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ストルレグス(世界の狭間にある境界線)の勇者と巫女  作者: あかつきp dash
第一章 かくして巫女と勇者は出会う~東京戦線~
4/40

1-4

 トゥークリフトは妖艶な笑みを浮かべていた。すると彼女の背後からワニの頭にコウモリの翼が生えた化物が現れて、俺に向かって噛みついてこようとする。

 それを俺は剣を振りまわして、追い払いながら後退する。

「何なんだよ、こいつらは!」


 見るからに不気味な化物が、こちらをギロリと血のように滴る赤い瞳を向けてくる。

「気持ち悪いのう……」

 少女が後ろで声をわななかせながらつぶやく。


「ディルドーンというのよ。見た目はこんなだけど、結構強いわよ」

 トゥークリフトは手を挙げて、仰いだ。それはディルドーンに「俺たちを襲え」という命令だったのだ。


 ディルドーンは無軌道を描きながら、こちらへ向かってくる。

 噛みつかれような瞬間――それを俺はガルダートの上体を起こして何とかかわした。

 それからガルダートを反転させつつ、尻尾を横へ振りまわして振り払う。


 俺たちはさらもディルドーンから距離をとるため、上空へと飛翔する。

 だが、ディルドーンはこちらの速度に引き離されることなく、食らいついてくる。俺は内心で舌打ちする。


「そういえば、自己紹介がまだだったな。俺はクレスだ」

 少女は何を突然という表情を浮かべている。

「う、うむ。わらわはリーナじゃ」


 リーナは渋々という様子で名乗る。その瞳は不審者を見るような眼差しだった。俺に名前を名乗るのがそんなに嫌なのだろうか……。そうだとしたら少し悲しい。

「そうか。じゃあ、リーナ。手綱くらいは握れるよな?」


 だが、俺は彼女の答えを待っている暇はなかった。

「ぬ、ぬしはわらわを馬鹿にしておるのか!」

 憤るリーナに対して、俺は「してないよ」と答えて手綱を離した。上昇していくガルダート、その一方で俺は落下をしていく。


 その先には大きな口を開けて、ディルドーンが待ち構えている。

「ぬしは何を考えておるんじゃ! 飛び降りるなんて自殺行為じゃぞ!」

「へ?」


 俺は思わず間の抜けた声をあげる。見れば腰のあたりにリーナが必死にしがみついていた。

「何でまだしがみついているんだ?」

「ぬしが突然、手綱を手放すからではないか!」


 リーナが顔を起こして怒鳴ってくる。だが、いままさに落下している光景を目の当たりにして、顔色が悪くなっていく。

「だから、手綱を握れるか確認したんだろ」

「だったら、先に教えんかっ!」


 そんな言い合いをしている間にもディルドーンとの距離は縮まっていく。

「弱ったな。リーナ、できたら手を離してくれないか。動きづらいんだよ……」

「絶――対に嫌じゃ!」


 俺の腰に顔を埋めながらリーナは叫んだ。

 ここにきて予想外の展開であったが、こればっかりはどうしようもないことだ。それにリーナが俺の腰にしがみついているからといって、やることが変わるわけでもない。

 ディルドーンは大きな口を開けて、俺たちを待ち構えている。このまま素直に落ちれば、俺たちは奴の口の中だ。


 だが、自分から落ちておいて、素直に口の中へ入ってやるいわれもない。俺には考えがあった。もっとも、リーナのおかげで成功率は下がってしまったが……。

 まさにディルドーンとの距離が詰まって、もう口が目前に迫ろうとしたタイミング。

 奴は待っていたとばかり、開けた口をを閉じようとしてくる。


 そこで俺は背中から翼を生やせて、何度も羽ばたかせる。ただでさえ腰にはリーナがしがみついていて、落下速度を落とすのは難しい。

 この翼は実体のある翼ではなく、空を飛びたいときに現れる非実体の翼である。翼を羽ばたかせて空を飛んでいるというよりは、魔法の力で空を飛ぶのに概念的に翼が形作られているというのが正解かもしれない。


 ディルドーンの大口が締まり、ガチンという歯のかち合う音が響く。

 ――た、助かったぁ。

 俺の背筋に冷や汗が伝う。俺もリーナも何とか無事だった。

 もっともリーナの足はあと数センチのところでディルドーンの口の中であったが。



お読みいただきありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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