冴えないスライムの育てかた
「何やかんやあってもう9年かあ。長く感じたなぁ」
そう思って、学校の椅子に座っている。この学校、私立と言うだけあって、教科が10教科以上もあるから勉強が大変だった。そう、僕は現実逃避の真っ最中だった。こう考えると休憩時間が長く感じてしまう。こんな量の勉強をしないといけないなんて、学校間違えたかな?ふとそう考えていると
「何ぼーっとしてんのよ?もうすぐ授業でしょ」
と話しかけてきた人がいた。声の主は赤髪のポニーテール女だった。彼女の名前は有川宝華。僕の幼馴染でもあり、唯一の友人だ。家が近いということもあって、小学校からの付き合いだ。そういえば、彼女はスポーツ推薦で入ったって噂になってた。この学校、そういう所にも着眼点があるんだな。ちなみに水泳が得意らしく、全国大会で優勝もした実績もある。しかも、水泳だけじゃなく空手や柔道、テニス、陸上などスポーツ全般出来るらしい。化け物か。
「そういえば朝、ひったくりにあって二人組の男性にかばんを取られたの。私は取りに行こうとしたのだけど、あいつらバイクに乗っていたのよ。それで落ちていて石を拾ってバイクを運転している男の手に投げたのよ。そしたらどうしたと思う?」
「すっころんだ」
「そう。石が男の手に当たって、そのままバイクを転倒させることに成功したの。その後、二人に蹴りをいれて気絶させたわ。すごいでしょ!」
「十分、化け物だった・・・」
この身体能力と性格の良さ、そして顔が良くて周りにはいつも女子がたむろしている。しかも驚くべきは何と彼女、
「あ、宝華ちゃんだ、おはよー!今日も聞いたよ!ひったくり犯を退治したんだって!」
あの白沢愛菜と友人なのだ。何だろうな、あいつもう高校生デビューしたのか。何か羨ましい。あいつには憧れるなぁ。すると宝華が
「あっれ~⁈もしかして、喋れる人って私しかいないの~!しょうがないわね。昔馴染みで高校でも友達でいてあげるわ!」
前言撤回。やっぱり腹が立ってきた。こうなったら、僕も友人作ってやる。まずは一人ぼっちな奴を探そう。すると白沢が
「あ、色田くんだ。おはよう。昨日は大丈夫だった?」
「ああ、大丈夫だよ。そっちは?」
「こっちも大丈夫よ」
どうやら昨日のことを心配してたらしい。まあ、不良は片付けたししばらくは大丈夫だろう。すると宝華が
「あ、あんた。あの愛菜ちゃんと普通に喋れるようになったの⁉」
「うん、まあ。色々とね」
「すごいじゃない。一体どうしたの?」
と色々質問攻めされた。そして昼休み、宝華は白沢と他の友人と食べている。今までの僕はぼっち飯だけど、今日は飯友を探そう。といっても、弁当は無いけどね。しょうがないから、売店で何か買おうとした時、誰かにぶつかった。相手は男性だった。
「ごめんよ~。ちょっと急いでいたからね。んん、そういえばあの白沢ちゃんと席が隣の奴じゃないか。俺っちは多村潤。みんなからは『T.J.』って呼ばれてるからね」
「僕は色田黒季。よろしくな」
「いいね~君。ますます気に入ったよ!俺っちはこの学校の同級生や先輩方、先生達と友達になりてぇんだ!君は友人1号な!」
「ゆうじん1号⁉悪くない響きだ!」
「そうだ!今売店に行こうとした所だけど、君も来るかい⁈」
「行く行く!ちょうど売店に行こうとしてた所なんだよ!」
「まじで!それはチョーラッキィ!!一緒にいこーよ!」
「いいよ!一緒に行こー!」
こうして友人を作ったのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
下校中、僕は宝華と帰っていた。友人が出来たことなど話した。
「まだまだね。その田村って子のようにもっと作らないとね」
言われてみればそうだ。一人ではなく田村みたいに学校中の人と友人になろう。なんだか、友達作りって大変だけど楽しく感じた。僕は宝華と別れて家に帰った。家に帰ると冬美と冬音が帰って宿題をしていた。
「おかえり、黒季お兄ちゃん。私、ちゃんと宿題頑張ってるよ!すごいでしょ!」
「・・・すごいでしょ・・・」
双子なのに性格も違う。まあ、それはそれで面白い。そっくりな双子なんてあんまりいないし。
