夢を見ちゃ駄目か?
久々っていうわけではないが、2週間ぶりに外に出る。同じ漫研サークルで同じZET社に入った友人のケンジ奴が
遅い夏休みで実に2年ぶりにこっちに戻ってくるということなので久々に飲もうということになって待ち合わせをしているのだ。俺はあんなブラック企業を辞めてしまったが、奴は続けているらしい。
「おう、ゆうすけ久しぶり」
振り返るとケンジがいた。どことなく痩せた感じがするが、スーツ姿がなんとなくだが、以前より様になっている感じだ。昔はいかにもスーツに着せられているっていう感じだが今は着こなしているし、声も昔みたいなオタ特有のしゃべり方ではなく、大きくはっきりした声だ。どうやら、ケンジは仕事の終わりにもかかわらず居酒屋の予約を既に済ましてくれていたみたいで、俺らはその店に向かった。
「なんだよ、ゆうすけ まだ就職していないのかよ?ぶっちゃけ、1年以上ニートしているとマジやばいって。面接でつっこまれるぜ」
「いやあ、この間なんか商品の納期でトラぶってマジ大変だったよ。だけど、おかげで支店の売り上げ1位になってさあ。相変わらず残業は多いし、休日出勤は多いけどよ、まあ支店長になれば給料上がるから我慢だわな」
「総務部の麻紀ちゃん覚えている?そうそうあのFカップの。あの子と遂にデートできてさ。いやあ、もしかしたらモノにできるかもしれなくてさ。いや~、がんばちゃおうかな」
「で、ゆうすけの方は最近どうなんだよ」
どうだなんて言われても、正直言えば何もない。さっきからケンジに一方的にここ2年にあった事をマシンガンのように喋られるといかに2年間という月日が長かったを感じさせられる。社会人デビューを果たし、いつの間にか仕事で成果をあげて彼女ができそうになっている。ただ、それだけの事だ。しかし、自分にはこの2年間は何も無い。
それが事実だ。
「ゆうすけ、お前まさかまだ、小説家っていうかライトノベル作家目指しているのかよ?」
図星だったため、無意識に目を逸らしてしまう。それを察したのかケンジは言う
「いや、俺もさあ、同じサークルにいたから良く分かるし、俺もさあ日本の漫画会を変えてやるって2徹、3徹して漫画大賞に応募したけど、俺らもうそんな年じゃないじゃん。現実を見ようぜ。確かに、夢を諦めるのはつらいかもしれないけどよ、応募日までに間に合わせるために、漫画描いていたときの2徹や3徹していたからさ、今の会社の激務に耐えられるんだよ。そう考えると、あの努力も悪くないって思うぜ」
俺は走った。
ただひたすら走った。
ケンジはこの後実家に帰ると言って別れた
しかし、あの後ケンジが色々とアドバイスなのか愚痴なのか説教なのか、分からないが色々言っていたが頭に入らなかった。少しでも頭に入った情報を追い出すために走る。
「夢を諦める?そんなことできるか」
「現実を見ろ。こんな現実に何の価値がある。現実から逃げて何が悪い。違う、俺は逃げてない。必死にがんばっている。何を?ここ半年、小説も公務員の勉強もしてないじゃないか?違う。今は考えているだけど。何を」
本当は小説の主人公のように叫びたかったが、チキンな俺にそんな事はできなかった。
ただ、部屋の中に猛ダッシュに駆け込み誰も入ってこないように鍵を閉める。とはいっても口うるさい両親はいない。今月から、父親が短期赴任のため母親と一緒に北海道に行っている。俺としては、常に小言を言う母親もいないし、ときおり妙に長く古い教訓のような説教を言う父親がいないのは唯一の救いだ。
そのとき廊下から足音がし、部屋をノックする音が聞こえて心臓がドキッとした。
両親はしばらく帰ってこないはずだ。じゃあ、誰だ。俺には従兄弟も兄弟もいないし、
アホな3文ライトノベルと違ってイタイ幼馴染なんかもいない。じゃあなんだ?
「あんた、木崎勇輔よね。いるんでしょう。ってか、いるのは分かっているから、鍵開けてくれない。」
愛想は無いが、綺麗な女の声だ。もしや、あれか。依然アダルトサイトで魔がさして押してしまった4クリック詐欺の請求か?金の回収のために暴力団が押しかけてきたに決まっている。女の声だと思ってドアを開けたら暴力団男たちがズラズラと入ってくる。そうに決まって…
「ああ、メンドクサイ。もうドア開けるからね」
その言葉が聞こえた瞬間にドアがSF映画よろしくに飛んできた。幸い天井にドアが当たっただけだが、それでもあまりの驚愕に体が動かない。
「なんだ、やっぱいるんじゃん。いるなら出てきてくれれば、鍵壊さなくてすんだのに。面倒ね~」
長い黒髪の女が靴を履いたままこっちに入ってきた。顔は廊下と俺の部屋の電気を消してあるため良くは見えないが、スラリとして背の高い女だって言うことは良く分かる。
「あんた… だ れ」
ようやく俺は口に出す。
「私は五十嵐五十鈴。NON-DEMO屋だよ。あんたが、2週間前にWEBで依頼した件で来たのよ。まさか、あんた覚えてないの?」
女は呆れたような口調で言った。
淡々と




