第八十五話 港町
高度を落としながら、ゆっくりと飛んでいく。賊共に襲われた経験から、飛行部隊による警戒は厳に行なっていた。
その甲斐あって、あの攻撃以降は襲われていない。飛行部隊によると、時々空を飛ぶ乗り物を見るのだが、こちらには近寄らないらしい。
眼下に見える風景に村や畑が増えてきたが、どうせなら大きな町へ行くのが良いだろう。ミッキーからも仕入れは大きな町の方が品揃えが良いからと言われてる。
三日も移動すると大きな港町が見えてきた。
「あの町で補給したいとこだな」
「そうですね」
と、サファイアものんびりと頷いた。
そこへハルナの緊迫した声が響く。
「町から何か来る!」
「各部隊、戦闘準備!」
「相手が攻撃してくるまで、絶対に攻撃するんじゃないぞ!」
俺はサファイアに後を任せて甲板に向かう。すでに甲板には、エルフ二名と護衛のゴーレム娘が二名待機してた。
飛行部隊は第二が対空砲撃を受け持ち、第一、第三が空戦を担当するようだ。
今回、町から飛んで来たのは、中型の乗り物が10台ほどだった。形は正方形の分厚い板で、縦と横が10メートルで厚みは50センチくらいかな。手摺りがついている。
その下部には、サイコロの目で例えると四か五の点の位置に切り株がついているようだ。
昨日のベティの話だと、木に浮遊石が蓄積、結晶化してるって話だったから切り株が飛ぶ為のエンジンってわけか。
その乗り物に武装した兵士が10〜15人は乗っている。侮れないな。
「お前達は何者か!?」
「我々は、ここから東にある大陸から来た。無法な真似をするつもりは無い。ただ町で補給をさせてもらえると、ありがたい」
「お前達が来た方向にはゾルドの勢力があるの
だ。無事に通れるとは考えにくい」
「そのゾルドという人物か、組織は知らないが、我々の船に匹敵する船と、一人乗りの飛行船100機に襲われた」
騎士蜂っ子に鹵獲したものを渡してくるように頼んだ。受け取った相手は非常に驚いて、問いかけてきた。
「これはゾルドの物だ。奴らはどうなった?」
「今言った敵の戦力は壊滅させた。海沿いに行けば、燃えてバラバラになった船の残骸と、一人乗りの飛行船が見つかると思う」
「分かった! お前達を歓迎しよう。だが、その船は大きいので町の中には停泊できない。外へ停泊してくれ」
「了解した」
彼らの乗り物の一つ、一機か一隻か。呼び方に困るが、一つが俺達の誘導を請け負ってくれた。
俺達と交渉した人物は他の乗り物に指示を出して、ゾルドとか言う賊共の壊滅現場に向かったようだ。
指定された場所に空飛ぶ家を降ろしてから、ミッキーと、働き蜂っ子、兵隊蜂っ子などが町に買い出しに行った。
完全に町を信用したわけじゃないからな。まぁお互い様だけどね。
こちらが油断なく歩哨や見張りを置けば、向こうも監視の兵を、あの正方形の乗り物に乗せている。
あんまりギスギスすると、衝突して喧嘩になったり、最悪の場合は殺し合いにもなるだろうけど、我が家には人当たりの良い蜂っ子がいた。
人魚の時にも活躍してくれたけど、第一飛行部隊のトムキャットだ。名前が長いのでトム子と呼んでいる。
トム子は町が派遣した見張りの所に、お茶とお菓子の差し入れに行ったのだ。そして世間話をして帰ってきた。
それ以来、トム子は何人か連れて差し入れに行っては帰ってくるのを繰り返して、見張りの連中と仲良くなってしまったのだ。
「トム子ちゃん達を見てたら、もう敵じゃねーって分かるんだけどさ。俺らと違って上の連中は辛いんだよ」
と、町の兵士。
「分かるよ。町の住人の命を守らなきゃいけないもんね」
と、トム子。
トム子は美少女だからなぁ。
スタイルも抜群だし、人当たりもいい。
若い兵士なんか、トム子の揺れる胸をチラチラ見てる。あっと言う間に骨抜きにされちまうよな。
そんなこんなで数日が経過して、ゾルドが壊滅したことが確認された。俺達は怪しい奴から賊を倒した英雄となった。
だが俺達が英雄ではダメだ。
この港町が強ければ、この地域の治安も良くなるだろう。それが一番良いのではと考え、ベティに相談してベティ製の浮遊石入りの金属性高性能パネルを100枚プレゼントしたのだ。
これは喜ばれた。
食料、武器、資材を大量にもらう事になった。そして情報も手に入れた。やはり内陸部には天から落ちた陸地があるようだ。
だが、モンスターが強いらしく、人類は海岸辺りに住むしかないらしい。
「でも、俺達なら勝てる!」
心配する港町の連中に手を振り、俺達は出発したのだった。




