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夢見る女子は現実主義者

 赤城「う〜ん、あれ、夢?」


赤城は目を覚ました。冷たい床で一眠りしていたようだ。家には暖房はないが、今は春から夏に変わる頃合いなので気持ちはいい。部屋も電気代を節約しているので、明かりはあまり付けない。でも何か違和感はあった。目を開けると見た事ない天井だからだ。さらに床は畳ではなく、硬いコンクリートの上で寝ていたのだ。体は重く感じたが、自力で何とか立ち上がれる力はあった。


赤城「痛たたた・・・なんか頭を強く打ったような・・・」


???「あ、目が覚めた。元気か?」


赤城「はい?」


すると何処からか声がして来たので辺りを見渡したが、人らしき影はいなかった。頭を強く打ちすぎたショックで幻聴でも聞こえたのか、自分にそう言い聞かせようとした時、目の前にそれは現れた。


???「元気そうで何よりだ。気分はどうだい?」


赤城「ん?」


目の前に現れたのは、喋って飛んでいる・・・おもちゃだった・・・。どういう事?ついに幻覚も見えちゃった?うん、これは夢だな。多分そう。おもちゃが喋るなんて現実にあり得ない・・・よね?


???「おっと、紹介がまだだったね。お初にお目にかかる、我はジャラゴンだ。以後お見知りおきを」


赤城「んん?」


ジャラゴン「ん?我、何か変なこと言ったか?」


みんな「・・・」


とりあえず黙る事にした。何と言ったらいいか分からないからだ。とりあえず出来る事といったら、これから起こる現実を受け入れるしかない事だ。まずは白沢が赤城に手を差し伸べた。その手を掴んだ赤城は両手で目一杯の力で立ち上がった。


白沢「ごめんね、急すぎる展開で頭が混乱するのも無理はないわ」


赤城「いや、それよりもあなた達は?」


黒季「あー、通りすがりの・・・謎集団?」


春香「いや、誤魔化し方!?」


赤城「皆さん見たことありますし、それにあなたは生徒会の・・・」


夏菜「そう、生徒会で庶務をしています色田夏菜です」


黒季「・・・ん、あれ?夏姉って生徒会庶務だったの・・・?」


夏菜「えっ・・・」


春香「まじっ!?」


秋穂「知らなかったんだ」


白沢「みんな知ってるわよ?」


宝華「あんた、いつもぼけーとしてるんじゃないの?」


オリヴィア「私ハ知ラナカッタネ」


赤城「しょうがないよ。こういう奴だから」


うん・・・うん・・・正直、1番驚いたわ。夏姉が生徒会に入っているなど、今日初めて知ったわ。帰りが遅い時があるのはそれが原因か。そう言えば生徒会の話では良く寝ていたな、うん。


黒季「じゃ、ジャラゴンは知ってたか?」


ジャラゴン「何年お前の体にいたと思ってるんだ?もう学校の人達は一通り知ってるぞ」


ケンちゃん「僕もです」


・・・あれ?僕だけ取り残されてる?何か悲しくなってきた。


夏菜「とにかく今はここを出ましょう。後から騒がれては遅いわ」


夏菜がそう言った時、ドドドドッと奥から大きな音がした。まるで水が流れてくるような激しい音だった。しかもこちらに流れてくるような。


宝華「ヤバッ!!急がないと巻き込まれるー!!」


宝華の一言でみんな我に帰り、走り出した。その数分後、水が流れてきた。かなり勢いがあり、巻き込まれれば溺死間違いなしだろう。ていうかこれ、前にもあったような?すると白沢は何かを思い出した。


白沢「そうだ!!みんな、フェイスマスクを付けて!!サイバーパンクマスクにすれば水は入ってこないわ!!」


なるほど!!その手があったか!!サイバーパンクマスクにすれば、しばらくは顔を守れる。早速みんなフェイスマスクを取り出し、顔につけサイバーパンクマスク状態にした。赤城は・・・とにかく走り続けよう。


