表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不可思議体験覚書 ~怖いような怖くないような怪談未満の実話~  作者: 文月斜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
13/13

第13話 明晰夢

この稿を書き始めてから何やら頭痛がひどいので、とりあえずこの話で一区切りとしたい。

直接の体験談として目ぼしい物は思い出せる範囲で書けたと思う。

最後の話は一、二年前、今の住所に移ってからの出来事である。


~~~~~


出勤前に不覚にも自宅でうたた寝してしまい、目が覚めたら天井の照明が点いたまま、外はとっくに明るくなっていた。


寝床から立ち上がって照明の紐を何度かカチカチ引っ張ったのだが、消えない。

あれ、壊れたかな、参ったなと思ってまた四、五回引いてみても効果なし。半ばむきになってもう一度紐を持つ手に力を込めたところで、また目が覚めた。

天井には先程と全く同じように、点きっぱなしの照明と紐が見えている。


なんだ夢か。

寝ている内から起きる時の夢を見るなんて変な日だ。電気を消さずに寝てしまったせいだと、今度は立ち上がりもせず、ベッドに腰かけたまま手だけ伸ばして紐を引っ張った。

消えない。


不審に思う間もなく、また目覚めの瞬間に戻っていた。天井には照明と紐、さっきのままの光景で。


なんだこれは。

跳ね起きて腕を振り回し、指先に触れた紐を掴んで迷わず引く。

ベッドの上で目が覚める。光景が変わらない。


いい加減にしろ。

私は仕事に行かなくてはいけないんだ。

わざと横に転がって、掛け布団ごとフローリングの床に落ち、膝と手をついて勢いよく身を起こす。

寝惚けた頭を振って立ち上がると、軽い脳貧血に続いて、無理な起床につきものの、痺れたような感覚が首筋から全身に広がった。

まったくなんて夢だ。

時計を確認し、寝過ごしていないことにホッとした。窓の外から、道路を行き交う車の音が聞こえてくる。安眠妨害の騒音も、目覚ましと思えば役に立つ。着替えのシャツを壁に見ながら、無意識に照明の紐を引いていた。


またベッドの上だった。


なんなんだ。

一体どうしたらこうなるんだ。

左手を手枕にした不自然ながら妙に心地好い寝覚めの瞬間に、何度起きても戻されてしまう。

無意味に身をよじってみたり、間隔をずらしてみたり、色々変化をつけてみたが、どうしても照明の紐を引いた瞬間にリセットされる。慣れてくると紐を引いた直後に一瞬意識が遠のくタイミングを自覚できるようになったが、結果は同じことだった。


10回以上もそんなことを繰り返してから、もしかしたら自分はもう生きていないのではないか、と唐突に思った。

手枕に寝転がったまま、狭い自室の光景がはっきりと見えているのだけれど、起きて着替えてドアを出ていくことができないのは、生きていないからではないかと。


妙に索漠とした気分になって、しばらくじっとしていたが、でもやっぱり仕事に行かなきゃなあと考えた時に、わずかながら生きた心地がしたようだった。

天井には、点きっぱなしの照明と紐が見える。

布団を捲って起き上がる感覚が、先程までとどこか違う気がした。

性懲りもなく紐を手探って引いてみると、何事もなかったように照明は消えた。

夢のループは破れたらしい。


子供の頃は、疲れが溜まると虫が出てくる悪夢を見たものだが、今回のように手の込んだ奇妙な夢は初めて見た。

ちょっとした怪談かもしれないが、起き抜けのシャワーを浴びながら、某マンガの一場面と重ねて一人笑いしていた自分の方が、よそ目には不気味だったに違いない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