第20話:半信半疑あっちこっち
最初は剣が出ると思っていた。右手に力を込めればそこからは突然剣が出た。
剣を使い続けていくうちに、剣の色相や形状、材質を操れるようになった。細身の剣、長身の剣、両刃の剣、鋼鉄の剣、紅い剣。様々な剣を想像・創造していくうちに、この力にも愛着が湧いてきた。
好きこそものの上手なれで練習していくと、ある事に気が付いた。剣だけでなく、刀も出せる。槍も出せる。弓も出せる。斧も、棍も、ハンマーも、鎌も、ブーメランも、鞭も、トンファーも出せる。想像さえできれば、その武器は再現できるようになった。
最初はただの鉄の塊だった。左手に力を込めればそこに重みが生まれた。
剣と並行して色相や形状、材質が操れるようになり、丈夫な盾として使えるようになった。軽い盾、大きい盾、硬い盾、蒼い盾、銀の盾。様々な盾を想像・創造していくうちに、敵を傷つけるだけでなく、自分を守ることができるようになった。
備えあれば憂いなしで盾の使い方を練習していくと、ある事に気が付いた。盾は自分を守る為だけの物ではない。時に仲間を守る為、かばう為。時に攻撃の手段として。その応用の幅は数知れず、盾なくして僕の戦いはなかった。
そして、この力の正体を知りたくなった頃、ちょうど同じような力を持った人達に出会った。
出会いとは常に突然で、1から10までイカサマ抜きで、誰も予知できない。それでもなんとなく直感が働いて、「運命の人」を大切にして、だからこそ「突然の別れ」は悲しいものだ。それは、誰がどうやって祈ろうと、近いほどどんどん遠くなって、遠いほど余計に遠くなって、ほんの偶然の積み重なりが仮装した不幸でしかない。
でも、その偶然に僕は救われた。ずっと守り続けたいものが出来た。この力の本当の使い方が初めて生まれたのだ。
仲間を守り続ける。
それがどれだけ大変なことか、僕はなんとなく分かるけど、なんとなくしか分からない。頭では理解できるけど、それを言葉や行動では示せない。人に伝えることができない。
誰だって自分が可愛い。自分が好きだ。自分が大切だ。自分が一番だ。Myself yourselfだ。自分を失った人間の行く末は知っている。幼い頃から、自分を失うことがどれだけ危険かはよく知っていた。
だから僕も、いざというときに自分を犠牲にして仲間を救えるのか、まだ怪しかった。
それでも仲間は仲間にしてくれた。半信半疑あっちこっちの僕を仲間として認めてくれた。少なくとも、今の心は守るために戦いたいと言っているのだから、従うしかなかろう。
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「さっきから何ぶつぶつ言ってんだよ、ガハラ」
響灘の言葉で目が覚めた。いや、眠っていたわけではなく、歩きながら頭の中を右往左往と忙しく考えていたせいで周りが見えなくなっていたわけだ。心配性の僕はそういうわけで、今日も明日も明後日も「考え事なう」とつぶやく生活を送るわけだ。わけわけうるせえな。
「もしかして、いかがわしい事でも考えてるの?」
あの後、途中で合流した茜が不敵な笑みを浮かべる。別にもしかしませんけども。
「さっきのはただの考え事であって…」
「考え事って、うわあ……ヤマト君そういう人なんだ…」
「どういう人だよ! つーかチサちゃん! お前には言われたくない!」
「冗談だわん!」
「その仕草こそ冗談にしてくれよ」
歩き漫才で汗をかいていると、
「確かこの辺だ。鳥たちもそう言ってる」
安曇野が立ち止まってキョロキョロと辺りを見回す。お前は鳥と会話ができるのか。ガイドを失った僕達もその場で立ち止まって店長の家探し。
「あ、これじゃないか…?」
西淡が赤い屋根の家を指さす。みんなで駆け寄って表札を見てみると、「香焼」の文字が確かに書かれていた。だが問題は…
「誰がインターホンのチャイムを押すかだな」
自然と腕まくりの動作をするアーカイブ。実際にはこの暑い時期、まくる袖など無いですが。なんかこう、両手を組んでその穴からのぞいてるやつもいますしね。手に息吹きかけてるやつもいますしね。僕はそういう類のジンクスには乗っかりませんよ。
「じゃんけんポン!!」
そう、じゃんけんポン。ここで僕は油断した。
じゃんけんとは無限ループ食物連鎖、すなわち三つ巴の戦いであり、性格やタイミングで少々誤差は出るものの、平等な戦いであるはずだった。
僕は力んだ勢いで「いし」を出した。誰かは「はさみ」を出すであろうと思った。単純な話、3分の1×13だ。当然、関数電卓の出番は無かった。
そもそもこの大人数だし、そのうえ確率計算を済ませる以前に、一回戦はあいこになるであろうと高を括っていた。いや、一回戦どころか、あまりにあいこしか出ないものだから、「2グループに分けてやろう」となるのがオチだと思っていた。それでも決着が着かなくて、しびれを切らした誰かさんが「もういいよ、わたしが押すよ」とか言うんじゃなかろうかと高を括っていた。
にも関わらず、僕以外の全員は「かみ」を出していた。目をこすってもう一度見たが、僕以外の全員は「かみ」を出していたのだ。冗談じゃない。
「クスクス…」
そこ! 笑ってんじゃねえ!