赤城「ちょっ!?何で私だけないの!?」


ノワール「・・・」


赤城「黙らないでよっ!!」


赤城は怒りながらも、一生懸命走っていた。一応体力には自信はあるが、悪魔で平均並みしかないため限界が近づくのも時間だった。やがて大きな扉が現れて、そこにみんな入り切ると水は扉を壊す程の威力で流れ出した。幸いみんなはそれぞれの横の壁に避けていたので免れた。扉を開けた先は地下放水路の広い場所でもう4分の1ぐらいは溜まっていた。それも壁や天井中に魔法陣があり、そこから水が流れ出していたのだ。もしこのまま溜まっていけば、まずは水道管がやられ、地面が液状化し、洪水が起こり、本当の水の惑星になるだろう。しかも各異世界中の海から引っ張っているのだろう。


アスール「な、何なの?これ」


ブラン「これってあの時戦ったタコの仕業?」


ヴィオレ「たこ?」


すると水の中から誰かが現れた。そして壁にへばりついた。


ブラン「やっぱりあなたの仕業だったのね!!オクトーパ!!」


オクトーパ「やあやあ、ノワールファミリーの諸君。知らない人のために自己紹介。私はオクトーパ・エイトローよ、よろしくねー!!」


やっぱりオネエキャラだったのか、みんな引いてる。すると壁から離れてみんなのいる床に降りた。


オクトーパ「綺麗じゃなイカ!!こんなにたくさんの水があって、泳ぎ放題じゃなイカ?!」


アスール「確かに泳ぎ放題ね。でもそういうのは海か川か公共のプールだけにしなさいよ」


オクトーパ「まあ何て失礼な子!!あなたには最初に死んでもらうわよ!!」


するとオクトーパは腕から触手を出して、アスール目掛けて伸ばした。


アスール「うぎゃあぁぁぁぁー!!!触手ぅ〜!!!」


そう言えばアスールもとい宝華は触手系が苦手だったっけ。昔、イカとタコに足を絡まれてそれがトラウマだったとか。オクトーパはすぐさまアスールを掴み、一緒に水中に落ちた。


オクトーパ「ふふふふーっ!!どうよっ!!この中じゃ、あたしの独壇場・・・」


アスール「悪いけど私、水属性」


オクトーパ「え・・・」


アスール「・・・」


オクトーパ「・・・え・・・え・・・」


あまりの衝撃に放心状態になっていた。その隙に掴んでいた触手が緩み、アスールは体が動けるようになった。アスールは拳をつくり、オクトーパに殴ろうとした。


アスール「さっきはよくもやってくれたわねー!!」


オクトーパ「あ、ちょっと、待ってぇ〜!!」


オクトーパは急な攻撃に戸惑ってしまい、すぐさまアスールの拳を顔にもろ喰らってしまった。そのまま抵抗する事なく、速く底に沈んでいった。アスールは上に泳ぎ、水面に出た。もう2分の1ぐらいの量になっていたが、流れては来なかった。そう、ノワール達が魔法陣を壊したのだ。廊下に上がったアスールはみんなと合流した。


