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蝶は蜘蛛の巣にかかる

 今日の朝、生徒一同は講堂に集まっていた。話の内容は生徒会副会長の朝南千夏が行方不明になった内容だ。警察は身代金目的だと思われているが、特にそう言った電話はないらしい。教師陣も探しているが、未だ見つかっていない。この講堂では思い空気が一気に広がっていった。そして講堂から出た後、教室ではみんなで騒めき始めた。


女子生徒A「ねえねえ、副会長が誘拐されたって本当だったんだ!!」


男子生徒B「まじかよっ!!あの人、いい人なのにっ!!」


女子生徒B「まさか、神隠しってやつ?」


男子生徒B「そんなアホな。神隠しな訳あらへんやろ」


学校中、物議をかわしていた。確かに誰も自分の学校で誘拐されるなんて思わなかっただろう。この所、また増え始めたようだからな。一応、ノワールファミリーのみんながカオスを倒してはいるが、まだ異世界には数多く残っている。その残党が再び誘拐したのかもしれない。


ほのか「誘拐なんて、怖いねー」


優衣「全くね、ほのかは気をつけた方がいいわ。あなたいつもマイペースだから」


ほのか「心配してくれてありがとう!!」


優衣「まあ、こいつは大丈夫そうね」


黒季「心配しないんかい」


優衣「あんた、何げに誘拐され、何げに家に帰ってきそうだから」


黒季「おいっ!?」


白沢&宝華「「なんか分かる〜」」


今日の昼は誘拐について物議を交わした1日になった。放課後、僕はいつものように旧校舎へ向かった。部屋に入ると、みんな揃っていた。


白沢「遅かったじゃない!!私達は情報収集しているのに!!」


黒季「冬美と冬音を連れて来た」


そう言うと、僕の後ろから冬美と冬音がヒョコッと現れた。何でも誘拐事件が起こったせいか、小学生は保護者同伴とのことらしい。


冬美「す、すごーいっ!!秘密基地みたい!!」


冬音「・・・ちょうどいい」


氷山「冬美ちゃんと冬音ちゃんも来てくれたんだ!!」


夏菜「この2人も異世界に行った事があるからね」


黒季「ところで、今は何をしているんだ?」


白沢「実は今誘拐事件について調査している途中よ。ここ最近、急に姿が消えたってニュースで言ってたじゃない?」


黒季「それで?」


白沢「普通、誘拐といったら人通りの少ない場所や道路辺りが多いじゃない?だけどこれは人通りの多い駅や建物の中。さらに防犯カメラもついている場所でわざわざ誘拐するなんて思う?」


黒季「確かにリスクが大きい。まさか・・・」


宝華「そう、私達はカオスの仕業だと考えているわ。こういう悪どい手をやりそうじゃない?」


確かに白沢や宝華の言う通り、こんな技が出来るのは人ではない。ただ、カオスなら可能だ。何らかの能力を使って誘拐しているのだろう。とはいえ、まだ証拠が少ない。すると春香が


「実は被害者にはある共通点があるわ。それはこのアザよ」


と一枚の写真を見せてきた。そこには腕に蜘蛛の形をしたアザが写っている写真だ。しかもかなり大きい。一体どこで手に入れたんだ?


灰川「私が警察のパソコンにちょっとハッキングして、捜査資料などをコピーしたら出てきたわ」


黒季「あ、え、うん?」


案外えげつない事をしたな。とはいえ、捜査資料があるなら丁度いい。とはいえ、捜査資料だけでは全く分からない。そこで黒季はゴースト達を放出させた。


黒季「実は数体は出しておいたが、これだけ範囲が広いと数十体出すのが妥当かなと思って」


秋穂「なるほど、異世界から何か情報は?」


黒季「残念だがない。アインス達も探してはいるが見当たらないらしい」


秋穂「そうか・・・この地球にいるならいいけど」


黒季「とにかく、今は場所を探してもらうしかない」


今までとは全く違う誘拐。それについてみんな頭を悩ませた。何か手がかりがあれば話は別だが。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


場所は変わって警視庁本部庁舎。そこでも捜査官達は頭を悩ませていた。全く手掛かりが掴めず、犯人の目星も分からなかった。特に頭を悩ませていたのは捜査一課長の大波。捜査一課長として、絶対に失敗は許されないのだった。


