↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢、悪役令息を飼う  作者: 朝比奈侑生


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
40/40

第40話 黒煙に紛れた焚書

「アリエスタ様!おやめください」


 ユリアンが綿毛を僕から離すと、綿毛は短い手足をじたばたと動かしながら抵抗する。

 ま、まさか……アリエスタが綿毛の正体だったとは……。


「はぁ、というわけだ。どうにかしてくれないか。城から突然いなくなったかと思えば、この間突如我が家に姿を現して、様子がおかしな犬だと思って変化専門の魔導士に見せたら呪いの類だろうというんだ」

「その呪いをかけたのがご主……マリーノワーズ様だと?」

「僕はお前を疑っている。婚約破棄の嫌がらせだろう」


 は?僕は婚約破棄に何の思いも持っていない。

 嫌がらせなんてそんな無駄な労力を使いたくもない。


「とにかく、アリエスタ様にかけられた呪いを解いてくれ」

「でもさっきは人間の姿だったんだ、自由に戻れるんじゃないのか」

「いや、これは魔導士に作ってもらった薬で一時的に呪いを弱めているだけだ。だから気を抜くとこうして犬に戻ってしまう。おいこら、じゃなくって、おやめくださいアリエスタ様。あいつはあなたを犬の姿に変えた張本人ですよ!」


 だから違うと言っているだろうが愚弟め。

 ユリアンはリングレットの元へ飛びかかろうとするアリエスタを必死に抱きかかえ、押さえつける。

 それにしても綿毛がアリエスタだったとは……。

 確かに綿毛が僕の元へ来たのはあの一件があった以後のことだ。

 ご主人様なら呪いをかけてアリエスタで遊んでいてもおかしくはない。ちょっと怖いけど。

 僕は二人を追いやるように手を動かすと、席へ戻る。


「お前たちの嘆願は一応マリーノワーズ様へ届けておこう。だから今は僕の邪魔をするな」

「そうやって何故お前はいつも上から目線なんだ、人に呪いなどしかけておいて」


 きゃんきゃん騒ぐユリアンを無視して、僕は本を読み進める。


「百合の魔女リリーデルは薔薇の魔女アウレーディアを封印した哀しみで隣国の森深くにお隠れになった。残されたオーギュスタを慰めたのは、聖女ミリエールだった。二人は国を興し、今に系譜が紡がれている……か」


 哀しむくらいなら最初から封印しなければよかったのに。

 母上は何をやっているんだ。

 薔薇の魔女の血族が続いているのかも謎だし、結局はよくわからなかったな。

 というかもしかしなくても、僕はご主人様にとって敵なのではないか?


「聞いているのですか兄上!」


 ……本当、お前は綿毛に似ているな、お前も呪いにかかってしまえばいいんじゃないのか?

 おっと、綿毛はアリエスタだったんだった。


「調べは済んだ。僕は屋敷へ帰る。マリーノワーズ様へお前たちに会ったことは伝えておこう。では」


 あまり関わりたくない。

 僕は席を立つと噛みついて来るユリアンを無視して階段を登る。

 何だか煙臭いな、……まさか!?

 

「ユリアン!早くアリエスタ様を連れて出ろ!火事だ!」


 共用部分に繋がる扉を開けると、煙が一気に閉架式書庫へ流れ込む。

 僕は袖口で口元を抑えると状況を把握した。

 煙は充満しているが、館内の温度は上がっていない。

 火の出所はどこだ。というか人が……いない?


「まさか、仕組まれたか」


 僕は後ろを向き、動揺して動けなくなっているユリアンを摘み出す。

 全く、威勢がいいのは口ばかりだな。手のかかる弟だ。


「お前達は図書館を出ろ、僕は火の出元を調べてから行く」

「僕も行く!」

「馬鹿たれ!お前はアリエスタを抱えているんだぞ!いいからさっさと出ろ!犬に煙を吸わせるな」


 僕はユリアンの腰を蹴飛ばすと剣を抜いて、煙で何も見えない館内をうろつく。

 何となく魔力も放出してみる。やり方わからないから気持ちだけ。


「あそこか……?」


 一箇所、煙が不自然な流れをしている場所があった。

 誰かいるのだろうか。

 恐る恐る近付くと、剣を構える。

 煙がさっと捌けた瞬間、僕は剣を振った。


「なっ……」


 剣を振った瞬間、その姿は煙の中に消えた。


「……まさか、今のは……司書?」


 残像が、記憶の中の司書と重なる。

 まさかあの司書、僕の命を狙って……?

 その瞬間、閉架式書庫の方から爆発音が聞こえた。

 まずい、流石の僕も木っ端微塵にされては生きていられない!


「なんでこの僕がこんな目に遭わなければならないんだ!」


 情け無い声を出しながら必死に入り口まで走り抜ける。

 僕が入り口を出ると同時に図書館の一部が吹き飛んだ。

 チリチリと音を立てて書物が燃えて行く。

 ……もしかして、ダイナミック焚書か……?

 いやいや、こんなことをする利点がない。

 しかし、それをする必要性が急に生じたら……?


「僕が、創世の歴史を調べ始めたから……?」


 天へ登っていく黒煙を眺めながら僕が呟くと、誰かの視線を感じて振り返る。

 もしかしたら、僕がまだ読んでいなかった本に秘密があったのかもしれない。

 僕はため息を吐きながら無意識のうちに綿毛を撫でた。あっ、王女だったなお前は。


本日更新日ではありませんが、祝日なので更新させていただきます。

代替え休日は明日ですので、(水)(木)とお休みいたします。

次回更新日は(金)です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。