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受験と賄賂と人の欲望

 翌日の放課後、旧校舎に来ていた黒季達。そこに新たに灰川も加わり、さらに賑やかになった。昨日、旧校舎についた黒季達は自身の正体を灰川に明かした。灰川は驚いたが、自分を助けてくれたから仲間に入ると言って、正式にノワールファミリーの一員になった。


灰川「ここって、今は使われてない旧校舎じゃない?どうして綺麗なの?」


黒季「あー、実は最近建て直して、綺麗にしたんだ。なにしろ、我儘女子がやりたいって言い出してね」


灰川「あははは・・・」


灰川は苦笑した。まあ、誰のことかは分かっているが。すると黒季はポケットからある物を出した。


黒季「そう言えばこれ、君の大事な物を渡し忘れた」


灰川「え?これって私の鈴!?なんか綺麗になってるし、どうして!?」


黒季「あの戦いの合間に直しておいた。錆だらけだったから、綺麗にしたけど余計だったか?」


灰川「いや、嬉しい!!直してくれてありがとう!!また、助けられちゃった!!」


ジャラゴン「そうそう。黒季は誰かには優しくしているよね!!」


灰川「誰っ!?」


ジャラゴン「お初にお目にかかる。我はジャラゴン。こっちはスマホのケンちゃん」


灰川「また変なのがいる!?」


ケンちゃん「やあ、僕は賢者のケンちゃん。よろしくね」


灰川「もう何でもありね」


黒季「そろそろ着いたよ」


黒季が扉を開けると、机にみんなが座っていた。宿題をやったり、受験勉強をしている。中には冬美と冬音も来ていた。


灰川「あんた、妹いたの?」


黒季「まあね」


灰川「なんかもう既に賑やか」


冬美「あ、鋼お姉ちゃんだ!!」


冬音「・・・違う、鈴姉ちゃん」


冬美達は灰川の所に行き、灰川を見上げていた。灰川はしゃがみ込み、一緒に会話をした。すると扉がバンッと開き、白沢が遅れてやってきた。


赤城「ちょっと、遅かったじゃないの!!」


秋穂「ほんとよ!!私が最後かと思ったのに!!」


春奈「私も急いで仕事を片付けたのよ」


夏菜「私も生徒会の仕事、頑張ったわ」


みんな白沢に文句を言っていた。なにしろ、呼び出し人は白沢本人だからだ。その本人が遅れるのだから、怒るのは当たり前だ。白沢は全力で走って来たのか、息切れをしていた。すると、白沢はみんなの前で


「仕事が来たわよー!!」


と叫んでいた。仕事?みんな首を傾げた。仕事って何?むしろ何で働いてる体なの?そして、それを何で君が仕切ってるの?白沢は黒板の方に歩き、ある一枚の記事を貼った。


白沢「これはある塾についてよ!!夜な夜な変な動きをしているらしいよ!!噂じゃ、何かをしていると言うけど、当局はこの事を否定している!!」


宝華「あー、つまり?」


白沢「実はこの塾、試験問題を流出しているんじゃないかって噂があるらしいわよ!!他にも社長の親と塾講師がグルになってコネ入学をしていると言う噂も聞くわ!!」


オリヴィア「ワーオネッ!!」


秋穂「えーっ!!私今年受験生なのに、そんな問題起こしたらダメじゃん!!」


宝華「でもそんな話、報道されてないわよ?」


白沢「そこなのよ!!実はね、この事を知った記者がいるんだけどね、何故か記事に書く事を却下されたらしいのよ!!それにその記者を懲戒解職にまで追いやったって話よ!!」


春香「確かに、これだけの事をする必要ないぐらい酷い事をしてるわね。でも何でその事を知ってるの?」


白沢「私のママがそう言うのに詳しくてね。たまたまママのパソコンを見ただけよ♪」


黒季「君って時々えげつないね」


白沢「えへへへ」


要は裏口入学疑惑の正体を明かそうと言う事のようだ。警察が動かないって事は警察にも圧力をかけた可能性が高い。その社長がもし政界と通じていたら、これは世間を揺るがす事になるな。なんか厄介そうなものに突っ込んだねー。とはいえ、流石に見逃す気はない。人間の下衆な所が見れるのは何だか楽しみ。そして、その下衆が地獄に突き落とされるのはもっと楽しみ。なんか殺し屋や盗賊、泥棒には飽きて来た。たまにはこういうのも悪くないな。


