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とろけるCheese  作者: KoKoRo
90/156

Cheese90〜恋愛偏差値ゼロ〜

補習のない、単なる夏休みに、僕は学校に向かっていた。




スニーカーから上履きに履き変え、学校の中に入った。そして、生徒会室の扉の前で、僕の足は止まった。




薄井「……」




――カラッ


(扉を素早く少しだけ開けて、中を覗く薄井)




薄井いないな…



??「何してんのよ?薄井 翔」



薄井「ひぇええ!?後ろから急に声を掛けるんじゃないっ!!」



浅井「あんたが変なことしてるからでしょう?生徒会に何か用でも?」



薄井「ない」



浅井「じゃあ、何しに来たのよ…?こっちはあんたが思ってるほど暇じゃないんだから。邪魔しに来たなら帰ってちょうだい」



薄井「やだね〜」



浅井「……」ムカッ



薄井「手伝いたいんだ。何か仕事をくれ!」



浅井「手伝わんでいい!大体、あんたは生徒会じゃない!!」



薄井「雑用でいいから有り難く、僕を使いたまえ!」



浅井「いらん」



薄井「そう…か」



浅井(やば…。もしかして傷つくようなこと言ったかも…)



薄井「……」



浅井「書類…まとめるの手伝ってくれる?」



薄井「うん!」



浅井(「うん」だって。こいつ、子供みたいね…)



薄井「やはり押して駄目なら引いてみろ、だな!効果抜群だね♪」



浅井「なぁ〜にぃ〜〜!?」





――――その後、僕は生徒会室で浅井くんと二人、書類をまとめた。




薄井「他の生徒会メンバーは来てないのかい?」



浅井「今日は私一人よ。皆、都合が悪いみたい」



薄井「勝手だな…。文句の一つでも言えばいいのに」



浅井「言えないわ。皆には数えきれないほど助けてもらったし、それに今日は、たまたま集まらなかっただけ!」



薄井「ふ〜ん?」



浅井「…なによ?」



薄井「優しいんだね」



浅井「へっ…変なこと言わないでよ!?」




………バサッ


(薄井に向かって書類を投げ飛ばす浅井)



薄井「あ〜あ…。せっかくまとめた書類がバラバラだ」



浅井「あんたのせいだからね!!」



薄井「…はいはい」



(書類を拾う薄井)



浅井「私が拾うからいいわよ!」



………カサッ


(手が重なる)



薄井「!」



浅井「ごめん!!」



薄井「浅井くんの手…」



(浅井の手に触れる薄井)



浅井「な…なに…?」



薄井「うん。浅井くんには運命の相手が二人現れるよ」



浅井「はぁ?」



薄井「右手の小指下にある横棒が二本あるだろう?それは運命の人の数を示すんだよ」



浅井「へぇ〜。そんなこと、よく知ってるわね。あんたには何本あるの?」



薄井「一本だよ」



浅井「出会いのない男よのぅ…」



薄井「僕は一本だけでいい。」



浅井「……」








―――その後、書類をまとめ終えた二人は生徒会室を出た。




浅井「後はこれを担当の先生に届けるだけだから、もう帰っていいわよ。ありがとね」



薄井「うん。待ってる」



浅井「待たなくていいってば!」



薄井「一緒に帰ろう!…駄目かい?」



浅井「あんた…生徒会の仕事、手伝うためだけに学校に来たってわけ!?」



薄井「それだけじゃない。本当は浅井くんに…」




……ピロピロロ〜ン


(薄井の携帯が鳴る)



薄井「………」



浅井「出ないの?」



薄井「…もしもし」



野高『ああ、薄井?俺。野高だけど…』



薄井「なにもこんな時に掛けなくてもよいではないか…!」



野高『今度の補習っていつなんだ?』



薄井「確か、五日後だったかな…」



野高『俺、立川さんに言うよ。自分の気持ち』



薄井「――え?」







……その頃、華は母親と一緒に携帯を買いに行っていた。



華(淳くんの機種はDoCoMoだから…同じのにしよう!)



(DoCoMoの携帯を手に持つ華)



母「DoCoMoねぇ…。電波はいいらしいけど、高いのよねぇ…」



華「そんなっ!?バイトするから!お小遣、減らしてもいいから!」



母「よし。決まり!」



華「……へ?」



母「その言葉、肝に命じておきなさい♪」



華(はっ…ハメられた!?)







――――――――――


優からの突然の電話に僕は驚きを隠せなかった。優が気持ちを打ち明けたところで、花子が振り向くとは思えない。




薄井「本気なのか?」



野高『本気じゃなかったらこんなこと言わないよ。』



薄井「花子を振り向かせる自信があるってことか…」



野高『自信なんかないよ。でも、自分の気持ちをはっきり伝えたいんだ。』



薄井「そうか…」




―――本当は止めたかった。




優も、姉さんも……




優にチーズケーキを作って、届けるためだけに病院を抜け出した姉さんを馬鹿だと思った。


病院にいれば、もう少し長く生きられたかもしれないのに。



優だってそうだ。

花子に好きな人がいるとわかっていて、なぜ自分の気持ちを打ち明ける?



そんなの花子を困らせるだけだとわかっていて、なぜ?




僕はただ頷いて、電話を切った。




浅井「薄井…翔……?」



薄井「…ごめ…ん。今言ったことは忘れてくれ。一人で帰るから…」



浅井「ちょっと待ってよ!?」



(薄井の腕を掴んで止める浅井)



薄井「ごめんってば!?」



浅井「!」



薄井「――」




僕は掴まれた手を振りほどき、歩き出した。



今の僕では、君を傷つけてしまう。





だから……ごめん






〜恋愛偏差値ゼロ〜

完。



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