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幸薄公女はスパダリ王太子とすれ違いながらも、幸せの階段を上る  作者: 水川 トオル
第二章

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43 罠に嵌る令嬢とぬか喜びする欲しがり妹②


 そうして2人は、魔法を呪いに変える訓練を始めた。その成果は、日数が経たないうちに現れる。

 

「……あら、できちゃった。呪いって魔法より簡単ね。お母様」

「才能があるのよ、ヴィヴィには」

「ふふ、お母様の娘だからよ♡」


 日に日に溜め込んだ感情を魔法に落とし込んで黒く変えるのは、スープを冷ますより簡単だった。劣っているアリシアに怒りが湧いてくるのは、ヴィヴィにとっては自然のこと。後はそれを上手く料理すれば、呪いは程なくして完成した。


「……でも、呪いの定義には納得いかないわ。誇りを失えば、魔法は呪いになるって言い方は、好きじゃない。ヴィヴィは呪いを使えるようになったけど、貴族としての誇りまで失ったつもりはないわ……」

「言われてみれば、そうね。私たちは崇高なる目的を持ってやっている……。むしろ、魔法を呪いに変えることは、誇り高いことだわ……」

「誇り高い……こと……? うん、そう言われるとしっくりくるわ、お母様。呪い(これ)が禁止されているなんて、時代遅れも甚だしいのよ……」


 ヴィヴィは、禁呪指定されている王国の掟が間違っていると言わんばかりの顔で、常識を踏み躙るような笑いを浮かべた。



 丁度その頃、研究で忙しくなるため当分は帰ってこない予定だったローランドが、別館に戻ってきた。リーサやヴィヴィと顔を合わすなり、


「……またすぐ研究機関に戻らなくてはならない。今日、アレを完成させよう」


 と息を切らして、ことを急く。


 ローランドは部屋着に着替えることもしないで、呪いの準備に取りかかった。リーサもヴィヴィもそれに倣い、各々準備をし始める。


「お母様、ヴィヴィたち3人が1つの呪いを作ると、それは一体どんな呪いになるのかしら? ヴィヴィは補助魔法が得意だから、呪いも付与……状態異常系とか……?」

「そればかりは、結果を見ないと分からないわね。私たちの特性や属性、その日の体調にも、影響されてしまうから……」

「創り出す人の体調や特性や属性によって、生み出される呪いが変わるって……。何だか面倒だわ」


 まるで運頼みだと、ヴィヴィは不平を言った。


「力や完璧さを求めれば求めるほど、少しのことで調子が狂うのよ。だからヴィヴィ、集中なさい。それから、私とローランドは、貴女の補佐に回るわ。私たちが本気を出すと、アリシアを殺してしまうほどの呪いを作れてしまうから……」


 そう言うと、リーサは真剣な顔付きに変わった。


アリシア(あれ)にはまだ使い道があるからな。私とリーサは、効力がずっと続くように、呪いに手を加えてみよう。簡単に解呪されては困るし、アリシアが欠陥品だと証明される前に、効力を失っては困る。念には念をだ」

「あらやだ、ローランドったらいつになくやる気ね」

「……私にも、譲れない計画がある」


 ローランドがぶっきらぼうな口調でそう言うと、リーサとヴィヴィは静かに頷く。3人の思惑が一致したところで、呪いの儀式は始まった。


 3人は三角形を作るように立ち、それぞれ呪文を詠唱し続ける。


 



 陽が完全に沈んだ頃。


 1時間にも及ぶ作業の末に完成し、呪いは一時的に手鏡に封じられた。


 創り出された呪いは、ハプニングを起こすという<状態異常>を本人の周りで起こす、巻き込み型の迷惑な呪いだった。また、穢れた3人の魔力(=呪いとなったもの)を惜しみなく注がれたがために、半永久的な持続性を持つ呪いができ上がる。


「や……ったわ、完成……した……。お父様、お母様、やっとこれで……歴史に名を刻める……!」


 力を使い切った3人は、ボロボロになりながらもその完成を喜ぶ。


「さて、問題は、この呪いをどうアリシアに付けるか……よ」


 リーサが迷いあぐねていると、ヴィヴィが答えた。


「きっとお姉様は、ファウスト王立学院の入学案内書を取りに、お母様の部屋に訪れるはず。使用人を通して情報を得れば、お姉様が大体どの日にお母様の部屋へ忍び込むか、割り出せるわ」

「なるほど……。それならば、部屋に呪術の円(ソーサリーサークル)を仕掛けておくとしよう」


 ローランドは呪いが封じ込められた手鏡を手に持ちながら、ヴィヴィの提案に乗った。

 

 その後、作戦は上手くいき、アリシアは呪われた身となった。半年後にはファウスト王立学院へ入学し、ヴィヴィたちの元を離れていくが、3人は誰一人として心配はしなかった。呪いを抱えたアリシアにできることは、何もないからだ。




 

 ヴィヴィはマリアから届いた手紙を握り締めたまま、自室のベッドの上に寝転がると、左右に転がりながら喜びを表現した。


「あ~、今思い返しても上手くいったと思うわ。お姉様がいまだに独りぼっちなのも、まだ呪いが解けていないからね。早く入学日にならないかしら。私も立派なレディになったことだし……♡」


 身体のくびれと膨らみをいやらしく強調しながら、負の成長を遂げたヴィヴィは、自信満々の表情かおで笑う。


 ルイスを虜にし、アリシアが絶望する状況を瞼の裏に思い浮かべると、「決着を付けましょう、お姉様。ま、私が勝ったのも同然だけれど……」と毒を吐いた。

* 昔、ヴィヴィは自分のことを「ヴィヴィ」と呼んでいましたが、成長した今は自分のことを「私」と呼んでいます。


評価・ブクマ、ありがとうございます。速筆になれる応援魔法をかけてくださる方も、ありがとうございます。

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