラニア公国の王に。収まったか……」

「それは……」

世界中の情報を集めてる。ノルカ達黒衣も。オーダイの言う懸念は、疑問を抱いていた。

「あやつは気が付いておるな……」

西大陸の不穏な動き、魔人以上の強さを誇る四体の魔神達。一見平和である北大陸も。内紛の恐れがあるのだ、

「そうみたいね……、嫌みな男だわ」鼻を鳴らすノルカ。それに苦笑しながら、黒衣の長がオーラルに惚れてたのは、周知の事実である。「それを理解しとるから、五国が手を結んだと言う事実を。作り上げたか……、アレイク王国内、さらにラトワニアの腐った貴族共を。黙らせるためもあったと……、わしは思うちょる」

「同感ですわ」

「若い国王夫妻を守る。あやつらしいやり方ではある」

何だかんだ言うが、認めてらっしゃる。小さく笑みを浮かべつつ。

「……少しお耳に入れときたい。事がありまして」

本題に入った。



一夜明けて━━。



モンスターの討伐で、疲労困憊だった五人だが、友達の活躍を励みに。すっかり回復して、

「ほっ、本当にこんな格好しなきゃ駄目なのか?」

胸を覆う。面積の小さい水着。羞恥で真っ赤だが、素晴らしいプロポーションだ、とても似合う。

「せっかくのプロポーション。見せても減るもんでもあるまい、まさか金づちとは思わなかったが……」

からかい口調のフィアに、

「あうあう……」

しろどろもどろである。

「ローザさん。とてもお似合いですよ~」

ヒナエと似た者同士。すっかり仲良くなっていた。

「あっありがとう……」

聞けばローザに。女友達が居なかったとのこと。付き合ってみれば、からかいやすい、可愛らしい女性だと分かる。ちらりレイラとクルミを伺いつつ。二人の懸念が手に取るように。分かっていた、

「大丈夫だ、あのシンクだぞ?」

二人の肩を叩いた。するとクルミがやや不満を顕にした。

自分達も頑張ったのに……、置いてかれる不安が、二人を焦らせていた。

「レイラも。朝から溜め息何度目?」

ほっそりした顔立ちの頬をつつくと、ちょっと赤くしながら、

「そんなに。何回もしたつもりはありません」

表面上は、変わらない。それなりの付き合いがあると、僅かな変化が分かってしまう。

「私達の前で、無理に取り繕う必要はない」

きっぱり言われて、レイラを苦笑させた。

「こうして付き合ってみると『オールラウンダー』候補生てのも普通の生徒なんだな」しみじみ呟かれ。困った顔をしてしまう、

「それが普通なんですが、やはりオーラル陛下、兄が特別過ぎましたし……」

歴代の『オールラウンダー』で、名を知られてるのは、かの二人の英雄だけである。称号の一部に。先祖の名を記されてる。フィアとて、自分が色眼鏡で、シンクのこと見ていたと。理解してた、