黒季「面白い。やろうじゃないか」


白沢「ほんと!!やったー!!」


宝華「や、やるの!?リスクが高そうに見えるけど!?」


黒季「リスクが高い分、地獄に落ちる確率も高いという事だ!!僕は人間の下衆な部分が大好きでね、その人間が絶望するのはもっと大好きなんだ!!」


宝華「あんた、どうしたの?」


黒季「あ、つい」


黒季の鶴の一声によりみんなやる気になった。翌日、みんなは証拠集めに取り掛かっていた。今回のターゲットは社長の塩谷甚平(しおやじんぺい)とその息子恭平(きょうへい)。恭平は秋穂と同じく受験生であり、アンデルセン広凌高校を受けるようだ。もちろん志望動機は下心満載。とはいえ、一応塾には通っている。もう1人はこの塾の講師増田(ますだ)。資産家の塩谷から大量の賄賂を受け取り、印刷会社の社員を唆し、試験問題を流出しているようだ。しかしこれでは証拠としては不十分だ。もし言い訳でもすれば終わりだ。それに学校やマスコミ、警察にも圧力をかけてくる可能性もあり得る。何しろ、政界の繋がりもある。まさに難攻不落の城を攻略しようとしているものだ。


ジャラゴン「どうするんだよ!?このままじゃ、あのバカ息子が来ちゃうよ!!」


黒季「ここまで面倒とは。やはり奴を使うしかないな」


ケンちゃん「奴?」


ジャラゴン「・・・!!まさかっ!?」


ジャラゴンは何かに気づいた様子だった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


その夜、料亭にて。ある一室で2人の大人と片隅に1人の男子がいた。机には豪勢な料理が並べており、2人の大人は酒を飲んでいた。この2人が塩谷と増田、片隅にいるのが恭平だ。


甚平「いつもありがとうございますね。息子の為にわざわざ印刷会社の社員を買収するとは」


増田「何、私は金さえ貰えれば何でもやりますよ。それにしても、息子さんの志望校があの有名なアンデルセン広凌だと聞いた時は驚きましたよ」


甚平「あはははっ!!何しろあの学校にいけば、大学側から呼ばれ放題。それに安定した就職も夢じゃないからな!!それに元女子校だから女子も選び放題!!その為にあなたに頼んだまでです!!あ、お酒を」


増田「あ、すいませんね。私も美味しい思いもし、息子さんも美味しい思いをする、まさにウィンウィンってやつですな。ワハハハハッ!!」


甚平「あ、お約束のお菓子は後ほどお渡ししましょう!!」


増田「いつもすみませんね〜」


2人が有頂点になっている時、襖から1人の仲居が入ってきた。


仲居「失礼します。お酌を持ってきました」


甚平「お、気が利くじゃないか!!それにしても可愛いな!!一緒にどうだ?」


仲居「すみません、まだ運ばないといけないので」


甚平「連れないな〜。まあ、そこもいいが。ワハハハハッ!!」


お酌を運び終えると、仲居は部屋から出た。そして、廊下に出て帯からスマホを取り出した。スマホの相手は黒季だ。


仲居?『もしもし、ノワール様。もう設置終えました』


黒季『良くやった。あとはベラベラ全部洗いざらい話してくれるのを待つだけだな。あとで集合だ』


仲居?『かしこまりました。ではまた』


そう言って、電話を切った。その後、料亭から出た仲居は裏路地に来ていた。そこで黒季と待ち合わせていたのだ。しばらく待っていると奥から黒季が現れた。仲居は特に警戒もせずに近づいた。


ジャラゴン「やっぱり君だったか」


仲居?「お待たせしました。ノワール様にジャラゴン様」


黒季「こっちこそ待たせてすまないね、アン」


アンと名乗る仲居はコートからメイド服に変わり、茶髪もポニーテールに結んだ。アンはノワールファミリーの人間メイドで最強従者団"ロイヤル・ノーブル"のメンバーだ。実はあの時、彼女に頼んで潜入調査をしてもらったのだ。部屋の至る所にカメラを設置し、それをスライムで隠した。そして、彼女が準備したお酌の中に強制自白剤を投与し、彼らが全部話すよう仕向けたのだ。帰った後にカメラを回収し、ここにきたという事だ。


ジャラゴン「これで証拠は揃ったな!!」


黒季「あとはこれを流せば良いが、どこで流そうかな?」


アン「そう言えば、3日後に講演会をやると聞きました。中には政界の人も来るそうで、あの塾講師も来るそうです」


黒季「そうか、それだ!!今すぐ他の奴らに声をかける。君は引き続き調査をしてくれ」


アン「はっ!!」


そう言うとアンはスッと消えてしまった。これで準備が整った。講演会のモニターにさっきの映像を流せばどうなるか、それは分かりきっている。その内に早く準備をしないといけないな。


黒季「さてと、あと4、5人送り込もうかな〜?」


黒季は影に隠れるように消えていった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


白沢「証拠が集まったですって!?」


黒季「隠しカメラが全てを映した。これで証拠は集まった」


オリヴィア「ジャア、メッタンメッタンノギッタンギッタンネ!!」


灰川「それ、どこで覚えたの?」


オリヴィア「アル某アニメネ!!一緒ニ見ヨウネ!!」


灰川「わ、私はいいからっ!!」


その頃、旧校舎では昨日撮ったカメラ映像を見ていた。確かに裏口入学を過去にしていた事や、賄賂を大量に受け取っていた事など全て話していた。これは隠しきれない証拠だ。あとは2日後の講演会に向けて準備を進めよう。そのためにロイヤル・ノーブルを派遣したのだ。今頃、セットの準備に勤しんでいる所だろう。


