第六十一話 進空式
最下層の作業は、ほぼ終了した。ベティは存分に食っちゃ寝を楽しんでいる。
他の蜂っ子達が忙しく働いてるのに、我関せずといった感じだ。でも最下層部分を蜂っ子達だけでやるのは不可能で、それを考えればベティの功績は大きい。
蜂っ子達も、それを知ってるから何も言わない。それどころか、起きてきた時の為に菓子まで用意している。
「童のクセに、気がきくのぅ」
ベティも御満悦で、気が向くと蜂っ子の手伝いをするようになった。胃袋を掴むとは、こういう意味なのか。
「フェイロン。やっと会えた」
ライムがニコニコしてる。
「俺もライムの顔が見れて嬉しいよ」
ライムは俺が忙しく動いてる時は、話しかけてこない。アヤメやアオイと仕事の話をするなどして、待っていてくれる。だから、そうやって待ってくれる分、甘やかしてやるのだ。
「中央都市の方は変わりないか?」
「アヤメとアオイがいないから、少し大変かな。もう二人か三人、人手が欲しいかも」
少し暇を持て余すくらい、人がいた方が良いのかな。ライムの細い腰に手を回して抱き寄せながら、増員するか考える。抱き寄せられたライムは俺に体重を預けると、目を瞑って静かにしていた。
二人で静かに寄り添うのも悪くない。
「家はどうだ?」
「賑やかだよ。蜂っ子ちゃんが多いから、とても賑やか。でも蜂っ子ちゃん達も、フェイロンがいないから寂しいって言ってるの」
そうか。帰ったら一緒に遊んでやらないと。
「あとはユーリがねー」
またユーリか。
「また発育のいい
蜂っ子ちゃんに手を出してたよ。
あとカエデも危なかったね。
風呂場で組み敷かれてたよ。
もちろん助けたけどね」
ライムが来る時に、カエデも一緒に来たがったけど、仕事の都合でダメだったそうだ。
「泣きそうな顔してたから可哀想で」
「でも、なんでカエデなんだ?」
「私達の中で一番胸が大きいからね。服の上からだと分からないかもだけど、風呂で見たら、すぐに分かるよ」
一緒に入りたいと呟いたら「いいよ」と、あっさり言われた。じゃあ、今度から遠慮なく入らせてもらおうか。
「カエデは大丈夫なのか?」
「常に誰かと一緒にいなさいって言ってあるよ。蜂っ子ちゃんにも、お願いしてあるから」
そうか、なら安心かな。
ああ、でもアキナかフユミは、トイレの個室に引き込まれて、エッチな事されたとか言ってたな。
精神は肉体の影響を受けるとか、以前に言ってたし、女になりたくない、その抵抗として他の女の子を抱いてるのだろうか。
他の女の子に性的な事をしたら、自分が男だって強烈に自覚できるかもしれんが、女の子には迷惑な話だよな。
戻ったら話をしよう。
ダメなら、あの草原の泉でユニコーンと生活させるしか無いよな。
ライムが来てから10日で空飛ぶ家は、外側だけ完成した。内装は全然だけどね。
ここまで出来上がったので方針を変更した。内装だけなら、都市の近くでやろうと言う話になったのだ。
蜂っ子が森に入って、大量の木材を切り出したのを、片端からミッキーの倉庫に納めていくのは凄い眺めだと思った。
「でも、ミッキーの倉庫は縦横高さが30メートルくらいの空間だったよな?」
「いつの話をしてるんです?」
と、ライムに怒られた。
ゴーレム戦でレベルが上がって、倉庫の収納空間は1000メートルまで広がったらしい。
ハルナが蜂っ子を集めて撤収準備を告げた。材料は、もう必要ないらしい。兵隊蜂っ子が油断なく飛び回り、敵の接近を警戒するなかを、ログハウスの解体を開始した。
素晴らしい家だったな。
初体験をしたのも、デカイ蜘蛛相手に恐怖を味わったのも、ここだった。思い出深い場所になったもんだ。
ログハウスをミッキーの倉庫に収納すると、何も無い広場に戻ってしまう。それだけで、この場所には何も未練は無くなった。
ライムとスライム娘、リル、ミッキー、サァベル、ベティ、ゴーレム姉妹が空飛ぶ家に乗り込み、働き蜂っ子が飛んで甲板に乗り込んだ。
それを見届けてから、俺も空飛ぶ家に乗り込んだ。ドアを閉めて施錠すると階段を上がって二層目に出る。
広いなぁ。
でも、何もねぇなぁ。
それが第一印象だ。
さらに階段をあがった一層目も同じ印象で、何も無い上に、ひたすら広いだけ。
殺風景なだけだ。
これが内装工事で、どう変わるのか。
楽しみだよな。
もう一つ階段を上がって、甲板に出ると風が吹いていて心地良かった。甲板は着陸した状態でも、かなり高い。
15メートルくらい、あるのかな。
下には万が一の為に、兵隊蜂っ子達がいて、こちらを見上げていた。俺が顔を出すと、歓声をあげて手を振っている。
「フェイロン」
呼ばれて振り向くと、設計チームがいた。
「初操縦はフェイロンにやってもらおうと思ったんだけど、ここで風景を楽しむのと、どちらがいいかな?」
ナツミに聞かれて迷った末に、景色を見たいと答えた。
「分かったわ。じゃあ中央都市までの空の旅を楽しんでね」
ナツミは微笑みながら、設計チームと共に操縦室へ降りていった。五分ほどすると空飛ぶ家は、フワリと浮き上がる。
そのまま高度30メートルの位置で止まった。それを見た兵隊蜂っ子達は、一斉に飛び立ち甲板に乗り込んできた。
これだけ蜂っ子達がいても、狭いとは思わない。まずは空飛ぶ家は成功したと確信できた。