「宿題が終わったら、遊んでよ!」
「・・・一緒に遊ぶ・・・」
「はいはい、宿題が終わってからね」
小学生なのか、体力は十分感じる。妹達の遊び相手をするのもお兄ちゃんの役目だ。僕も宿題をやることにした。宿題を終わらせて妹達と遊んでいると夏奈姉と秋穂が帰ってきた。
「ただいま。遅くなってごめんね」
「お姉ちゃんの買い物に付き合わされて」
手には大量の食材を詰めた袋を持っていた。うちが貧乏なぶん、充分にストックするのだ。
「おかえり、夏奈姉、秋穂姉。今お兄ちゃんと『プルキュラ』ごっこと『仮面ンジャーズ』ごっこをしてもらったの!」
「・・・してもらったの・・・」
僕は敵役だけど。しかし、子供は無尽蔵なのかスタミナがなかなか減らない。おかげでこっちは体力の使い過ぎで燃え尽きた。
「お兄ちゃんに無茶させないようにね」
秋穂が注意してくれた。秋穂は黒髪のショートヘアの妹。昔はよくお兄ちゃんと懐いてくれたのに、今では思春期なのか反抗的になった。
「お兄ちゃんも冬美と冬音に変なこと教えないでよね」
といっても少しは心配してくれる。そこも可愛いんだけど。夏奈姉は黒髪ロング。剣道部。家事全般が得意で学力も運動も学年トップ、容姿端麗、スタイル抜群の姉だ。ただ、怒らせると怖いけど。冬美と冬音は小学3年生で冬美は双子の姉でわんぱく系だ。妹の冬音は人見知りで冬美といつも行動している。そして、また一人帰って来た。教師で長女の春香姉だ。ショート風なのに長い髪が伸びている。夏奈姉みたいに家事も料理が得意で、昔も学歴トップ、運動がうまかった。
「何か余計な事、考えてない?」
「いいえ」
ただ、この春香姉、感が鋭い。だからあまり怒らせると、お仕置きという罰をしてくる。まったく、もうちょっとやさしく見逃してもいいのに。これだから、男がなかなか出来ないんだ。
「お前、やっぱり考えてるな。お仕置きじゃぁ~」
と言って僕の腹にパンチした。
「ぐぉほ~!!」
春香姉のお仕置きは威力もダメージも大きい。だから、僕の体はいつまで持つか分からない。
「姉さん、いつまで黒季をいじめているの?全く、いい年した大人のやることじゃないでしょ?」
「だって、黒季が~」
夏奈姉が注意してくれた。さすがの春香姉も妹の前ではしおしおになるんだ。
「黒季も姉さんをいじめないように」
「・・・はい」
まんざら他人事でもなかったな。冬美と冬音はそれを見て笑っている。ご飯作るかあ。そして、みんなで晩御飯を作った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
夜、みんなが寝静まった後、僕は黒い緞帳を開いて、暗黒の魔城に行った。僕が着いた場所は王の間だった。なんだかここは落ち着く。自分の隠し別荘みたいで心が落ち着く。さて、椅子に座ろうか。そう思って座った時、扉が開く音がした。
「待ってたわ、ノワール。ここにあなたが来るって何となく予想はしてたけど」
「おかえり、アインス。君も相変わらず元気だね」
アインスが入ってきたのだ。もう9年となると僕と同い年だけど、昔と違ってグラマーな大人になっていた。服装は全身タイツだけどCHO合金スライムで作っているから魅力的な姿になっている。
「今日来たってことは、奴らが動き始めたってことね」
「そうだ。すでに地球、特に日本でも数件の被害が出ている」
「そうね。奴らから情報を吐かせたわ。奴らは地球人も誘拐しているわ」
「全く面倒なことを。あ、でも奴らの目的がだいたい分かってきた」
「何ですって!」
「奴らは金儲けのためにこんな面倒くさいことをしてるんじゃない。裏側で何かの計画を進めている。恐らく、誘拐事件はその計画を隠すためのカムフラージュに過ぎないってことだ」
アインスは驚く。こんなにも調べているなんて。やはり、ノワールはすごいわ。
「私達も地球に向かったほうがいいかしら?」
「いや、まだ確証がない。まだ調べないといけないし。こっちは僕の方で調べてくるよ」
まあ、本当なのかも分からないし。ただ、もしそれが事実なら、それはそれで気に食わない。そう考えているとまた誰か入ってきた。今度は3人組らしい。
「おかえりなさいませ、ノワール様。こっちは順調に進んでいます」
