第五話 お仕事、貯金、そして。
この世界に来て半年が過ぎた。
俺に与えられた仕事は、異世界からの漂流物の鑑定、翻訳、ギルマスへの説明だ。
鑑定は別に難しい事じゃない。
元の世界で使った事ある、見た事がある、または知ってる場合に限り、ギルマスに説明をすれば良いだけだ。
ただ、説明が難しいなと思う事はある。
例えばこの世界は暗ければ、天井にライトの魔法を唱えれば良い。それが常識だと思ってる連中に懐中電灯が何個かあったので説明したんだけどね。
「これは呪文を唱える事なくスイッチを押すだけで明かりがつきます」
「早速、やってみてくれ」
この時、実演前に懐中電灯のチェックをしとけば良かったんだけども、俺はそれを怠った。
結果。
一個目は懐中電灯の中に電球が入ってなかった。二個目は電池が入っておらず、三個目は電池は入ってたけど、電池切れ。
怪訝そうな表情のギルマスや職員相手に、しどろもどろに灯りが点灯しない理由を説明したが、結局ギルドの面々の感想は「不便で使えないな」だった。
大ウケしたのは翻訳だった。
小学生の漢字の練習帳やら、三日坊主に終わった日記や家計簿など、つまらないものばかりだったけど、一冊のノートが全員を夢中にさせた。
自家製の調味料から始まって、簡単な料理から難しい料理まで、びっしり細かく分かりやすく記載されていたのだ。
これにより、中央都市の食生活、食文化が爆上がりしたと言われてる。
この玉石混交の紙の山から、このノートを見つけて翻訳した功績で、多額のボーナスをもらう事が出来た。
ちなみに、このノートには数字があった。
『美代子の料理ノート1』が正確な名前だが、1があるなら2も3もあるに違いないと、日本語が読めない者まで、数字だけを覚えて探そうとした。
結局は探し出せず、料理ノートを全シリーズを見つけたのは、俺だったんだけどね。
多額のボーナスを稼ぎ出した俺は、丈夫で動きやすい皮鎧と、片手剣、盾を購入した。
道具があっても使いこなせないんじゃ、意味が無い。だからギルドマスターに頼んで、武器防具の使い方、初期魔法の使い方、冒険のイロハの個人向けの指導を受けた。
料理ノートの翻訳で稼いだ金は、個人向け指導の費用で半分以上が消えた。でも、生きた金の使い方だと自負してる。
たぶん。
「フェイロン。お前は俺には勝てないが、逃げられる程度には強くなった!自信を持っていいぞ。他の新入りなら、最初の一撃で死んでるからな!」
ガハハハと笑って豪快な保証をしてくれた。
この人を相手に何とか生き延びたのは、確かに自信になってる。
さぁ準備は出来た!
モンスターを美少女パートナーにしてやろうじゃないか。ここまでくるのに長かったなぁ。
ギルド職員達の声援を背に受けて、俺は都市の北門外の荒野に出た。この辺りは、わりとスライムを見かけるそうなので、初心者には良いらしい。
俺は剣を抜き、盾を構えて周囲を見る。
本当は、こんなことをしなくても大丈夫なんだって聞いてる。スライムは攻撃されなければ、相手を襲う事は無いんだって。
でも、油断しないで行動するんだ。一人でいる時は、ちょっとした事が命取りになるからな。
スライムを見つけた。
剣で突いて、弱ってからテイムだ。
美少女にしてやるぞ!
だがしかし。
スライムは、あっさりと倒された。
馬鹿なッ!
お前はもっと強いだろ!?
途中から剣ではなく、拳で戦ったが
スライムの核に、拳による打撃が当たると
途端にスライムは死んでしまう。
試行錯誤しながら50匹は倒しただろうか。
スライムスレイヤーなんて、なんだか不名誉な称号を得てしまいそうだと心配してた時に、そいつは現れた。
普通のスライムよりデカイ。
普通のスライムより深い青色をしてる。
ゲームで言えばマップボスなんだろうか?
戦闘開始だ。




