召喚
時は、空がセンクリッド帝国軍を敗北させた直後に遡る。
帝都『カムラ』の城で、皇帝ホノクリスは宰相からの報告を受けていた。
「報告します!我が軍は壊滅的被害を被り、セルキア王国に敗北しました」
「冗談はよせ。昨日の通信石での報告では、変わらず我が軍の優勢であったはずだ」
「いえ、冗談などではなく。我が軍は一人の『迷い人』によって、約三万人の犠牲を...」
「待て、一人だと?たった一人にやられたのか?」
ホノリクスは困惑したように聞いた。
「正確には、その『迷い人』が率いた部隊にです」
「信じられんな、そんな馬鹿げた話...」
「私もです...」
ホノリクスは考え込んだ。
「これからどうするか...」
「私に一つ考えがあるのですが、よろしいですか?」
「何だ?申してみよ」
宰相は得意げに口を開いた。
「こちらも『迷い人』を利用すればいいのです」
「召喚用の魔法陣を我が国は持っていないぞ?」
「はい、存じております。ですから、持っている国から盗めばよろしいのです」
「なるほど、セルキア王国か。手筈は整っているのか?」
「実は既に間者を通して入手しております」
「手が早いな。それなら話が早い、早速召喚せよ」
「畏まりました」
宰相は退出した。
しかし、ホノリクスは浮かない顔をしていた。
「『迷い人』か...本当にそれで何とかなるのか?件の『迷い人』が格別有能であっただけではないのか?いや、考え過ぎか」
ホノリクスは寝酒用のボトルを開け、グラスに注ぎ、一気に飲み干した。
「ともかく、もう後がないのだ。今は信じるしかあるまい」
こうして帝国の夜は更けていった。
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