白銀の獅子
アートルム「あーあ、ついに出会っちゃったか」
バランス「あれれ?ネメアーじゃねね?」
アタマース「珍しいわね。彼自身、単体で赴くなんて」
その頃、アートルムはバランスとアタマースを連れて荒野に来ていた。ライモンがノワールと闘い、ネメアーが現れるまでずっと見ていた。特に何かしに来た訳ではないが、見学のようだ。
バランス「あれれ?あれれはノワールル?」
アタマース「その喋り方、変だからやめなさい」
バランス「分かったた」
アートルム「とはいえ、ネメアーも大変だねー。部下が死んで、自分が尻拭いしないといけないなんて」
アタマース「彼の部下は私達の中では多い方よ。私なら、名前が覚えにくいから数人しかとらないわよ」
アートルム「これは彼の人望かな?それはさておき、いい実物だね。どんな戦いになるんだろう♪♪」
アートルムとアタマースが色々と話している時、とてつもない魔力を感じ、向こう側を見た。すると、そこにはとんでもない量の魔力を発しているネメアーの姿だった。普通の人間と比べて、尋常じゃない程の魔力を所有しており、さっき戦ったライモンと比べるとその差は雲泥の差だった。魔術師を始め、魔力を感じやすいエルフ、ベテラン冒険者、そしてノワールファミリーは敵の魔力にただ固まってしまった。心の中では驚いても、顔に出す事はできなかった。ただ1人を除いて。
ノワール「なかなかの魔力だな。幹部ってところか?」
ネメアー「ふ、勘がいいな。俺は勘のいい少年は好きだ」
ノワール「どうも」
すると、ネメアーは体を丸め込んだ。何かを仕掛けようとしているのか、そのままじっとしていた。それを見ていたみんなも何が起こったのか分からず、ただじっと見ていた。その時、ネメアーが動き出し、空に向かって
「ウオォォォォォォォーッ!!!」
と叫び出した。その咆哮は大地全体に広がり、風も吹いていた。ただの風だけならよかったのだが、普通の風とは違っていた。何と、冒険者だけが浮かび上がったのだ。しかも、そのまま遠くに飛んでしまった。そして、ネメアーは叫ぶのをやめた。
ノワール「?冒険者達をどうした?」
ネメアー「邪魔だからどかした。これでここには俺と貴様らしかいない」
ノワール「!!!」
すると突然、ネメアーがノワールに殴りかかった。腕を交差させて何とか一撃を防いだものの重く硬い拳を喰らい、後ろに下がった。そのまま反撃の隙も休む事もなく、ネメアーはノワールを殴り続けた。今度は先程よりも強く、硬い拳だ。
ネメアー「どうした?反撃はしないのか?」
ネメアーがノワールに攻撃をしている時、背後からグレーズがナックルを手に殴りかかった。丁度死角になっていて、彼に気づかれないと思われた。しかし、
「フンッ!!!」
と、ネメアーは左腕を後ろに回してパンチを受け止めた。どうやら不意打ちは無駄らしい。片腕だけなのに鋼属性の拳を普通に受け止めた。これはかなり鍛えられたカオスだ。
グレーズ「嘘っ!?」
ネメアー「パンチはな、こうするんだ!!」
ネメアーはノワールを殴るのを一時中断して、グレーズに思いっきり殴った。グレーズの腹辺りを殴り、遠くに飛ばされてた。しかしグレーズは体をよろけながらも、何とか立ち上がった。どうやら体の一部を能力で硬くしていたようで痛みは半減出来たものの、痛みは全身をに響いている。
グレーズ「はぁ、はぁ、痛いわね・・・」
ブラン「こうなったら、一斉攻撃よー!!」
ブランの一言でブラン、アスール、ブルーノ、ヴェルデ、ヴィオレ、ルージュ、ヘルブランが襲い掛かってくるも、それを意に介さずネメアーは全ての攻撃を受け止めて、逆にやり返された。
ノワール「ほう・・・」
ネメアー「まだ戦えるぞ」
ノワール「これでも?」
