カメルくんと5人の将軍たち
「さて、これからの活動についてだが」
僕は椅子に座って話をした。みんなは跪いて聞いている。これ、いいぞ。ここから眺める景色は最高だし、レッドカーペットが敷かれているし、何よりこれだけの仲間を作った僕が素晴らしい。とりあえず適当に思いついたものを絵に描いて魂を入れればすぐ出来上がる。何か3分クッキングよりも早い気がする。動物や魚、昆虫、鳥類、植物、幻獣、恐竜、剣士や騎士、魔術師、悪魔や天使、ドラゴン、道具や乗り物など、中にはかかしのモンスターも作った。僕ってセンスいいよね。こうやってモンスターを作るっておもしろいな。話を戻して
「まず、アインス。君は・・・」
「ええ、私達は戦力拡大と共に実験の被害者救出も行っているわ。おかげで仲間が増えてきているわ」
そういえば、何か前よりも人増えてる。アインスのヤツ、どんどん捨て犬みたいに拾ってくるからこの城に入れなくなるんじゃないの?
「これからも戦力集めをしつつ、【グレゴリー】の壊滅を続けていきたいと思っているわ」
まあ、ちゃんと面倒見てくれるならそれでいいけど。みんな女性だし。でも【グレゴリー】のことすっかり忘れていた。地球生活とモンスター作りで忙しかったから全然考えてない。もし、これがバレたら・・・その時はすみませんでしたっと謝ればいっか。
「今度はドリィ。君は何をしてたの?」
「はい、私は軍事資金を集めてまいりました」
そういえばドリィはミニストで色々やっているって聞いた。百貨店やデパートの経営、不動産経営、株主なんかもしている若手実業家として名を広めているとか。やっぱり才能かぁ。僕にもそんな才能があれば。
「百貨店や不動産などでうまくいきすぎて、総額200億までいきました」
「ぶっ!!に、200億!!」
「あら、もしかしてご満足頂けませんでしたか?」
「いや、大丈夫だ」
200億。それだけあればしばらく家賃を払って、遊び放題だ。これはあれだ、うん。自分には才能があるアピールをしているんだ、きっとそうだ。だとしたら、こんな金集まらないよ。僕が遊んでいる間にこんなになって。僕、やっぱりいらなくない?ま、まあ誉めてやろう。
「よ、よくここまでがんばったな。ドリィ」
「ありがとうございます。しかしこれは全て主様の知識のおかげです。主様に恥じないように精一杯努力したまでです」
みんなおーっと歓声を上げていた。そういえば、昔彼女たちに色んな処世術を教えたっけ。この世界に生き残るために色々教えたけど、やっぱり才能か。教えた僕が言うのもあれだけど、教えるんじゃなかった。こういう結果になった反面、僕よりも力も頭脳もレベルアップしている。このままじゃ、いずれ居場所が無くなってしまう。何とか生き残らないと。ていうか、僕が生き残れるか不安になった。まあ、それを置いといて
「お前は我を買い被りすぎだ。こうなったのはお前のおかげだ」
うん、ここはごまをすろう。
「ああ、やはり私の目に狂いはなかったようですわ。このドリィ、これからも頑張る所存です」
僕の目は狂ったが僕も頑張ろう、人の見る目を。長い話は嫌いなのでここで終わらせることにした。
「我はお前達の成長を見れてうれしい。これからも頑張ってくれ!」
「ははー!!!」
そういって話を終わらせ解散させた。みんな、成長したんだな。僕だけここでは取り残された気がした。世界に名を響かせても無いし。もっと力があれば、何回そう思ったっけ。何か僕の評価を上げてくれる出来事があればな。そう思って時計を見ると、朝の6時くらいになっていた。やべ、全然寝てない。学校で寝るか。そう思って家に帰った。後にこの出来事が起ころうとは、今の僕には知る由もなかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
学校につくと玄関近くで行列があった。そこではみんながかばんを預けて、中身を見ていた。どうやら風紀委員が荷物の抜き打ち検査をしているらしい。今時抜き取り検査なんてあるんだ。流石はエリート校だ。
