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完全探偵  作者: awasiki
3/4

発展問題編

警察が来るにはもう少しかかるという。

薊は豪雪地帯の山の中にあるし、人家からも遠い。雪の中の行軍で警察が着くのはあとニ時間はかかるだろう。通報をした時に警察署内にマスコミもいたようで、それが行軍をさらに遅らせているらしい。

「死因は包丁による胸への一突き。他に外傷はありません」

となれば亜に与えられた役目は警察とマスコミが到着する前に犯人を推察しておく事だ。二時間あれば不可能ではない。

「ただ気になる点は、正面から包丁で刺された点ですね」

まず亜が始めたのは、殺された鈴木の実況検分だった。

(正面から一突きで外傷はない。顔見知りの犯行か?)

普通目の前に包丁を握る人が現れたら逃走するか抵抗する。だが逃走すれば包丁は背中に、抵抗すれば致命傷以外に怪我ができるはずだ。となれば見知った人間が包丁を隠し持ち、奇襲をかけた可能性が一番高い。

と、そこで亜は凶器である包丁に気が付いた。鈴木の胸に突き刺さっている包丁の柄の部分に名前が彫られている。

「小木さん、これあなたのですか?」

「あっ、ホントだ!」

包丁に刻まれる文字は紛れも無く小木の本名だった。

「おかしいな?鍵かけて閉まってたのに」

「鍵ですか?」

「包丁は鍵をかけて保管する事になってて、夕飯作った時に片付けたはずなんだよなぁ」

だが包丁がここにあるという事は、誰かが料理棚の鍵を開けて持ってきたとい

う事になる。

「鍵を持っている人間?」

「俺と高橋だな」

そういって小木は抜き身の鍵を、高橋は鍵の束を亜に見せた。どうやら高橋は全ての合い鍵を持っているらしい。他に合い鍵がないとすれば、高橋は亜と一緒にいたから、犯行が行えるのは小木だけだ。

だが、

「カギと言えば、この部屋カギ掛かっとったで」

三好の一言がさらに事件を複雑に変える。そう言えば三好の悲鳴が聞こえる前、扉を破る音が聞こえた。旅館中を回っていた時、使っていない部屋には鍵が掛かっている事を確認している。この部屋もそうだ。

(となれば誰かが鍵を開けて、閉めた)

思い立って亜は鈴木のポケットを探った。だかそこに鍵はない。

「この部屋の鍵ですか?普段使ってないのでコレだけです」

 そう言って高橋は鍵の束を取り出した。

これで部屋に入る事ができるのは高橋だけ。だが停電が起きてからは高橋は常に亜と一緒にいて、停電の最中でも高橋は三好に抱きついていた。高橋に犯行は不可能だ。

 共犯という可能性も考えるが、それも実行不可だ。

 高橋と小木の組み合わせも、高橋と三好の組み合わせも犯行を行う時間がない。小木と三好なら時間はあるが扉が開かない。

(そもそも停電中に鈴木を拉致できない)

停電していたとはいえ時間は数分。二人いたとしても暗闇の中で鈴木を捕らえ、殺害するには時間が足りなすぎる。

 鈴木が自演で食堂を出たとしても、部屋に入れないし、そもそも理由がない。

(考えられるのは外部犯の可能性だが)

それもまずあり得ない。亜が旅館中を探したし、何より動機が不明だ。弱小で人の入りの少ない薊が、殺人事件の標的になるとは思えない。

(どういう事だ?)

どの方向に進んでも解決の糸口も見えない。完全などんずまりだ。

(あと考えられるとしたら誰かが嘘を吐いた可能性)

しかも共犯でないと犯行は不可能だろう。だがどの組み合わせでも無理がある。

鈴木。高橋。小木。三好。

四人の名前を反芻し、事件を何度も洗う。そんな亜の頭にふとある一つの共通項が浮かんだ。

亜はすぐさま携帯電話を取り出す。幸運にも電波は入っており亜は一つのページを開いた。

ウェブページに事件の答えはあり、その瞬間に遠くからサイレンの音が聞こえた。



警察とマスコミが着くや、亜はカメラを向ける記者たちの前で開口一番に告げ、頭を下げた。

「この事件は、私には解く事ができません」

名探偵と呼ばれる彼の大失態は瞬く間に日本中に広まった。

以来、三年間。彼は人前に姿を現していない。

ここで事件パートは終了です。

あと解決篇が一話ですが、そちらのアップは九月末日を予定してます

その間での予想推理は募集します。コメントもしくはプロフィール画面でのアドレスにて解答募集

挑戦者求む

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