第四十二話 セージュの帰還
今日は久しぶりに冒険者ギルドで、元の世界からの漂流物で良い物はないかチェックしてたのだ。まぁ、無かったんだけどね。
「帰ろうか」
「分かりましたわ」
今日のボディガードを務めてくれるのは、サァベルだ。都市の中で、しかもスラムでもないので危険なんか無いんだけどね。
「それを油断大敵というのですわ」
「分かったよ。気をつける」
こんな事を言うけれど、サァベルに張り詰めるような緊張感は無い。デカイ猫のように、俺に懐いてくるだけだ。
たぶん、ボディガードってのは、俺と一緒にいて遊ぶための口実なんだろうな。
受付嬢に帰ることを伝えようとした時に、入り口からドサッと何か音がした。見ればセージュが倒れていた。
「おい、大丈夫か!?」
だが返事は無い。気を失ってるようだ。リナを探すと天井付近で、オロオロしてた。
昔の俺の部屋に運びこんで寝かせたが、「く、来る! 次の妖精がッ!!」とか言ってる。様子から見て、あまり良い夢では無いようだ。
「お前ら、何をやったんだ? 何故、こんなになるまで放っておいたんだ?」
なんか、ずいぶんと痩せちまってるし。
リナは全身に汗をかいて、俺の質問にどう答えたものかと悩んでる。
「え、え〜っと、何をやったかと言いますと、ナ、ナニをやったと言いましょうか・・・」
ああ、サイズ合わせて、やったんだ。
そういや、俺も食料は用意しとけーとか、無用に煽った気がするな。
まぁハーレムは男の夢だけど、200人と次々にやったんじゃ、こんな風に干からびるわけか。
「手加減してやれよ」
「面目ない」
「で、下世話な話だけど、どこまでやった?」
「全員が妊娠するまでよ」
「リナも?」
「当然よ!」
そのわりには、妊婦ってスタイルじゃないんだよなぁ。リナのお腹を撫でてみるが、妊娠してるようには見えない。
リナにそう言ってみたら、教えてくれた。
「私達はお腹に赤ちゃんが出来ると、お腹から妖精樹に宿らせるのよ。赤ちゃんは妖精樹の果実から産まれて、誰の子ではなく、一族の子として育てられるわけ」
妊娠までは生臭い事をするクセに、産まれるところだけはファンタジーなんだね。
「仕方ないでしょ。身重の身体でウロウロしてたら、あっと言う間に餌食になってんの」
なるほどね。
で、無事に産まれたら妖精は400人を超えるのか?
「そうね。子供が育ったら戦力は倍ね!」
そいつぁ、凄い。
今ならキラービーの大群も勝てそうだ。
「そんなセージュ達に朗報だ。お前らも西の鉱山都市に行ってくれ。ゴーレム軍団との攻防が一進一退で大変なんだよ」
いきなり顔を出したギルマスが、そんな事を言った。もう、ずいぶん長いこと戦ってるよな。
「もう討伐じゃねーよ。戦争だ。相手が誰か分からないけどよ。勘弁して欲しいぜ」
ギルマスが頭を抱えてる。
責任者って大変だよな。
「大丈夫ですよ。セージュが回復したら、200人の空飛ぶ魔道士が敵を粉砕しますよ」
ギルマスは俺をジッと見る。
「フェイロン。てめぇ、やけに他人事みたいに語るじゃねぇか」
「他人事ですから」
ガシッと顔を掴まれた。頭蓋骨がミシミシと音を立てている。ヤバイって!!
「フェイロン、貴様も行くんだよ!」
「何故!? 俺は弱いんですよ!?」
「だが、我々は貴様に頼るしか無いのだ!」
敵は最近になって新兵器を投入してきたらしい。その新兵器とは、ミスリルゴーレムであまりの硬さに物理攻撃は効かないし、魔法攻撃も有効では無いらしい。
「そこでフェイロン。お前の出番だ。ムカつくミスリルゴーレムを美少女にしちまえよ。俺が許す!!」
簡単に言ってくれるけど、触れる位置まで近寄るのって大変なんだぞ。やだよって言いたいけど、ギルマスの顔を見たら選択肢は「はい」か「YES」しか無いらしい。
あ〜もう、分かったよ。
覚悟を決めていると、サァベルがひょこっと姿を見せた。先に家に帰ったかと思ったら、倒れたセージュの為にユーリを連れてきてくれたらしい。
「なんだ、この男。判別不可能なくらい無数の女の香りがする。なんて、うらやましい」
セージュを見るなりユーリは言った。さすが元スケベ馬、セージュの偉業を見抜いたらしい。
「これ、回復しなきゃダメかな?」
「当たり前だろ」
「仕方ないなぁ」
ぶつぶつと文句を言いながらも、ユーリはセージュに回復魔法をかけてくれた。
「疲労回復させたよ。ただ痩せたのは、どうしようもないからね」
セージュは体力を回復させてから出発となり、俺が先行する事になった。
「リナ。これ以上、セージュを襲うなよ?」
「やんないわよ。もっと体力をつけてもらわないとダメって分かったからね」
リナの口振りから、そう遠くないうちに、妖精が600人に増えるイベントが発生するのが見えた。
まぁ、男の夢だしね。
うらやましいなぁ、とだけ言っておこう。
それにしても、今度は西か。
都市で安楽に生活したいのになぁ
旅支度をする為に、俺は家に足取りも重く帰るのだった。
読んで下さった皆様、ありがとうございました。




