1、最後の戦い
目の前にいるのは、でかい竜。
そして、俺らSランクパーティー「生命の息吹」4人はその竜に立ち向かっていた。
赤い瞳に橙色の鱗をした身長の3倍はありそうな竜で、咆哮をするたびにその風圧に押されそうになるレベルの強さだ。
心臓の鼓動が高鳴り、体が興奮状態へとなっていて、いつもよりも調子が出やすくなっていた。他のメンバーも同じように高ぶっていて、調子がよさそうだ。
魔法使いである「テューラ・マイラ」が俺らに魔法をかけてくれて、さらに体の素早さが上がる。俺は前に走っていって、ピンチであった獣人の「ナリタ」のサポートに入っていった。
自分でも難だが、とんでもない速度と力だ。
ナリタは今現在竜の攻撃を受けていて、持っている盾が溶けてなくなってしまいそうになっていた。そこに入っていくと、なぜかナリタにかかとで蹴り飛ばされた。
「俺は大丈夫だから回り道していけ!」
俺は元気に「お、おう!」と言って言われた通りに回り道をして竜に攻撃しようと立ち向かった。そこにこのパーティーの勇者である「マイチ・クール」が入っていった。
俺もその後ろについて行き、援助をしていくことにした。
「援助するよ」
「助かる。とりあえず、竜の頭に乗るの手伝ってくれ。」
「ああ!」
そういうと、俺は前に向かっていく。マイチを越していき、前で剣をしまっては、手を組み合わせほどけないようにしてから、そこに向かってマイチが向かってくるのを待った。
「ルイルス!もうちょっと奥だ!!」
「お、おう!」
そう走ってきながら言われ、俺は少しだけ後ろに下がる。
マイチは少し唇を噛んでいたが、たぶんきっとこれであっているだろう。と思った。
そしてそのまま、俺は力を使ってとにかく上にマイチを飛ばしあげた。マイチは飛び上がり、竜の背中に飛び乗る、ところだったのだが、ギリギリ距離が足らず、とっさの判断でマイチが竜に剣を突き立てる。
マイチの剣は俺らのものと段違いに強いので、竜の鱗すら勢いで貫通をしてしまうのだ。その光景に俺は感心して見とれてしまっていた。
「感心してる場合か!」
「ご、ごめん!」
マイチがそのまま竜の鱗によじ登っている途中、そういって俺を目覚めさせてくれた。だが当の本人は剣に何とか捕まって、落ちそうになっていた。
「遅いぞ。っておちるぅ!」
「〈シールド〉!」
俺はとっさに落ちそうなマイチをシールドを使って持ち上げた。
俺の手からそのシールドは飛んでいき、落ちる寸前のところでマイチの命を救った。
「ありがとう!」
間に合った安堵感と、次の攻撃が俺に来るのではないかという焦りが募ってくる。なのでそれに返すこともできずに、そのまま横に走り去った。
「お、おい!」
「やばい!ドラゴンがそっちに向いたぞ!」
「無理だ!お前じゃあ絶対に燃えるぞ!」
マイチとナリタがそう叫んだが、俺にはあまり強く聞こえなかった。
その瞬間、竜がこちらを向いて唸ってきた。
俺はその視線を強く感じた。
それは、レーザーが胸の中に突き抜けたような感触がした。
とても怖かった。腰が抜けてしまいそうだったが、ここで倒れると死んでしまうと思って、なんとかふんばる。
竜は喉に力をためて、その部分をぷっくりと膨らませた。
そしてその部分が赤く、提灯のように光っていく。炎を吐いて俺を焼き尽くす気だ。
「来るぞ!!」
すぐ、攻撃がこちらに向かってきた。俺はとっさにシールドを構えたが、3重に張っていたすべてのシールドのうち1つは容易に打ち砕かれて、2つ目もギリギリ耐えていた。
だがその炎は長い時間続き、二つ目も壊されてしまった。
今ごろはマイチが竜の顔を蹴りに体の上を走っているところだろうか。
そうであってほしいが、自力でもここを抜け出さないと重症になってしまう。
どうするか、後ろに下がろうにも意識をそらしたら攻撃をもろに食らってしまう。少しずつ移動するのもいいが前がわからないと足に当たるかもしれない。
