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k02-14 常夏の島で海水浴

 ハイドレンジア2日目。


 海水浴が楽しみで仕方がないアイネに、6時過ぎに起こされた。


 朝食までもまだ時間があるので、部屋で浮き輪を膨らませているアイネは放っておいて近所にランニングに出る。


 ちなみに、朝のランニングは高等グレードになってから始めた日課だ。



 ゴミひとつ落ちていない綺麗な通りを走っていると、時たま高級そうなスポーツウェアに身を包んだセレブっぽい人とすれ違う。


 犬の散歩ともすれ違うけど、デカい家じゃないと絶対飼えないような犬種がちらほらと。


 さすが超高級住宅街……。




 帰って軽くシャワーを浴び、皆んなで食卓を囲む。


 アイネとアザレアは並んで座り、楽しそうに話している。


「アイネ、昨日は眠れましたか?」


「はい! ベッド、フッカフカだったしぐっすりでしたよ〜!」


 結局、何故か名前は呼び捨てでその他は敬語という形で落ち着いた。


 会話のぎこちなさは随分と無くなったから、後は追々でいいんじゃないかしらね。



 ちなみに、焚き付けた本人のマスターは、二日酔いなのか虚な目で宙を見ながらフルーツを食べている。


 あの、一応実地遠征中なんですけど……“一応”って言っちゃダメか。


 食事を終えると、それぞれ本日の予定へと動き出す。



 グラードさんは会社へ。マスターも用事があるらしくそれに同行。


 私とアイネは、海は遊びに行くアザレアの身辺警護。


 ……と、行動予定の書類上は書いておいた。

 浮き輪片手に身辺警護って聞いたことないわよ。

 とは言え、武器の常時携行は許可されてないから、これ以上はどうしようも無いのも事実ね。



 ビーチエリアまではヴィントさんが車で送ってくれる事に。


 アイネが、車に乗せる事を考えずに目一杯膨らませた浮き輪の空気を抜くのに暫くかかった。



 ―――――



「皆様、こちらのホテルを1室抑えてありますので、お着替えやご休憩にお使い下さい。夕方また迎えに参ります」


 そう言ってホテルの前で降ろして貰う。



「うわー、素敵なホテルですね! 真っ白で何だか宮殿みたい!」


「ハイドレンジア建設当時からある、街で最も歴史の深いホテルなんですよ」


「へー、それなのにこんなピカピカで、凄いな〜」


 そんな会話をしながらホテルに入る2人。


 アイネ……「凄いな〜」じゃないわよ。

 ハイドレンジアで1番高級なホテルよ。


 新婚旅行で一生に一度来るようなホテルを、海の家代わりに使うとは……さすがスーパーVIP。



 通された部屋は、オーシャンフロントの特別室だった。


 部屋に併設された大きなテラスからは、ハイドレンジアの青い海が一望出来る。


 ホテルから直接海へ出られるという事で、水着に着替え、上着だけ羽織りそのまま部屋を出る。


 フロントから、プールや野外バーのある中庭を経由して、その先はもう海!


 しかもホテル宿泊者用のプライベートビーチ!



「ね、ね、私やってみたかった事あるんですけど!」


 アイネが目をキラキラさせる。


「あ! 昨日の夜雑誌で見たやつですね! やりましょう!」


 手を繋ぐ2人。


「はい! シェンナさんも!」


 そう言ってアザレアが手を差し伸べてくる。



「わ、私は遠慮しておきます」


「えーー! シェンナもやろうよぉ!」


「浮き輪、邪魔でしょ? はい、持っててあげるから」


 そう言って2人分の浮き輪を預かる。



「じ、じゃあ遠慮なく」


 顔を見合わせると2人。

 大きく息を吸うと……



「「海だぁぁ〜〜!!」」


 そう叫んで手を繋いだまま波打ち際へと走って行く。


 何か昨晩読んだガイドブックにそんな写真が載ってたらしい。



 しかし……あの2人は知らない。


 砂浜でのダッシュがどれだけ体力を消耗するかという事を。


 こんなに遠くからダッシュしたら……。


 すぐさまスピードが落ちる2人。


 波打ち際に着く頃には足元はヘロヘロで、膝近くまで海に入った瞬間、波に足を取られ――


「「キャーー!!」」


 どっちが先に転んだのかは分からなかったけど、手を繋いだまま仲良く顔から海へドボン!!


 何となく分かったオチだったから嫌だったのよ!



 どうにか立ち上がり、顔中に白い砂を付けて浅瀬でムセる2人。


 タオルを渡そうと近づいた私の手を、悪い笑顔を浮かべたアイネがガシッと掴み、そのまま海へと倒し込もうとする!


 それを重心移動で軽く交わし、大外刈りで逆に後頭部から海に沈めて差し上げた。

 私に接近戦を挑もうだなんて――血迷ったか?


 物凄い水しぶきを上げて波の中へ消えて行くアイネ。

 慌てて引き起こすアザレア。



「やべぇ、あの子何かガチだ……」


 近くでこっちを眺めていた男性グループのドン引きした会話が聞こえたが、聞かなかったことにしておく。



 ちなみに、一応任務中ということで冷静を装ってるけど……結構楽しい!


 ―――


 その後、海の中に設置された浮島に登ってみたり、砂浜で砂のお城を作ってみたりとなんだかんだでお昼前になった。


 ちなみに、私はアザレアが怪我しないかと、アイネの胸元が心配で気が気じゃなかったのはここだけの話。


 一旦部屋に戻り、順番にシャワーを浴びた後、午後からはビーチエリアでショッピングに出かける事になった。

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