k01-19 タイムトライアル
「いゃあ、おまたせシェンナ」
アイネにちょっかいを出していたカーティスが戻ってきた。
ニコニコと私の顔を覗き込む。
全く悪びれないその様子に腹が立っち、顔を背ける。
「どうしたんだいマイラヴァー? 急に不機嫌になって」
「……何でも無いわ。そろそろブリーフィングが始まるから行くわよ」
「りょーかい!」
まったく……
ーーーーー
「はい、みんな集まって!」
マスター・カルーナの号令で生徒たちは班ごとに整列する。
2ファミリア混合チームだ。
マスター・クァイエンがその陣頭に立つ。
それに合わせるように、後ろに下がるマスター・カルーナ。
あの2人……師事表明式の件で最初は何かピリピリしてたけど、例の火災事故の調査で共同チームを組んでからなんやかんやで和解したみたいなのよね。
考え方に違いはあれど、お互いの実力は元々認め合ってたって話だし。
そこに共通の敵が現れて、改めて結託したってところかしら。
お気の毒ね、マスター・ジン。
生徒達を一通り見渡し、マスター・クァイエンが口を開く。
「……揃ったようだな。では演習内容の通達を行う。
諸君らの目標は、このB-2ゲートを起点とし、直線距離にて7ブロック先にあるグリーン37チェックポイントまでの踏破である。
10:00を皮切りに第1班〜第10班まで、15分間隔で出発。
出発順はこちらでランダムに決定してある。
チェックポイントにある端末でフラッグを入手し、起点へ帰還するまでの時間を競うタイムトライアルだ。
純粋な踏破時間に加え、怪我人の発生や回復アイテムの使用、装備品の損傷・損失にはペナルティタイムを。
マモノの撃破や有益な採取品の獲得にはリウォードタイムをそれぞれ加減算し、最終的なタイムスコアで優劣を決する」
……なるほど。
安全なルートでペナルティを避けるか。
危険を犯しても最短ルートを進むか。
はたまたボーナス目当てで散策や採取に時間を割くか……。
ルート取りと作戦が肝になるわね。
続けてマスター・カルーナが補足説明を加える。
「パーティーはグレード10生徒3人とグレード13生徒1人によるフォーマンセル。
パーティーメンバーは前もって通達済みだから顔合わせは済んでいるわよね?
それぞれ何が得意でどんな技能があるかは十分確認済と思います。
この後、各チーム出発までに作戦立案と装備の選択を行ってもらうけれど、チームの特性を良く考えた上で慎重に決める事。
持ち込める装備品は120ポイントまでです。
何か質問は?」
「はい!」
隣に立つカーティスが手を上げる。
「はい、カーティスさん」
「パーティー同士が接触した場合、交戦や援助といった行為には何らかの規制はかかるのでしょうか?」
「本演習は、対人戦を目的としたものではないので生徒同士の戦闘は全面的に禁止です。
先に戦闘を仕掛けたパーティーには厳罰が処されますので留意すること。
また、他パーティーが交戦中のマモノの横殴りや、採取品の横取りもペナルティとなります。
皆さんに携帯してもらう記録用端末が全て記録してるから不正は出来ないわよ。
ただし、他パーティーから支援依頼を受けた場合に限りサポート行動は許可されます。
この場合依頼した側にはペナルティ、サポートした側にはリウォードタイムが付与されます。
戦闘に関する注意事項はそんなところかしらね。
他に質問は?」
……時計を確認する。
現在時刻は09:28。
先頭のパーティーはこの後30分程の間でルート決定から装備選択まで行う必要があるわけね。
それに対して最後発パーティーは4時間近くの猶予……。
一見、後続の方が有利に思えるけど、最後発ともなると出発は13:00過ぎ。
昼でも薄暗い演習エリアの中じゃ復路はそれなりの暗さになるわ。進行スピードは落ちるわね。
もし先行するパーティーが派手に戦闘を行えばマモノの動きも活発になる。
それに、主要なルートのアイテムも先行パーティーに取り尽される可能性もあるし……。
そう考えると取りうる作戦の幅は先行組の方が多いわね。
とは言え、他パーティーへの妨害が禁止である以上、潜伏やトラップの設置という先発が有利な作戦は一切使えない。
つまるところ、遅すぎず、かつある程度出発までの準備時間が取れる2,3番目が理想かしらね。
そんなことを考えているうちに、マスターが締めに入る。
「特に質問も無いようね。
では出発順の発表の後解散とします。
あ、そうそう。装備はあそこに見えるテントにあるわ。
魔兵器や魔鉱石、各種薬品など必要な物が揃えてあります。
量は十分に用意してあるから慌てることはないわよ。
それぞれにポイントが振ってあるのでよく話し合って上限以内で選択するように。
……では、出発順を発表します。
10:00出発4班、10:15出発7班ーー」






