空の願いとフレーゼの誓い
空が社会的に死んでから、フレーゼとマールを連れて拠点に戻ってきた。
その道中、二人は空から少し離れて、こそこそと何やら話し込んでいた。
近付いてきたかと思えば、二人は仲良さげに話していた。
空は、女性の仲良くなるスピードはとても早いんだなと感心した。
マールには一つ依頼をして別行動となった。
空は拠点の天幕の中でフレーゼに確認したかったことを聞いた。
「フレーゼ。聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」
「ソラ様。何でもお聞きください。何ならソラ様が知りたがっていた、私のスリーサイズをお教えしましょうか?」
「いつ僕が知りたがったんだよ...聞きたいのはステータスのことなんだけど、どうやって確認すればいいのかな?」
「それはもう一度、血液をプレートに垂らせばステータスが更新されますので、確認できます。」
「フレーゼ。針か「どうぞ。」なにか持って...流石だね。」
「メイドとして当然です。」
空は、そう言って渡された針で指を刺し、血液をプレートに付けた。
刺した指をフレーゼの治癒魔法で治療されながら、プレートの様子を確認していた。
すると、淡く光り出し表示されていた数値が変動し始めた。
表示された数値は以下の通りだった。
名前:阿迦井 空
Lv.20
加護(ユニーク)
心眼Lv.2
「あらら、結構変わってる。フレーゼ見てくれない?」
「よろしいのでしょうか?ステータスを見せるのは余程、信用できる方でないと危険ですよ?」
「はっきり言うけど、一人を除いて僕は誰も信じてない。」
「本当にはっきり言いますね。まぁ、そうではないかと薄々気付いておりましたけど...」
そう言って、フレーゼは誰でも分かるくらいに落胆の意を示した。
「過去に色々あってね。それはいいや、フレーゼに見せる理由は三つある。」
空は、一本一本指を立てながら説明を始めた。
「一つ目は、僕がこの世界の常識をまだ完璧に分かってないから。
二つ目は、フレーゼは僕のことを裏切らないと思ったから。
三つ目は、二つ目と少し被るんだけど、僕がフレーゼに期待してるからかな。」
「期待ですか?」
「そう。
僕はずっと怯えてる。
他人が怖くて怖くて仕方がない。
だから探ろうとした。
その人の心情を、思考を、行動を。
少しでも安心できる材料が欲しかった。
言ったでしょ?
人間観察が得意だって。
僕は他人を信じられない最低な人間だ。
そのおかげで害意とかの人の悪感情には敏感になったけどね。
だからそんな僕を、嘘でも冗談でも何であっても、慕っているとはっきり言ってくれたフレーゼには期待してるんだ。
いつか僕に人を信じることを思い出させてくれることをね。
自分ではどうにも出来そうにないからさ...」
空は、自嘲的に笑った。
空が話す内容を真剣に聞いていたフレーゼは口を開いた。
「そうですか。
そうなった原因などはソラ様がいつか教えて下さるのを待ちます。
私はあなたのその願いを叶えて見せます。
例え何年かかったとしても。
私はあなたを決して裏切りません。
例えあなた以外の全てが敵に回ったとしても。
私はあなたを慕い続けます。
例えあなたが誰も信じられなくても。
私はあなたの味方で居続けます。
例えあなたが私を拒絶したとしても。
これらを私の全てを賭けて誓います。」
「そこまでしなくていいよ。フレーゼの頭の片隅程度に留めておいてもらえれば。」
「いいえ。それはできません。」
「どうしてさっ!?
どうしてそこまでできるんだ!
僕には分からない!
分からないっ!
分からないっ!
分からないっ!」
耐えきれなくなった空は髪を掻き毟るようにしながら、分からないと叫び続けた。
フレーゼはそんな空を包み込むように抱きしめた。
「私があなたを慕っているからできるのです。」
「意味が分からない!
その感情は僕には分からないんだよ!
あの時からずっと、ずっと、ずーっとだ!
愛情だとか恋慕だとか人に対する好意の感情というものが僕には分からない!
何なんだそれは?
あると何か良いことがあるのか?
無いと生きていけないものなのか?
頼むから教えてくれ!
怖くて仕方がない!
胸の奥が痛くて仕方がない!
フレーゼ、頼むから教えてくれ!」
空は溜まりに溜まったものをすべて吐き出すようにフレーゼに訴えた。
空はそれで少し落ち着いたようだった。
フレーゼは普段の無表情からは想像できない、聖母のような笑みを浮かべて口を開いた。
「私があなたに、知りたいというその感情を最大限に向け続けます。
あなたは私の感情をほんの一欠片でも理解していただければ、分かるようになります。」
「凄い自信だね。」
「当たり前です。あなたへの気持ちで燃え上がって灰になりそうなのですから。」
「それダメじゃない?」
「ものの例えです。それだけあなたをお慕えしているのです。あなたは時間をかけて感じ取れば良いのです。」
「いつかできると思ってそうしてみるよ。」
「はい!」
そう返事をしたフレーゼは今まで見た中で一番の笑みを浮かべていた。
空は思わず呆けてしまった。
「見惚れましたか?変態ですね。」
「これが惚れるっていう感情なのかな?まだ分からないや。」
「素直なソラ様だと調子が狂いますね。でも、素直なソラ様も素敵ですよ。」
そう言ってフレーゼは空にキスをした。
「これが愛しているという感情です。これから何度も経験すると思いますので、理解できるように努力してくださいね。」
フレーゼは再び微笑みを浮かべた。
こうしてまた一日が過ぎていった。
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