アスール「今度はこの水をどうするの?」


ノワール「そうだね、適当に海に捨てるか・・・」


その時、また水からオクトーパが現れた。今度は怒っているようだ。


オクトーパ「き、貴様らぁー!!何してくれちゃってんのっ!?準備するの大変だったねよっ!!」


ブラン「これであなたの思惑通りには行かないわ!!さっさと帰って!!」


オクトーパ「手ぶらのまま帰れるかっ!!こうなったら、あんた達の首をもらっていくわよっ!!」


するとオクトーパの体は煙状になり、こっちに来たのだ。最初は辺りをグルグルと飛んでいたが、煙から触手が現れて、アマリージョに攻撃した。


アマリージョ「きゃっ!!」


ヴィオレ「アマリージョ!!」


オクトーパ「今度は貴様よっ!!」


ヴィオレ「え・・・きゃっ!!」


今度はヴィオレに攻撃してきた。これは前に見た能力だ。恐らく体を煙状にする事が出来る能力だな。すると煙からオクトーパに変わった。


オクトーパ「その通りよっ!!あたしの能力"スモークオンザウォーター"!!体を自在に煙にする事が出来るのよ!!」


ノワール「これは厄介そうだね」


赤城「何を呑気に言ってるのっ!!何とかしてっ!!」


そんなやり取りも束の間、すぐにオクトーパは煙になり、ノワールと赤城に攻撃してきた。横から腕を伸ばし、丁度首辺りの高さで飛んでいたため喰らったら危険だろう。しかし、2人共咄嗟に回避したため当たる事は無かったが、代わりにブランとブルーノに直撃し、そのまま水中に落ちてしまった。


アスール「ブラン!!」


ヴェルデ「ブルーノさん!!」


アスールとヴェルデが2人を助けようとした時、水中から巨大な影が現れた。影が次第に巨大化し、ついに水中から現れたのは大きく赤いイカだった。恐らくオクトーパが連れてきたのだと思う。


オクトーパ「いいタイミングじゃなイカ!!この子はデビルズクラーケンのスキッドちゃんよ!!スキッドちゃん、この子達と遊びなさい!!」


アスール「ぎゃあぁぁぁぁぁぁーっ!!タコの次はイカアぁぁぁぁぁぁぁぁぁーっ!!もう勘弁してー!!」


デビルズクラーケンはすぐさまブランやアスール、ヴェルデ、ブルーノ、ヴィオレ、アマリージョを捕まえた。アスールは絶叫し、後は抵抗していた。とはいえ、生まれて初めて触手プレイを見るとは思わなかった。漫画やアニメではあるが、現実に見るとなんか・・・不思議だな。


アスール「何見てんのよっ!!何とかしなさい!!」


ノワール「あ、は、はい・・・」


アスールに怒られながらも、手から剣を出して襲い掛かろうとするも、オクトーパも杖を出していて抵抗していた。お互いガキンガキンッと音を立つながら戦っているが、姿を消したり、墨を吐いてきたりするのでなかなか進展しなかった。こいつは戦い慣れていて、実力もあるに違いない。それにデビルズクラーケンも野生のものとは違うぐらい凶暴になっている。


オクトーパ「当たり前じゃなイカッ!!この子は強制的に強化させたのよっ!!」


ノワール「やはりか、厄介だな」


赤城「ちょっ、ちょっとっ!!どうするの!?」


赤城はノワールにしがみついて、体を揺らした。まあ、デカいイカに変なタコ怪人もいれば、おかしくなるか。デビルズクラーケンはノワール目掛けて触手を伸ばしたが、腕をスライム状にさせ、そこから無数の触手に変えた。ついでに先端は尖った刃物にして。触手は2本しかなかったので、片腕だけで抑えられた。それを見た赤城は


「な、何なのっ!?あなた一体何者ーっ!!」


と驚いてた。まあ、言ってないからね。


ノワール「僕は人間じゃないんだ」


赤城「このタイミングで説明はいいっ!!後で聞くから!!」


オクトーパ「なかなかやるじゃなイカ!!"スモークオンザウォーター"」


今度はオクトーパが能力を使って、ノワールに襲いかかった。しかし、ジャラゴンが出てきてオクトーパの攻撃を防いだ。両者勢いを出し、一歩も引かない状況だった。


オクトーパ「なかなかやるじゃなイカ。あたしの攻撃をここまで耐えるとはね」


ジャラゴン「お主もな。我の攻撃を耐えるとはね」


ジャラゴンは見た目はおもちゃだが、元キング・ジャドラという邪龍だからな。それにおもちゃといってもCHO合金をふんだんに使ったおもちゃだからちょっとやそっとで壊れることはない。もしかすると地球、いや異世界最強のおもちゃかもしれない。


