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第42話 地図 2

本屋から出た俺たちは、そのままギルドへと向かった。


「ティア、知らない人になんかあげるって言われても、勝手について行ったらダメだからな」


俺はこの町で出会った人々の顔を思い浮かべながら注意した。


「…わかった」


絶対わかってない顔をしているので、とても不安だ。


「じゃ、もしあの人にご飯あげるって言われたらどうする?」


俺は適当に目に付いた男性を指差して聞いてみた。


「…ありがとうって言う」


違うでしょ!?

間違ってなくはないけど、なんか違う。

俺がどうしたものかと考えていると


「違うぞ、お嬢ちゃん。

そういう時は、お金だけくださいって言うんだぞ」と、とんでもないことを言い出す人がいた。


ちょ、なんてこと教えてんの!?


俺は突然現れて、変なことを吹き込んだ人物を見た。


「よう!セイ、久しぶりだな」


気軽に話しかけてきたのは、俺たちがアーリアに向かっていた時に出逢った冒険者のシオンだ。


ティアには真っ当に育って欲しいと願う俺は、やや非難めいた声で「どうも」と返した。


そんな俺には全く気にした風もなくシオンは話を続けた。


「そういえば、お前も冒険者になったんだってな?

サイプロクスの話とか聞いて驚いたぜ」


「その節はどうも」


「ハハハ。後輩の指導も俺らの仕事だからな、気にするな。

ところで今日は仕事してないのか?」


「はい。ちょっと地図を見せてもらいにギルドに行くところでして」


「へぇー。地図ってことは、護衛の仕事でもするのか?」


そういうとシオンは顎に手をやり、上から下ヘと俺の品定めを始めた。

しかしすぐに肩をすくめて首を横に振られてしまった。


「まだちょっと早いと思うぜ。

無謀と勇敢を間違えるな。俺がよく先輩に言われたことだ」


先輩風をブイブイ吹かすシオンに、なるほど勉強になります!とワンクッション置いてから、本当の理由、次の町に行きたい旨を話す。


「え、もう他に行くのか?

お前、ここのギルドに結構気に入られてんのに、勿体(もったい)ねーぞ?」


嬉しいことを言ってくれるシオンに「そんなことないですよー」と爽やかに言いたかったのだが、褒められ慣れていない俺は、デュフフと笑うので精一杯だ。


「ま、しょうがねーか。お前はなんか訳ありっぽいかんじするしな。深くは聞かねーよ。

で、どこに行くんだ?なんか当てはあんのかよ?」


俺とは真逆の爽やかイケメンは、気さくだがきちんと相手との間合いを図り、素直に人の心配もしてくれる。改めて思うが、ホントいい人!


「それが全然決まってないんです」


「おいおい、そんなんで大丈夫か?

知り合いが死ぬのは気分が良くないから、無茶なことだけはすんなよ」


やばい、ホントいい人!ティアがいなかったら嫁になってたまであるレベル!


「そうだなぁ、こっから一番近い町だとイルヘミアだけど、あそこはオススメしないな。

どうせなら王都とか東の方がいいんじゃないか?」


「そうなんですか?」


「そうなんだよ。ダメってわけじゃないんだが、あそこは貴族が多くてつまんねぇーんだよ。

その点、もっと東に行きゃー、エルフとか獣人もいる。

聞いた話じゃ楽園もあるらしい・・・。そう、漢にとっての楽園だ。皆まで言わなくてもわかるよな?」


楽園・・・だと・・・。


俺が唾を飲み込み興味を持ったことが分かると、シオンは俺に腕を回してクックックと面白そうに喉を鳴らして笑った。

なので俺も堪らずデュフデュフデュフと笑い返した。


「まぁ、そういうことだ。俺もじきに辿り着く。先に行って待ってろや!」


そう言ってシオンは俺の胸を軽く叩いた。

陽キャラにアレルギーを持つ俺でさえ包み込んでしまうシオンりょくに吊られて、俺は今日1番大きな声で誓いを立てた。「約束の地で会いましょう!」



そんなことを話しているうちにギルドに着いてしまった。

有意義な情報も入ったし、何よりお腹が痛くならずに人と話せたことがとても嬉しい!

シオン、マジでいい人!


「んじゃ、俺もそろそろ時間だわ」


名残り惜しいがお別れだ。

出会いがあれば、別れもあるのが冒険だ。

この世界に来て初めて出会った冒険者。

さようならは言わないよ。だってまた会えるんだから・・・約束の楽園で!


「それじゃ、またな!」


シオンは背中を向けて軽く手を上げ歩き出す。


「お前は行け、楽園へ!」


俺は心の中で「はい!」と返事をして頭を下げる。


「俺は行く、これからデートに!」


俺は心の中で強く願った。・・・爆発しろ!二度と会わねー!!







シオンと別れた俺はギルドに入った。

ん?シオンって誰だっけ?まぁどうでもいいや。


受付に向かい、地図が欲しいことを伝えると


「地図ですか〜?どこの地図が必要ですか〜?」と、


ギャルっぽいギルド嬢のお姉さんが色っぽく聞いてくるので、ドギマギしてしまった。


「え〜と、出来るだけ縮尺が小さいものと、この町周辺のものをお願いします」


残念ながら世界地図のようなものは存在しないらしい。

世界がどのような姿をしているのかなど分からないようだ。

人間が足を踏み入れることさえ危険な場所が数多く存在するこの世界では仕方のないことだろう。


それに、そもそも人が安全に暮らせるところはこの国、つまり地図が作られている場所以外にないのだそうだ。


その地図のよると、俺たちがいるこの国はワーテルド王国といい、北は高い山脈、東と南に深い魔物の森、西の大きな湖に取り囲まれた楕円の形をした国のようだ。


山脈や森を超えれば他の種族が治める国に辿り着くそうだが、危険が多いので国交は殆どないとギルド嬢のお姉さんに教えてもらった。


そしてこの国の王都は楕円の中心よりやや北に位置した所にあり、ここアーリアは南西の方にある町だった。


通りすがりの冒険者(シオン)が言っていた東の方に目を向けると、端の方に“エルフの森”というのがあった。


これはティアに関する情報が何か得られるかもしれない。

なんと言っても妖精と言えばエルフっていうイメージだからね。

それに男のロマンも東の地にあるようだし…完璧だ。


俺は気になった細々(こまごま)したことを質問すると、地図の代金を払ってギルドを出た。


宿にはあと3日分のお金を払ってるから、その間に準備して出発することにした。


今日のところはこれで宿に戻った。

俺には宿でしなければならないことができたからだ。

それを怠れば、どこかで足をすくわれるかもしれない。

出来る限りリスクを減らすべく、俺は渋々、嫌々だけれど、スライムの生態について書かれた本を開くのだった。



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