ロッソでの戦い 裏方
時は遡る。
黒季「恐らくハピーロの本拠地はあの大聖堂だっ!!」
白沢「えぇーっ!!!」
アインス「何ですってっ!?だから大聖堂目掛けてっ!?」
黒季達は急いで路地裏の方へ逃げた。ここでおさらいをしよう。そもそも何故白沢とアインスを連れてきたか、それはハピーロの本拠地を壊滅させる為に連れてきた。そもそもハピーロとはここロッソ法国内に存在する闇組織で、大神官を筆頭に組織を構成している。主な業務は暗殺に人身売買、裏組織との取引など、表では出来ない事をしている、まさに裏方の仕事だ。ちなみに彼女達を連れて来たのは、このハピーロが裏でグレゴリーと取引をしているという情報を耳にし、壊滅させに連れて来た。
白沢「ファンシーな名前してやばい組織だったとは」
アインス「プラチナキラーがここに来たって事はやはりここが・・・」
黒季「ここは今から混乱する。こっちに来て」
黒季は白沢とアインスを連れて人気のない路地裏に連れて来た。そこで仮面をつけ、黒い衣装を纏わせた姿に変身した。
ノワール「お前達は大聖堂の方を頼む。我はプラチナキラーと・・・」
ドカーンッ!!どこか高く近い場所で爆発音がした。恐らく大聖堂に爆弾を投げたのだろう。そしてノワールの言う通り、辺りは一瞬にして混乱状態に陥った。
ジャラゴン「うわぁー、これは危ないな。瓦礫が上から落ちてくるわ、爆弾投げつけるわでやばいな」
ケンちゃん「あまり時間はありません。皆さん各自行動を始めましょう」
ノワール「次はロッソ法国の外の草原にて合流だ。行くぞ!!」
ノワールは腰のデッキケースからカードを1枚取り出し、召喚させた。出て来たのはマガツワイバーンで、背中に乗るとそのまま空高く飛んで行った。残ったブラン達は人混みの中を素早く、誰の目も追えないぐらいに大聖堂の中へ駆け寄った。中へ入って見た景色は上からシャンデリアや壁が崩れ落ち、中にいた人は外へ逃げるか下敷きになるかとかなり地獄絵図みたいな背景だった。
ブラン「まじ混沌ね」
アインス「行くわよ!!」
ブランとアインスは崩れゆく瓦礫を避けながら素早く進み、祭壇へと到着した。祭壇の床下に妙な線があり、試しに開けてみると案の定、地下へ通ずる階段があった。その後も崩壊を続ける大聖堂。急いで中へ入った2人は扉を閉めると祭壇に巨大な瓦礫が落ちて、出入り口を塞いだ。
ブラン「はっ!?入り口がっ!!」
アインス「ここには幾つか抜け道もある筈よ!!今は急ぎましょっ!!」
アインスに連れられて、階段を下り続けるとある扉が現れた。その扉を開けると、そこには立派な家具にカーペット、壁には神と天使の絵が描いてあった。ここがハピーロの本拠地なのか?想像していたものとは180°違って驚いた。机には何やら沢山の書類があり、金庫から銃や剣などの武器も見つかった。
ブラン「あれ?人が1人もいない?」
アインス「・・・、!!!誰かいるわ!!」
アインスの声に釣られるように遠くを見ると、そこには誰か人がいた。手には何か光る物を持ち、ヒールのような靴をコッ、コッと歩き、派手な黒いドレスを着た女性が現れた。目は赤く光り、まるでさっき人1人を殺したような目つきをしていた。その姿は美人すぎるくらい綺麗だが、手には細長い剣に赤い液体がべっとりとつき、そこからポタポタと垂れていた。その正体は明かりの下で分かった、血だった。足元には横倒れている赤く染まった人とその人達の血の池が広がっていた。
???「あなた達はどこの者?」
アインス「私達はハピーロを壊滅させに来たのだけど・・・」
ブラン「あ、あなたは誰?」
彼女の姿を見た2人は蛇に睨まれた蛙みたいに固まってしまった。お互い武器を持っていても、黒いドレスを来た女性の歪なオーラを前に空気は冷たくなり、鳥肌が立ち、手は震えていた。そんな2人の状況をも知らずに黒ドレスの女性は近づく。そして口を開いた。
???「私も同じ彼らに用事があるんですよ」
アインス「では彼らは全滅させたと?」
???「そうね。ついさっきね」
ブラン「ほ、良かった〜。じゃ、じゃあ私達は・・・」
シュッ!!グサッ!!ブランの顔の横を何かが通った。恐る恐る後ろを見てみるとそこには光り輝くナイフが刺さっていた。それを見たブランはヒィーッと驚いてしまった。彼女は誰一人逃す気がないようだ。まあ、ここに入って来るという時点で怪しいと思うけど。
???「悪いけど、全てを見てしまったあなた達を帰す訳にはいかないわ」
アインス「やはりこうなるのね」