オクトーパ「おもちゃのくせにちょこまか動いて、ポリプスティンガー」


オクトーパが取り出したのは長い槍状の武器だった。先端はタコの本体と触手を鋭くしたものがついていた。オクトーパはジャラゴンに向かって槍をついたが、ちょこまかと飛ぶジャラゴンにはなかなか当たらなかった。すると痺れを切らしたのか、先端の触手が開いた。中からは小型の大砲みたいな物が出てきた。流石にヤバいと思ったのか、ジャラゴンは上高く遠くに逃げ出した。しかしオクトーパはそれを意図もせずに


「発射ーっ!!」


と言ってボタンを押した。すると小型大砲からミサイルみたいなのが出てきた。しかもジャラゴンを異常に追いかけている、追尾式ミサイルだった。


ジャラゴン「ヤべーイッ!!あれを喰らえば潰れる!!流れる!!溢れ出るぅ〜!!」


ノワール「何が?」


しかし、ジャラゴンが必死に逃げても、結局喰らってしまった。ドカーンッ!!!空中で爆発したジャラゴンは煙の中から黒焦げになった状態で出てきた。フラフラとゆっくり落ちていって、デビルズクラーケンに捕まってしまった。


ブラン「ジャ、ジャラゴンちゃんっ!!大丈夫!!」


ジャラゴン「な、何とか〜・・・」


ブランのいる触手に捕まってしまったジャラゴン。みんなは何とか脱出しようと試みるもブンブンと振り回す攻撃にみんな困惑していた。ノワールもオクトーパの相手をしないといけないので、面倒な状況になっていた。


オクトーパ「いいじゃなイカッ!!どの道貴様らには勝ち目すらないのよっ!!この世界であたしは財を成すのよ!!楽して稼いでやるわ!!」


赤城「ど、どういう事!?」


オクトーパ「貴様ら地球人はあたし達に従うしかないって事よっ!!大人しくお縄に捕まりなっ!!」


赤城「・・・!!」


赤城はしばらく黙ってしまった。体が震えていた。恐怖によるものか、それとも・・・。オクトーパが腕を伸ばした時、赤城は喋った。


赤城「あんたも私と同じなんだね」


オクトーパ「何!?」


赤城「私ね、ある会社の社長令嬢だったのよ。でもある会社との競争に負けてね、結局日本全国あった会社は地域限定と一部の都市に収縮してしまったのよ」


オクトーパ「何を言ってるのよ・・・?」


赤城「私はまた会社を再び栄光に咲かせるために、あんたは地球で財を成す。私達似た物同士じゃない」


オクトーパ「同じな訳ないでしょっ!!あんたとあたしは・・・」


赤城「そう、1つだけ違う事がある。あんたは楽して稼ぎたい、私は努力して稼ぐ。さっきから色々聞いてたけどね・・・」


オクトーパ「何!?」


赤城「商売なめんじゃないのよ!!楽して稼ぐなんて夢物語を言ってるんじゃないのよ!!大企業だって地道にコツコツと働いてやっと有名になったのよ!!」


オクトーパ「な!?」


赤城「あんたも楽して稼ぎたいなら、地道にコツコツと働きたいなさいよ!!」


赤城は怒りをぶつけたようだ。それほど溜まっていたんだろうな。今の彼女の姿は最初に見た我儘令嬢ではなく、夢を持ち、信念を貫く女性の姿だった。


オクトーパ「ふ、ふざけんじゃないわよ!!喰らいなさいっ!!」


オクトーパはポリプスティンガーを取り出し、ミサイルを発射させた。しかも連続で発射させたので、彼女目掛けて集中攻撃をした。ノワールも丁度巻き添えになり、喰らってしまった。それを見て絶句してしまったブラン達。高笑いするオクトーパ。しかし煙から出て来たのは、赤い光を帯びた彼女の姿だった。

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