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 電車の座席にポツンと一台のノートパソコンが置いてあった。俺は何の考えもなしに――いや、もっと言えば無意識にだったかもしれない。ふと右の人差し指で俺はエンターキーを押していた。 すると液晶画面が点灯し、そこから画像が画面を越えて広がっていくような錯覚を受ける。

 止まっていたはずの画像はやがて少しずつ動きはじめ、色彩が揺れ動きはじめる。

 それはどこかの研究所のようだった。

『情報に質量を持たせることに成功しました。これにより無から有を生みだすことが現実味を帯びてくるでしょう。人は神の――』

 その言葉の途中で画像が突然ブツ切れる。

 すると画面がいきなり切り替わって映しだされたのは、世界が強大な魔物に喰らいつくされる瞬間であった。しかし、世界の一部はそこから難を逃れて、別の次元に新たな世界を産みだす。

 世界を産みだした者たちは八つの種族を創造して使役をはじめる。神話の時代のはじまるである。

 だが、やがて神々は互いに争いをはじめる。自らの愚かさと業を理解しながらもそれを止める手立てはなかった。

 神々は激しい戦いの果てに滅びてしまった。だが、それは同時に恐ろしい八体の魔竜をこの世界に招いてしまう。


 炎の魔竜ホールバイストは山を焼く。

 風の魔竜ギルマートークは町を吹き飛ばす。

 木の魔竜トゥークリフトは作物を枯らす。

 水の魔竜エビレオスは大渦で船を呑みこむ。

 地の魔竜ゼーレヴィウスは地面を割る。

 光の魔竜メリュナーシュはあらゆるを灼く。

 闇の魔竜キッティバートンは暗雲を呼ぶ。

 雷の魔竜ヌァーホリオンが雷鳴を嘶かせる。


 世界はまさに滅びを迎えようとしていた。

 それに対抗するべく八つの種族の一つマルア族が機翔竜を発明する。

 八つの種族は滅びに抗いながら、世界をやがて二つに別つ。

 大陸を天空に浮かびあがらせて、海だけの世界に魔竜を封じこめた。

 天空に大陸の浮かんだ世界をスヴェインオード。

 魔竜たちを封じこめた世界をシュアルオードと呼ぶようになった。

 シュアルオードには幻影の大陸を創造して魔竜たちにまだ人間たちがいるかのように錯覚させ、二つの世界の間に強力な結界を張った。

 しかし、それだけでは不十分であった。魔竜はそれほどに強力であったのだ。

 そこで八賢者たちは巫女と従者――勇者を作りだし、シュアルオードへ送りだすことにした。

 目的はただ一つ。魔竜たちの殲滅である。

 といっても魔竜の殲滅は容易ではない。

 八賢者たちはもっとも強力であるとされる機翔竜のガルダートに仕掛けを施した。

 一つに巫女はこの世界に存在する女性からランダムに選定させるということ。

 一つに巫女は三日以内に勇者を選定させ、二人は強制的に魔竜のいるシュアルオードへ送りこまれるということ。

 そして巫女にスヴェインオードとシュアルオードの結界を解除させる力を持たせることであった。 そのために魔竜たちは必死になって巫女たちを狙うだろう。

 そこでまず巫女に強力な結界を持たした。それは魔竜の攻撃であれ、決して破れないものであった。

 その結界を破る方法はただ一つ、勇者を殺すことである。勇者を巫女の結界を破る鍵に仕立てたのだ。

 それは魔竜の力を少しだけ奪い取るという呪い。かけられた者は力を奪われ、その姿を維持できなくなり、やがては竜から人の姿へと退化する。

 だが、そこに辿り着くまでにはあまりに多い犠牲を強いることになる。

 最初に選ばれた勇者は怒り狂う魔竜たちが一瞬で塵にしてしまった。

 それからはずっと似たような状況が続く。しかし、一方で魔竜たちの力は確実に落ちていった。

 あるとき、勇者の剣が魔竜の額にある赤い玉石を貫いた。それはたまたま――あるいは運がよかったというのだろう。

 額の赤い玉石は魔竜にとって力の源である。力の源を打ち砕かれた魔竜はその姿を保てず滅びへと突き進む。それも例外なくである。

 が、倒せたのはやはり偶然だったらしい。その勇者はまだ残っていた七体の魔竜によってあっさりと殺されてしまった。

 それから何千何万という勇者と巫女が犠牲となる。二体目の魔竜を倒せたのは魔竜が人型へと退化したあとだった。

 弱体化していく自分たちを見て魔竜たちと勇者の戦いは長期化をしていく。このままでは力を奪い続けられて、世界を滅ぼすどころでなくなるのは目に見えていた。

 そこで魔竜たちは自分たちの手で結界を破壊してスヴェインオードへ行くことを決める。その時点で魔竜は四体が倒されていた。

 そして一体がアナズレグスへの結界を広げて、勇者に倒される。その勇者は殺されてしまい、あとは俺たちが知っている展開に繋がっていく――。

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