グサッ!!地面から刃型のスライムが出てきて、ネメアーの背中に刺さった。幾ら体が頑丈とはいえ、魔法攻撃には耐性がないようだ。なら魔法攻撃で倒す、と言う生半可な考えでは倒せない相手だな。なにしろ、背後からの攻撃すら受け止めて、半人前とはいえ能力者すら吹き飛ばす力を所有している。何の対策もしていない訳がない。しかし、中にはそれを知らずに攻撃する者がいた。
ヘルブラン「"アイスロック"!!」
ヘルブランは手から氷の塊を作り出し、ネメアーに飛ばした。もし、僕の予想が合っていたら、ネメアーは何か仕掛けるはずだ。氷の塊はネメアーに向かって徐々に距離を縮めている。そして、近づいた時氷の塊は何故か止まった。その後、しばらく止まったが急に跳ね返り始めて、ヘルブランに向かって飛ばし始めた。
ヘルブラン「えっ!?何でっ!?」
ヘルブランは驚きと疑問で思考回路が混乱して、逃げると言う選択肢が出来なかった。そして、顔面にぶつかり倒れてしまった。
ヘルブラン「トロッキーッ!?」
アスール「今なんて?」
ネメアー「そんな小細工が通用するかっ!!」
するとネメアーは彼女達1人1人の場所まで駆け抜けて、拳や蹴りで彼女達を殴り蹴った。もちろん、抵抗する事なく吹き飛ばされた。この場に残ったのはノワールとネメアーだけだった。2人だけになったからか、荒野は急に静かになった。そして、日が暮れて夜が近づいた。それでもノワールには何の焦りもなかった。寧ろ、この時をずっと待っていたかのように。
ネメアー「どうした?来ないのか」
ノワール「さっきの攻撃でも君の能力が分かった。君は攻撃を跳ね返す能力者だな?」
ネメアー「!!!!(なっ!?こいつ、さっきの攻撃だけで見抜きやがっただとっ!?)」
どうやらノワールの読みは当たっていた。ノワールはネメアーの反応を見て、すぐさま理解した。あの時、冒険者を飛ばしたのも能力による力で上手く我々だけを飛ばさないで使ったのだろう。中々の上達者だな。ノワールがそんな事を考えていると、ネメアーは拍手をし始めた。
ネメアー「フハハハハッ!!!お見事だ!!中々の目だな!!俺の能力"ひっくり返す"はあらゆる攻撃を跳ね返す!!」
ノワール「さっきの攻撃は当たっていたけど」
ネメアー「ああ、あれか。俺は貴様を試していた」
ノワール「試す?」
ネメアー「貴様の強さを試す為にな」
つまりわざと受けた、と捉えていいのだろう。とはいえ、何故わざわざ攻撃を受けたのか。強さならいくらでも測れるチャンスはあった筈だ。もしかすると・・・いや、今はやめよう。仕方がないので、ネメアーの提案に乗る事にした。
ネメアー「貴様にはチャンスを与えよう。死か、服従か・・・」
ノワール「ふ、くだらんな。そんな脅し、我には効かん」
ネメアー「・・・お前、喰われなきゃ解らねえ見てえだな。いいだろう、これが俺の第2の姿だ!!ウオォォォォォォォーッ!!!」
ネメアーの体から黒いオーラが出てきた。そのオーラはネメアーを包み込むように体中から出てきて、やがてネメアーの体が黒くなった。まるで液体のようになった体は変形し始めて、体を作り始めた。そして現れたのは青黒いたてがみ、鋭い牙に巨大な鉤爪、さらに白い鎧を纏った筋骨隆々とした黒い身体と鬼のような角張った顔のライオンになった。
ネメアー「貴様の運命はもう決まった。俺に喰われるか、俺に従うかだ!!」
ノワール「面白い。かかってこい!!」
ノワールとネメアーは互いに距離を取り、構えの態勢に入っていた。この場には風が音を上げて吹いており、静かすぎるのかその音がよく聞こえた。ノワールは滅亡と絶望の剣を手にして、それを何故か地面に刺して、そのまま引きずっていた。ネメアーも鉤爪を構えて時計周りに動いている。お互いに緊張感が高まる中、2人は何も考えていない。ただ、目の前にある敵をどうやって倒すか、それしか考えていなかった。やがて、ノワールが剣を引きずっていると、コツンと小さな石に剣先が当たった。それに気づくと、ノワールは動くのをやめた。そして、ネメアーも止まった。再び歪な雰囲気が始まった。