「シンクの場合は、既にオーラル様に。並んでる気がするからな……」

そう考えると、二人の不安が理解出来た。

「リルム殿が、今頃どう思ったか、聞くのが怖くないか?」

これに反応したのは、ヒナエの方で……、

つかつかフィアに迫り。いきなり抱き着いて、ウルウル瞳を潤ませて、恍惚とした顔で、

「リルムさんが、羨まし過ぎます~」

別な意味で、強者なヒナエの発言に、三人は苦笑する。


━━悶々と、溜め息だらけの海水浴の後。祖父のオーダイから、衝撃の事実が告げられた、



ローザも今日から。一緒に夏休みを過ごす毎になって、ガイロン家の屋敷に泊まっている。



朝は、オーダイお手製。猟師料理に舌鼓を打って、ギルバートが、フィア達がお土産にした、様々な茶葉から、食後の一杯を振る舞われる至福の時のこと━━。

「しっとるかの~お前達……、夏休み明けに。新任の教師が配属されると?」

「新しい先生ですか?」初耳で、五人が揃って首を傾げる。

「あの女。ちとやり過ぎな気がするがの……、大きな火種にならなければ良いがな━━」珍しく渋面を浮かべたオーダイ、

「あの者は、昔から驚くことをするが、決して国にマイナスになること。しなかったのですが……」「お爺様達……、その教師とは、一体何者なのですか?」

豪胆なお爺様達を、ここまでぼやかせ。渋面させる先生とは……。不安を覚えた、



━━翌朝。



ジダン爺との約束を果たすべく。五人で、自警団の訓練してる砂浜を訪れた。



此方側の砂浜は、地元漁師の小型船が、置かれる場所で、夏は藻塩を作る塩田に使われる小屋、小魚を蒸し上げる小屋が、近くに隣接するため。美味しそうな香りが漂っていた。

「お嬢~よく来なさった、それからみんな討伐ご苦労様でしたな~、そこな暴れたお嬢ちゃんもの」

ニタリ意地悪く笑むジダンに。呻くローザだが、見れば包帯を巻いた。自警団の男達が混じっていた、仕事に支障があるため。基礎訓練のみ参加が許された、ローザの被害者達。みんな複雑な顔をしてるのは、仕方ないだろう。

「そっ、その私の暴走で、申し訳なかった」

白銀の髪を束ねた頭をペコリ。豊かな胸が揺れる。

「あっいやその……、何故水着なのかね」

困ったような、嬉しいような。目を向けて良いのか、赤くしながら、当たり障りなく。問いを発する。

「あっ、いやそのレイラに言われて」羞恥に真っ赤になり。チラリ他の四人を見れば、何故か動きやすい格好だが、水着ではない……。それを聞いて、みんなの視線が集まると。レイラは小さく笑みを浮かべ、

「簡単な話だ。貴女 は着替えも金も持たず。私を追って来て、騒ぎを起こした。それは先日の討伐で、領主様の温情が出て許されたが、貴女は今も。着替えすら持っていない。生憎私達の衣服では、貴女の豊満な胸が、きつすぎて着れないのだよ。だから無難に水着を着ている」

しごくまっとうに答えられ。成る程とみんな納得顔だが、ジダンとユウトは顔を見合せ。やれやれと苦笑をかわした。ならば男物の服を借りればよい話だ、あえてそこは省き、怪我を受けた男達に、美しいローザの肢体を見せ付け。男の性欲を刺激した上で、可愛らしい性格を見せられたら。許すしかないではないか……、なかなか狡猾な女性だと。感心するばかりだ。あのオーラルを彷彿させると。懐かしさを覚える。そんな二人の表情を、静かに観察して、内心流石は、オーラル陛下の師と。直属の部下だと。感心してるとは、二人は思いもしなかった。



━━訓練が終わる頃。すっかりローザは、自警団のみんなに受け入れられ。真新しいタオル。男物のシャツ等までもらい。可愛らしい笑い声が、聞こえて来た。

「一時はどうなるかと不安だったが、流石だな……」フィアからの素直な賛辞に、照れ臭く笑いながら、冷たいお茶をもらって、お礼を述べ。有り難く頂く。

「彼女は、元々可愛らしい人ですから」 やんわりした呟きを聞いて、

「変わったな……、良い意味で」

優しく笑うフィアに、釣られてクスリ柔らかく微笑み。

「ライバルは少ないに限ります。あのまま誰かとくっついてくれることが、一番なんですが」

肩を竦めながらさらり。本音を漏らした。

「ローザは大丈夫な気がするが、心配なのはリーザの方では無いのか?」

図星である。驚いた顔をフィアに向けると。ふふん一本取ったぞ。不敵な笑みを見て、してやられたと、微苦笑浮かべていた、小さく嘆息し。

「確かにそうです。彼女達(リーザ、フレア、シアン)は怖いですよ。シンクの親い人達ですし」

「成る程な……」

リーザの性格を知ってるだけに。無いとは思うが、女の子の気持ちは変わりやすいから。

「ところで、夕べの話どう思った?」



━━時間は、昨夜に戻る。オーダイお爺様から聞いた名を。

「元六将……、アレイク王国で、多くの死者を産み出した元凶。破壊神の因子を組み込まれた、中央事件の被験者で、災厄をもたらせる可能性がある。凶悪犯」本来ならば、処刑されても可笑しくない。それほどの大罪を数知れず行い。ダーレンと言う小国を滅ぼした前科がある。なれど……。それ以上の深い叡智と強大な能力は、あの魔王が認め。3賢者からも助命を各国に。働き掛けた経緯があって、