黒ドレスの女性とアインスは剣を構え、戦闘態勢に入った。ブランは腰を抜かしてその場で座ってしまった。初めて感じた殺意に体が急に重くなったのだ。しかし、アインスはそれに慣れているのか常に冷静に落ち着き、息を潜めている。それは虎と狼が互いを睨み合い、互いを殺し合う様子が伺えた。
???「私が勝てばあなた達はグレゴリー関係者として処罰するわ」
アインス「私が勝てば今日の事はなかった事にしてもらうわ」
お互い条件を提示し合い、深呼吸をした。そして、動き出した。最初に動き出したのはアインスだ。アインスは剣を構え、黒ドレスの女性に襲い掛かった。しかし黒ドレスの女性は動く事なく、ただ剣を構えたまま立っていた。そして、アインスが剣を振りかざそうとした時、黒ドレスの女性は剣1本で受け止めた。そして、もう片方の剣をアインスの横腹に刺そうとしたが、アインスもそこまでの行動は読めていたらしく、今度は足を使い剣を蹴り飛ばした。剣はクルクルと宙を舞い、そのまま地面に刺さった。そしてアインスは黒ドレスの女性に踵落としを繰り出した。しかし、踵落としをされる前に持っていた剣を捨てて、バク転しながらかわし、アインスの踵落としを喰らわなかった。
アインス「なんて素早さ・・・」
???「そちらもなかなかやりますね」
アインス「でも武器はもう使えないわ。もう壊したから」
剣の方は確かに粉々に砕け散っていた。アインスの能力で武器を壊したのだ。しかし、武器が壊されても女性は顔色1つ変えなかった。すると、今度は腰から針のような細く太く黒いスティレットを抜き出した。
???「こっちが私の武器。その剣は彼らから貰ったわ」
アインス「面白い。今度は楽しめそうね」
今度はお互いが動き出し、アインスの剣と黒ドレスの女性のスティレットがぶつかり、鍔迫り合いになった。黒ドレスの女性はさっきよりも素早く動き、アインスの動きを翻弄した。しかし、アインスもエルフ特有の耳を使い、相手の魔力と呼吸音を聞き分けて相手の位置を特定して戦っている。それを見ていたブランはただただ見ている事しか出来ず、ずっと座っていた。
ブラン「こ、これが、プロの世界?まじ混沌ね・・・」
辺りは斬られ壊され、大聖堂では地上も地下も混沌状態だった。ここで戦況はアインスに傾いた。アインスは自身の能力を使い、相手の武器を壊そうとするも、素材にアダマンタイトを沢山使っているのかなかなか壊せなかった。そこでこの部屋ごと壊そうと考えたアインスは手を床につけた。
???「何をする気!?」
アインス「ちょっと足場を悪くさせる。"砂上の世界"!!」
その技は締まり切った部屋でしか発動出来ないが、内部を崩壊させる破壊技だ。アインスが手を置いた場所から徐々にヒビが生じ、やがて床から崩壊し始めた。床は浮かび上がり、壁にもヒビが生じ、本当に足場が悪くなった。黒ドレスの女性も流石にかわせざるを得なく、遠くへ逃げた。ブランも能力を使って壁についたランプにしがみついた。やがてアインスが床から手を離すと崩壊は止まった。しかし、これで相手の不利な環境になった。
???「それで私が仕留められるとでも?」
アインス「さあね。しかし、あなたのピンチは変わりないわ」
???「ではこちらも能力を使いましょう」
黒ドレスの女性も能力を使おうとした。しかし、特に何か起きる様子もなく、何か空気が変わった様子もない。ただ変わったと言えば、黒い蝶が飛んでいるくらい。どこからか入って来たのだろう。アインスは警戒を怠る事なく、剣を構えた。しかし、黒ドレスの女性は突然消えた。流石のアインスもこれには驚き、辺りを探した。しかし、見つかる気配はなくアインスに緊張感が走った。相手は恐らく殺しのプロ。ほんの油断が命取りになる。アインスは息を整えながら、辺りを散策した。そして、相手の魔力を感じた時には既に、アインスの上にいた。しかも数十センチの距離にいた。相手はスティレットの先端を突き刺して、落ちていってる。アインスはかわそうとするも時間がなかった。しかも先端はアインスの右目に位置している。このまま刺せばアインスの右目は刺されて、右目を失ってしまう。まさに万事休すだった。その時、横からパンッパンッと銃を撃つ音がして、黒ドレスの女性はスティレットを銃弾を弾くために動かした。それが機転となったのかアインスはすぐさまかわし出し、なんとか危機を回避出来た。一方、銃弾を防いだ黒ドレスの女性はアインスがいなくなった事に気付き、そのまま地面に降りた。2人は誰が銃を撃ったか分かっていた。ブランだった。ブランは息を切らしながら、何とか立ち上がり銃を撃ったのだ。
