k02-25 決行前
アザレアの案内とゲイルの先導により、どうにか無事にプラント入り口付近まで来れた。
今居るのは、島の片隅。
変電所や上下水槽など島のライフラインを管理する施設が集まるエリア。
普段観光客や一般人が近く事はまず無い場所だそうだ。
まさかこんな郊外にそんな重要施設への入り口があるなんて……。
アザレアによると――
「プラントの入り口は島内に何箇所かあるのですが、防衛システムや制御システムなどを管理する最下層までの直通エレベーターは実は1ヶ所だけなんです」
ということらしい。
そして、その直通エレベーターに通じる入り口というのが、約100メートル先に見えているあの小さな建物。
私達は建物の周辺が見渡せる小高い丘に位置取っている。
物陰から建物の周辺を見渡す。
この辺りは外海の上に浮かぶ大きなテラスようになっていて、すぐ横は外海。
建物の周辺はドーナツ状に地面が抜けてして、その下は海。
そこに4本の橋がかかっていて、そのうちのどれかを通らないと建物までは行けない。
防衛上の理由から、こんな構造にしたそうだ。
地面に空いたおおきな空洞から、建物から海に向かって伸びるエレベーターシャフトが見える。
あの穴から落ちたら荒れ狂う海に一直線……て訳ね。
「敵は……各橋に5人程ずつ。入り口前に10人……合計で30人程度。――それにライドアーマーが2体。思ってたよりかなり大規模だな。……俺独りでどの程度引き付けられるか……」
ゲイルが厳しい顔で呟く。
「いいわ……私も囮になってあげるわよ!」
「ぺ、ペオニーさん!?」
突然のペオニーの発言に驚いてその顔を覗き込むアザレア。
「私の街でこれ以上好き勝手されてたまるかってのよ! 少なくとも、鍵の存在を確認できるまでは向こうは私の事を殺せないはず。逃げ回るなりなんなりして引き付けてやるわよ」
……この子といいアザレアといい……ハイドレンジアのお嬢様は、これくらい逞しくないとやってけないってことかしら?
都会は都会で大変なのね……。まぁ、"私の街"ってのはどうかと思うけど。
「……分かった。だがあくまでも最終手段だ。俺が無理になった状況で、まだ嬢ちゃん達が中に入れてない場合は、敵の注意を引いてくれ」
「了解よ」
「いいか、あくまでも自分の身の安全が最優先だ。敵の気を引くだけだぞ。間違っても俺を助けに出て来たりするんじゃないぞ」
「は? 思いあがるんじゃないわよ。なんで雇い主の私があんたを助けになんか行かなきゃいけないのよ」
「それなら安心だ」
お互いの待機位置や、決行のタイミングを手早く打ち合わせし、2人と別れる。
2人が潜む位置から反対側、少しでも警備の薄い建物の裏側の橋の方へ移動する。
付近にあった植え込みの陰に身を隠す。
「2人……大丈夫かな」
心配そうに呟くアイネ。
「大丈夫、じゃないでしょうね。後で動揺しないように言っておくけど……あの傭兵が助かる確率は低と思っておいた方が良いわ」
「そ、そんな!?」
アザレアが驚いた顔で私を見る。
「戦力差が大きすぎるわ。いくら彼が凄腕だったとしても、装備も人数も差があり過ぎる。捨て身でいって……せいぜい持って数分。その後ペオニーが時間を稼いでくれたとしても、私達が使える時間は5分もあるかどうか。……集中していくわよ」
「ちょっとシェンナ! そんな言い方しなくても!」
「あの人もプロの傭兵よ。プロが仕事をするって言ってるんだから、こっちも全力で答えなきゃ。こんな事態のために高いお金貰ってるんだから、本人も覚悟は出来てるはずよ」
私の事を怒ったような顔で睨むアイネ。
「でも……私知ってます。ペオニーさん、その……性格けっこうキツイので、御付きの傭兵さんすぐ辞めてしまうそうです。でも、あの方だけはもう何年もずっと一緒においでました……」
泣きそうな目で私を見るアザレア。
2人の顔は敢えて見ないようにする。
……そんな事言っても、私にどうしろってのよ!?
黙ったまま時計を確認する。
行動開始まであと5分強……
心臓がバクバクと音を立てる。
焦りは禁物……今は余計な事は考えない。
自分を落ち着かせる。