「ツヴァイ。元気そうだね。ほかのみんなも」
今度はツヴァイが来た。ツヴァイも9年たつと大人の体型になって来た。それに後ろには二人の女の子がついていた。もちろん、これは僕が作ったモンスターであり、人間になれる魔法を与えている。
「あのぉ~おかえりなさいませ、ノワール様。こっちは元気です~」
話しかけてきたのは、《ダークフェニックス》のヤミナ。陰キャみたいな見た目で八重歯がある。なんか暗いのは、ダーク・フェニックスって種族だからかな?まあ、僕が作ったオリジナルモンスターだけど。モンスター時は全身から黒と赤、紫の炎をだすフェニックスで、人間時の服装は際どい衣装をしている。
「あたしは全然元気ですよー。まだ全然ばててないですし!」
そう話しかけてきたのは《マグナフェニックス》のレモン。陽キャ風な見た目と喋り方をして、お団子頭をしている。ちなみにマグナ・フェニックスもオリジナルモンスターで80%機械で出来て、太陽と同じ威力の炎を出すことが出来る。人間時はちゃんと人間のようにして、服装は水平の服と青いコートを羽織っているが、露出度の高いパンツルックを履いている。実はたまにここに遊びに来ているのだった。地球で魂を見つけて、絵を描いて、創造術を使って復元させている。いくら魂を拾っても魔力が使えないんじゃただの荷物だ。だからこうやって帰っては作っているのだった。すると、また扉が開いた。
「おかえりなさいませ、主様」
「ただいま、ドリィ。元気そうだね」
今度はドリィが入ってきた。やっぱり体は大きくなっていた。髪は凛として、ツヤも出ている。すると、後ろからまた女の子が3人やって来た。一人目は《ゴールデンペガサス》のウタミ。ツインテールの髪型で露出度が高いアイドル服を着ている。ゴールデンペガサスはオリジナルモンスターで、ペガサスとユニコーン、麒麟を合体させたモンスターだ。もう一人は《アビスナーガ》のココン。青髪で目つきが悪そうに見える女の子。袖のないパーカーを着ている。アビスナーガは名前の通り深海で動けるウミヘビで牙や翼が生えている。最後の小さい子供は《ドッペルゲンガー》のエリス。無口な女の子だ。水色のメイド服を着ている。ドッペルゲンガーは人型の霊を具現化した姿で角も生えてる。真ん中には目が埋め込まれている。このモンスターはちょっと見た目は怖そうだ。
「おかえりなさいませ、ノワール様!今日も私の歌を聞いてください!」
「やめろ!お前の歌はへたくそなんだ。静かにしろ!」
「何ですって~!!」
「・・・・・」
「こら、あなた達、主様の目の前で不敬な態度はダメです!!」
「う~」
「なんで、あたしまで・・・」
2人とも怒られた。さすがだな、あの七人の中で最年長だからかちゃんと世話しているんだな。最年長といっても僕と2歳違うけど。すると、今度はバンッと扉が開く音がした。もしかすると、
「ボスー!!!」
やっぱりフィアだった。体は成長しても脳は幼いままだった。フィアは真っ先に僕に駆け寄って
「ボス、ただいまです。いつものアレやってほしいです!!!」
いつものアレ、それは頭を撫でることだった。僕が帰って来る度にこう甘えるのだ。
「よ~しよしよしー!」
何だかこう見ると犬みたいだ・・・実際犬だけど。それと遅れて男性2人と女性2人現れた。まず1人目は《アルティメットファフニール》のリュウ玄。サングラスをかけた銀髪のヤクザ風の男。アルティメットファフニールもオリモンでファフニールに銀の武器を搭載し、モーニングスターを武器にしたドラゴン。2人目は《ネメアーライオネル》のレオン。白髪の獣人でアティスとは仲がいい。実際、誰の言うことも聞くモンスターだ。ネメアーライオネルは腕が4本ある白ライオンのモンスターだ。あの漫画を材料にしたから白くなったんだろう。背中には光輪を備わっている。3人目は《クレイジージェニー》のジュジュ。フランス人形とバービー人形を組み合わせたモンスターだ。ゴスロリなファッションをしている。モンスター時と人間時では大した差は無いが、モンスター時は球体関節人形になる。武器はカッターソードを持っているが、サイコパスな部分があるためいつも血が付着している。一体何人犠牲になったんだろう・・・。考えると怖くなってきたから説明終わり。4人目は《コロポックル》のコロロだ。コロポックルを元に作ったモンスター。目は髪で隠れてて、アイヌの服を着ている。ちなみに女の子だ。モンスター時とも変わらない。
