第七十八話 レヴィアタン救出に向かえ!
初めて人魚の村に来たが、何となくガッカリしてる自分がいる。勝手にファンタジーな人魚の家を想像してた自分が悪いんだけどね。
あるわけねーじゃん。
人間よりデカイ貝殻を加工した家なんて。
あと、トム子は巨乳の美少女と言ったけど、わりと普通な感じだよ。これは我が家の美少女に目が慣れてしまったから、言えることかもしれないけどな。
まぁ、でも御縁というのは、どういう形で転がってるか分からないしな。トム子に毎回遊びに行かせただけあって、人魚達はトム子に懐いてる。
「俺達は君達の力になりたいと思ってる。
もちろん善意だけじゃない事は認めよう。
下心はある。
君達の家族を救えば何か有益な情報を
得られるかもしれない。
海から取れる食料や価値ある宝物を
手に入れる便宜を図ってもらえる
かもしれない。
だが、君達だけが損をするような
真似はしないと誓う」
「わかりました。お話します」
代表者の女の子は迷った末に口を開いた。
もちろん、事情を話す気になったのは、俺の長口上に心を打たれたからではない。トム子達への信頼あっての事だ。何か御褒美をあげなきゃな。
「この海の遥か彼方に、巨大な海竜がいるそうです。それで何かトラブルがあったらしく、一族で救いに行くと言って、それきりです」
その海竜の事は、頑なに口を噤まなきゃダメなのかな?
「分かりません。ただ、レヴィアタン様は海の王だから、迂闊に名前を口にするなと言われてました」
なるほどな。
我が家に眠そうな顔した陸の王がいるし、ちょっと話をしてみる価値はあるかもしれない。
家に戻って先生の部屋に行くと、やはり寝ていたか。
「ベティ起きろ。話がある。起きろってんだ」
「ベティ先生を起こしたいのでしたら、これを鼻の前にどうぞ」
働き蜂っ子が見かねてお菓子をくれた。
鼻先にお菓子をやると、口を開いたので放り込む。モッシャモッシャと食べて目を開けた。
「もっと食べたいのじゃ」
「あとでやる。手を貸してくれ」
「面倒じゃ」
「レヴィアタンが見つかりそうだ」
「ふむ。奴とも久しぶりじゃ。行くかの」
人魚村の住人を乗せて、村から真っ直ぐ沖へと進んだ。二時間ほど進むと巨大な海竜が、暴れている。近くで見ると傷だらけで、ノミのように小さい何かに食いつかれてるようだ。
「ノミと表現しましたけど、アレって蜂っ子ちゃんを食べそうになった巨大肉食魚ですよ!」
近くにいた蜂っ子が叫んだ。
如何にあの海竜がデカイかって話だな。
「あの、愚か者め。何かに頭を突っ込んで抜けなくなっておるな」
「結構、体が食われてるけど平気なのか?」
「助けなければ死ぬじゃろな」
ユーリにヒールをかけるように指示を出すと、さらに飛行部隊に出撃命令を出した。
「第一、第二、第三の各飛行部隊はレヴィアタンに喰らいつくメガロドンを殲滅しろ。容赦なくやれ。何しろ我が家の可愛い蜂っ子を食おうとした奴だからな」
「了解!!」
各部隊は飛び立って攻撃を始めた。続いてエルフを呼ぶ。
「ルナリアとローズムーンは、甲板から魔法攻撃を頼む。落ちないようにロープで固定してくれよ」
「分かったわ!」
これで、しばらくは見守るしかない。
一時間が経過したがメガロドンが減らない。各飛行部隊は、かなりの戦果を上げてるんだが、数が多すぎるんだ。
エルフ二名も十分なくらい倒してるが、魔力が切れて休憩してる。ユーリも回復対象が巨大すぎて、たった一回の回復魔法で目を回してしまった。
働き蜂っ子も動員するか?
ダメだな。
海の中にいる奴には効かないだろ。
「ベティ先生!」
「なんじゃ?」
「レヴィアタンがいる場所を隆起させて、島みたいにできないか?」
「出来るが、彼奴は巨大じゃからな。時間がかかるぞ」
しかし、何で海の王なんて呼ばれる奴に食いつくんだかな。サァベルなんか怯えてたのに。
「ワシらはな、王などと呼ばれておるが、その実は世界の終末において、新世界の神々に供される食べ物の食材でしかないのじゃ」
「ホントかよ!? 神々ってスケールデカイな!?」
だけど、俺をこの世界に連れてきた奴は、チャラい感じだったけどな。
「ワシと、彼奴を食うてみるか? 神の食材じゃからの。美味いぞ」
「仲間を食うかよ。食わせるかよ。俺が守ってやるよ」
俺は甲板の手摺りを乗り越えた。
「馬鹿者! 危険じゃ!」
「先生。俺がレヴィアタンをパートナー化するよ。そしたら小さくなるだろ。短時間で島を作れるはずだ。伝令! なるべく低く、レヴィアタンに近寄れと伝えろ!」
伝令が伝えたのだろう。
家の高度が下がる。
下を見たら、すげー数のメガロドンがいる。
見る前に飛べって、こういう時だな
手摺りを乗り越えて、レヴィアタンに向かって飛んだが距離が足りないっぽい。サメのど真ん中に落ちると思ったら、サファイアが捕まえてくれた。
「レヴィアタンの上まで運びます!」
他の働き蜂っ子も飛び出してきて、俺を支えてくれる。レヴィアタンの上まで来た時に、合図して離してもらった。
上手いこと体の上に乗れたので、手を当てて叫んだ。
「俺のパートナーになれ!」
レヴィアタンが光に包まれる。猛烈な勢いで小さくなるので、俺は手が離れてしまった。海に向かって落ちるが、下にはメガロドンが大量にいる。
飛行部隊が俺の落下地点と、その周辺にいるメガロドンを次々と狙撃して撃ち殺していく。
一生の運を俺は今日で使い果たしたと思う。落ちたところは、死んで腹を上に見せてるメガロドンの上だった。
騎士蜂の一人が飛んできて、俺を抱き抱えて空へ離脱する。助かったと思うと、体が震えてきた。
「今さら震えてるなんて、カッコ悪いから内緒にしてくれよ?」
「飛べないのに高い場所から飛び降りて、能力を使って救出する方を笑う者はいません」
ギュッと抱きしめられて、空飛ぶ家に帰還した。もう戻れないかと思ったよ。
下を見ると陸地が隆起して、かなり小さくなったレヴィアタンが光ってた。