「学業に無関係な物、いかがわしい物は全て没収します」
そこには腕章をつけた女性がいた。彼女の名は”川岸 澄花。1年生でこの学校の風紀委員らしい。お嬢様育ちで結構厳しいが、ファンが多いとか。どうして知ってるかって?T.J.情報だ。僕の番になってかばんを見せると、
「ん、何ですかこれは」
かばんには鉄バールが入っていた。いつ敵が襲われても大丈夫の時の護身道具なんだけど。
「ほかにもありそうですわ。一旦こちらに来てください」
そう言って、僕の腕を引っ張ってどこかの教室に入った。ここは風紀委員室だった。みんな玄関で検査しているので、僕と川岸の2人しかいなかった。川岸はかばんを再び調べて、中身を全部出した。
「サバイバルナイフにスタンガン、催涙スプレー、モデルガン。何でこんな物を持ち込んだのですか?」
「えっと、護身用に」
「護身用にこれだけいるのですか?ちゃんと答えてください!」
「いつ敵が襲ってきても戦えるように・・・」
「もう言い訳は無用です。これらは全て焼却処分します」
「没収じゃなくて焼却かよっ!!」
「当たり前です。こんなの我が学園には不要です」
話しの分からない人だ。護身用に持っておくのは基本中の基本だろ。何とか話し合って、放課後取りに行くという結果で終わった。
「セーフ」
チャイムが鳴る前に教室に到着した。話、結構長かったなあ。結局寝る時間が削られた。机につくと1人の女性が駆け寄って来た。
「君っていつもぎりぎりに登校するよね。私のようにもうちょっと早く登校したら?」
「しょうがないだろ。変な人に絡まったんだから」
その女性はため息をついた。彼女の名は”綾乃 優衣”。一応幼馴染だ。小学校からの腐れ縁でいつも僕を気にかけている。黒いロングと大きい胸、クールで大人っぽい見た目が特徴だ。また、中学生まで学年トップで成績優秀、何から何まで完璧人間だが、実はポンコツでもある。
「全く、人の心配も知らないで。これだから、私が・・・その・・・面倒を・・・」
「ん、何か言ったか?」
「な、何もない。ばか」
よく分からんけど、たまに暴走もする。するとまた1人やって来た。
「黒季ちゃんをいじめるのはだめよ、優衣ちゃん」
と優しく声をかける女性が現れた。彼女の名は”上坂 ほのか”。彼女も小学生からの幼馴染だ。茶髪ロングで物静かで小動物っぽい雰囲気に加え、恥ずかしがり屋。昔は3人でよく遊んだっけな。しかし、こうも2人を並べると性格が真逆だな。
「大丈夫?酷いこと言われなかった?」
「うん、今のところ大丈夫」
「良かった。もしあれだったら、私が癒してあげるからね」
「そうするよ」
「ちょ、ちょっと。何納得しちゃってるのよ」
「事実だから。それにお前は言葉と暴力が・・・痛っ!!!」
「誰が暴力女ですって?」
優衣に頭を殴られた。たぶんこぶ出来た。やっぱり暴力女だった。するとほのかが頭をさすって来た。
「大丈夫?痛くない?黒季ちゃん?」
「う~、ありがとうほのか。誰かさんとは大違いだ」
「ちょっと、どういう意味!」
怒りっぽい優衣と甘やかし上手のはるか、何だか昔と変わってないな。すると、宝華と白沢がやって来た。
「あんた達、まだじゃれあってるの?ほんと、懲りないわね」
「べ、別にじゃれ合っているわけじゃないし。むしろこいつが絡んできたのよ」
「罪をほかの人に擦り付けるな」
「ふふっ、みなさん仲が良いのですね。羨ましいわ」
「そんなもんかな?」
チャイムが鳴ったのでみんな席についた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「急に呼び出しってなんや?」
ここはとある黒い部屋。大きなモニターが付いていて、クーラーもバーもある。ただ、窓がない。そこに現れたのはカメルだった。中には何人か人がおった。
「お、みんな元気そうやな」
「いらっしゃい、カメルくん。ブラッドくんも一緒じゃないの?」
「ブラッドはん、別の任務に行ってるから僕だけや」
「なんか最悪。こいつうるさいから嫌」
