第五十話 ミスリルゴーレム
「フェイロン、体力は回復しましたわ」
とサァベルが言った。
俺はサァベルの腕を取って内出血は無いかチェックする。だって大切なパートナーだからね。
すると少し照れたように、サァベルが言う。
「本当に大丈夫ですのよ」
サァベルなら大丈夫って信じてるけど、でも心配くらいはさせて欲しいよな。そう言って抱きしめると、「はい」と静かに答えて黙って抱きしめられている。
「ボクも頑張った! ボクも大丈夫!」
リルが俺の服を引っ張った。サァベルの頭を撫でた後、リルの腕や破れて剥き出しになった足を見た。ちゃんと回復してるようだ。
リルが尻尾を勢いよく振って、俺に両手を伸ばしてるので、抱きしめてやる。「無理しちゃダメだぞ」とリルの獣耳にささやいた。
「必ず戻るよ。また抱っこしてね?」
「勿論だ。尻尾も手入れしてやるぞ」
この二人はネコ科とイヌ科だから、スキンシップはとても大切だ。ふと視線を感じて振り返るとライム、ミッキー、キーラ、サクラ、スミレが並んでる。
どうやら、ネコ科やイヌ科に関係なく、スキンシップは大切なようだ。全員抱きしめて感謝の言葉を贈る。ユーリには抱擁ではなく握手にしておいた。
「フェイロン! ミスリルゴーレムが出てきたよ。物理攻撃も魔法も、あまり効かないの」
蜂っ子の一人が戻ってきて報告をくれた。ようやく俺の出番が来たな。
では作戦だ。
俺がミスリルゴーレムに辿りつくまで、サァベル達は俺の護衛だ。妖精達から10人くらい俺の直掩に回してもらいたい。
ミスリルゴーレムに辿りついたら、サァベル達は戦闘開始。サァベルが戦ってる間に、蜂っ子は俺をゴーレムの頭上に運ぶ。
タイミングをみて、飛び降りてパートナー化の能力を使う。
とまぁ、こんなもんか。
「それじゃ、行こうか!」
俺達がミスリルゴーレムに走っていくと、察した冒険者達も援護としてついてくる。前方を塞ぐゴーレムは妖精が魔法で薙ぎ払い、それでも倒れない奴はサァベル達が粉砕した。
やがて、ミスリルゴーレムの前にやってくると、とにかく威圧感が凄い。こんなの相手に、よくもまぁ戦おうって気になるな。
そう思ってるそばから、サァベル、リル、ミッキーがミスリルゴーレムと戦闘に入る。ゴーレムが振りまわす腕に当たったら、即死で体はミンチになりそうだ。
妖精達が魔法を叩き込んでも、少し動きが鈍くなるくらいで、何の変化もない。
「頼むぞ!」
俺が言うと、二人の蜂っ子が体を持ち上げてくれる。二人で肩を担いでくれた。その時に二人の胸が俺の横っ腹辺り、もうちょい上か、とにかくその辺に当たる。
うん、柔らかい。こんな事に気がついて、喜んでるところは、意外と俺も余裕があるのかもしれない。
ミスリルゴーレムの頭上にくると、今さらのように恐怖感で身がすくむ。しかし、真下では俺を信じてサァベル達が戦っているのだ。
軽く深呼吸をしてから、ミスリルゴーレムを見据えたまま俺は叫んだ。
「降下!!」
同時に支えが無くなり、落下が始まる。蜂っ子からは「頑張って!」と聞こえた。おう、と応えた次の瞬間にミスリルゴーレムの頭に取りついた。
だが、ミスリルゴーレムはサァベル達との戦闘で激しく動いてる。バランスを崩して落ちる刹那に、手を当てて叫んだ。
「俺のパートナーになれ!!」
頭から落ちる最中も手はミスリルゴーレムから離さない。サァベルが戦闘を放棄して、俺の元へ走ってくるのが見えた。
頭から落ちれば、下手すりゃ死ぬだろうが、サァベルに受け止めてもらう事ができたので助かった。
ミスリルゴーレムは動きを止めて、全身から眩い光を放っている。よし、何とか成功したようだ。
「ミスリルゴーレムを倒したぞ!」
蜂っ子と妖精が叫んで知らせる。広い戦場のそこかしこから歓声が上がった。士気が高まったかな。
ミスリルゴーレムを覆ってた輝きは、半分くらいの大きさに縮小していた。そして輝きも弱くなり、ついにその姿を見ることができた。
美しい銀色の髪をした美少女は体を起こしたが、まだ意識はハッキリしてないようでボンヤリと俺を見ている。
「大丈夫か? 立てるか?」
俺の問いかけに、慌てて立ち上がった。しかし、ふらついて俺に向かって倒れてきた。当然、体を支えてやったが、この娘はデカイ。
身長が180センチはあるんじゃないだろうか。
「失礼しました。もう大丈夫であります」
背が高いので美少女というより美女といった感じだな。切れ長の目と銀髪でクールなイメージだが、黙って立っていたらの話か。
なんか、軍人っぽい喋り方だし。
「ついさっきまで、敵同士だったわけだが、俺のパートナーにならないか?」
「人間になった自分に、価値を見出して下さるなら喜んで!」
パートナーになることを承知してくれたので、名前をつけることにした。
命名ミスリーン・ゴーレム
「今日から自分はミスリーンでありますね」
と、笑顔でミスリーンは言った。




