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完全探偵  作者: awasiki
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応用問題編

「これで最後ですね」

豪雪地帯特有の二枚窓。亜はその両方に鍵がかかっている事を確認して、高橋に振り返った。

「ええ、玄関も勝手口も確かに」

ここ三十分の間に二人がやった事は、薊中を探して中に人が隠れていないか探す事、そして窓と玄関の鍵をかけて回る事だった。結果として六人目の人間なんておらず、鍵もかけたから薊の中には五人の人間しかいない。

「それじゃあ、食堂に行きましょうか」

時間は夜も更け十一時を回っている。そろそろ日付も変わる時間で、そろそろ犯行予告時間に入る時間だ。

この犯行に対して亜が取った作戦は単純なもの。徒党を組むという事だった。

現在薊にいる五人の人間を一部屋にまとめ、必ず団体行動で動く。何かあればシロが確定している亜を二人組に入れて分かれる。こうすれば犯人は自由に動く事ができない。

唯一の問題は少々行動が不便な点だが、一日だけならなんとかなるだろう。

「ただいま戻りました」

「おう、おかえり」

薊の中で一番広い食堂に入ると一人の女性が声を掛けた。彼女が薊の現在唯一の宿泊客で三好 加世子(かよこ)だ。

「ご迷惑かけてすいません、三好さん」

「構へん構へん。帰れ言われて残っとるんはウチやし」

籠城作戦を取る当初、宿泊客である三好は一旦帰ってもらおうという案が出た。しかし三好は帰る事はせずに籠城作戦に自らも参加する事を決めたのだ。

「ノーパソあれば仕事もできるしな」

聞いたところ三好は売れない作家らしい。籠城作戦をネタにする事を考えれば残るのも納得だった。

「それじゃあ遅めの夕飯を頂きましょうか、小木さん」

高橋が呼ぶと小木が料理片手に歩いてくるのが見えた。食堂から覗ける厨房の奥には食器を取り出す鈴木も見えた。

「それでは今日一日何も起こらない事を祈って」

 既に日付は変わって犯行時刻。

高橋の音頭とソフトドリンクの乾杯を持って籠城戦は始まった。

亜も緑茶に口をつけ、小木の作った唐揚げを口に入れた。あまり美味しくないという感想と共に唐揚げを飲み込んだところで、

突然視界が真っ暗になった。

「キャァ!」

「電気付かないぞ」

「停電やな」

高橋、小木、三好の声。それに続けて何かを探す音がする。蝋燭か懐中電灯を探しているのだろう。だが山奥の旅館には周囲に家もなく、室内は完全に闇。見つけるには時間がかかるだろう。

「皆さん、落ち着いて」

亜が大きな声で指示を飛ばす。その声で室内は静まり返り、

「なんだ?止めろ!放せ!」

鈴木の声で部屋は再びパニックに包まれた。何も見えない暗闇の中、何か事件が起こった。

「鈴木さん!」

 叫ぶと同時に亜の目が眩んだ。強烈は白色灯。小木が懐中電灯を見つけたのだ。

「ブレーカー見てきます」

「私も行きます。高橋さんと三好さんはそのままで」

亜を後ろに小木は厨房へ走る。扉をくぐりすぐに見上げ、小木はブレーカーを入れ直した。

少し遅れて食堂に電気が灯った。

半泣きで抱きつく高橋に、それを宥める三好。懐中電灯片手の小木は亜のすぐ横にいて、

「消えた」

鈴木の姿はどこにもなかった。

唖然とする三人の横で亜だけが必死に鈴木を探す。だが少なくとも見える範囲に鈴木はいない。

「二手に分かれて探しましょう」

四人一組で探しても良いが、それでは時間がかかりすぎる。それに二人一組の、事件が起こっても簡単に犯人が推察できるという膠着状態も悪くない。

「ならウチは小木さんと二階探すな」

亜の考えが通じたのか三好は小木の隣に立った。これで鈴木が犯人という状況にも対応ができる。

「では私と高橋さんは一階を、行きましょう」

そう言って亜は高橋の手を取って食堂を抜け出した。もちろん探索場所の采配にも意味はある。

亜は玄関に走り引き戸に手を掛ける。しかし鍵は以前としてかかったままだ。

「次行きましょう」

亜はざっと玄関を見て、玄関から少し離れた部屋に入る。選ぶ基準は、薊の外に出やすい順だ。

縁側になった窓に鍵が掛かっている事を確認し、亜と高橋で人が隠れられそうな場所を探す。しかし亜が押し入れを勢い良い開いた時、全ての努力が消え去った。

「キャアアア!」

何度かの鈍い音が頭上から聞こえ、直後三好の声が響いた。亜と高橋は慌てて階段を駆け上がる。悲鳴が聞こえた客室の一つに入ると、

鈴木が包丁で胸を一突きされて死んでいた。

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