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ヒモ聖女の半百合冒険譚 ~美女に転生した前世ヒモ男は、令嬢たちを囲って百合ハーレムを作りたい、ついでに世界を救う~  作者: 緑豆空
第五章 半百合冒険

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第422話 十三階段の試練、偽物の記憶。

巨大生物の墓場のような場所、あちこちに骨が転がっており、バカでかいあばら骨がそそり立ってる。それが、どこまでも続いている、まさに世界の終りの様な風景。


「さてと、どう思う? シーファーレン」


「そうですね……階層が変わったということは、何らかの意味があります」


「とにかく、普通に考えていてはだめなんだろうね?」


「はい」


 そんな話をしている時だった。


「知らない!!!」


 突然、ルイプイが叫んだ。皆が焦って、そちらを振り向いた。ジェーバが、面食らった顔をしており、ルイプイがこちらを見て後ずさっている。


「どうしたの? ルイプイ?」


 俺が聞いた。


「あなた……誰?」


「えっ……」


 ジェーバが慌てて、ルイプイに言う。


「何言ってるの! 聖女様だよ!」


「聖女様?」


「そうだよ!」


「あなたは誰なの!?」


「私だよ! ジェーバだよ! 子供の頃からずっといるよ!」


 ただならぬ雰囲気に、俺達は慌てて二人を囲んだ。


「頭ぶつけちゃった? どうした? ルイプイ」


「ここどこ! 帰る! お母さんが待ってる」


 完全に異常だった。ルイプイは親に捨てられた孤児。奴隷に売られた先で、盗賊から救い出したのは、俺とアンナだった。記憶がとんでもなく、昔に戻っているのか?


 そこで、ジェーバが言う。


「私たちに、親はいないよ!」


「な、何言ってるの! 幸せな生活をしていたの! おいしいご飯を食べて! 一緒にお風呂入って!」


「それは、聖女様に拾われてからでしょ!」


「違う! 近寄らないで! あんたなんか知らない!」


 一番仲の良いジェーバに対し、真っ青な顔をして拒絶していた。次の瞬間、ルイプイが突然逃げ出す。


「危ない! ここがどういう所か分からないから!」


 アンナが咄嗟に追いかけて、ルイプイを抱きしめるようにして止めた。それでも、アンナの腕の中で、恐怖におびえた顔でバタバタと暴れている。そこにシーファーレンが近づいた。


「スリープ」


 ふっ。


 ルイプイが眠る。


「どうしたんだろう? 頭をぶつけたのかな?」


 だけど、ジェーバが言う。


「さっき言ってた思い出なんて、ないはずです。私達の親なんて、ろくでもなかった」


「困ったな」


 するとヒッポが言った。


「我の背に括り付けて運びましょう」


「そうするしかないか……」


 眠るルイプイをヒッポの背に乗せて、毛で縛るように固定した。その一連の騒動で、仲間達が不安そうな顔をしている。


「変だよね……」


 するとシーファーレンが、低い声で呟くように言う。


「これは……試練かもしれません」


「試練?」


「地獄に通ずるこの場所で、ルイプイが突然変わってしまいました。さらに自分の持ってない記憶……。しかも、自分が欲しかったような記憶を、植え付けられたかのような感じでした」


「言うとおりだね。まるで、自分の人生を後悔しているかのような……おかしな感じだった」


「これは、ルイプイだけに留まらないかもしれません」


 確かにシーファーレンの言う通り。皆がルイプイの変化に戸惑っており、すぐに答えは出なさそうだ。だがそこで、ソフィアが言う。


「皆さん。私達は聖女様に全てを預けると、そう固い決心をしてここに来ました。どんな試練が待ち受けているかは分かりませんが、最後まで聖女様を信じていくしか道はありません」


 だがそこで、ミリィが悲しそうに言う。


「私は」


「はい」


「私は聖女様を忘れたくありません!」


 それを聞いて、皆が動揺する。


「それは……ここにいる全員がそうだと思います。それに、これから皆が忘れてしまうとも限りません。ここまで来てしまったら後戻りは出来ないのです。なんとしても、獄門を締めねば世界は終わります」