「ちょっと、うるさいって」
「お静かに。これから会議が始まります」
「静かにですぅ~」
と誰かが注意した。すると、モニターに何か映し出された。画面はスノーノイズになってて姿はうまく見えないが、影と声だけが聞こえた。
『ご機嫌用諸君、2人いないがよく来てくれた』
画面越しでそう言うと、みんな跪いた。どうやら、声はボイスチェンジャーで隠していて男なのか女なのかは分からなかった。そもそも人なのかも分からないし。それでもそのまま会話を続けて
『それでは本題だ。今日、英雄と勇者の魂を受け継いだ者の居場所が分かった。その場所は地球だ』
と言うとみんな驚いた。
「何、地球やと!あそこにおったのか?」
『そうだ。お前達の中の1人がその情報を我に送って来てくれた。確かに情報通り、適合者が多く見られた』
あまりの驚きにカメルを始め、ほかのみんなも驚いた。ただ一人を除いては。
「んん?そういやウェヌスちゃん、ずっと静かやな?・・・ってもしかして、情報を送ったのって」
『そうだ、ウェヌスだ。彼女はよく働いてくれるから助かるよ』
ずっと無言で腕を組んで立っていた女性がいた。彼女の名前は”ウェヌス・キャナリィ”。白髪のポニーテールでドレスを着ている。冷徹な性格で、【グレゴリー】への忠誠心が誰よりも強い。ただ、いつも無言でいるらしい。
「なあなあ、ずっと黙ってへんで、なんか喋ったらどうや?」
カメルがそう話しかけてくるも、ギラッと目を睨んで返してくる。
「ひ~、怖い怖いわ。そんなに睨まんでもいいのに。こういう子に限って笑顔が可愛いらしいかもな」
すると、ウェヌスはどこかへ行ってしまった。そこへ呼びかける者がいた。
「おい、どこに行く?まだ会議は終わっていません。勝手に自由行動さえたら困ります」
話しかけたのは女性だった。彼女の名は”マールス・バーミヤン”。赤髪お団子頭でチャイナドレスを着た女性だ。理知的な性格で、【グレゴリー】の中では頭が回る。同時に委員長気質の持ち主で規律に厳しく、策略を巡らせることが出来る優等生でもある。眼鏡もかけてるし。その腕を見込んで、策略家として活躍している。
「ここは話し合いの場です。勝手に抜けるのは社会人として非常識です。せめて一言いってください」
「・・・・・!!!」
この二人の間から何かバチバチと電気が見えた。あかんわ、こりゃ!この2人ってなぜか仲が悪いんだよな。真面目な性格だからか、お互いの権利を主張しあってるな。僕が仲介しにいったら、間違いなく殺されるな。なんとかこの場を収めないと。そう思っていると
「癒しの波動」
と唱える者がいた。この魔法は相手を落ち着かせる魔法だ。暴走状態や混乱状態の時には一瞬で治る治療系魔法でもある。また、魔力も回復できるという能力もついている。
「ちょっと、うるさい。静かにして」
隣から喋りかけてきた女性がいた。彼女は”ルーナ・ココース”。フードを被っている紫髪少女だ。よくゲームをしていて、最近もゲーム大会で優勝したとか。ただ、この子は人見知りが激しく、みんなが誘って来ても拒絶をするからいつも1人だ。たぶん、1人が好きなんだ。それにしても、今時のJKってこんな感じなんだな。ちょっと可愛いかも。ここでは最年少なんだし。
「何見てんだよ、殺すぞ!」
「すっ、すみませんでした~」
ルーナは睨んだ後、再びゲームを再開させた。ルーナも睨むと怖いからな。あの子と一緒に遊べる人っているのかな?こんな口の悪い子って誰も近寄れないんじゃ?カメルは不安になった。すると、マールスがルーナに対し、叱ったのだ。
「ルーナ、あなた口が悪いわ。言葉を慎みなさい」
「ったく、うるさい、お節介女。お前もしばくぞ!」
マールスに注意されたので、不愉快になった。互い睨み合って、両者一歩も譲らなかった。止めたほうがいいんちゃうか?でも、横から入ると殺されるしな。どないしたらええんや。すると
「浄化薫香」
と唱える者がいた。この魔法は白く甘い靄を出して、怒りの感情を静める魔法だ。これは一体誰が?