そこで、炎が突然切れた。竜が自ら止めたのだ。
「ルイルス!走れ!」
そう聞こえて、俺は周囲を見渡す。すると大きな尻尾がこちらに向かってきていて、俺はそれを素早く避けようと逆方向に走っていった。
そして少し離れたところでジャンプした。
だが高さが足りず、背中から下が尻尾に当たってしまい、空中で体制を崩されてしまう。このままでは頭から地面に落下してしまうであろう。
そこに急いでナリタが駆けつけてきて、俺の下に微調整しながら入ってくる。急いで体勢を立て直さないと、と思ったが空中ではなかなか回ることすらできなかった。
そこでナリタの微調整が功を奏し、見事にその中に入ることができて、俺は一命をとりとめた。
ただしナリタの腹にヘッドショットをしてしまったのは申し訳ない。
「ぐへぁっ!」と間抜けた声を出させてしまった。骨もおれていなければいいのだが。
「ちきしょう、このドラゴンめ!〈スラッシュ〉」
そういいながらマイチが竜の首に向かって斬撃を放つ。それは見事に竜の後ろ首に当たった。
竜は悶え、苦しんで、体をくねらせた。暴れてマイチを吹き飛ばそうとしたのだ。
だがマイチは即座に剣を刺して竜から振り落とされないように踏ん張る。
「マイラ!剣を投げてくれ!」
「はい!〈フォーカス〉!」
そういって思いっきり槍投げの要領で投げると、見事マイチの元へと少し曲がって向かって、槍が飛んでいった。
マイチはその槍を持って軽く回して、重さを確認したのちに、竜の顔に向かって走っていった。
竜の顔は比較的防御も薄く、竜にとっても死角が多い一番難解な場所、なので竜も警戒して、翼を器用に使いマイチを顔に近づけないように攻撃を仕掛けた。
だがマイチはそれすらも軽々と避けていく。
閃光のように、まっすく素早く、走っていくのだ。
「どりゃあああああ!!!」
マイチの雄たけびが聞こえる。
マイラもそれに便乗して、頑張れー!!と応援していた。
やがて竜の後頭部まで来たマイチは、その勢いのまま、目に向かって槍を突き刺した。
「ぐおぉぉぉぉぉぉっ!」
竜の苦しそうな雄たけびが聞こえる。
俺もそれを援助しようと、魔法を向けたが、その手は怪しげにこちらを見ていたナリタに止められた。
「今あいつに邪魔したら怒られるぞ」
「えっ、怒るも何も、力はあればあるほどいいじゃないか。」
「それがだめなんだ。あいつはなるべくなら己の力で敵を倒したいわがままだし」
「それでも俺は行く。」
呆れているナリタに肩を組まれるが、我慢できずに俺はマイチの元へと走っていく。
「お、おい!」
そうナリタの声が聞こえたが、無視した。
少し離れた位置に向かい、そこから狙いを定めて、マイチに魔法をかけた。
「〈パワー〉〈ショット〉!」
そして手の先から魔法陣が出て、ある程度狙いを定めて、手を閉じる。するとその魔法が飛んでいき、マイチの体に当たる。
すると突き刺してた槍が頭を貫通し、反対側まで貫いた。
マイチは驚いてそのまま前に倒れてしまい、危うく落下しそうになったが、自慢の握力でなんとか乗り切った。
「ちきしょぉっ!!」
そういいながらマイチは槍を横に引っこ抜く。すると竜の頭には大きな傷ができて、裂けた。その部分から血がありえないほどふきだし、竜の動作も鈍くなる。その後少しの間暴れたが、やがて出血が多くなりすぎて、少しずつ死んでいった。
それを見ていたマイチは頭を抱えていた。「はぁ~」とため息も吐いて、悩んでしまった。
それで竜の討伐は終わった。
帰ってきたマイラとナリタは嬉しそうに竜が死んだことを祝っていたが、マイチだけは不服そうにこちらを睨んで、ケッ!と道端に唾を吐いていた。
明らかに怒っているとようやくわかった俺であったが、なぜ怒っているのかはあまり検討が付かなかった。そしてそのまま、帰りまでまったく口を利かなくなってしまった。




