第七十四話 西へ
世界樹が遠去かる。
ルナリアとローズムーンは甲板で、いつまでも名残り惜しそうに世界樹を見つめていた。だが、俺が来たので気持ちを切り替えたようだ。
「ねえ、父さん達に言ったこと、ホント?」
「何の話だ?」
「私達に、たくさん子供を産ませるって」
あー、あの冗談か。
「勿論、本気だ! お前達で実績を作って、エルフの美少女をもらうからな。人類に匹敵するくらい増やしてやる」
ローズムーンは少しヤケになった表情だ。
「それなら裸で過ごそうか?」
「素敵な提案をありがとう。だが、それはもう少し先にしようか」
「裸で生活するのは確定なんだね」
「何故、もう少し先なのよ?」
この家で妊娠したら、母体に悪いんじゃないかと心配だからな。どこか安全な本拠地を手に入れたならば、その時こそ酒池肉林なのだ。
「一応、体の心配はしてくれるんだね」
「美少女が消えるのは、世界の損失だぞ」
「そういえば、私達に用があったの?」
そうだった。
モンスターじゃなかった奴をパートナーにするのは初めてだからな。儀式のつもりで、二人に触れて言った。
「パートナーになれ!」
二人の体が眩しく輝いて、すぐに消えた。見た感じ、あまり変化が無いように見える・・・いや、変化があった。
ルナリアは胸が大きくなった。それと二人とも種族がハイエルフになったようだ。
「ホントに巨乳になった!?」
「当たり前だ。それはもう俺の巨乳だし」
「私のだよ!」
「私は同じですね?」
自分の胸を触りながら、ローズムーンは俺に聞いた。
「巨乳にして美乳に生まれ変わったんだろう」
「男性はそんな事も気にするの?」
「他は知らん。俺は気にするぞ。あとで思う存分、楽しませてもらうけどな」
二人はもう世界樹を見てなかった。
俺だけを見てくれる。
それでいいと思う。
世界樹を見るのは、次に里帰りするまでお預けだ。
甲板を降りて、二人を連れて食堂へ行く。蜂っ子で伝令を回したので、操縦担当者と伝令以外は集まってるはずだ。
キーラが手を上げると、それを合図に騒めきがピタリと止まった。正式に仲間になったエルフ二人の紹介を済ませて、今後の行動について話す事にした。
「俺達の家は、このまま西へ進む。この大森林の終わる辺りで、空飛ぶ家の増築をする」
ナナミのミルクを飲んでキーラを抱いたら、もしかして兵隊蜂っ子より、強い蜂っ子が産まれるかもしれない。
そいつら12人とエルフ2人、ナナミで15人も増えるからな。だったら今のうちに増築してしまおうって事だ。
働き蜂っ子は大工仕事も好きだから、増築に盛り上がった。方針が決まった所で、家は西へ向かって飛び続ける。
翌日、キーラが一人の蜂っ子を連れてきた。ナツミに匹敵する絶世の美少女だ。
「この子は?」
「フェイロンの発想にヒントを得たのよ」
兵隊蜂っ子の上位バージョンが産まれるならば、働き蜂っ子のは上位バージョンが産まれても良いはずだ、と。そして産み出されたのが、この美少女だったそうだ。
髪も瞳も美しい青だから、名前はサファイアにしようか。とりあえず秘書として、つれて歩くとしよう。
能力を見たら、普通の働き蜂っ子が持つ力に、文章作成と対外交渉の二つがついてた。世界樹のエルフ達みたいに、敵か味方か分からない相手に力を発揮する能力なんだろうな。
「とりあえずサファイアは操縦室勤務だ。別の町や村、人間以外の勢力を見つけた時の交渉役をしてもらう」
「わかりました」
「それから寝る時はサァベルと一緒に寝るといいぞ。ユーリに襲われたらナツミの二の舞だからな」
「わ、わかりました」
あれは俺にとってもトラウマ体験だからな。サファイアがユーリに変な事をされませんように。
空飛ぶ家の速度を70キロに上げて、二日くらい西へ進むと海が見えてきた。
空飛ぶ家を停止させると、第一飛行部隊に周囲の索敵と、危険なモンスターの掃討を任せる。安全が確保されたと判断したら、働き蜂っ子に着陸出来る場所の確保を任せる。
夜になると、どんな危険があるか分からないので、空飛ぶ家に帰宅させて上空100メートルまで上がって就寝した。
第二飛行部隊は夜間の見張りを引き受けてくれたので感謝するしかない。
第二飛行部隊に任せれば問題無しだと思うが、一応俺も自宅内巡回を行う。
二層目に行くと地上に降りる階段のチェックをしに行く。飛べる敵は意外と甲板ではなく、こちらから侵入してくるんだよ。
「フェイロン、そちらの確認は済んでますよ。施錠確認はしましたが、万が一にも開くと転落死しますよ」
すでに点検済か。
「確か、ティーガーだったな。細かい所まで見てくれて、ありがとう。任せて安心だな」
「そんな! 勿体無い、お言葉です!」
全身で感激を表現してる。
可愛い奴だな。
名前はドイツ語で虎なのに。
意味を聞かれたら、異世界の言葉で
美しいって意味だと教えておこう。
ドイツ語が分かる奴に会いませんように!
一層目、二層目、甲板と、俺も巡回したけど第二飛行部隊の優秀さを思い知る嬉しい結果になった。
強いけど可愛い女の子だし、お菓子の差し入れをしておこう。きっと喜んでくれるに違いない。
第二飛行部隊のおかげで、俺は安心して眠りにつく事が出来た。




