第8話「剣術を習い始めました」
剣術の訓練が始まった。
俺が魔法の練習ばかりしていたため、マシューに「男であれば剣術も習うべきだ」と言われ、連れ出された。
この世界での戦闘は剣術がメインとなる。
次に多いのが、魔法での戦いだ。
といっても、剣も魔法も使える魔法剣士がもっとも多く、どこまでが剣士でどこまでが魔法使いなのかは曖昧である。
大雑把に分けるとしたら、剣をメインで戦っているが剣士、魔法をメインで戦っているのが魔法使いだ。
ちなみにマシューは魔法をほとんど使わない、バリバリの剣士だ。
そして、聖騎士である。
聖騎士とは、魔人から人々を守る人たちのことだ。
この世界には人間とよく似た姿かたちの魔人と呼ばれる種族がいる。
彼らは人を見つけると容赦なく襲い掛かってくる。
魔人は人語を話すと言われているが、彼らが人間と友好的であったことは一度もない。
人類の敵だ。
魔人から人を守る聖騎士は、この世界でも最も栄誉ある職業だと言われてきた。
そして、俺は代々、聖騎士となる家系に生まれたのだ。
そのせいか、聖騎士になることが求められている。
ぶっちゃけ、聖騎士にはなりたくない。
なんで魔人と戦わなくちゃいけないんだ。
こえーよ。
戦争のない平和な国で生きてきた俺が、そんなのと戦えるわけねーだろ。
聖騎士になりたくないなー。
とは言うものの、剣術の訓練はしておいても損はないだろう。
ということで、マシューから指導を受けている。
■ ■ ■
「はっはっは。ルークは才能ないな!」
「いや、父さんの教え方の問題だろ」
マシューの教え方は雑だ。
「フンッと力を入れて、シュパッと切るのだ。わっはっは」と言われても、わかるわけないよな。
素振りや動きを覚えるのが中心にやっている。
マシューの動きを見様見真似でやってみて、動きが間違っていると、マシューが訂正するという流れだ。
「ていうか、父さん、なんでそんなに動けるの?」
マシューの動きは化け物じみている。
家の屋根を軽々と超える跳躍力や、素手で地面を割る贅力などオリンピック選手も驚きの身体能力を持っている。
「それは気合いだ!」
そう言いながら、木刀を振ると、近くにあった木が真っ二つになった。
「気合いって言われてもわかんないよ。それと、その木って母さんが大事に育てたものだよね」
「う、うむ。そうだな・・・これは内緒だぞ」
俺が内緒にしたところでばれるだろーが。
「魔力を体の中でぐるぐるさせるのだ」
ぐるぐるってなんだろう。
ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるこそみん・・・なんちゃって。
「体内で魔力を循環させるってこと?」
「そんな感じだ!」
合ってるのかな。
とりあえずやってみよう。
俺は魔力を体中で動かしてみる。
心臓を起点に足や手、頭と循環させる―――って、これめちゃ大変だぞ。
一周させるだけで一苦労だ。
それに全然身体能力が上がった気がしない。
「父さん、いつもこれやってるの?」
「一日中やってるぞ! はっはっは」
普段はカナリアの尻に敷かれているが、意外とマシューはすごい人かもしれない。
その後、木を切り倒したことで、カナリアに怒られているマシューを見た俺は、「やっぱこの人だめだ」と呆れた。




