第九十三話 浮遊大陸
果てしなく高い空の上には、地上で王と称されるような奴でさえ、比較にならない化け物がいるらしい。
そして、そいつに見つかると攻撃されるようだ。だからといって、尻尾巻いて逃げるのも悔しいじゃないか。
だから、こっそり行こう。
上昇して、さらに上昇して、元の世界であれば完全な宇宙空間に出てるであろう高さになっても、地上は丸く見えなかった。
もしかしたら、この世界は平面なのか。それとも地球サイズではなくて、木星とか太陽くらいの大きさの惑星なのか。
「レヴィ、教えてくれ」
「何でも聞いて欲しいのだわ」
「海の深さも到達できないくらい深いのか?」
「……とても深いのだわ。人の体では無理」
「深海の覇者なんてのはいるのか?」
「いるのだわ。出会っても攻撃はしてこないと思うのだわ」
いつか深海も行ってみたいが、真っ暗な海底には興味ないなぁ。
「フェイロン! 浮遊大陸が見えるよ!」
「どこだ!?」
ハルナの声に窓から外を見た。
「前方、上の方に黒い何か、多分あれじゃないかな?」
「よし、高度はあの黒いのより上になるまで上げよう。そのあとは接近だ」
「了解!」
黒い何かが水平に見える位置まで上昇してからは、ゆっくりと接近していく。そうして見ると海上で陸地を見つけたような、そんな気になる。
やがて黒い何かは、はっきりと大陸として見えてきた。
「本当にあるのね。物語だと思ってたのに」
そう呟いてるのはエルフ娘かな。
「大陸も見えてきたし、浮遊大陸の守護者たる者が襲ってくるかもしれない。周囲の警戒を怠るな」
用心の為に、蜂っ子達に伝令を送る。勝てそうなら戦うし、ダメなら逃げるし臨機応変に対応できるようにね。
近くまで来ると大きさに圧倒される。海では海面より上しか見えないけど、空の上では大陸の厚みまで見えるからだろうか。
空飛ぶ島の厚みは三キロで、やりすぎたかと心配してたけど、浮遊大陸を見たら足りないとすら思えた。空中で衝突したら、空飛ぶ島は簡単に砕かれてしまいそうだ。
大陸の上に出て、地表の様子を観察してみると森が広がっている。
地上と変わらないように思えるけど、詳しく調査しないうちは何とも言えないか。
「あの森の植物の調査をしよう。珍しい果物とか取れるなら、この島で栽培したいと」
「何か来ます!!」
俺の言葉を遮るようにアキナが叫んだ。
「迎撃準備! まさか竜じゃないだろうな?」
「違いますね。 かなり小さいです」
高速で接近してきたのは、天使にしか見えない連中だった。あの浮遊大陸に、どれだけいるか分からないから慌てて指示を出した。
「あの大陸から離れよう」
「了解!」
俺は操縦を任せると外へ飛び出した。
「危険ですわよ!」
サァベルとエルフ二人もついてきた。まだ戦闘になると決まったわけじゃないだろうに。
「敵だと思ってないなら、もっとノンビリと飛んでくると思いますわよ。それに……」
「それに、なんだ?」
「隠そうともしない殺気が雄弁に語ってますわね」
殺気ね。
俺は今一つ、そういうのが分からん。
だがまぁ、それを感じるって言うなら信じる。
「戦闘はこの島の上空のみで行え。そうすりゃ落ちても拾ってやれる。大陸や地上に落ちたら助けてやれないからな」
そんな事を言ってる間に、天使達がやってきた。
「この侵略者め! また来たか!!」
「誤解だ。我々は地上から来た」
「地上? もう少し、マシな嘘をつけ!!」
真実を語ってんのになぁ。
やるしかないか。