「みんな元気そうでなによりだね」
今度はフェリカ、ジーナが同時に入ってきた。やっぱり二人も成長していた。こう見ると子供の成長みたいに感動してしまう。
「おかえりなさいませ、主様」
「おかえりなさいませ、ご主人様」
「2人とも元気みたいだね」
また後ろから遅れて入って来る者がいた。男女含め3人来た。1人目は《スプラッシュマン》のミズオ。全身が水で出来たモンスターだ。普段は好青年の姿をしている。2人目は《グールバハムート》のグルド。ドラゴンの残骸から作ったモンスターで、陰キャ風の男で町を歩いている。ちなみによく貧血になりやすい。3人目は《クリスタルドラゴン》のユキナ。氷の結晶で覆われたドラゴンのモンスター。人間時は水色の髪の少女だ。
「どんどん来るな。一体何人来るんだろう?」
と思っていると、扉からマザー、ファザー、エリュシオン、イザナギ、モルドレッドが現れた。今度はモンスターが2体入って来た。1匹目は《ロードヘラクレス》のヘラクス。赤色のヘラクレスオオカブト型モンスターだ。普段は鎧を着た騎士の姿だが、モンスター時は巨大な2足歩行カブトムシになる。モルドレッドの部下だ。もう1匹は《グランドギラファ》のグラファ。青色のギラファノコギリクワガタモンスターだ。普段は甲冑を着た武士の姿だが、モンスター時は巨大な4足歩行クワガタになる。イザナギの部下だ。その次に大人になったカイリとアリスだった。また、後ろからも5人来た。1人目はスライムマンのアーク。全身がスライムで出来たモンスターだ。僕のスライムに魂を吹き込めたら、うまく出来たモンスターだ。普段は陰キャの少年姿だ。僕の体の一部だからか、似てる所が多い。2人目はドゥームズマンスのミラ。顔の無いネクロマンサーで黒魔術を得意とする。普段は陰キャ少女として生活している。一応、人間時は顔を作った。3人目はスノーファータのポレオ。雪だるまのモンスターだ。普段は探検家として活動している。4人目、リザードリンクのリック。世界一速いリザードマンだ。人間時は黒人ランナーとして活躍中だ。5人目はクイーンクオーツのクリル。全身がクオーツで出来たモンスターだ。普段は白髪小学生になる。
「しかし、よくこんなに作ったなぁ」
あの頃は作るのに夢中すぎてたくさん作ったんだっけ。でも、これは戦力拡大のためと言い聞かしたんだ。まあ、この城に入り切れるかなぁ。そんなことを考えているとアドラメダとムーラが入って来た。彼女たちはこれで全員なはずだ。するとまた後ろからぞろぞろと現れた。シュバルツドラゴンのバルゴ。銃を巧みに使うドラゴンで普段は陰キャ男子。置いてけぼりのクーコ。隠れることが得意なモンスターで普段は根暗な女の子。サンダーチックのクル子。丸いひな鳥のモンスターで普段は着ぐるみを着ている女の子。オメガディアボロスのオメガ。普段は子供みたいな身長で大人だ。
「まだいない者もいるが会議を始めよう」
僕が話しかけると、扉がまた開いた。男3人組が入って来た。スカーレットアズガロンのレッド。全身が赤く鎧を着ているドラゴンで普段は赤髪青年の姿をしている。2人目はメタドミニロンのドミオン。金色の鎧を着た天使で普段は金髪青年で生活している。3人目はドルバフォメットのドルバ。名前の通りバフォメットだが、影の中に潜むことが出来る。普段は黒髪青年で生活している。
「遅くなってすまねぇ!こいつらが遅すぎるんだ!」
「私は準備でお忙しいのです。なら1人で行けばよかったのに」
「しょうがねえだろ!こっちにも準備が色々あったんだから」
「お二人とも、ノワール様の前で失敬だぞ」
この3人、なぜか仲がいい。友達ってのは、こういうじゃれあいから始めるのかな?まあ、それは実践しないと。
「ノワール、みんな揃いました」
アインスがそう教えると
「皆の者、よく集まった。光栄に思うよ!」
そう言うとみんな跪いた。さて、ここからがハイライトだ!