白沢「さーて、私達も準備しましょー!!」


黒季「準備?」


白沢「私達もその講演会に行くのよ!!」


黒季「なるほどね。特に予定ないからいいよ」


白沢「2日後は土曜日。私達は講演会をする会場で待ち合わせ!!これでいいね?」


赤城「別に構いませんけど、みなさんご予定は?」


各1人ずつ聞いたが、みんな予定はないらしい。


白沢「じゃあ決まりね!!私達で悪党退治を始めるわよー!!」


黒季「はー」


なんやかんやで始まった裏口入学疑惑事件。でも、白沢の無茶振りには本当にうんざりしてしまいそうだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


翌日、講演会が始まった。今日は資産運用についてセミナーをするらしい。それにしても社長という事か、沢山の人が会場に来ていた。そのロビーでは春香、夏菜、秋穂、冬美と冬音と白沢が待っていた。しばらく待つと、宝華達がやってきた。


白沢「準備はいい?」


黒季「こっちは終わった。早く絶望してくれないかな?」


宝華「ちょっと、声控えて」


みんな緊張しながら会場に入り、席に座った。しばらくすると、スポットライトに照らされながら塩谷甚平が現れた。甚平はマイクを手にしながら挨拶を始めた。すると会場から握手が大喝采で出てきた。辺りを見渡すと、アンが言ってた通り塾講師の増田や政界の人も来ていた。これは面白くなってきた。パーティーは人数が多い方がいいからな。そう考えていると隣に誰かが座り始めた。サングラスをしていて、ちょっと洒落た服を着た女性だった。しかし、黒季は一目見てすぐに分かった。アンだった。アンは小声で話しかけてきた。


アン「ただいまドウとトロワがパソコンを操作しています。もうすぐ始まるかと」


黒季「では、そろそろ本番か」


その頃、甚平は淡々とモニター越しで説明をしていた。次の画面に行こうとエンターを押した時、ある画面になった。それを見た甚平はおろか、会場の人達も騒ぎ始めた。実は前日にちょっと細工したものだ。ある動画を流すために。すると突然動画が流れ始めた。その動画には甚平と塾講師の増田が会話をしている場面だった。お互い裏口入学の事を話し、甚平が渡したお菓子の中から大量の札束が入っている場面も出てきた。それを見ていた甚平は焦り出した。甚平はマイクを手にあせあせとしながら


甚平「ち、違うっ!!これは私じゃないっ!!」


と言い訳をしたが時遅し、既にSNSに拡散させておいた。実はさっきの動画をスマホに保存していて、講演会の日に流すつもりだったのだ。会場がざわめいているなか、1人逃げ出そうとした者がいた。増田だった。増田は会場を後にし逃げ出そうとしていたが、スライムで足を伸ばして彼の足を掴んだのだ。その隙に警備員の人が取り押さえてくれた。


増田「離せっー!!!」


警備員「大人しくしろっ!!」


会場は大混乱と化し、僕達もその隙に脱出したのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


翌日、新聞には堂々と裏口入学疑惑の記事が書いてあった。社長の甚平は裏口入学をさせようとした事実が発覚し、彼の会社の株は大暴落し倒産するまでに下がったという。息子もアンデルセン広凌高校の推薦は取り消された。塾講師の増田も過去に裏口入学をしていた余罪があるため、逮捕。印刷会社の社員数名も増田に支持されたとはいえ逮捕された。これでみんなバッドエンドになったって訳だ。


春香「まさか、ここまでやるとはすごいわね!!」


宝華「あの懲戒解職された記者も無事復帰出来たらしいわよ!!」


秋穂「何事も不正はダメって訳ね」


夏菜「こんな人が来なくてよかったわ」


白沢「そうね。では今日は事件解決と灰川ちゃんや赤城ちゃん、オリヴィアちゃんの歓迎会をやりましょう!!」


オリヴィア「イエーイネ!!カンパーイネ!!」


灰川「一気にやるのね・・・」


赤城「まあ、みんな忙しかったから」


今日は旧校舎でパーティーを開催していた。みんなジュースやお菓子を食べながらワイワイと楽しんでいた。ジャラゴンやケンちゃんも満更ではない様子だった。


ジャラゴン「いえーい!!今日は笑って歌って楽しもーぜ!!」


ケンちゃん「そうですね!!」


白沢が急に持ってきた事件が、ここまで大反響を及ぼす大事件とは思わなかったがこれも巡り合わせってやつかな?案外面白かったし。まあ、今はこのパーティーを楽しむとしようか。

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