第五十一話 ベヒモス
ミスリーンの能力を見せてもらうと、こんな感じだった。
・物理防御(強)
・魔法耐性(強)
・身体再生(中)
・剛腕
敵であれば恐ろしいが、もう味方だしな。ようやくウチにタンクが入ったので、その意味でも嬉しい。
ミスリーンに打撃用の武器と皮鎧を装備させて、俺達は鉱山に入った。
「ところで、ミスリーン」
「何でありますか?」
「お前を作った奴、この騒ぎを起こした奴は誰なんだ?」
「ベヒモス様です」
ベヒモスって元の世界だと、土の上位精霊だったり、大地を支える獣だったり、悪魔だったり、よく分からん奴だな。
この世界だと、どんな扱いなんだ?
そう思って、サァベルを見たらガクブルしてるじゃないか。リルは全然気にしてないように見えるんだけどな。
「サァベル、大丈夫か?」
「フェイロンがいなかったら、逃げたいところですわね」
「初めて見るな。お前が弱気なところ」
「仕方ないのですわ。ベヒモスが虎なら、私はネズミ以下ですもの」
そこまで差があるのか。でもリルは平気な顔してるんだが。
「リルは異世界の魔物だから、恐ろしさが分からないのですわ」
「うん、ボク分かんない」
ベヒモスって、そんなに恐ろしい危険な奴だったとはな。
「ベヒモスは温和な奴だ。サァベルは生物としての格の違いを本能的に察知して、恐れているのだろう」
と、ユーリ。
なるほどね。
その温和な奴が、なんでゴーレム量産して人間にケンカ売ってくるんだ?
「私が知るものか。自分で聞けば良いだろう」
「どうやって?」
「どうせ、パートナーにするんだろ?」
「そうだな、そうしよう」
サァベルは恐かったら、どこかに隠れてろよ。
「そんなこと、できませんわよ!」
などと、言いつつ俺の服を掴んでるあたりは、とても可愛い。今はゴーレムもいないし、頼ってもらおうじゃないか。
坑道を歩いていたら、いつのまにか奥まで来ていた。行き止まりの壁に穴が空いており、その向こうは洞窟のようだ。
その洞窟を歩いて五分もしたところに、ミスリーンと同じゴーレムがいた。ゴーレムにも驚いたが、ゴーレムの奥に巨大な動物、いや魔獣と思われる生物がいる。
「いやッ! 逃げましょう、フェイロン!」
そうはいかないんだ。怯えるサァベルを抱きしめて思いきりキスをした。ついばむようなのじゃなくて、もっと濃厚なやつ。
首を振ってむずがるサァベルの頭を動かないように固定して、体の力が抜けるまでキスしてやる。
ぐったりしてるサァベルに俺は言った。
「悪いな。女を落ち着かせる方法は、コレしか知らないんだ」
・・・・。
なーんちゃって。本当はそんな方法、俺も知らないんだよ。昔、ハリウッドの映画で見たような気がするだけ、なんだ。
一度やってみたかった。
パートナーなら許してくれると思う。
サァベルなら絶対に許してくれるさ!
それよりは目の前の敵だね。
「ミスリーン! そのゴーレムの動きを止められるか?」
「やれるであります!」
高さ三メートルはあるゴーレムが振り下ろす腕を、180センチしかないミスリーンが受け止める。その力比べの隙を突いて俺が走り寄る。
「パートナーになれ!!」
そう叫んで渾身の力で殴りつける。
あまりに硬くて、拳が砕けるかと思った。
もう、やんない。
オリハルコンゴーレムが輝き出した。
よし、成功だ!
「ミスリーン! 俺をベヒモスに投げろ!」
「えぇッ!? いいのでありますか!?」
「いいから投げろ」
「ならば! いくであります!」
俺が着用してた皮鎧の胸部分を、まるで背広を着てるサラリーマンの胸ぐらを掴むかのように、握りしめてベヒモスへ投げつけた。
皮鎧ってメッチャ固いんだよ。
それを布でも掴むみたいに・・・。
俺の予想では山なりに飛んでくはずだったんだけど、豪速球投手が投げた球の如く、まっすぐ一直線にベヒモスに飛んでいった。
もう二度と、ミスリーンに投げろなんて言わないんだ、俺。
当たる瞬間に体を丸めて背中で当たったけど、意外にベヒモスは柔らかかった。すぐに手を当てて叫んだ。
「俺のパートナーになれ!!」
サァベルがガクブルするような規格外の化け物に、能力が通用するか心配だったけど、すぐに輝き始めたのでホッとしたよ。




