第三十二話 決断
セージュの身の上話が終わった頃に、ギルマスが声をかけてきた。あまりにもタイミングが良いので、盗み聞きしてたのかと思うほどだ。
まぁ、そんな事はしないだろうけど。
「中央都市の南の砦、そこから10キロほど南西にある森の中に、ジャイアントキラービーの巣が発見された」
ジャイアントキラービーは、中型犬くらいの大きさの蜂だ。俺も本でしか知らないけどな。
しかしまぁ、元の世界のスズメバチだって恐かったのに、どんだけデカイんだよ。
「見つけたのは冒険者でな。巣の位置と規模を探ってきて報告してきたんだよ」
巣の位置は森の中央、巣のサイズはデカイ木が、そのまま巣の骨組みに使われていて、高さ40メートル、幅は20メートル。
蜂の数は多く見積もって1000匹程度はいると思われる。
「こちらの戦力は?」
「お前らの他に5つのパーティーに参加してもらう予定だ」
圧倒的に不利じゃないか。
戦いは数だよ、ギルマス。
というか、そんだけデカイ巣になるまで、何の被害も出なかったんだ。放置しとけば良いじゃないか。勝てない戦いはパスしたいので、放置案を言ってみた。
「俺もそうしたかったがな。近隣の村が、大規模に農地開発をするんだとよ。そうなったら被害が出てしまう」
大規模な農地開発は、中央都市の食糧事情を向上させる為に必要なんだと釘を刺された。
それなら、せめてもっと戦力が必要だ。
「それがなー、みんな西のゴーレム討伐に行ってしまったんだ」
ゴーレムか。
あちらも大変なんだろうな。
それまで黙っていたセージュは、何か呟いている。五対一とか何とか言ってる。
「どうしたセージュ?」
「いや、私の仲間を総動員しても、戦力差が五対一だからキツイな、と思ってね」
200人くらい仲間がいるのかよ!?
他国の貴族の若君ならば、それくらいの人数が随伴するのか。でも逃げてきたんだよな?
俺が目を丸くして驚いてると、リナが察したのか「違うよ」と言って、魔法を使った。ミッキーの能力、異次元倉庫の魔法版のように見える。
手招きされたので、躊躇いながらもギルマスと一緒に中へ入って、驚いた。
ミッキーのは倉庫で、それなりに広いだけだが、ここは異世界かと思うような広い空間だ。空があり林が見えて川まで流れてる。
「なんだ、これは!?」
ギルマスが唖然としている。多分、俺も似たような表情をしてるだろう。
セージュとリナについて林に入ると、大きな屋敷があった。中へ入ると、そこには妖精達が数えきれないほどいた。
「これが私の仲間なんだ。ジャイアントキラービーとの戦いでは全員210名だせる」
それで五対一か。
「だが、それでも不利だと思えるので悩んでた。犠牲は出したくないんでね」
「我々、冒険者ギルドの人員を出せば、約250人で四対一にはなる」
妖精達は恐れる様子も無く近寄ってきて、俺達を見ている。中には事情を尋ねる者もいて、リナが説明をしている。
「四対一か」
まだ不安そうだ。だが理解できる。
俺だって勝てないと思うような戦いに、パートナーを出したくないからな。
「セージュ、俺のパートナーは、一時的にだが能力を底上げできる奴がいる。それと状態異常無効化と身体再生の付与をする奴もいる」
それで戦力比は三対一くらいにならないか?
「あとは作戦次第だろうな」
とギルマスが言うと、セージュは頷く。
「やりましょう!」