大波「何とか手掛かりが見つかればいいが、どうすれば・・・」


そんな彼が頭を悩ませている中、コンコンコンと扉を叩く音がした。「入れ」と指示すると、そこから貫禄のある捜査官が現れた。彼の名は"大河田大吉(おおかわだだいきち)"、警視庁捜査一課庶務担当管理官。通称、河さん。この道の大ベテランだ。階級は違えど、捜査一課長とは仲が良い。


大河田「一課長、東京都内の防犯カメラを全て調べましたが、やはり映っていませんでした」


大波「そうか、ご苦労さんだったな」


大河田「とはいえこれだけ探しても見つからないとは、逆にどうやって連れ去ったんですかね?」


大波「ああ、実はそれが気になってな。何故犯人は人通りの多い駅で誘拐したのか、そして何故誘拐現場を目撃した人がいなかったのか、それがずっと頭から離れられなくてな」


2人が頭を悩ませていると、また1人ノックしながら入ってきた。今度は女性捜査官だった。彼女の名は"周防麻琴(すおうまこと)"。通称、おはぎ。よく捜査の時に犯人探しの験担ぎにおはぎを食べるからだ。しかも彼女の勘はよく当たる。


周防「一課長、朝南千夏のここ最近の行動について調べました」


大波「どうだった?」


周防「こっちも怪しい点は見つかりませんでした。特にトラブルがあった話も聞きませんでしたし」


大河田「また振り出しかよ。てかお前、また捜査会議にいなかっただろ!!どこに行ってたんだ!?」


周防「それはあの事件の日に誘拐された東京駅に行ってきました。あそこのトンテキ美味しかったんで、大河田管理官今度奥さんと行ったらどうですか?」


大河田「うちの女房は今コレステロールを気にしてんだよ。だからトンテキなんて・・・てそんな話をしてるんじゃないっ!!それで何か分かったのか!!」


周防「いや全く」


大河田「お前って奴は・・・」


大河田は呆れていた。この周防捜査官はマイペースな所があり、よく捜査会議に参加しない事も多々ある。そんな周防に大河田は毎回呆れさせるほど振り回されていた。とはいえ、有益な情報を集めてくる事が多い。捜査官としての腕は確かだ。そんな周防を大波は高く評価している。


周防「一課長、私、ずっと駅にいたんですけど、この時間帯は退勤ラッシュが激しく、誘拐出来るかも分からない状況でした。もしかするとですよ?」


大河田「もしかすると何だよ?」


周防「何か人間ではない、別の何かに誘拐されたというのはどうですか?」


大河田「は!?お前は何言ってんだっ!?宇宙人に誘拐されたとでも言うのか!?もしこんな報告をしたら、警察の信頼に関わる大問題になるんだぞ!!」


周防「でも、この世の中何が起こるか分からない時代になって来たじゃないですか。地球じゃない別の世界から来たって人もこの東京にいるかもしれないじゃないですか?」


大河田「そんな事、言ったって・・・」


結局、捜査は振り出しに戻った。しかし、大波は諦めなかった。何としてでも被害者を見つけ出し、犯人を逮捕するまで彼は諦めない。


大波(待ってろ、必ず解決へ導く!!)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


朝南「どうして私を誘拐したの?」


ピーター・ランチューダー「聞きたいかい?それは君が綺麗だからだ」


その頃、ピーターの隠れ家にて朝南と話していた。朝南は途中目が覚めるも、全身縄で縛っている為脱出は不可能だと考えているのか、ゆっくり話していた。


朝南「綺麗?それはどういう意味?」


ピーター・ランチューダー「そのままの意味さ。飾り気がなく、純粋で透明なダイヤモンドみたいな心を持っている、そんな君に一目惚れしちゃっただけだ」


朝南「嘘ばっかり」


ピーター・ランチューダー「本当だ。実を言うと君を売るのは勿体無い」


朝南「勿体ない?」


ピーター・ランチューダー「これはビジネス、仕事となると話は別だ。君は残念だが、お金に代わる。お金はいいぞ、いつでも自分の物にでき、勝手に逃げる事もない。何しろ、裏切らない」


朝南「気持ち悪いわ」


ピーター・ランチューダー「何とでも言え。もし、お前の目の前に高価な物があったらどうする?売って金に変えるだろ。誰でもするだろ?俺もそーする」


朝南「く・・・」


次々と返してくる言葉責めに朝南は何も言い返せなかった。今、自分は人間ではない生き物と話している。それにここの世界の事も知り尽くし、人間の心情も知っている。これは勝てないと悟った。