「それは、そうですが……」


 そこで、アンナも言う。


「わたしは、忘れない。いや……もし、わたしが忘れたとしても、私の剣は聖女を守るために振られる。だから、ソフィアの言う通りに進むべきだと思う」


 そこで、ジェーバが言った。


「でも、どうなるか分からないですよね。私は、皆を忘れたくない! ルイプイを忘れたくない!」


「でも、進まねば」


 アンナが言うが、今度はマグノリアが言った。


「命の恩人を。私達姉弟を救ってくださった聖女様を忘れるなど、死よりも重いです……。それを受け入れるというのは……難しいのです」


 それを聞いて、ヴァイオレットも頷く。


「私も聖女様に救われました。忘れてしまうなど、想像を絶するような恐怖です」


 それを聞いて、スティーリアが言う。


「私は、ソフィア様のおっしゃる通りかと。ここまでに覚悟は決まっていました。前に進むしかないと、私は思います」


 それを聞いて、マロエとアグマリナは首を振る。


「嫌です。忘れたくなどありません」


「私もです。恩人を忘れるなど、考えられない」


 だが、アデルナが優しく言う。


「みなさん。本当に忘れるのでしょうかねえ……私はそうは思いませんよ。皆は、絆で繋がっています。この紋章が、それを全て物語っているように思うのですよ。例え忘れようとも、身体に刻まれた紋章が、必ず連れ戻してくださるとは思いませんか?」


 それを聞いて、リンクシルが言った。


「そう! アデルナの言う通り! 諦めたら、ルイプイは戻らないまま! もうやるしかないと思う!」


 だが、ウェステートが俯き加減で言う。


「でも、忘れて戻らなかったら……どうなるのでしょう? 皆が、バラバラになってしまうのではないでしょうか?」


 シーファーレンが落ち着いた声で言う。


「こうしましょう。覚えている人が忘れた人を覚えていればいい。偽の記憶が植え付けられたとしても、覚えている人が元の記憶を教えればいい。ゆっくりと時間をかけて、もう一度関係を築き直して行けば、必ず元通りになります」


 皆が、複雑な顔をしていた。だが俺もどちらかというと、絶対に忘れたくない側だった。だがここで、俺がそう言ってしまえば、この先には進めそうにない。


 痛い……。が。


「みんな! 私を信じて! 皆を導くから! だから、こんなバカげたことは早く終わらせてしまおう。なんかね、上手くいく気がする。今は、不安かもしれないけど、私はみんなを絶対に忘れないと分かる。なぜか、この世界は私に影響しないと、分かる。だから、私はみんなを絶対に忘れない」


 無理やりな理論。だけど、その俺の言葉に皆が落ち着き始めた。


「ヒッポ! 君はどう?」


「我は神獣です。ですが、どう影響するかは分かりません。主様のお言葉は、絶対だと思っております。主様は、皆を忘れないでしょう」


 それを受けて、ソフィアが言う。


「聖女様。やはり来る前の、あの言葉通りになりましたね。私達の命を預けると」


「とにかく! 私は、誰一人として置いていかない。そして、死なせない。だから! 行こう!」


 すると、ようやく皆の意識がまとまった。


「「「「「「はい!」」」」」」


 そしてジェーバが言う。


「聖女様……皆が忘れても、絶対に忘れないでください。そして……叶うなら、ルイプイを戻して」


「任せて!」


 とは言いつつも……どうすればいいのか? 分からなかった。


「聖女様。まずは、この場所の解明ですね」


「だね。まず、あの骨があるって事は、ここは巨大生物の墓場って事でいいのかな?」


「はい。かとは思います」


 その時だった。


 グモオオオオオオ!


 何かの鳴き声か、ホーンのような重低音の音が鳴り響く。


「なに?」


「あれを!」


 ヴァイオレットが指さす先を見ると、向こうの空から何か大きな影が近づいて来るのが分かる。


「なんだろ?」


「わかりません」


 この周りの骨の様子からも、ただならぬ感じはする。だが対処する方法や、あれが何かも分からない。


「反対側に移動してみるか?」


「そうですね。そうしてみましょう」


 俺達は、影がやってくる方向とは、反対方向に移動し始めるのだった。

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