現在、南大陸の軍国ローレンで、預かる毎になっていた。

「噂では、ビーナ王女の先生を任されていたと。聞いている」

それが一因となり。『特待生』特に『オールラウンダー』候補の先生を任せられると言うのだから、祖父達が不振がるのも仕方ない。

「正直分からない。ただあのエドナ様が決めたこと、勝算が無ければやらないはずだ」

小さく呟くが、いまいち自分の言葉が信用出来ず。小さく吐息を吐いたのは、多少なり不安を覚えたからだ。




エピローグ



休みと言うのは時間が経つのが早く。数日前。母クエナがようやく顔をだした。

「よく来たな。それで世界会議はどうだった?」

急かせる父に、苦笑しながら、

「ええ~オーラル陛下、バローナ将軍の人力で、恙無く無事に。お仕事を全うしたと女王陛下から、聞きましたよ」

「そうか……、それを聞いて安心したわい」

ドカリ椅子に座り。ほっとした顔を見せる。父ギルバートに、優しく笑みを向けながら。

「既にお聞きと思います。魔人レイアスが倒され。ようやく中央大陸の憂慮が消え去りました」

ハッとまさか娘から、その話が出るとは思わず驚きの顔をしたが、理解の光を瞳に宿した。

「まさか……、あの双子を学園に連れてきたのは?」

「はい、オーラル陛下の考えです。ブライアン様が、リドラニア公国の王になったのも。新たな兵と武器を配備したのも。最悪の事態を想定した結果だと、聞いておりました」

娘の言葉に。またもや息を飲んだ、

「それはどう言うこと……」

クエナが一通の手紙を差し出し。訝しなギルバートだが、手紙の中を読んで愕然とした。

『親愛なるギルバート・ガイロン様━━。貴方ならば、フローゼの領主となってる可能性を考え、手紙をクエナに託します』

ゴクリ唾を飲み込み。娘の顔を見て、

「この手紙。いつ受け取ったのだ?」

少し思い出すような顔をして、

「確か……、手紙を受け取ったのは、オーラルが、アレイク王国を去る日にです。でも……」もう一通の手紙を取り出して、

「この手紙を受け取ったのは、私が休暇で、出掛ける間際でしたの。土竜ギルドから届いたその手紙は、オーラルからで、以前渡された手紙を、父上に渡すよう書いてあったのですが、正直忘れてました━━。それでどんな内容なのですか?」

娘は、嘘を言う性格ではない。また手紙は数年開けられた形跡も無ければ、魔法のアイテムでもない━━、肌が粟立つとはまさにこの事。クエナに手紙を差し出して、読ませると。みるみる真っ青になってく。

「全くもって口惜しいが、あやつが建国してくれ、助かったわい……」



━━二枚目の手紙にこうある。

『おそらく新たな脅威が、現れており。またターミナルの街が、危険にさらされる事でしょう。ギルバート将軍どうか、アレイク王国。ターミナルの街をお救い下さい』

さらに三枚目には、ターミナルにある。土竜ギルドは、ギルバートの命令を受けるよう伝えるとある。あやつの事だ、それくらいやっているに違いない。

「お父様……」

「分かっておる。まだ時間はある。ガイロン重騎士団を動かすぞ」

厳しい眼差しをしっかり受け止め、クエナは勇ましく笑っていた。

再び世界各地で、不穏な動きがあった。南大陸最大の敵疑似神。西大陸の魔神達、北大陸で内紛の恐れがあった。長く苦しい戦いが再び起きようとしていた。

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