ブラン「はぁ・・・はぁ・・・、だ、大丈夫っ!?」
アインス「えぇ、何とかね。でも流石に死ぬかと思ったわ」
???「なかなかやるわね。私に攻撃するとは。おかげで私も重症を負うところだったわ」
2人はブランを褒め称えた。ブランは銃を懐に入れて、ヴァイス・デュランダルを抜き出した。
ブラン「ごめんね、私、あなた達の戦いに腰を抜かしてしまって動かなくなっちゃった。でも、私の友達が目の前で殺されるとなったら、いてもたってもいられなくて、つい・・・」
アインス「ブラン、ありがとう。おかげで助かったわ。今度は一緒に倒しましょ」
アインスはブランの所へ駆け寄った。そのおかげか、緊張感は少し和らいだ。2人は再び武器を構えて、黒ドレスの女性に向かって名乗った。
ブラン「私はノワールファミリーのブラン!!」
アインス「同じくノワールファミリーのアインスよ、!」
???「面白い。では私も名乗りましょう。私は"ノワールレディ"とでも呼んでください」
ブラン「ノワール!?」
アインス「あなたもその名を!!」
ノワールレディ「行きますわよ!!」
ノワールレディと名乗る女性はスティレットを両手に、2人に目掛けて走り出した。その後、ブラン達も素早く走り出し、3人は鍔迫り合いになった。2本のスティレットのうち1本はアインスを、もう片方をブランを受け止めていた。相手も本気になったのだろう。目がさっきと違っていた。何か獣を狩る猛獣みたいに目が睨んでいた。しかし、それは2人も同じでぶつかる事は承知の上でさらに剣に体重を乗せた。すると片手だけでは受けきれないのか、ノワールレディの足はガクガク震え、片方の膝が曲がり出した。このまま押し切れば膝がつき、隙が出来る。
ブラン「ふおぉぉぉぉーっ!!!」
ノワールレディ「さっきまでとは違うわね。私を押す力があるとは」
ブラン「さっきのは、そう、瞑想よ!!精神を集中させていたのよ!!」
ノワールレディ「本当に?まあいいわ。まだまだ遊べるわね!!」
アインス「なっ!?」
なんと、ノワールレディはそのまま膝を曲げ、体を後ろに倒した。そのせいか、2人はそのまま受け流されて後ろに飛ばされた。その隙に態勢を整えたノワールレディはスティレットを両手に2人を切りつけた。目に止まらない程素早く、武器を切り返しながら円を描くように切り回った。2人は抵抗しようと身をガードするも腕や足、背中は切られてしまい全身傷だらけになってしまった。2人が床に着地した頃にノワールレディは切るのをやめた。2人は切られた後がすざましい程酷く、血も出血していた。しかし、スライムスーツのおかげか、切り傷程度で済んだがスライムスーツを容易く切る人がいるなどありえなかった。
ブラン「はぁ、はぁ、強い・・・」
アインス「まずいわ、このままでは・・・」
満身創痍の2人は何とか立ちあがろうとするも、目の前にノワールレディがいるため逃げる事も休む事も出来なかった。ノワールレディはまだスティレットを手にしている。戦闘は続行らしい。
ノワールレディ「次で終わりにする」
ノワールレディは再び走り出した。次は確実にやられる。逃げる気力も守る気力もないからだ。まさに絶体絶命。そう思われた・・・その時、突如上からズシンッと音がし始めた。やがて音は大きくなり、そして天井はひび割れて、上からノワールが降りて来た。
ノワール「またせたな」
ブラン「ノワール!!」
アインス「まさに地獄に仏。いいタイミングね」
2人はノワールが来ると、安心し始めた。ノワールならノワールレディを倒してくれるかもしれない。一方、ノワールを見たノワールレディは何もする事なく、ただ立っていた。しばらく見た後、スティレットを腰に戻した。
ノワール「戦わないの?」
ノワールレディ「相手が悪いわ。今日はお預けね。また会いましょ♪♪」
そう言うと、ノワールレディは再び奥の方へ戻って行った。ノワールが辺りを見ると、そこは混沌状態だった。壁は崩れ、床は浮かび上がり、2人は傷だらけ。
ノワール「ぶち混沌じゃわ〜」
ブラン「ノワール、私、怪我して立ち上がれない」
アインス「私もやられたわ。まさか、不覚を取るとは」
ノワール「そういう時もある。今は休め」
ノワールは2人をトランクケースに入れて、大聖堂から抜け出した。これにてハピーロは壊滅したが、プラチナキラーとの戦いは決着がつかなかったのであった。まあ、いずれ勝つだろう。




