第六十話 ベティ到着と建設開始
危険生物の心配が無くなったので、設計チームと縦横五メートルの空飛ぶ家の土台部分の試作品を作った。
これで浮遊石の設置場所など、詳細を決めようと話し合っていたのだ。
つーか、結論から言えばバランス的に、真ん中しかなかったんだけどね。
最初は浮遊石を土台に設置して一体化させてしまえば、設置する位置は関係ないと考えてたんだよ。
だから一番角に浮遊石を固定して、ハルナを土台に座らせて実験したんだ。そしたら設置した角から土台が立ち上がったもんだから、ハルナは後転しながら落ちたわけよ。
ちなみにハルナはスカートだったし、足を広げた状態で転がったので、お尻丸出しのクマさんパンツで、色は白という情報を俺に提供したのだった。
翌日から全員がズボンになった時は、悲しみで心が打ち砕かれそうになったよ。
んで、最初に書いたように設置場所は真ん中しかないと理解したわけで、ナツミを乗せて実験したら見事に成功!
興奮のあまり、俺が飛び乗ったらひっくり返った。海で浮き輪っていうか、マットみたいなのに乗ろうとしたらひっくり返る事ってあったじゃないか。
もう、アレと同じ。
「なんで急に飛び乗ろうとするのッ!?」
と叫びながら、ナツミがバランス崩して倒れ込んできた。それを顔面で受け止める羽目になったんだけど、非常に心地良い重さでした。何しろ俺の顔に巨乳が押しつけられたからね。
これはもう無理じゃね?
と、諦めの境地になった時に、ベティが到着した。
「なんじゃ。ワシをこんな遠くまで、呼び出しおって。手伝わぬと言うたじゃろ!」
眠そうなタレ目が怒ってる。
しかし謝らないぞ。貴族の館を敷地ごと持ち上げるとか言ってたけど、できねーじゃないか。
ノウハウも何も無いせいかもな、なんてチラッと思ったけど言わない。
「明日の食っちゃ寝の為に、今は働け!」
「むう、より良い睡眠を得る為ならば、このベティ。不本意な労働に従事しようではないか」
やる気になってくれたなら、ありがたい。
そして、すぐに解決策を出してくれた。
「ワシは純度を高めて所持しておった。
だが、話を聞いておると
扱いが難しくなったようじゃ。
ならば、不純物を混ぜれば良かろう」
話を聞いてると、なんか合金を作るような感じ、あるいはコンクリートを作る為に、セメント、砂、砂利を均一に混ぜ込むような、そんなイメージだと、俺には思えた。
「それで、できんの?」
「出来ぬ事は言わぬよ」
ただ、宝石のように純度が高ければ、凄い力を発揮できるが扱いが非常に難しくなる。ベティなら上手く操作出来るかもしれないが、こいつは怠け者だからな。
浮遊石を粉末にして均一に混ぜ込んだ物質は、大した力は発揮出来ないが、扱いやすくなると思えば良いようだ。
ベティに話を聞きながら、全長40メートル、幅10メートルくらいの船みたいな家をつくってみたらどうかと考えた。
別に本当の船では無いから、先端を細くする必要はない。高さは三層構造で最下層に浮遊石を混ぜた板状の物をベティに作ってもらう。
二層目は倉庫で水や食料を積む。一番前は操縦室にしないとダメか。最下層の構造物に魔力を伝えて空飛ぶ家を操作しなければいけない。
一層目は生活空間だな。リビングや各個人の部屋を作ろう。
その上は船で言うとこの甲板にあたるか。洗濯物を干したりは出来るけど、雨風の影響をまともに受けるから扱いは難しい。
とりあえず、こんな感じで詳細は設計チームに任せるとしよう。
ついに建築が始まった。
まずは最下層を作るところからだ。長さ40メートル、幅10メートル、高さ4メートルの浮遊石を均一に混ぜ込んだ石とも金属とも判断出来ない物が一瞬で完成した。
「見たか、我が力を!?」
眠そうなタレ目のベティが、俺をペチペチと叩きながら自慢するので本気で褒め称えた。何故高さを4メートルにしたか。
着陸した時に忍び込めないようにする為なんだってさ。城で言う石垣の役割もあるって事だな。
「ベティ様。印のある所に建造物を支える大柱を差し込みますので穴を開けて下さい」
「ベティ様。二層目に上がる為の階段を、ここに作って下さい」
他にも色々と細かい加工をして欲しいと、蜂っ子達は情け容赦なくベティをコキ使う。
「土台を作れば暇になると思えば、あれやこれやで使われる。忙しいのう」
そんな事を言いつつ、ベティは蜂っ子が働く様子を楽しそうに見ている。そんなベティに菓子と茶を用意しておいた。
自分の部屋に戻ると、リルがベッドで寝ているので俺も潜り込む。久しぶりの再会で興奮が抑えられないのか、リルは俺に抱きついてきた。
俺の頬にキスしたかと思えば、首筋を舐めたりする。それじゃあ完全にワンコだぞ。
リルを膝の上に座らせて背後から抱きしめた。リルは大人しく抱きしめられている。大きな耳を動かしてる。
落ち着いた頃合いを見て、抱きしめるのをやめた。そして櫛を持ってきてリルの尻尾を梳いてやる。
大事な尻尾を俺に任せてくれるのだから、信頼してくれてるのだろうな。
なんか嬉しくなって、一人でニヤニヤ笑う俺は変な奴なんだよ。