「みんな、お静かに。笑顔でいきましょう」
「あ、あんたは」
彼女の名は”ユピーテ・ジョリーパ”。布ドレスを着た緑髪の女性だ。いつもみんなのことを気にかけてくれる母性あふれるお母さん的存在だ。主に回復約を担っている。彼女に抱擁されると、みんな気絶するらしい。怖いけど、ユピーテママに一度は甘えてみたい。
「3人共、争ってはいけないわ。みんな謝りましょう」
彼女がそう言うとみんな黙ってしまった。3人は謝っていないけど。
「素晴らしいわ。世界がこんな風に平和になればいいのに」
嘘~、謝ってもいないんだけど。大丈夫かな。そう、彼女はド天然である。前も勘違いで問題起こしまくってるからな。
「みんなぁ~、仲間外れはぁ~悲しいぃですぅ~」
と嘆く者がいた。彼女の名は”メリウス・サイゼリア”。青髪のシスターだ。いつも眠たそうな表情をしている。影が薄いので、あまり気づかれることがないらしい。可哀そうやな。ま、これでここにいる人物の紹介は終わった。すると、モニターから
『えーっと、諸君。君たちには地球から色んな女を攫ってほしい。もし偽物なら実験に使うといい。そのためにカメルを呼んだからな』
「え、もしかして、この人達と働けと・・・」
『そうだ、君に辞令を言い渡す。この暗黒の七将軍と共に協力するのだっ!」
「えぇー!!」
”暗黒の七将軍”、それは【グレゴリー】の中で特に強い七人を集めた最強集団である。構成員は全員女性でそれぞれ難癖がある。月食将軍・ルーナ、火災将軍・マールス、水魔将軍・メリウス、木財将軍・ユピーテ、金怪将軍・ウェヌス、土竜将軍・サヌルス、日光将軍・ソールと七人の将軍がおる。土竜将軍と日光将軍は別の任務で今はいない。ただ、5人だけでも一筋縄ではいかない実力者だらけなのだ。なんかめんどくさいことになってもうた。
『それでだ、今回はウェヌスとメリウスを任せる』
「・・・分かった」
「うぅ~、分かりましたぁ~」
うわぁー、こんな所で働くのか。命大丈夫かな。こんな時にブラッドがいてくれたら、心も体も和らいだのにな。今となってはしょうがない。
『では、話は以上だ。諸君の活躍を楽しみにしてるよ』
そう言ってモニターは消えた。しばらく6人で部屋にいた。何か言ったほうがいいかな。
「えーっと、今からここに配属されました、カメルです。よろし・・・」
「先に言っておくが、お前と慣れあうつもりはない」
「ええ」
ルーナはカメルに忠告した。やはり、1人入って来たことに不満らしい。それに名前が呼ばれなかったから、さらに不機嫌になってるし。うん、なんだか不安になってきた。
「ごめんなさいね、この子人見知りで。でも大丈夫ですよ、これからみんな仲良くなりましょう」
「長い付き合いになりますが、よろしくお願いします」
「ふあ~、よろしくですぅ~」
マールス、メリウス、ユピーテは快く歓迎してくれた。ウェヌスは相変わらず黙っていた。彼女たちの実力は目の前で見たことがあるし、このチームなら大丈夫かっと思った。その日は決行日まで準備をすることにした。




