第百三十四話 ドワーフ王国2
目の前には町が広がっていた。馬車が四台は並んで通れる道が中央にある。ただし、両端は馬車を停車する停車スペースとして利用されてるので、実質は二車線である。
道路に面してるのは、全部武器、防具、アクセサリーの店で普通の家屋は無い。町というよりは、まるで装備品の秋葉原みたいだと思った。
大通りに面した店は、どれも大きな店ばかりで、入り口は大きく、店内は外から見ても広くて明るい。
冒険者か、それとも休暇中の騎士か、笑顔で品定めをしているのが見えた。きっと、地元の武器屋で見たどんな剣より品質が高いんだろう。
店員に若くて綺麗な人間やエルフの女性を揃えてるあたり、非常に商売上手だと思う。
その一方で細い路地を見ると、奥の方まで小さな店が並んでいるのが見える。こちらも割と人がいて、客は難しい顔で武器を見ている。店主は愛想の無いドワーフの親父で、客などいないかのように、雑用仕事をこなしてる。
表通りの店では高品質の装備品が揃っているので、良い装備品が欲しいなら、何も考えずに表通りの店に入ればいい。しかし、更に良い装備品が欲しいなら裏通りの小さな武具店を見て回るのも良い。
表通りの装備品の品質をAとするならば、裏通りの店の品質はバラけていてA〜Cくらいだ。ちなみに他の国の装備品の品質はB〜Eくらいか。
これなら表通りで買った方が遥かにマシなのだが、武器などは確かな鑑定眼を持つ者ならば、裏通りに向かうのだ。と言うのも、実は裏通りの武器にはAを超えるSやSSランクの超級品の掘り出し物があるからだ。
A級品に物足りなくなった者達は、更なる武器を求めて裏通りに向かう。物足りないと感じた時点で、武器に対する目利きは出来ている。
だが世の中には装備品を、特に武器を武器として使わない者もいる。S級以上の武器を集めて飾る収集家や、剣士や戦士としては半人前のクセに、財力にモノを言わせて超級品をオシャレ感覚で装備する輩だ。
ドワーフ達はそれを嫌う。
だが、気前良く金を落とす客には違いないし、それらの上客を不愉快にさせるのも申し訳ない。そこで、こんな配置の店が生まれたのだ。
たまに初めて来た客が表通りの店に入らず、裏通りの店に来る事もある。そんな時は、その客の為人を見極めて、ドワーフ達が武器選びを手伝う事もあるが、そのときに勧めるのはA級品である。
「ウチの子達が使う武器を買ってきたよ!」
ミッキーが嬉しそうに言いながら、サァベルと一緒にやってくる。こいつら二人は、ドワーフの町に入るまで静かにしてたのだが、並ぶ店を見て飛び出して行ったのだ。
サァベルは、さほど興味なさそうだったがミッキーが迷子になったら困ると考えて一緒に行ったようだが。
「どれくらい買ったんだ?」
「色々な店をまわって剣を200本くらいかな」
日本に来た中国観光客の爆買いを思い出す。
しかし、個人の嗜好で買ったんじゃない訳だし、問屋で仕入れをする商人みたいなもんか。
サァベルは見慣れない剣を帯刀してたので、頼んで見せてもらうと、ゴーワンも一緒に剣を見ている。
「嬢ちゃん、こいつを選んだのは、何か理由があるのかね?」
ゴーワンの問いに、サァベルは少し考える素振りを見せてから答えた。
「数ある剣の中で、この剣は光って見えたのですわ。まるで選んで欲しいと言ってるみたいでしたのよ」
「あぁ、それで無造作にひょいひょいと選んでたんだね」
サァベルの答えにミッキーが納得したように言ったのだが、ゴーワンはミッキーの言葉を聞いてなかったようで、俺を刺すような視線で見る。
「この嬢ちゃんは大した目利きだ。なぁ、お前はこの嬢ちゃんを使ってワシらの作った最上級の剣を買い占めるつもりか。それで転売でもして儲けるのかね?」
「サァベルが、こんな才能を持ってるとは思わなかった」
俺はそこで言葉を切って、サァベルの頭を撫でる。サァベルは嬉しそうに微笑んで、撫でる俺の手をそっと掴むと頬擦りしてる。
「こいつが選んだ剣は、当然だが俺の仲間が使うんだ。生死を賭けた戦いになれば、少しでも良い武器を与えたいだろ」
ゴーワンは俺の返事に満足したようだが、一つだけ確認をしてきた。
「念のために聞いておくが、まさかお前らが戦おうって相手は、この国じゃねぇだろうな?」
「この国を相手に戦うなら、セージュが俺達を連れてくるはずがないだろう!?」
「ゴーワン、俺が祖国を裏切るわけないじゃないか!!」
呆れた俺と、傷ついた顔のセージュに怒られて、ゴーワンは笑って誤魔化した。最初の印象では恐いおっさんだったが、意外とお茶目な所もあるようだ。




