Cheese92〜約束〜
淳くんと初めて行くお祭り当日。
華(やっぱり夏祭りには、浴衣を着ないとね!!)
華「お母さーん!去年の浴衣、出してー?」
母「去年の浴衣?あるわけないでしょ?あんたが破いてきたから、いい生地だけ取って捨てたわよ」
華
華「じゃあ、新しいの買って!?今すぐに!!」
母「あんたの携帯買ってあげたばかりじゃない!?欲しいならバイトでもやって、自分で買いなさい」
華
こうして、今日のお祭りは私服決定となってしまった…。
そして、時は流れて、午後7時を回った。
―――東京駅にて。
淳(…ったく、圭の奴、何処だ?)
圭「淳ちゃーーーん!こっち!こっち〜!」
淳「バカ!!あんまりデカイ声を出すな!!」
圭「もうすぐ駅に着くみたいだよ。ドラムのジョー!」
淳「ジョー?何それ?そいつの名前?」
圭「うん。サイトでそう名乗ってたよ」
淳「嘘なんじゃないの〜?やっぱりお前、騙されてんだよ」
圭「俺もサイトじゃ、マッカローニって名乗ってたよ♪」
淳「意味わかんねぇよ…」
―――その後、ドラムの姿が現れないまま、一時間が経過した…。
淳「なぁ…、来ることまで嘘ついてんじゃないのか?」
圭「んなことないって!絶対来るよ!!」
淳「悪いけど俺、用事が……」
圭「来た!!!」
淳「え?」
前方から大きなバッグを持った長髪の男が現れた。
??「もしかして、マッカローニ?」
圭「イエース!ザッツライト☆」
淳(こいつが…ドラム……?)
??「俺、鳴海 譲。よろしく」
圭「俺は堤之原 圭!で、こっちがギターとヴォーカル担当の…」
淳「池本 淳です。よろしく」
譲「ふーん。あんたがギターか。で、お前がベース?」
圭「うん。まだまだド素人だけどね!」
譲「ドラム候補がいないってわけだ?俺はマジでデビュー目指してる。信頼できる奴とやりてぇ」
圭「こっちだって半端な気持ちでやってねーよ!な?淳ちゃん」
―――♪―♪♪
(淳の携帯が鳴る)
淳「!」
圭「もしかして淳ちゃん、たっちゃんと会う約束とかしてる?」
淳「なんで……」
圭「早く言えよ!バカ!!たっちゃん、待ってるんだろ!?」
淳「!…ごめん、本当ごめん!」
(圭と譲を置いて、走り出す淳)
圭(道理でさっきから様子がおかしかったわけだ…)
譲「なぁ。あいつ、彼女いんの?」
圭「うん。いるよー。つーか、ごめんね!こんな時にいなくなっちゃって」
譲「本気でデビューしたいと思ってる奴に、女がいるってか?遊びならまだしも、本気なら俺は絶対、認めねぇ」
圭「遊びで付き合うような奴じゃないよ!!淳ちゃんはそんな男じゃない」
譲「女なんか…邪魔なだけだろ……」
圭「…………」
―――その頃、淳は、祭りの会場に向かって走っていた。
淳(華ちゃんに電話を……)
(携帯を取り出す淳)
…………ピーーー
淳(!?充電切れかよ…!?なんでこんなに俺は…駄目なんだよっ…)
(華の待つ場所へ、全速力で走る淳)
――その頃、華は…
華(メールの返事も返ってこない…。電話も繋がらない…。淳くん、今何処にいるの……!?)
東京駅を出て30分後に淳は華との待ち合わせ場所に到着した。
淳(華ちゃん……)
ガードレールに寄り掛かり、携帯を握りしめたままの華を見た淳は、彼女の元へと走り出した。
華「淳くん…!!」
淳「ごめん、俺…」
華「よかったぁ…。電話も繋がらないから、事故にでも逢ったんじゃないかって、すごく…心配した…。うっぅ…」
(ぽろぽろと泣き出す華)
淳「!」
…………ギュッ
(華を抱きしめる淳)
淳「ごめ…ん……。華ちゃんと会う前に、用事があって、圭と会ってたんだ…。携帯が繋がらなかったのは、充電が切れただけなんだ。約束守れなくて、本当にごめん…」
華「淳くんは約束守ってくれたよ?」
淳「え……?」
華「ちゃんとここに…わたしに会いに来てくれたもん」
(淳をそっと抱きしめる華)
淳「華ちゃん…」
華「傍にいてくれるだけで、嬉しい」
淳「………」
(淳は華の手を握った)
淳「お祭り、まだやってるかな…?」
華「うん!屋台は開いてたよ!」
淳「じゃあ、行こっか」
華「うん!」
―――もう絶対、約束を破ったりしない。
だから、ずっと…
俺の傍にいてほしい。
そう、強く願った。
〜約束〜 完。