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とろけるCheese  作者: KoKoRo
98/156

Cheese98〜花光〜

 野高先輩の告白から数日経ったある日、わたし、立川 華のもとに一通のメールが届いた。




『今日は何の日か、知ってる?』



華(むむ?)



 それは淳くんからのお尋ねメールでした。



華(今日は8月10日だから…わかった!)



『ハットの日で、帽子の日!』



『ブー』



華(ほへ〜…?じゃあ、何の日だろう??)



『正解は花火大会の日だよ』



華「花火大会!!??」



…………ガンッ


(思わず机の角に足をぶつける華)



華「い゛っ………い゛だい゛ぃ゛ぃぃぃっっ!!」



葵「姉ちゃんうるせぇぞ!?」



(ノックなしで部屋を覗く葵)



華「成敗っっ!!!」


(枕を投げつける華)



…………ドスッ


(激突)



葵「また…いつものパターンで…す…か……」



…………パタ


(転倒)




 その後、淳くんと約束を取り付けて、花火大会に行くことになりました!



華(へっへ〜ん!こんな日もいずれ訪れるだろうと思って、オニュ〜の浴衣を買ってよかったぁ〜☆←(貯金全額注ぎ込み)



華「………」



どうしてこんなに、はしゃいでいられるんだろう………



野高先輩を傷つけた……




わたしの答えはひとつなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう…




 気持ちが晴れないまま、わたしは淳くんとの待ち合わせ場所に向かった。



華(淳くんの顔を見たら、きっと元気が出るはず。いつものわたしに戻ろう…)




―――待ち合わせ場所に着くと、淳くんはもうすでに来てくれていた。



淳「華…ちゃん?」



華「うん…。ど、どうかな?浴衣…」



淳「一瞬、誰だかわからなかった…。すごい似合ってるよ。かわいい…と思う」



華「む!その間が気になる〜〜!!」



淳「言い慣れてないから…だと思います」



華「………」



淳「華ちゃん?」



華「ありがとう…」



淳「うん…。じゃあ、行きますか!」



華「うんっ!」





淳くんといると、元気が湧いてくる…。



わたしの1番好きな人。



ずっと……



あなたの傍にいられたら、きっと、幸せになれるよね







淳「そろそろ始まっちゃうな…」



華「すごい人だねー!うわわっ……!?」



(人の波に流される華)



淳「華ちゃん!!俺の手に捕まって!」



華(淳くん……!)



(手を伸ばし、淳の手を強く握る華)



淳「ごめん、ちょっと走ってもいい?」



華「へ…?」



淳「せぇのっ……!」


(華を人込みから引っ張り出し、そのまま駆け出す淳)



華(うびゃやあぁっ!!??)


(もみくちゃになる華)






――――――――――

しばらく走っていると、段々と人込みから離れた場所へ向かっているのがわかった。



華「淳くん。もうすぐ花火、始まっちゃうよ?どこに向かってるの…?」



淳「もう少し……もうすぐなんだ…」



華「………」



そう言って、淳くんは生い茂った草の中に入り、道なき道を通り始めた。



華「ぶわぁっ!?蛾だぁぁっ!!」



淳「こんなとこ通らしてごめん!!俺の手、離さないでね」



華「意地でも離さないっ!!だから大丈夫だよ!」



淳「……よし。ラストスパート!」



華「はいさぁっ!」


(気合いを入れる華)



 生い茂った草を掻き分けた先に、空が広がった。建物が小さく見える。ここは……




淳「俺が小さい頃、よく遊んでた場所なんだ。今は草でいっぱいだけど、昔はもっとだだっ広くて、よくキャッチボールとかしたなぁ」



華「淳くんの思い出の場所なんだ……」



淳「それもあるけど、ほら!そろそろ始まるよ」



華「……?」




…………ドーーーン


(花火が上がる)



華「はっ……花火だぁ!!」



淳「ここ、丘みたいになってるから花火がよく見えるんだ。俺達だけの特等席」



華「花火がおっきい……!すごいすごーい!」



淳「間に合ってよかった…」



華「……うぅっ」


(泣き出す華)



淳「華ちゃん!?」



華「ごめん…嬉しくて…つい…」



ハンカチハンカチ…


(ハンカチを探す淳)


淳「……ごめん、ハンカチ持ってない…」



華「大丈夫!浴衣で拭くからっ……」



淳「!」



(浴衣で涙を拭おうとする華の手を止める淳)



華「……え……?」



淳「駄目。俺の手で払うからじっとしてて。たぶん……きれいだから」



華「あはは!たぶん?」



淳「そう、たぶん…」



華「………」



淳「………」




花火の光りがチカチカと目に焼き付く。



目の前にいる淳くんの顔がよく見えた。




淳「き…キスする時って、眼鏡を外すのかなぁ」



華「は…外した方がいいと思う…」



淳「じゃあ…」


(眼鏡に手を掛ける淳)



華「待って!わたしが外してもいい…ですか?」



淳「…うん」



華「そのままじっとしててね…」


(淳の眼鏡に手を掛ける華)



淳「……無理だよ。華ちゃん」






「――――――」





初めてキスをした。

何も味はなくて、温かい息だけがほんのりかかった。




―――花火の音が鳴り響く、夏の夜の出来事。






〜花光〜 完。



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