第十五話 依頼の内容
ギルマスに招かれて、別の会議室に行くとマリアとエリックがいた。
「久しぶり!」
「活躍してるようだね!」
それぞれに声をかけてくれる。でも、活躍と言っても冒険はしてないんだよな。異世界の物品の鑑定作業、というより、ほとんどレシピ本の翻訳だったしなぁ。
「何を言ってるんだよ。他の冒険者の解毒したり、俺達を回復してくれたじゃないか」
「それをしたのはライムだよ。俺じゃない」
そう答えて隣にいたライムの首に腕を回して、引き寄せる。ライムがすげーんだ。
「それに俺は二人に命を救われたんだ。まだ借りは返してない」
そう言うと、二人は気にしなくて良いのに、と笑った。
だが、そうはいかん。この俺は、受けた恩は必ず返すのだ。必ず、な。ふはははは!
悪役っぽいですわよ。と小声でサァベルに囁かれた。気をつけよう。
「ところで、そちらの女性は新しい仲間?」
「あぁ、こいつは・・・」
一気に血の気が引いた。幻聴だと思うがザーッという引いてく音まで聞こえた。サァベルを見ると、「ぁ」と声を出したまま絶句してる。ライムもオロオロして狼狽えている。
サァベルが大怪我させたのって、エリック達じゃないか。あの時のサァベルは純然たる肉食獣で、悪意は無かった。
食欲はあったかもしれないけど。
「わ、私は、サァベルと申します。よろしく、お願い致します」
エリックとマリアも自己紹介しつつ、にこやかに挨拶をしている。気まずいのか、サァベルが視線で助けてと訴えてくる。
「挨拶はその辺にして席に座れ。依頼内容について話すぞ」
助かった、とサァベルが感謝の視線をギルマスに送った。俺以外の人間に、こんな目で見られたのってギルマスだけだな。
さすが顔が恐いだけの事はある。全員が着席したのを見てギルマスが口を開く。
「今回の依頼は調査だ。
場所は東の草原の国、調査内容は行方不明のユニコーンを探してもらう」
なんでユニコーン?
「草原の国は牧畜の国、なかでも馬の生産に力を入れてるんだが、良質な馬を作る方法としてユニコーンやペガサスと配合するそうだ」
そのユニコーンやペガサスが盗まれた?
「ユニコーンやペガサスは飼えない。奴らは英雄とか、美しく清らかな乙女だとか、そんな連中がいないと逃げちまうよ」
じゃあ、どうやって配合してんだ?
「選りすぐりの美しい牝馬を牧場に数日間放置しておくんだとよ。そうすると、向こうから勝手に来て、思う存分種付けしていくそうだ」
それが来なくなったから、原因を調べるってことか。あれ、ペガサスは良いの?
「ペガサスは元々レアな存在で滅多に来ないし、翼があるから行動範囲が広い。だからユニコーンだけで構わない」
了解!
しかし、ユニコーンって処女厨のスケベ馬なんだろ? じゃあ、来たくなるようなエサを用意したら良いんじゃないか。と言ってみた。
誰が良いかと俺の視線が彷徨う。
ライムとサァベルは論外。だって俺の能力で人間になってるんだし、生粋の人間じゃないと。
そうなると、マリアか。
俺が見たせいか全員の視線がマリアに集まる。
「え? なに? 私!?」
マリアは狼狽えて首を横にブンブンと振りながら断った。
「私なんかダメだよ! そんなの無理だってば!! そんな資格ないよ!!」
そんな資格ないって、マリアは処女じゃないのか。誰だ、マリアをヤった奴。あ、でも待てよ。平均寿命が短い頃なんかは、中学生くらいの年齢で結婚したりするんだっけ?
「マリア! 相手は誰だ!?」
エリックがキレてる。
あー、適齢期が早くても、結婚前の娘を傷物にされたら、そりゃ怒るか。
「お兄ちゃん、何を言っ・・・ちッ、違うよ!? 私、まだ処女だからね!!」
若い女の子が、そんな事を大声で。
「でも、お前資格無いって言ったろ! 相手はオルソンか!?」
「違うってば!! 資格が無いって、そんな意味じゃないよ!! 私は美しくないから資格が無いんだよッ!!」
なるほど。そういう意味でしたか。
我が日本では謙譲の精神は美徳だけれど、この世界ではどうなんだろうね。下手を打ったね、マリアちゃん。
確かに今のマリアは美しいってより、可愛いって感じだからな。仕方ないけどさ。
今日はもう、打ち合わせって雰囲気じゃないな。明後日の昼に東門に集合の約束をして解散したのだった。




