第九十八話 魔王を倒そう
長老が俺と行く女の子を選び始めると、打診されたエルフ娘が俺を見にくるようになった。やはり、偉い奴に言われて仕方なく行くのではなく、自分の目で見て判断したいのだろう。
やる事をやらないから子供が産まれないんだが、わりと子供が欲しいエルフは多いらしい。俺と一緒に行きたいと希望する人数は、順調に増えていった。
そうして半月も過ぎた頃に、長老の一人が困った顔をして俺の所に来た。
「どうしたんです?」
「実は困った事が起きてな…」
エルフ族の繁栄の為に、俺の島へ移住する連中を選抜してたら、世界樹の近くに住む人間達に文句を言われたそうだ。
「自分達だけ魔王から逃げる気か、と言われてな」
「そういえば、この大陸は魔王が現れたんでしたね。でも俺が来た頃は中原国家連合と、互角の戦いをしてたみたいですけど?」
そう尋ねたら、今も互角の戦いをしているが、魔王の勢力が世界樹の方へ広がってきていると苦い顔で教えてくれた。
「若いエルフの中にも、子供に興味が無い者や強くなる事に興味がある者は、魔王との戦いに積極的に参加してるのだがなぁ」
エルフの行動の一面だけを見て文句を言うからタチが悪い、と愚痴を聞かされては苦笑するしかない。
しかし、元は俺の行動が原因なのだから、責任を取ろうじゃないか。
「魔王を倒そう」
俺はパートナー達に宣言する。
「以前は戦っても意味ないから逃げるって言わなかった?」
「言ったな。意味が無ければ戦わない。今でも気持ちは変わらないぞ」
「じゃあ、今は倒す意味があるの?」
ライムの疑問は、皆が思ってる事だろう。
だから、ちゃんと応えよう。
「あるぞ。エルフ美少女を迎えにきたのは知っての通り。そのエルフの実家を守る為に、俺は魔王を捻り潰すのだ!!」
ライムは微妙な顔をしてたが、仕方ないと呟いたので納得したのだろう。
身内が納得したところで魔王軍への対策だが、世界樹のある地域に侵略してきたのは、アンデッドの軍団だと冒険者から教えてもらった。
この大陸の中原と呼ばれる中心的な地域には、強力な国家が多数あるが、こちらは世界樹を中心とした小国家、都市国家しかない。
これらの国家群の戦力を全部合わせても、中原に割拠する一国家に及ばないらしい。
そんな人類の弱いところをピンポイントで狙ってくるのは、大したもんだと感心してしまう。その弱い国家をアンデッドで飲み込めば、戦力を倍増した上で中原に戻って戦えるしな。
「その大した敵と、どう戦うんですの?」
どうするかな?
ベティは世界樹側の戦力として残しておこう。冒険者やエルフ達にアンデッドが一ヶ所に集まるように誘導してもらってから、ベティに一気に大地の奥底に埋めてもらおう。
敵の本陣は、どうせヴァンパイアとか、リッチとか上級アンデッドがいるだろう。そいつらを上空から急襲して殲滅する。
地上にはグールとかいるかもしれないが、地上の敵戦力は無視だ。空から一方的に蹂躙してやろう。




