日常からの転落
この作品は私の処女作となる作品です。拙い文章ですが、読んでいただけると嬉しいです。
「才能」という言葉を聞いてどのような「才能」を思い付くだろうか。
勉強の「才能」、スポーツの「才能」、芸術の「才能」...etc
「才能」は持っていても磨く環境や意志がなければ、目に見えるような成果には現れることがない。
この物語は、その圧倒的な「才能」を持ちながら、平和な日本という環境によって、磨く意志を持つ必要のなかった少年の物語である。
桜が満開の並木道を、制服姿で歩く一人の青年がいた。
その青年は、身長175cmくらいで、顔はそれなりに整っているものの、どこか印象が薄い感じであった。
「今年の桜は咲くのが、早いな。」
そう呟き、桜を眺めながら黙々と青年の通っている高校への通学路を歩いていく。
その青年の後ろ姿を発見した少女が、青年のもとへ駆け足で近づいていく。
「空くん、おはよう!」
そう空と呼ばれた青年に腰ぐらいまである綺麗な黒髪を桜吹雪で靡かせながら見惚れるような笑顔であいさつしたのは、青年のクラスメイトの清水悟である。
彼女は、大和撫子な雰囲気を持ちながらも、学生服の上からでもはっきり分かるような豊満な胸を持っていた。
彼女は、学業優秀、スポーツ万能、眉目秀麗と三拍子揃った彼らの通う高校はもちろん周辺の地域でも知られている有名人である。
彼女と青年は、高校入学時からの知り合いだが今のようにあいさつをかわすようになったのは、高校2年生の時に起こったある出来事からである。
「おはよう、清水さん。」
青年はそうあいさつを返すと、その少女と並んで歩き始めた。
「今日から3年生でクラスは変わんないけど、受験あるから勉強頑張らないとね。空くんは進路とか決めてるの?」
「僕は一応、国公立目指してるよ。うち、じいちゃんと二人暮らしだからさ。」
「そうなんだ。私も国公立目指してるから、もしかしたら同じ大学に行くこともあるかもしれないね!」
「ははは、清水さんと同じ大学に行けたら楽しそうだけど、僕の学力じゃ清水さんと同じ大学は厳しそうかな。」
「そんなことないよ!まだ1年間あるんだから、頑張れば同じ大学に行けるかもしれないよ?」
「それじゃ、頑張って勉強してみようかな。分からない事があったら相談に乗ってね。」
「うん!」
そう頷く彼女はとても嬉しそうだった。
そんな事を話していると、彼らの通う高校に到着した。
それから、新しい教室へ二人で向かい黒板に書かれていたそれぞれの席へ着いた。
空は、窓際の席だったため、ぼーっと外の景色を眺めていた。
すると、隣から快活そうながっしりとした体形の、いかにもスポーツマンという感じの青年が話しかけてきた。
「よう、空!朝から清水さんと登校なんて羨ましいことやってんじゃねぇか!」
「別に、たまたま通学路で会ったから一緒に登校してきただけだよ。健太こそ、よく女の子と歩いてるじゃん。」
「それとこれとは話が違うんだよ。どれだけの男が羨ましそうな目線を向けてきたのか分かってんのかね?」
「そんなこと言われても、清水さんが魅力的なだけで僕はその隣に居ただけなんだけどなぁ。」
「そんなセリフをペラペラ吐けるお前を俺は尊敬するよ。」
「事実そうなんだからしょうがないじゃないか。」
「本当に尊敬するよ...」
そんな軽口をかわしていると、ボブカットの明るそうな女性が教室に入ってきた。
「はい!席について~。清水さん、顔赤いけど大丈夫?体調悪いの?」
「えっ!いやっ!大丈夫です!」
「そう?体調悪くなったらちゃんと言ってね?」
「はい、ありがとうございます。」
悟は先ほどの空と健太の会話に聞き耳を立てていたようだ。
「それじゃ、今年もこのクラスを担任することになった。天川輝美です。改めてよろしくね。これから始業式が始まるから廊下に並んで下さい。」
そう言われ、みんな席から立ち上がり廊下に並び、始業式の始まる体育館に向かった。
始業式は退屈なもので、健太は立ちながら眠るという器用なことをしていた。
始業式が終わり、教室に戻り先生が戻って来るまで各々が友達と話したり読書したりと過ごしていた。
(なんか変な感じがするなぁ...)
席に着いて窓の外を眺めていた空はそう思った。
先生が戻ってきて、みんな席に着いた瞬間、教室中に幾何学模様の光が浮かびだした。
「な、なんだこれ!」
「何が起こってるの!?」
「なんかのドッキリか!?」
クラスメート達が騒ぎだし、軽いパニックに陥ろうとした時、
「落ち着いて!」
その喧騒の中でも響く一喝でクラスは静まり返った。その声は担任の天川輝美の声ではなく、空の声だった。このままでは、けが人が出る可能性があると思ったからだ。今度は優しく語り掛けるように、
「落ち着いて。まずは、教室の外に出よう!ねっ、先生?」
「え、ええ。阿迦井くんの言う通りに教室の外に出ましょう。」
そして、クラスメートの一人がドアを開けようとしたがびくともせず、幾何学模様が強い光を発し始めた。
何が起こるか分からなかった空は、
「みんな、教室の真ん中に集まって!何が起こるか分からないから!」
クラスメート達は、空の言うとおりだと思ったのか素直に教室の中心に集まった。
次の瞬間、目の前を覆いつくすほどの光に包まれ、空達31人はその教室から姿を消した。
まるで、最初から彼らがいなかったかのように...
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