第三十一話 セージュ・ベルッド
「そいつぁ、東の大陸の言葉か?」
ギルマスの問いに、異世界の俺の祖国の言葉だと説明したら、ギルマスは祖国の話を楽しめと言って席を外してくれた。
「お前、日本人か? そうは見えないぞ」
「私の日本語は通じませんでしたか?」
「いや、理解できたよ」
俺は神様からもらった能力で、相手の祖国語で話すようになってると説明した。
「私は異世界人の子孫なんだ。五代前がフェイロンと同じ立場でね」
100年前の東の大陸では、桁外れの力を持った魔族が魔王を名乗って領土を拡大し、大陸全土を巻き込む戦争となった。
「そんな時に運悪く来てしまったのが、私の御先祖様なんだ」
その御先祖とやらは友人と一緒に来たそうで、神様からは友人は剣の能力を、御先祖は魔法の能力をもらったそうだ。
その力を使って活躍、最後は魔王を倒して名声を得た。友人は小国の姫様と恋仲になり結婚して王位を継承。御先祖は友人の国の貴族となって、大国と呼ばれるまでに繁栄させた。
絵に描いたような立身出世物語だな。
でも俺は美少女パートナーと一緒に楽しく暮らせたら、それでいい。世界を救うとか、そんな事は他人に任せるよ。
「じゃあ、セージュは貴族様じゃないか。なんで、こんな所にいるんだよ?」
「私は逃げてきたんだよ」
「逃げる? 犯罪でもしたのか?」
「とんでもない! 御先祖の名にかけて、断じて犯罪などやらない」
「じゃあ、何から逃げてきたんだ?」
「じ、実は・・・」
さっきの絵に描いたような立身出世の物語には続きがあった。小さな国が当時の列強を圧倒したのは、魔王すら倒した二人の戦闘能力があったからだ。それを背景に力を伸ばしたわけだが・・・
二人が死ねば元の小国に戻ってしまう。
それどころか、二人の武力を背景に強引な真似をしてきたので、下手をしたら滅ぼされる可能性もある。
だから二人は、二人の血を継ぐ者は、産めよ増やせよとハーレムを持たされる。
「いいじゃないか。男の理想だろ?」
「50年前まではね」
「なんかあったのか?」
50年前、すでに大国としての地位は確立していたが、人間は堕落する。特に権力を握ってしまった者達は。
王位継承権を巡る争いで内乱が発生し、殺し合った結果、初代から続いた剣の能力は失われてしまった。
ハーレムは容姿優先だったので、能力も衰退傾向にあったのだが、たった一つ残った魔法の能力を失う事は出来ないと、王国は考えた。
そこで容姿に関係なく、魔法の才能がある女性を送り込み、子供を作れと義務化した。
「義母上達や、義姉上達を見ると、なかには綺麗だなと思える方もいるが、ちょっとコレはと思う容姿の方もいて・・・いや、性格は良いんだよ、性格だけは、本当に良いんだけど、アレと子を成すのは無理で・・・」
元の世界の競馬を擬人化したら、種付けシーンは、こうなるんだろうか。
「私は魔力はある。それこそ初代を凌駕するくらいに、強い魔力がね。でも何故か魔法を使えなくてね」
ゲームでいうステータスの知力は高いし、マジックポイントも、最強呪文をマシンガンの如く連射しても尽きないほどある。
なのに魔法が使えない。
「魔法が使えなくても、子や孫は使えるかもしれないって、他国の年増の王女の入婿にされかけて逃げたんだ」
その妖精とは、どんな関係なんだ?
「私は妖精族のリナ。セージュが魔力があっても魔法が使えない人だとすると、私達妖精族はその反対なのよ」
妖精族は魔法が使えるが、マジックポイントが少なくて制限を受けていた。身体が小さく非力ではあるが容姿端麗だ。
「同じサイズなら性奴隷にされたかもしれないけれど、幸いなことにサイズが違うからね。でもペット扱いされたわよ」
「私達は互いの境遇を知って、協力する事にしたんだ」
セージュは魔力を提供し、妖精族は代わりに魔法を使う。助け合って生きるのだそうだ。
セージュと妖精の話を聞き終えた頃、ギルマスが顔をだした。
「お前らに頼みがあるんだが、もういいか?」