ノワール(・・・今か)
先に動いたのはノワールだった。ノワールは剣を地面事、ネメアーに向かって持ち上げた。後に続き、ネメアーも襲い掛かった。ネメアーは持ち上げた地面を引き裂き、ノワールの所へ走った。そして数センチまで近づいた時、鉤爪を大きく振りかざし、切り刻もうとしたがノワールは咄嗟に石を手にすると、即席の指弾で石を飛ばした。飛ばされた石はネメアーの目に当たり、ネメアーは苦しみ始めた。実はあらかじめ石を探す為に、剣を地面に刺していた。地上で拾っては作戦がバレてささまうから。
ネメアー「ぐ・・・貴様っ!!」
怯んだネメアーは後ろによろけた。それに続き、ノワールは懐の銃を取り出し、ネメアーに撃ち続けた。
ネメアー「汚いぞっ!!」
ノワール「ルールを決めてないのに汚いとはな」
ネメアー「ぐっ・・・!!!」
あまりの正論にぐうの音も言い出せなかった。それでもネメアーは鉤爪を上げてノワールに向かった。ノワールも背中からもう1本の剣を抜いた。色は白く、名前は"希望と創造の剣"と言う。絶望と滅亡の剣の色違いだと思えばいい。その2つの剣を構えたノワールに対しネメアーはお構いないに襲い掛かり、鉤爪と剣がぶつかり鍔迫り合いになった。そしてぶつかった衝撃か、風がとてつもなく吹き始め、地面も割れるほどだった。
ネメアー「何だっ!?剣を出したら強くなっただと!?」
ノワール「ふ・・・」
ノワールは鉤爪の間に剣を入れて、そのまま受け流すと足を大きく上げてネメアーに踵落としをした。踵はネメアーの頭に強く打ち、顔が地面に埋まってしまった。その後、ノワールは連続で踏み続けた。しばらく攻撃を受け続けたネメアーだったが、鉤爪を地面に刺して爆発を起こした。そのせいか、ノワールは踏むのをやめて遠くに離れた。その後、ネメアーはふらつきながらも何とか立った。
ネメアー「はー・・・はー・・・、貴様をみくびっていたよ。こんな力を持っていたとはな」
ノワール「それで降参か?」
ネメアー「ふざけるなっ!!この俺様を舐めやがってっ!!いいだろう!!貴様には命乞いする時間も安楽死する時間も与えんっ!!」
ノワール「何だと?」
ネメアー「貴様には私の真の力を見せてやろう。"恐れ慄け、審化(しんか)"!!」
すると、ネメアーは急に高く吠え叫んだ。すると雲が突然綺麗に消えて、空には優雅な星空が広がっていた。やがてその中から急に眩く光出す星が現れて、やがて集まって形を作った。それは地球でも見られる獅子座の形になった。星は線を結び始め、獅子の絵と円陣が現れた。そして星から白い光が降り注ぎ、ネメアーに全部喰らった。外からはシルエット状で写っていたが、中では更に形が変わっていき始めた。二足歩行だったのが四足歩行になり、顔には鋭い牙に8本の刃みたいになったたてがみ、背中にはジェット機の翼見たいな物も生え、全身機械みたいな姿になった。光が消え始めると全身が見えた。色は銀色であの時の怪物感が全くなかった。寧ろ、リアルライオンキングみたいな感じだ。
ネメアー「銀獅子、ネメアー・ビースト。ここに参る」
ノワール「いいね。戦いとはこうでないとな」
ついに始まったノワールファミリー盟主、ノワールVS黄道13星座隊副リーダー、ネメアー・ビースト。この世紀末の戦いが今、この大地で行われようとしていた。果たして勝つのはどっちか!?
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その頃、また別の場所で戦いを見ていた者がいた。十二神将の1人、グレマーズだった。
グレマーズ「この戦い、あなたの負けですよ。ネメアー・・・」