ピーター・ランチューダー「どうした?悔しくてぐうの音も出ないか?安心しろ、これからは何も考えなくなるからな」


朝南「どう言う事!?」


ピーター・ランチューダー「じきに分かる。それよりも、新たな商品の仕入れとコソコソ動くネズミを退治しないとな」


そう言うと、ピーター・ランチューダーはどこかへ行ってしまった。今なら脱出出来ると思い、縄を解こうとしていた。ギッチギチに縛られているためか、あまり手は動かせないが机に刃物が置いてある事に気付き、何とか手にして縄を切り始めようとした。これが上手くいけば自由の身になれる、そう思い一生懸命縄を切った。するとそこに赤い色のゴーストがスウッと入ってきた。赤いゴーストは生存確認をすると、またどこかへきえてしまった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ピーター・ランチューダー「いたいた、あの女警察。何か勘が鋭いとかで有名な奴だったとか」


ピーターは駅の中にいた。しかし、怪人態ではなく普通の蜘蛛として。奴は見張っている。あの女性捜査官、周防捜査官を。今までの警察は証拠を探すだけで苦労していて、あまり動けない状況だった。しかし、この捜査官はいち早く存在に気づいた。我々異世界人がいると言う存在に。このまま放っておけば我々の計画の妨げになる。そう思い、誘拐して売り捌く為にわざわざ駅に来たのだ。一方、周防捜査官はそんな危ない計画が行われている事に気づかず、証拠集めに必死だった。


周防「うーん、もう一度防犯カメラを見るか」


周防捜査官は鞄に入っていたタブレットを取り出して、再び防犯カメラ映像を見始めた。時刻は事件があった当日。誘拐される前に朝南が唯一映っていたカメラ映像だ。その映像を科捜研にも調べさせたが、何も見つからなかった。しかし、何か見落としている部分があると思い、映像を見始めた。


周防「うーむ、やはり人が多くて分からないか。科捜研に頼んだ被害者以外を消した映像があるからそれを見るか」


その映像に変えると、周防捜査官はただじっと見ていた。何度も何度も見返して、怪しい点を探し出した。そんな時、ある事に気づいた。それは朝南の後から蜘蛛がずっと追いかけている事に。今まで人集りだからか、蜘蛛の存在まで気が付かなかった。しかし、人だけを消した映像のためか、蜘蛛の存在に気付けた。


周防「この蜘蛛は一体?科捜研にこの映像を詳しく解析して・・・」


ピーター・ランチューダー「その必死はない。"秘密警察(デアコミッサー)"」


すると周防捜査官の上から蜘蛛が1匹降りてきた。その蜘蛛は周防捜査官の手に乗ると、牙を出してプスッと刺した。幾ら小さい蜘蛛とはいえ、噛まれる時にくる刺激はくるようでその痛みに気づいた周防捜査官は蜘蛛を払い除けた。その後、噛まれた場所をみるとそこには蜘蛛のマークが浮かんでいた。そう言えば、誘拐されそうになった人にも同じ蜘蛛のマークがあった。何か怪しいと思い、その場を立ち去ろうとすると突然口元に糸状の何かが巻きつけられ、その後手足を縛るようにぐるぐると巻き始めた。その後、どこからか声が聞こえ、


「お前は勘が鋭いな。残念だが、お前を売り捌く事にした」


と話しかけられた。周防捜査官は必死で助けを求めたが、口元を縛られてフゴフゴしか言えなく、スマホすら握れない、この不自由になったこの状況では助けなど無理だった。そして、周防捜査官はピーターと一緒に狭い隙間に入っていった。防犯カメラのない、ほんの数分間の出来事だった。その場には無造作に投げ捨てられ、中身が出てしまった鞄と落とした衝撃でヒビが入ったタブレットだけだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


翌日、周防捜査官が行方不明になった事を聞きつけた大波捜査一課長は大至急、捜査を始めた。捜査一課長、自ら動いて。


大河田「また誘拐されるとは!!しかも捜査官が!!」


大波「私も現場に向かう!!大至急、車を呼べ!!」


大波と大河田は急いで車に乗り、サイレンを出して走り出した。そして、この事件を機にノワールファミリーという存在にも気づくのだが、この時はまだお互い知りしなかった。

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